三浦優子のIT業界通信

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●Windows 7発売で「CPU」や「マザーボード」前年割れから回復

 8月以降、販売状況が前年割れとなっていたPCパーツだが、Windows 7発売以降、販売状況が好転していることが明らかになった。

 全国の大手家電販売店のPOSデータを集計するBCNのデータによれば、「マザーボード」、「CPU」、「SSD」、「記録型DVD」、「キーボード」については台数、金額共に前年を上回る販売状況が続いている。ただし、「メモリ」、「HDDベア」については台数、金額共に前年割れとなるなど、同じPCパーツでも製品ジャンルによって明暗が分かれた。

 また、CPUの販売比率においては、2009年10月に入りCore i7の比率が急増。9月の「Core i7-870/860プロセッサ」の発売、Windows 7の発売といったトピックにより、Core 2 Duoを抑えトップシェアを獲得した。

PC自作系主要部品別前年同期比(2009年10月22日-11月11日の21日間)
出展:BCN
●夏の買い控えは収まったが勢いは弱く

 比較的順調な販売状況であった2009年のPCパーツだが、8月に入って前年同期比を下回る販売台数、販売金額となっていた。しかし、10月22日のWindows 7発売によって販売状況が好転した。

 パソコン専門店「TSUKUMO(ツクモ)」を運営する株式会社Project Whiteの鈴木淳一副社長は11月24日の段階で、「Windows 7の発売以降、売れ行きが急激に伸びた。こうなると、夏頃からWindows 7の発売を待つユーザーの買い控え傾向が続いていたことが明らかになった」と販売状況を分析している。

 BCNの2009年10月22日から11月11日まで3週間の販売データもこの状況を裏付ける結果となった。

 販売台数、販売金額の対前年比を比較したものだが、市場が起ちあがり時期にある「SSD」は台数が218.2%、金額が240.1%と前年比2倍以上の急成長となっているのをはじめ、「CPU」は台数が115.1%、金額が114.2%と対前年同期比2桁成長となった。

 SSDについてBCNの森英二アナリストは、「母数となる前年の販売台数、金額が市場起ちあがり時期であったこともあってまだまだ少ない。そのため、高い伸び率を記録している。今後についても、容量の増大と値頃感ある価格の製品が登場してきていることから、当面は高い伸び率を記録するのではないか」と分析した。

 この他に台数、金額共に前年を上回っているジャンルは、「マザーボード」、「記録型DVD」、「電源」の3つ。

 「グラフィックボード」、「PCケース」、「マウス」、「キーボード」については、販売台数は前年を上回ったものの、販売金額では前年を下回った。

 さらに「メモリ」、「HDDベア」、「ファン・クーラー」、「LCD」については台数、金額共に前年を下回っている。

 メモリの販売状況が前年割れとなっている点についてBCNの森アナリストは、「メモリについては、これまで新しいWindowsが発売になると手持ちマシンをメモリだけ増強するユーザーが増加し、売れ行きが伸びる傾向があった。しかし、Windows 7についてはメモリ増強の必要がないと判断したユーザーが多かったのではないか」と、Windows 7独特の特性と分析している。

 また、PCパーツ全体の販売状況を見ると、SSDを除いてはパソコン本体の販売状況と比較すると伸び率が低い。販売状況についても、主要パーツショップが10月22日のWindows 7 OEM版販売開始に合わせ、目玉商品を用意して深夜発売にのぞんだ。

 その結果、10月22日を境にPCパーツ全体の売れ行きがスローダウンした。

 「PCパーツユーザーにとって、新Windows深夜発売と共に主要製品が特価で売られるのは周知の事実となっている。このタイミングを狙って自分の欲しい商品を購入するユーザーが増えているのではないか」(BCN・道越一郎アナリスト)

 年末商戦に向けて、どう顧客獲得を進めるのかがPCパーツ販売の大きな鍵となりそうだ。

●Core i7が9月以降CPU分野でトップシェアに

 CPUについては、Core 2 DuoからCore i7への世代交代が進んでいる。

 2009年9月に入り、トップシェアがCore 2 DuoからCore i7へと移動した。これは9月8日に「Core i7-870/860」の販売が解禁になったことに加え、Windows 7の発売が契機になったと見ることができる。

 「発売後、比較的高機能製品の購入比率が高いCPUだが、i7は発売後、販売量が伸び悩んできた。Core i7-870/860の発売、Windows 7の登場によって、CPU販売の主力がようやくCore i7となった」(BCN・森アナリスト)

 現状では、ナショナルブランドのパソコンでCore i7を採用しているのは、ハイエンドデスクトップパソコンの一部のみ。なかなか普及が進んでいなかったが、PCパーツでCore i7の販売量が増加している傾向は、この数カ月後にナショナルブランドのデスクトップパソコンにおいてもCore i7の販売量が増加することにつながるかもしれない。

CPU別販売本数シェア推移上位20(出展:BCN)