10分間で作れてプロ並みの写真が撮れる冷陰極管式フリフリライト



 2009年のプロトタイパーズで「プロ並み写真をすぐ撮れるLEDライトセイバー」という作例を紹介しました。今回は、それと同じ機能のものをLEDではなく冷陰極管(CCFL)を使って作ります。よりカンタンに、より短時間のうちに作ることが目標です。多少見栄えが悪くとも、すぐに試せることを重視します。いつも以上のクイック&ダーティー路線です。

部屋を暗くし、スローシャッターに設定したカメラと被写体の間でこのライトをサッサッサッと振ります。これだけで目の覚めるような美しい写真ができあがります

 冷陰極管は蛍光ランプの一種です。一般的な蛍光灯(熱陰極管)にくらべて細く小型にできることから、液晶ディスプレイのバックライト用として普及しました。

 冷陰極管を点灯させるには高周波の交流が必要で、そのために通常はインバータ回路を用います。冷陰極管は単体で購入することも可能ですが、インバータとセットになっている商品を選ぶほうが確実です。

 今回は秋月電子のセット商品を使って製作しました。長さの違う2種類の冷陰極管で2つ作り、使い勝手を比較してみます。

秋月電子の「15cm級冷陰極管+インバータセット」。700円です
袋の中身は冷陰極管とインバータ基板。接続用のケーブルは付属しているので、このほかに必要なのは電源だけです
電源として006P(9V角電池)を使います。秋月電子の資料によると、このインバータは5V〜12Vの入力電圧で動作するようです

 インバータ基板に電池と冷陰極管をつなぐだけのカンタンな工作です。ただし、感電しないよう十分に注意してください。基板上の部品や冷陰極管の端子には、数百Vの高い電圧がかかっています。触れてしまったときのダメージは、前回のELワイア用インバータを凌ぐと想像できます。説明書には「冷陰極管を接続しない状態で、インバータに通電しないでください」という注意もあります。電池を接続するのは、配線の正しさと安全を確認してからにしましょう。

 冷陰極管とインバータのセット以外に必要なのは、何種類かの粘着テープとカッターだけです。所要時間は、迷わずに進めば10分ほどでしょう。慎重にやっても20分あればできるはずです。

ケースとなる細長い箱を用意してください。部品を固定でき、カメラ側に光が漏れない材質ならば、なんでもいいでしょう(金属のものは感電の恐れがあるためお勧めしません)。我々は、たまたま手元にあったチョコレートの小箱を利用しました
強力な両面テープで部品を固定します。厚めの弾力性があるタイプが便利です。我々は住友スリーエムの製品を愛用しています
着脱ができるようにしたい部品は、住友スリーエムの面ファスナ「ワンタッチベルト」と両面テープを組み合わせて固定しました
上記のほかに、普通の粘着テープが1本あるといいでしょう。光に色が着かないよう、無色のものを使ってください(記事では見やすくするためにあえて黄色いテープを使っています)
必要な工具はカッターだけです。ハサミでも大丈夫でしょう。ワイアストリッパやハンダゴテといった電子工作用の工具もあると作業がよりスムーズに進みますが、今回は使わずに作ってみました
インバータ基板と冷陰極管を繋いだ状態です。極性はないので、つなぎやすい向きにつないでしまって大丈夫です。赤と白の線は電池スナップと繋ぎます(電池をはずした状態で接続しましょう)
接続は冷陰極管から出ている細い銅線をコネクタに突き刺すだけ。説明書にあるとおりの方法です。このままでは引っ張ると抜けてしまうので、あとで線を固定します
箱の中に置いて、位置関係を確認しているところ。冷陰極管と電池は箱の側面を利用して固定することにしました。
冷陰極管はなるべく光が外に出るよう、フチに近いところにテープでとめました
冷陰極管の両端のカバーは柔らかい樹脂でできていて、テープがうまく付かなかったため、管の部分も覆うようにして留めています
基板のウラ面には部品の足が突き出ているので、基板が浮いてしまいます。両面テープの重ね貼りで対応します
電池は取り外せるように面ファスナで固定します。両面テープとワンタッチベルトの重ねワザです
箱にも面ファスナを貼れば、着脱可能な電池ホルダのできあがり
006P用電池スナップのワイアは適度な長さに切り、被覆を剥きます。今回はハンダづけではなく、線と線をよじって接続するので少し長めに剥きます。カッターで被覆に浅く切り込みを入れ、引き抜く方法でやってみました(芯線まで切らないよう注意)。もちろん、ワイアストリッパを持っている人は使ってください
赤の線同士を繋ぎます。マイナス側は黒と白になりますね
くるくるとよじってから、テープを巻いてできあがり。金属部分が露出しないように巻いてください
スナップに電池をはめると、冷陰極管が点灯しました。あちこちに高電圧部分が露出しているため、このままでは危険なので、テープで保護します
テープを貼り終えたところ。フリフリライトの完成です。やや不安の残る構造ではありますが、まずは撮影を試してみましょう

 それでは完成したライトを使って、試し撮りをしてみましょう。

 カメラはシャッタースピード(露光時間)と露出をマニュアルで設定できるものを用意します。三脚と暗い撮影場所も必要です。完全な暗室でなくても大丈夫で、日没後ならば、部屋の電灯を消すだけでも試せるでしょう。

 被写体をファインダーに収めたら、シャッタースピードと絞りを設定します。8秒/F10くらいからスタートして、撮った写真を見ながら調整していきます。

 部屋を暗くし、シャッターを切ったら、被写体に光が当たるようにしながらライトを振ります。ライトの角度と振り方で、出来上がる写真は大きく変化します。最初はレンズと被写体の中間くらいの位置を横切るように振ってみましょう。そうして撮った写真が暗ければ、シャッタースピードを遅くするか、絞りを少し開けるか、ライトを被写体に近づけます。明るすぎるときは逆です。カメラの設定はあまりいじらずに、ライトの当て方をいろいろ工夫するほうが面白いと思います。

ライトをこんなふうに持って、被写体に光を当てながら振ります。この写真は明るい場所で撮っていますが、実際は暗い場所で行ないます
最初のテーマはイチゴ。まず、フリフリライトを使わない撮影例です。天井の照明1灯だけを点けた状態で普通に撮っています(「普」の文字が入っている写真はすべてそうです)
同じ被写体、同じアングルで、フリフリライトを使った撮影例。シャッタースピードは8秒、絞りはF10です。レベルを若干調整していますが、それ以外の修正はしていません
振り方を変えることで、ニュアンスを変化させることができます。強調したい面を重点的に照らすと陰影が生じます。振る方向を変えても(たとえば左右から上下に)、質感が変化します
側面から当てる時間をやや長めにしたバージョン。立体感がでました
キャンディーの缶です。メタリックなものを撮るのは難しいですね
フリフリライトで撮るとこんな感じになりました
缶詰を普通に撮ってみました。これでも十分ですが……
フリフリライトで撮ると高級感がアップした気がします
iPhoneは撮影が難しいハードウェアの1つではないでしょうか
ロゴと刻印、そして側面のスイッチ類がはっきり写っています。5枚ほど撮影して、このレベルに達しました。全体的なムラはまだ少し残っていますが、製品の美しさはよく表現できていると思います
振り方が遅かったり、振り幅が狭かったりすると、冷陰極管の光が写り込んでしまうことがあります。失敗写真ですが、これはこれで面白いビジュアルかもしれません

 秋月電子の別の冷陰極管を使って、もう1つ作ってみましょう。先ほどの例では、ライトを消したいときは電池スナップをはずす必要がありました。それでは少し不便なので、こんどはスイッチを取り付けます。また、先の例は冷陰極管と基板の高電圧部分が露出している構造だったため、不安が残ったかもしれません。こちらは、電子部品があらかじめプラスチックケースで保護されているので安心できます。そのかわり、006P電池1個では動作しません。2個を直列につないでテストしました。

秋月電子の「24cm冷陰極管+インバータセット」。300円。16Vから24Vの電源で動作します
全体が透明のプラスチックで保護されているので、不意に感電する可能性は小さいのですが、ところどころ隙間があって、そこから電線や金属片が入ってショートや感電に至る可能性はあります。取り扱いには注意してください
スイッチはパナソニックのマイクロスイッチ「AM50642C3F」を使いました。直接、指で押すためのものではありませんが、形状が平板で取り付けやすく、安いので(50円)、採用しました
トグルスイッチも検討したのですが、穴開け加工が必要なため、今回は見合わせました。マイクロスイッチのように、軽い力で反応するスイッチでないと、頑丈な取り付け加工が必要となります
完成した24cm級フリフリライト。2×30cmの木の板に実装しました。電池がグリップとなります。すべて粘着テープで固定しています
冷陰極管の側から見た写真です。撮影用ライトとして考えると、木の板のこちら側の面は白く塗ったほうがいいかもしれません
こんなふうに持って使います。ちょうど人差し指の位置にマイクロスイッチのレバーが来るようにしました。押すと点灯します

 最初に作った15cm版と、この24cm版を比較すると、後者のほうが光が弱い印象なのですが、光源が長いため、より大きいものを自然に照らすことができます。また、細く作ることができるので振りやすくカメラの視野を邪魔しません。ブツ撮り用のライトとしては、24cm版のほうが少し優れているかもしれません。

 ここからは、少し大きめの被写体を24cm版で撮った例を紹介します。

ロードバイクのスプロケットです。奥まったところにも光が回っています
メタリックな包装の質感と凹凸が克明に写し取られています
これは成功例とはいえないかもしれません。ロゴがちゃんと光るように撮ると、液晶パネルに映り込みが生じます。振り方をもっと工夫すれば、もっとうまく撮れるかもしれません。試行錯誤しながら良い結果を探る楽しさがあります
iPadを撮ってみました。予想以上に重厚な仕上がりに

 秋月電子の非常に廉価なセットのおかげで、フリフリライトは安く作れます。2種類作っても部品代は合計で1,500円ほどです。皆さんも自分流のライトを作って撮影を楽しんでください。