後藤弘茂のWeekly海外ニュース

AMDのCPUやGPUなら10億個の製造能力!
〜1.2兆円以上を投資するGLOBALFOUNDRIES



●Intelに追いつき追い越す勢いの先端プロセス製造能力
GLOBALFOUNDRIESのDouglas Grose(ダグラス・グロース)氏(CEO、写真左)と、Advanced Technology Investment Company (ATIC)のIbrahim Ajami氏(CEO、右)

 AMDのCPUを製造するGLOBALFOUNDRIESが、COMPUTEXで新たな拡張計画を発表した。先端プロセスのFab(工場)である独ドレスデンのFab 1と、建設中の米ニューヨークのFab 8(旧名Fab 2)をそれぞれ拡張する。どちらも300mm(12inch)ウェハFabで、製造能力はFab 1がフルランプ時に80,000wspm(ウェハ/月:wafer starts per month)、Fab 8は完成時に60,000wspmとなる。

 さらに、これに50,000wspmの製造能力に拡張しつつある旧Chartered(GLOBALFOUNDRIESと統合された大手ファンドリ)の300mmウェハのFab 7(シンガポール)が加わる。Fab 7も65〜40nmプロセスを立ち上げる予定で、先進プロセスFabの仲間入りをする。合計で190,000枚の300mmウェハを毎月処理できる能力となる。GLOBALFOUNDRIESは、先週台北で開催されたCOMPUTEXに合わせた記者発表会で、CEOのDouglas Grose(ダグラス・グロース)氏自ら、こうした華々しい拡張計画を発表した。


工場の拡張計画

 この数字の羅列は何を意味しているのか。それは、メインストリーム(140平方mm程度のダイ)のCPUやGPUなら最大で約10億個を1年に製造できる、膨大な製造キャパシティだ。歩留まりを80%に考慮しても8億個程度。ウェハ枚数で数えるなら、220万枚以上を年間に供給できる。2010年のPC出荷が予測通り3億台のレンジになるとすれば、計算上は全世界のPCのCPUとGPUの全てを生産できるキャパシティとなる。もちろん、このキャパシティは、PC市場のためだけではありえない。

32nmプロセスを製造するIntelの4 Fab

 また、これらの数字は、GLOBALFOUNDRIESが昨年(2009年)3月にAMDから分離した後、急激にキャパシティを増やしていることを示している。現在の計画は、AMD時代の製造能力と比較すると、4〜5倍のキャパシティとなる。買収と新施設への投資によって、通常のファウンドリでは考えられない急激なペースで、製造能力を伸ばしている。4つのFabで最先端プロセスを製造するIntelに迫ろうとしている。


●1兆円を大きく越える金額を投資

 もちろん製造キャパシティの増強には資金が必要だ。資金の多くを提供するのはGLOBALFOUNDRIESの後ろについている、アラブ首長国連邦の首長国の1つアブダビ(Abu Dhabi)政府が所有する投資企業Advanced Technology Investment Company (ATIC)だ。いわゆる国富ファンド(政府系投資企業)の中でも最大規模と言われるATICは、潤沢な資金を惜しみなくGLOBALFOUNDRIESに注ぎ込んでいる。

 Fab 1への300mmウェハへの転換のための投資が発表時の数字で20億ドル、Fab 8の建設費用がCOMPUTEX時の数字で48億ドル、昨年のATICによるChartered買収は39億ドル、今回、COMPUTEXで発表した拡張計画は約30億ドル以上。ざっと並べただけで、製造施設や買収に対して約130億ドル以上にのぼる資金投入が過去2年あまりの間に行なわれたか決定されている。日本円なら約1兆2,500億円を越える。途方もない金額だ。もっとも、半導体トップベンダーは、いずれも年間に50億ドルを超える規模の投資を行なうようになっている。例えば、Intelは32nmプロセスの製造Fabに70億ドルを投資している。

 簡単に言えば、GLOBALFOUNDRIESは先端プロセスのキャパシティでは、最大のファウンドリを目指している。先端ロジックプロセスの製造能力では、Intelと1、2を争うトップグループ入りを目指す。その規模は旧AMD時代のプランを大きく上回っており、経営的にもAMDから完全に独立を果たした。そして、ATICは投資をさらに拡大しており、半導体ビジネスに極めて真剣であることを示した。

莫大な投資をつぎ込むGLOBALFOUNDRIES

●旧AMDのFabを引き継いだGLOBALFOUNDRIESのFab 1

 GLOBALFOUNDRIESのFabには、AMDから引き継いだFabと、AMD時代に計画していたが手が着いていなかったFabと、買収したChartered Semiconductor ManufacturingのFabの3系統がある。ロケーション的にはAMDから引き継いだFabがドレスデン、AMD時代に計画していたFabがニューヨーク、旧CharteredのFabがシンガポールとなる。

 まず、GLOBALFOUNDRIESの設立時に、AMDからはドレスデンの主力FabであるFab 36と、旧FabであるFab 30をリフレッシュしたFab 38がGLOBALFOUNDRIESに移された。Fab 30までのAMD Fabは小さな200mm(8インチ)ウェハのFabだったが、Fab 36/38は大きな300mm(12インチ)ウェハFabで製造能力が大きい。もっとも、AMDからGLOBALFOUNDRIESに移った時点ではFab 30からFab 38への転換は終わっておらず、稼働しているのはFab 36のみで、Fab 38は転換中だった。

 GLOBALFOUNDRIESでは、旧AMDのFabをリネームした。Fab 36を「Fab 1 Module 1」に、Fab 38を「Fab 1 Module 2」に変えた。つまり、Fab 36とFab 38を合わせて1つのFabとして定義し直した。旧FabはModuleという形に、数え方を変更した。

GLOBALFOUNDRIESのFabのリスト(PDF版はこちら)
GLOBALFOUNDRIESの新しいFab
●AMD CPUは従来通りFab 1 Module 1(旧Fab 36)が主に製造

 また、GLOBALFOUNDRIESは、モジュール毎に製造するプロセス技術を変えた。昨年に発表された計画によると、Fab 1 Module 1(旧Fab 36)は、CPUの製造のためのSOI(silicon-on-insulator)プロセスの製造を継続。Fab 1 Module 2(旧Fab 38)は、CPU以外の製品に向いた通常のバルクプロセスを製造する。つまり、AMD SOI CPUは、当面はFab 1 Module 1(旧Fab 36)でのみ製造されるプランとなる。

 現状のパフォーマンスCPU需要に対しては1モジュールで充分だとGLOBALFOUNDRIESが判断していることを示していると推定される。ただし、AMDの低消費電力CPUコアのBobcat(ボブキャット)系はバルクと推定されるため、必ずしもSOIのFab 1 Module 1(旧Fab 36)のキャパシティがAMDのCPU供給能力と一致するわけではない。また、GLOBALFOUNDRIESは、昨年のCOMPUTEX時にバルクとSOIのキャパシティは、ある程度はインターチェンジャブルにできると説明している。

 「Module 2はバルクのキャパシティのために建造している。SOIとバルクでは一部のプロセス装置が異なる。しかし、多くの装置は似ているため、装置上の違いは比率的には少ない。もちろん、素材は異なり、トランジスタのチューニングは異なるが、それ以外のテクノロジフローは似ている。そのため、ある程度インターチェンジャブルにできる。また、Module 1とModule 2は、近接しており、言ってみれば同じ屋根の下にある。そのため、(ウェハをモジュール間で)移動させて処理することもできる」(Tom Sondeman氏,Vice President of Manufacturing Systems and Technology, GLOBALFOUNDRIES)。

 Fab 1 Module 1(旧Fab 36)は45nm SOIを製造しており、現在は32nm SOI HKMG(High-k/Metal Gate)の立ち上げを準備している。このプロセスで製造される最初のCPUは、Llano(ラノ)になる見込みだ。GLOBALFOUNDRIESは32nm以降は、SOIとバルクともにHKMGを採用する。

バルクCMOSのロードマップや製造される製品

●実態は3個のFabの集合体であるGLOBALFOUNDRIESのFab 1

 Fab 1の製造キャパシティは、昨年11月のAMDのカンファレンス「Analyst Day」では、Fab 1全体で55,000wspmとなっていた。しかし、COMPUTEXでの発表の直前には60,000wspmへと修正され、COMPUTEXでは新たにモジュールが加えられることが発表された。結果、製造キャパシティは80,000wspmへと増えることになった。短期間に、大きく製造能力の計画が拡張されたことになる。

 計算上は、新しいモジュールのアウトプットは20,000wspmとなる。Fabの建物は、駐車場などをつぶして、従来のモジュールの間に、やや窮屈そうに建設される。これが完成すると、Fab 1は、実態として3つの中規模Fabの集合体となる。

Fabの俯瞰写真

 ただし、新モジュールのクリーンルーム面積は110,000平方フィート(約10,220平方m)と、他の2つのモジュールと比べるとやや小さい。AMD時代の発表ではFab 1 Module 1(旧Fab 36)は140,000平方フィート(約13,000平方m)、Fab 1 Module 2は旧Fab 30時に150,000平方フィート(約13,900平方m)だった。

 新モジュールでの生産が始まるのは2011年。立ち上げるプロセス技術は40/45nmで、28nmプロセスへのスケールする。プロセス技術を見る限り、このモジュールも汎用の需要の高いバルクと推定される。40nmと28nmはバルクだからだ。

 新モジュールの追加によって、Fab 1全体での製造能力はラフに計算して年間960,000ウェハになる。いわゆるギガFabのレンジだ。Fab 1は、GLOBALFOUNDRIESにとって最初のギガFabというだけでなく、ヨーロッパで最初のギガFabになるという。AMDがFab 36だけを稼働させていた2008年頃と比べると、ドレスデンだけでキャパシティは2.6倍もの規模に増えることになる。

40/45nmから28mmへスケール

●ニューヨークに建設中の新Fab 8

 AMDは2006年に、米ニューヨーク州に新Fabを建造することをアナウンスした。「AMD Fab 4x」と仮称されたこのFabは、土地は買収したもののAMDの資金難から建設の見通しが立たない状態が続いていた。しかし、Advanced Technology Investment Company (ATIC)の資金を得たGLOBALFOUNDRIESによって、Fab 4xの計画は活性化された。

 GLOBALFOUNDRIESはAMDのFab 4xをGLOBALFOUNDRIESの「Fab 2 Module 1」と改名。GLOBALFOUNDRIESへの移管が終わった2009年7月から建設を開始した。Fab 1と同様に、Fab 2も複数のモジュールを建設できる規模がある。現在は3モジュール分の用地が用意されている。GLOBALFOUNDRIESが2009年から建設を始めたのは、そのうちのModule 1 Phase 1と呼ばれる部分だった。

 ややこしいことに、GLOBALFOUNDRIESは、ATICが買収したChartered Semiconductor Manufacturingと2010年1月に統合。その際に、Fab 2をFab 8へと改名した。これは、CharteredのFab群をFab 2〜7にしたためだ。

 Fab 2あらためFab 8のModule 1 Phase 1は、昨年7月から建設を開始しており、今年(2010年)建物の建造が完了し、ツールの導入に入る。来年(2011年)までにFabが完成し、製造をスタートさせる予定だ。最初の出荷は2012年が予定されている。ちなみに、旧AMD Fab 36のスケジュールを参考にすると建設開始からツールの導入までが1年、ツールの導入から最初のテストシリコンまでが2四半期弱、そこから製品出荷までが1年弱だった。

新しいFabの建設

●Fab 8はフェイズ2の追加をCOMPUTEXで発表

 GLOBALFOUNDRIESは、昨年にFab 8(当時はFab 2)のプランを発表した際に、現在のプランはフェイズ1であり、資金のメドが立てばフェイズ2の建設プランもスタートさせるとしていた。GLOBALFOUNDRIESが今回COMPUTEXで発表した拡張プランは、このフェイズ2だ。Fab 1の新モジュールプランはこれまで発表されていなかったが、Fab 8の拡張プランは従来発表されていたプランを正式にスタートさせたものだ。

 「Fab 8 Module 1 Phase 1」の製造キャパシティは、昨年11月のAMDのカンファレンス「Analyst Day」では、35,000wspmとなっていた。COMPUTEXでの発表の直前にはこの数字は42,000wspmへと増えていた。COMPUTEXでは、最終的にFab 8 Module 1で60,000wspmになると発表された。COMPUTEXで発表された「Fab 8 Module 1 Phase 1」によるキャパシティ拡張は18,000wspmとなる。

 下の図を見るとわかるように、Fab 8(旧Fab 2) Module 1 Phase 2は、Phase 1の建物に追加されて建設される。Fab 1のプランは、明らかに別モジュールを建設するプランだが、Fab 8のプランはクリーンルームの追加だ。Module 1 Phase 1のクリーンルームは210,000平方フィート(19,500平方m)、Module 1 Phase 2は90,000平方フィート(8,360平方m)となる。

Fab8の建設プラン

 Fab 8 Module 1 Phase 2の追加クリーンルームは2013年に稼働し始める。プロセスは22/20nmでランプする予定だ。ニューヨークのGLOBALFOUNDRIESの土地には、同規模のモジュールをあと2棟建造できる余地がある。

 GLOBALFOUNDRIESには、このほかCharteredとの統合で得たシンガポールのFab群がある。その多くは古いプロセス技術のFabだが、300mmウェハのFab 7だけは65nm〜40nmプロセスの先端または準先端Fabへと転換しつつある。