ソニー「VAIO Zシリーズ」購入記【番外編】
〜GeForce GT 330M周りを試す



品名 ソニー「VAIO Zシリーズ」
購入価格 369,800円プラスα
購入日 2010年2月25日
使用期間 3週間

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。

 過去2回にわたって、ソニー「VAIO Zシリーズ」のレポートをお届けした。その後編で、GeForce GT 330Mの挙動に怪しい部分があると述べたが、現在までに試してみた結果をここにお伝えする。

 GeForce GT 330Mは、48基のSP(CUDAコア)を搭載し、DirectX 10.1に対応するGPU。NVIDIAでは各GPUのセグメントを下から順に、バリュー、メインストリーム、パフォーマンス、ハイパフォーマンス、エンスージアストと分けているが、このGPUはパフォーマンスの部類に属する。とはいえ、その数字の2桁目が示すとおり、それほど大きな性能は期待できない。

 ここに例を挙げるまでもなく、昨今のGPU、特にNVIDIAのGeForceシリーズは、3Dグラフィック以外にも動画再生支援や、CUDAを使ったGPGPU用途など、利用シーンが拡大している。

 昔と違って、個人的なPCの用途が、ゲームよりも動画の再生や変換などに移ってきていることから、VAIO Zを買うに当たっても、そのあたりの性能や効果に期待をしていた。

 しかし、各種アプリケーションを試してみると、期待した動作をしてくれないものがあることが分かった。そこで、以下に、それらの結果を記す。

●Flash Player 10.1ベータ

 YouTubeに代表されるストリーミング動画は、VGA級であればたいていのPCで問題なく再生できるが、フルHD動画ともなると、回線がいかに高速であっても、CPUがボトルネックになってコマ落ちが発生する。

 Flash Player 10.1ベータでは、AMDやIntelも含め、比較的最近のGPUの動画再生支援エンジンを利用可能になり、H.264のフルHD動画もコマ落ちなく再生可能になった。

Flash Player 10.1をインストールするとH.264動画のGPU再生支援が可能になる

 現時点では製品候補版(RC)が公開されており、VAIO Zで確かめてみると、確かにコマ落ちのない滑らかな再生が可能だ。再生時のCPU負荷は15〜18%あたりに落ち着いている。ちなみに、NVIDIAのFlash Player 10.1対応製品リストのページにはGeForce GT 330Mが載っていないが、これは更新されていないだけで、NVIDIAでは対応を明言している。

 一方で、CPU内蔵GPUであるIntel HD Graphicsについて、Adobeのページを見ると、対応となっているのだが、フレームレートは15〜19fps程度に落ち込み、CPU負荷も25〜50%と高く、アクセラレーションが効いていない。VAIO Z標準のビデオドライバはバージョン8.15.10.2021で、Adobeのリリースノートでは対応となっているので、VAIO Zに対するカスタム化が悪影響を及ぼしているのかもしれない。

 ニコニコ動画(9)についても軽くチェックしてみた。試したのは1,920×1,080ドット/映像9.7Mbps/音声256kbpsという動画。ニコニコ動画(9)ではYouTubeのようにフレームレートが確認できないので目視となるが、GeForceを利用する限り、コマ落ちはないように見える。また、CPU負荷も25%前後と低めに落ち着いている。

 ちなみに、64bit版のプラグインは公開されていないので、ブラウザは32bit版を利用する必要がある。

●PowerDVD 10
PowerDVD 10の設定画面。CUDAを使った高画質化が可能

 PowerDVDシリーズは、古くからGeForceシリーズのPureVideoに対応している。今でもそれは変わらないが、最新の「PowerDVD 10」には、24〜30fpsの映像を60〜72fpsにスムーズ化したり、映像のアップコンバートなどを行なう「TrueTheater HD」という機能があり、これはCUDAを使ったアクセラレーションをサポートしている。

 この製品はVAIO Zには付属しないが、比較的万人向けのCUDA対応ソフトと言うことで、その対応状況を確かめてみた。結論としては、CUDAの効果を確認できなかった。この機能をオンにすると、アップコンバートやフレームレートの向上といった効果は働くが、CUDAのオン/オフに関わらずCPU負荷は常に25%程度となっていた。コマ落ちなどは発生してないので、現状、実害はないのだが、ソフトウェアの機能を完全には生かし切れていないようだ。

 ちなみに、PureVideoについては、機能しており、フルHDの動画を再生した場合、PureVideoオフではCPU負荷が20〜38%程度だったが、オンにすると3〜25%に下がった。

●Blu-ray Disc

 筆者のマシンはDVDスーパーマルチドライブだが、せっかくの機会なので、PowerDVD 10によるBlu-ray Disc(BD)ビデオについても確認してみた。

 BDビデオもはやり、H.264などのフォーマットを採用し、解像度はフルHDとなっている。作品によっては、本編を流しながら、別の映像を重ね合わせて表示するデュアルストリームを使うものもある。当然これは、より負荷が高くなるが、GeForce GT 330MのPureVideo HD VP4はデュアルストリームに対応している。

 そこで、外付けのBDドライブを繋いで視聴してみたところ、シングルストリームのシーンでのCPU負荷6〜8%に対し、デュアルストリームでは10〜12%と、多少上がるもののPureVideoが効いていると思われる結果がでた。

 ただし、少し謎なのが、Intel HD Graphicsで同じ再生をした場合、シングルストリームもデュアルストリームもほぼ16〜18%という同じレベルの負荷だった。こちらの方が数値は高いが、デュアルストリームにしてもCPU負荷が上がっていないというのは、PureVideoの動作に実は問題があるのではという疑問を抱かせる。

●MediaShow Espresso 5.5

 動画変換ソフトの「MediaShow Espresso 5.5」は、CUDAによるエンコード支援に対応する。そこで、1080pのH.264動画を720pに変換してみた。結果としては、支援なしでは25秒かかったのに対し、支援ありでは19秒と、効果を確認できた。

●PowerDirector 8

 動画編集ソフトの「PowerDirector 8」は、一部のエフェクトがCUDAによるアクセラレーションに対応している。GeForceをオンにした状態でエフェクトの一覧を見ると、一部にNVIDIAのロゴが表示される。これについても効果を確認してみた。

 Intel HD Graphicsでは、コマ落ちが発生し、プレビューの途中で数秒間完全に停止するシーンがあった。これに対し、GeForce GT 330Mでは、素材がフルHDのH.264ということもあって、さすがにコマ落ちはするものの、完全に停止するといったことはなく、CUDAによるアクセラレーションを確認できた。

MediaShow Espresso 5.5。CUDA対応GPU搭載機では、エンコードの設定に「ハードウェアエンコードを有効にする」が表示される PowerDirector 8。CUDA対応GPU搭載機では、対応エフェクトに緑のNVIDIAロゴが表示される

●Badaboom

 「Badaboom 1.2.1」はMediaShow Espressoと同じような動画編集ソフトだが、CUDAに特化し、GeForceでないと動作しない。このソフトについては、起動は問題ないが、ソースの映像を指定した時点でエラーが発生した。ソースのフォーマットにより、エラーメッセージが異なるが、いずれにせよ100%の確率でエラーが起きる。

 原因としては、このソフトがWindows 7に正式対応していないためということも考えられなくはないが、Windows 7でも動作実績はある。それよりも、VAIO ZのGeForceのドライバ(バージョン188.80)とこのソフトの組み合わせに問題があると考えられる。

●TMPGEnc 4.0 EXpress

 動画変換ソフトの「TMPGEnc 4.0 EXpress」に至っては、起動時にGeForceのドライバのバージョンが古いため、CUDAを利用できない旨のメッセージが表示され、CPU処理しかできない。このソフトはWindows 7に対応している。

●vReveal

 「vReveal」は、携帯電話などで撮影した動画を高画質化するソフト。高画質化の演算にCUDAを利用できる。640×480ドット/30fpsのMPEG-2動画を使って、全効果をかけてみたところ、CPUのみでは8fpsだったのが、GeForceを使うと10〜15fpsに向上した。

Badaboom 1.2.1は、起動はするがソースファイルを読み込むと必ずエラーが出る TMPGEnc 4.0 EXpressは、CUDAが利用できない vRevealは問題なく動き、GPUの支援が受けられる

●各種ゲームの性能

 ここまでCUDA対応アプリケーションを中心に見てきたが、いくつか手持ちのゲームも試してみた。ノート用のパフォーマンスGPUということで、解像度はWXGAクラスに限定して試している。

 「Half-life 2」はDirectX 9世代の古いゲーム。全ての設定を高にして、垂直同期をオン、解像度を1,366×768ドットにした状態で、ベンチマークの結果は113fpsと、十分すぎる結果が出た。

Half-life 2

 LOST PLANET COLONIESは、AAなし、HDR 中、テクスチャフィルタ 異方性4倍、テクスチャ解像度 中、モデルの詳細 高、影の品質 中、影の解像度 中、 モーションブラーの品質 低、エフェクトの解像度 高、エフェクトの品質 低、エフェクトのボリューム 低、ライティングの品質 中、1,280×720ドット、垂直同期 オフ、フィルターの品質 高、Furの品質 なしという設定で、Area 1が24.3fps、Area 2が43.6fps。

 設定を少し上げて、AAなし、HDR 中、テクスチャフィルタ 異方性4倍、テクスチャ解像度 中、モデルの詳細 高、影の品質 中、影の解像度 中、 モーションブラーの品質 中、エフェクトの解像度 高、エフェクトの品質 高、エフェクトのボリューム 高、ライティングの品質 中、1,280×720ドット、垂直同期 オフ、フィルターの品質 高、Furの品質 DX10にすると、Area 1が23.0fps、Area 2が42.2fpsだった。

LOST PLANET COLONIES

 DiRT2は、解像度が1,366×768ドットで、Mediumでは平均31.7fps、最低23.8fps、Highでは平均24.3fps、最低21.4fps、Ultimateでは平均18.5fps、最低13.9fpsだった。

DiRT2

 Batman Arkham Asylumにはベンチマークモードはないが、Frapsを利用して目視で確認したところ、1,366×768ドットで、Middle設定では15〜38fps程度、High設定では15〜30fps程度で推移した。なお、このゲームではインストール時に、GeForceのドライバが古いため、最高の性能が出せない可能性があるという警告が表示された。ただし、ゲームのプレイ自体には特に支障が出ているようには見えなかった。

Batman Arkham Asylum

 これらのゲームをプレイしてみて感じたのは、想像以上に“遊べる”ということだ。今回プレイしたものは、最新ではないが、それなりに重いゲーム。一般に快適に遊べるフレームレートの下限と言われる30fpsを切ることも多いが、実際にプレイしているとそのもたつきは気にならず、かなり快適に遊ぶことができる。解像度も落としているため、スケーリング表示となるが、これも細かな文字のエッジをよく見て初めてそうだと分かるレベルで、ゲーム内では全くといって良いほど気にならない。ゲームが主目的でこのPCを買う人はいないと思うが、ゲーム“も”視野に入れて良いだろう。

●ドライバのアップデートに期待

 GeForce GT 330Mの性能は、普段弊誌の記事で紹介している最新デスクトップGPUと比べると、まったく勝負にならないが、フルHDで最高画質のゲームをプレイするのでなければ、かなりの用途に余裕を持って対応できることが分かった。

 しかしながら、CUDA周りの検証で判明したとおり、ドライバの完成度には問題がある。NVIDIAが一般に公開しているGeForce GT 330M用ドライバのバージョンは197.16と、VAIO Zのものに比べ、だいぶアップデートが進んでいる。

 しかし残念なことにこれはVAIO Zにはインストールできない。VAIO Zの切り替え式グラフィックスでは、NVIDIAドライバとIntelドライバがカップリングされており、ある程度のカスタマイズがされているからだ。そのため、GPUドライバの更新はソニーが改訂版を出すのを待つほかない。

 こういった事情から、NVIDIAの出すドライバとソニーが出すドライバに時間差が出るのは致し方ない。しかし、今回起きた問題の原因は現行のVAIO Zのドライバが新しいバージョンのCUDAに対応してないことと推測される。致命的な欠陥ではないが、まかりなりにも、CUDA対応のステッカーがパームレストに貼られている製品なのだから、この点については速やかなアップデートを望みたい。

 なお、ソニーにはドライバのアップデート予定があるかといった質問を投げているが、今のところ返答は得られていない。

(2010年 4月 22日)

[Text by 若杉 紀彦]