後藤弘茂のWeekly海外ニュース

Intel、AMD、NVIDIAが揃う「COOL Chips XIV」
~横浜で4月20日~22日開催



●低消費電力チップにフォーカスしたカンファレンス
前回のCOOL Chips XIII

 半導体チップのカンファレンス「COOL Chips XIV」が、4月20日より3日間、横浜情報文化センターで開催される。COOL Chipsは、1998年以来、日本で開催されている国際シンポジウムで、今年(2011年)で14回目を迎える。スタンフォード大学で夏に開催されるチップカンファレンス「HOT Chips」と対をなす、IEEEの国際会議だ。初日にスペシャルセッション、続く2日間に講演・発表・パネルディスカッションが行なわれる。

 HOT Chipsがどちらかと言えばハイパフォーマンスチップに寄ったカンファレンスであるのに対して、COOL Chipsはどちらかと言えば低消費電力な高性能チップにフォーカスしている。そのため、時代が低消費電力チップへと向かっている今、COOL Chipsの重要度が増している。

 COOL Chipsは過去数年、キーノートスピーチと招待講演の充実を図ってきた。今回のCOOL Chips XIVのポイントは従来の組み込み系の講演に加えて、従来ハイパフォーマンス系だったIntel、AMD、NVIDIAの3社のキーノートを揃えたこと。そのため、今回のCOOL Chipsは、PC系にとっても特に興味深い内容となっている。

●Intelからはプロセッサ研究所のディレクタが登場

 Intelからはプロセッサの研究を担当するMicroprocessor Technology Labのディレクタ-を務めるShekhar Borkar氏(Intel Fellow, Intel Labs and Director of Microprocessor Technology Lab)が登場。「The Truths and Myths of Embedded Computing」と題して回路の電力効率から、細粒度の電力制御技術やマイクロアーキテクチャ、ネットワークオンチップ、メモリサブシステムに至る包括的な講演を行なう。Borkar氏は、Intelのプロセッサアーキテクチャの方向性を定めるキーパースンだ。

 AMDからは同社初のAPU(Accelerated Processing Unit)「Zacate/Ontario」を担当したDenis Foley氏(Fellow, AMD)が来日。Zacate/Ontarioについての講演「AMD's Zacate, Low Power Fusion APU」を行なう。Foley氏は、1月のISSCC(IEEE International Solid-State Circuits Conference)でもZacate/Ontarioの回路設計など実装面について講演を行なっている。

Zacate、Ontarioのダイ(PDF版はこちら)

 NVIDIAからは、日本オフィスのソリューション・アーキテクト馬路徹氏が「From Multi-Core CPU to Many-Core GPU」としてメニーコアGPU時代の電力効率までを展望した講演を行なう。馬路氏は2009年12月に行なわれたSIGGRAPH Asiaで、2017年のNVIDIAスーパーコンピュータアーキテクチャまでを展望する講演を行なったことがある。NVIDIAは、2010年11月にSC10でスパコンプロジェクト「Echelon」を発表して以来、アーキテクチャの方向性が注目を集めている。

Fermi(GF100)のダイ(PDF版はこちら)

●招待講演ではマシンビジョンにスポット

 このほか、キーノートスピーチでは、Xilinxが提唱する「Crossover SoC」についての講演も行なわれる。カスタムSoCとFPGAの両方の利点をクロスオーバーさせるアイデアで、同社のZYNQファミリでは、ARM Cortex-A9コアにFPGAを組み合わせる。また、Renesas Mobileも「Worldwide RMC Mobile Platform Solution」と題して、携帯などに向けたアプリケーションプロセッサの技術を紹介する。招待講演ではルネサス エレクトロニクスも登場。同社の動的リコンフィギュラブルSoCの技術と応用事例を説明する。

 COOL Chipsの招待講演は、毎年、技術上の重要なトピックをテーマにしたユニークな講演を集めている。今回は、コンピュータビジョン関係で2つの招待講演が行なわれる。2010年のMicrosoftのXbox 360向けナチュラルユーザーインターフェイス技術「Kinect」で焦点が当たったホットな分野だ。

 1つは、東北大学の青木孝文教授による「Toward machine vision technology overcoming the pixel resolution limit --- From 3D vision to medical imaging ---」と題した講演。マシンビジョン技術の概要から、GPUへのアルゴリズムの実装などについて説明を行なう。

 もう1つは、東京大学の石川奥教授による「The Correspondence between Architecture and Application for High Speed Vision Chips」。高速コンピュータビジョンシステムの「Vision Chip」の説明などを行なう。

 初日の午後に行なわれるスペシャルセッションは、前回まではチュートリアルセッションとなっていたレクチャー型のロングセッションだ。今回はマルチプロセッサSoCの設計上の課題についてのセッション「Trusted MpSoC platforms for safety related applications」と、システム消費電力の高精度な計測などについてのセッション「Power Measurement, Characterization and Estimation of Microprocessor-Based Systems」が行なわれる。

 COOL Chipsでは、この他にも一般セッション、ポスターセッション、パネルディスカッションなど多数が予定されている。

 今回のCOOL Chipsは、1カ月半前に震災と原発事故に見舞われた。国際会議という性格上、海外からの参加者の動向が懸念されていた。しかし、現状では、IntelのShekhar Borkar氏やAMDのDenis Foley氏をはじめとする出席者は参加の予定であるという。