第4回「16セグメントLEDを使ってみよう」



 今回は16セグメントディスプレイを使ってみましょう。16セグメントディスプレイはLEDディスプレイ部品の一種で、英文字や数字や記号を表示できます。内部に16個(ドットを含むと17個)のLEDを内蔵し、それぞれが個別の枠を照らすことで文字などを表示するというしくみです。16セグメントディスプレイは、16セグメントLEDや16セグとも呼ばれます。

さまざまな16セグメントディスプレイがあります。ただ、7セグメントディスプレイほど入手性がよくなく、液晶やVFDのほうが汎用性が高いことから、現在はあまり見られなくなりました
写真はKingbrightPSC12-11SRWAという16セグです。高さ40×幅27.5mmで、やや大きめのものです。MOUSER ELECTRONICSにて約350円で購入しました
こんなふうに点灯させられます。7セグよりセグメント数が多いので、英文字もわりあい自然に表示できます。電子部品としては複雑でないので、電池、抵抗、ブレッドボードがあればすぐに試せます

 16セグのしくみは、7セグ(7セグメントディスプレイ)とほとんど同じです。7セグを扱えれば16セグもすぐに扱えますので、まずは7セグのしくみをおさらいしてみましょう。なお、7セグについてさらに詳しい内容は『武蔵野電波のブレッドボーダーズ 7セグメントLEDを使ってみよう』をご参照ください。

PARA LightのA-551SRDという7セグメントディスプレイ。主に数字を表示するための部品です。一般的な1桁の7セグは、適切な電源(電池など)と抵抗器くらいがあれば自由に表示させられます
7セグの裏には10本のピンがあります。この7セグの場合、丸で囲ったピンがアノードコモン(各LEDの共通+極)になります。どちらか片方だけ+極に接続すれば使えます
7セグの内部配線はこのようになっています。A-551SRDはアノードコモンの7セグですので、上側の回路図のように、各LEDの+極は共通です。回路図上の英文字や数字は、下の写真のようになっています
この7セグの場合、ピン番号やそれに対応したLEDは写真のとおりです。上の回路図と見比べてみましょう。たとえば、3番か8番のピンを電源の+極につなぎ、10番のピンを電源の-極につなげば、Gの位置のLEDが点灯します
実際はこのように配線します。上の回路図や写真のとおり、Gの位置のLEDが点灯しました。抵抗器はLEDに過剰な電流が流れないようにするための電流制限抵抗です。なお、流す電流、適切な抵抗の定数の計算方法については、『武蔵野電波のブレッドボーダーズ LEDは楽しい電子部品』をご参照ください

 次に16セグです。冒頭で紹介したPSC12-11SRWAという16セグについて、話を進めていきましょう。

 この16セグには18本のピンがあります。文字などを表示するためのLEDのピンが16本、ドットのLEDが1本、そしてコモンが1本です。この16セグはカソードコモンで、各LEDの-(マイナス)極が共通の1本のピンになっています。

PSC12-11SRWAは赤色の16セグです。全てのセグメントを点灯させるとこのようになります
背面にはピンが18本あります。2.54mmピッチで、ブレッドボードにそのまま挿せます。しかし本数が多いため、ピンが長辺側に並んでいますので、ブレッドボード上に複数個並べて文字列を表示させるのには向きません
この16セグの配線図です。赤い数字がピン番号、青い英文字がセグメントの位置を示しています。11番ピンがカソードコモンです
見やすくするため、ピンを外側に曲げてあります。ピン番号の並びとセグメントの位置はこのようになっています
上の写真では少々わかりにくいですね。ピンに対応するセグメントにピン番号を振ってみました。要するに、どれかのピンに電流を流すと、それに対応するセグメントが光るというわけです

 以上のように、16セグはセグメント数およびピン数が多いだけで、基本的な使い方は7セグと同じということがわかりました。

 上の配線図を見て気づいた方もあると思いますが、サイズの大きな16セグ/7セグの場合、セグメントによってLEDの数が異なることがあります。たとえばこの16セグの場合、1個もしくは2個のLEDが、ひとつのセグメントに入っています。

赤く点灯させたセグメントには2個のLEDが入っていて、直列で接続されています。それ以外はLED1個です。セグメントの長さや面積により、LEDの数を変え、点灯する明るさを整えているのです
PSC12-11SRWAのデータシートを見ると、セグメントによってVfの値が異なることもわかります。LEDが2個のセグメントは、LEDが1個のセグメントの2倍のVf値になっています。(表はPSC12-11SRWAデータシートから抜粋)

 セグメントによってLEDの個数が異なるので、抵抗値が違う2種類の電流制限抵抗を用意する必要があり、扱うのが少々面倒に感じられます。

 しかし、実際に試してみると、電流制限抵抗の値は1種類で問題ありませんでした───電源を9V(006P乾電池)とし、電流制限抵抗を470Ωとしたところ、16セグは均等に発光しているように見えます。

 なお、LED1個のセグメントと2個のセグメントでは、流れる電流は約10mAと約15mAと、5mAの差がありますが、どちらのケースでも十分明るく光り、かつ定格値以内となりました。

LEDが2個入っているセグメントを点灯させてみました
今度はLEDが1個のセグメント。同じ電圧/抵抗値でも同様の明るさで点灯しているように見えますので、電流制限抵抗は1種類(470Ω)にしてみました
16セグでは、7セグではうまく表示できない英文字も、視認性の良い形で表示できます

 ブレッドボード上に配線してみましたが、16セグはセグメント数が多く、使う抵抗器も増え、ブレッドボード上の配線が煩雑になります。そこで、これを解消できる部品を用意しました。ディップスイッチと抵抗アレイです。

いろいろなディップスイッチ(DIP SWITCH)。DIPはDual Inline Packageの略で、プリント基板などへの実装に適したICの形状を言います。ディップスイッチもDIPのICと同様にプリント基板などへ容易に実装できます
ディップスイッチにはさまざまなスイッチ数のものがあります
スイッチ形状により、タイプもいくつかあります。これはピアノスイッチタイプです
これはロッカースイッチタイプです
ディップスイッチの裏側です。こちら側の足と向こう側の足が、それぞれ対になっています。これを表面のスイッチでオン/オフするしくみです。このディップスイッチには9個の独立したスイッチが内蔵されているというわけです
抵抗アレイやネットワーク抵抗と呼ばれる部品です。複数の抵抗器を内蔵しています
どちらの抵抗アレイにもそれぞれ同じ値の抵抗器が8個内蔵されています。この抵抗アレイの場合、部品内の配線は上の図のようになっています。抵抗値は上(黒)が470Ω、下(赤)が220Ωです

 抵抗アレイはこの連載で初めて登場した部品ですね。さまざまな用途に使われる部品ですが、主に基板上のスペースを節約する(小さな基板上に回路を作る)ために使われます。

 上の写真の抵抗アレイは最もベーシックな内部配線ですが、これとは違う内部配線のものもあります。購入する際は内部配線をしっかり確認しましょう。

ディップスイッチと抵抗アレイを使って、16セグをブレッドボード上で点灯できるように配線しました
使用した抵抗アレイは8素子(8個の抵抗を内蔵したもの)です。16セグは片側に9本の足を持ちますので、9素子の抵抗アレイを使えば、写真のような単体の抵抗器は不要になります
抵抗アレイの足が曲げてある箇所は、16セグの11番ピン(カソードコモン)です
反対側はこのように配線しました
早速16セグを点灯してみます。ジャンプワイヤを挿抜せず、ディップスイッチのオン/オフで自在に表示パターンを変えることができます
「K」を表示してみました
こちらも「K」。どちらの視認性が良いでしょう?

 こういった回路があると、16セグに表示させるパターンをデータ化してマイコンなどに書き込むときに便利かもしれません。16セグに数字や英文字などの既成のパターンを表示させるための専用ドライバICも存在しますが、独自のパターンを表示するためにはこのような実験用回路が役立ちます。

 そこで、この回路をユニバーサル基板上に作ってみることにしました。ユニバーサル基板は、ユーザーが自由に回路パターンを作り込める汎用の基板です。万能基板や蛇の目基板とも呼ばれます。サイズの違い、ランド(部品をハンダ付けする銅箔)が片面か両面かなどで、さまざまなタイプのユニバーサル基板が市販されています。

ユニバーサル基板の上に16セグ点灯の回路を作ってみました。使用したユニバーサル基板はサンハヤトのICB-88で、100円程度で購入しました
裏面の様子。スズメッキ線を使って配線しました。工夫すればもう一回り小さなユニバーサル基板上に作れそうです
電源である9V乾電池(006P)をコネクタで挿抜できるようにしました。ユニバーサル基板を使うと、いろいろな工夫を実現できて便利です
早速点灯させてみます。「P」を表示してみました
こちらは「Y」
これは「S」です。一般的には、16セグ全面を使ってこれらの英文字を表示しているようですが、我々は自由にアレンジして表示させました
「PROTOTYPERS」と表示させてみました

 16セグは手に入れにくくなりつつある部品です。しかし7セグよりも自由度が高く、表示器のなかでは容易に扱える部類の部品です。表示される数字や英文字も独特なので、まだまだ使える/楽しめる部品だと思います。

 そこで次回は、複数の16セグを使ってダイナミック点灯をさせてみましょう。マイコンとしてはArduinoを使う予定です。