【COMPUTEX 2010レポート】
GLOBALFOUNDRIES、ドレスデンとニューヨークのFabを拡張
~半導体メーカー150社からの需要に対応

会場に展示されたGLOBALFOUNDRIESの28nmプロセスルールで製造されたテストチップ

6月1日 発表



 AMDとアブダビの投資会社ATICにより設立された半導体の委託製造メーカー GLOBALFOUNDRIESは、現在の主力工場であるドイツドレスデンにあるFab1(旧AMDのFab36/38)と、ニューヨークに建設中の Fab8の2つの工場の製造能力を高めるべく、新しい建物を含む施設の拡張を行なうことを明らかにした。

 同社の発表によれば、Fab1では、新しく建物を建設し、クリーンルームを開設する。完成時期は2011年を予定しており、ターゲットとなるプロセスルールは40/45nmで、28nmプロセスルールまで対応できるように設計される。これにより、Fab1の製造能力は、月産80,000ウェハとなる。

 Fab8では、現在建設中の建物を拡張し、新しいクリーンルームを開設する。完成時期は2013年を予定しており、ターゲットとなるプロセスルールは22/20nmとなる。これにより、Fab8の製造能力は、月産60,000ウェハとなる。

●Charteredとの合併により世界最大のファウンダリメーカーの1つに

GLOBALFOUNDRIES CEO ダグラス・グロース氏

 GLOBALFOUNDRIES CEOのダグラス・グロース氏は、発表内容について触れる前に、まずこれまでのGLOBALFOUNDRIESの歩みについて触れた。

 よく知られているように、GLOBALFOUNDRIESはAMDとアブダビの投資会社ATIC(Advanced Technology Investment Company)が出資して作られた、半導体メーカーから委託を受けて製造するファウンダリメーカーで、米国、ドイツ、シンガポールにある工場で半導体を製造し、受託したメーカーに出荷している。

 グロース氏は「2009年はAMDからの移行に時間をかけた。我々はAMDから完全に分離され、独立した企業となった。ATICがCharteredを買収したことで、Charteredとの統合も実現した。2010年は、引き続きCharteredとの統合を推し進め、新しい計画を実行していく時期になる」と述べ、AMDからの分離やCharteredとの合併などによる一連の作業が終了し、新生GLOBALFOUNDRIESとしてスタートしたことをアピールした。

 グロース氏はCharteredとの合併後のGLOBALFOUNDRIESの体制について触れ、「300mmのウェハを製造する工場がドイツドレスデンのFab1、シンガポールのFab7がすでに稼働しており、さらに2012年にはニューヨークのFab8が稼働する。さらに200mmウェハに関してはシンガポールに4つ稼働しており、いずれも顧客の強い要求に応えることができると考えている」と話し、Charteredとの合併により、GLOBALFOUNDRIESが世界最大のファウンダリメーカーの1つになったという認識を明らかにした。

2009年のGLOBALFOUNDRIES、AMDから分離して独立企業となったCharteredと合併し、世界最大のファウンダリメーカーの1つになった
300mmウェハの工場は、ドイツのドレスデン、シンガポールが稼働しており、米国ニューヨークの工場が建設中200mmウェハの工場は旧Charteredがシンガポールに所有していたもの

●顧客の強いニーズに応えるべく、Fab1とFab8の拡張を実施

 グロース氏は「弊社はすでに業界のリーダーとなる半導体メーカーを150社も顧客として迎えている。こうしたメーカーのデマンドは非常に強く、今後そうしたニーズに応えていく必要があると考えており、Fab1とFab8の拡張を行なうことを決定した」と、同社の主力工場であるFab1(ドイツドレスデン)と建設中のFab8(米国ニューヨーク)の2つの製造能力を拡張する計画を明らかにした。

 Fab1は、AMDの主力工場だったFab36とFab38(旧Fab30を改装した工場)の2つの工場の新しい呼び方で、そこのFab1には新しい建物を建設する。現在、Fab1には、Module1と呼ばれる旧AMD-Fab36と、Module2と呼ばれる旧AMD-Fab38の2つの建物が建っているが、ここに新しい建物を追加する。これにより、クリーンルームに利用できる床面積が110,000平方フィート増え、現在のFab1の製造能力が月産50,000ウェハから月産80,000ウェハへと拡張される。完成は2011年の半ばが予定されており、スタート時は40/45nmプロセスルールを利用して製造が行なわれ、将来的には28nmプロセスルールへと進化させる予定となっている。

 Fab8は、旧AMDがニューヨークに建設を計画した新工場で、現在はGLOBALFOUNDRIESが計画を引き継いで建設を進めており、2011年後半に完成予定となっている。このFab8では、現在建設中であるので、新規の建物を作るというよりは、建物自体のサイズをより大きくするという計画変更で拡張する。グロース氏によれば40%程度の敷地面積が拡張され、クリーンルームのサイズが210,000平方フィートから300,000平方フィートに拡張されるという。これにより、製造能力は当初計画より大幅に増え、月産60,000ウェハになるという。なお、完成当初は28nmプロセスルールを利用して生産されるが、できるだけ速く22/20nmへ移行できるように配慮して設計されているのだという。

Fab1の拡張計画。新たな建物が建設され、クリーンルームの床面積が110,000フィート増える。製造能力は月産80,000ウェハまで高める計画Module1(旧AMDのFab36)、Module2(旧AMDのFab38)の2つに加えて新たな建物を建設する、「NEW」と示されているのが新しい建物の建設予定地
Fab8の拡張計画。既存の計画よりも拡張して、クリーンルームの床面積を40%増やす。月産60,000ウェハになる予定オリジナルのFab8の計画Phase2と書かれた部分が今回発表された拡張計画

●ATICがアブダビに研究開発センター開設、将来はGLOBALFOUNDRIESの拠点の1つに

ATIC CEO イブラヒム・アジャミ氏

 GLOBALFOUNDRIESの共同創設者で筆頭株主でもあるATICのCEOであるイブラヒム・アジャミ氏も記者会見に同席し、同社のアブダビにおける先進技術開発センターに関する計画を発表した。

 アブダビ空港のそばに建設される予定の3平方kmの同センターではさまざまな最先端技術の開発、人材の育成などに利用されるという。「これは、明日、アブダビにGLOBALFOUNDRIESの工場を持ってくるということを意味するものではない。我々の長期的な投資計画の一環だ」とし、決して現状のGLOBALFOUNDRIESの工場への投資と競合する計画ではないと強調した。

 アジャミ氏によれば、この投資は現在アブダビ首長国が進める、石油頼みの経済からの脱却を目指す長期戦略の一環で、その中にITへの投資が含まれており、アブダビをGLOBALFOUNDRIESの中東における拠点と位置づけ、長期的な投資を進めていくのだという。アジャミ氏によれば、現時点では具体的な製造施設をアブダビに建設するなどの計画はないということだったが、将来的にはアブダビにそうした施設ができるというのもあり得るということだろう。

アブダビ首長国の石油頼み経済脱却の計画の1つとして半導体ビジネスが考えられいるというアブダビでは半導体ビジネスをやれるような人材の育成を進めているというアブダビ空港隣接地に先進技術開発センターをつくりさまざまな研究開発を行なう

(2010年 6月 1日)

[Reported by 笠原 一輝]