石井英男のデジタル探検隊

「uPrint SE Plus」導入で知った3Dプリンタの夢と現実

〜ものづくり革命で誰もがメーカーになれるというのは本当か

3Dプリンタが急にもてはやされるようになった理由とは

 昨年(2012年)あたりから、TVや新聞などで、盛んに3Dプリンタに関する報道を目にするようになった。3Dプリンタは、その名の通り、通常のプリンタが紙に画像や文字を印刷するように、3Dの物体を造形する装置である。TVなどで3Dプリンタが持てはやされていることもあり、あまりその分野に詳しくない人にとっては、まるでドラえもんの秘密道具のような、何でも作れる夢の装置みたいにも思うかもしれない。だが、3Dプリンタは決して万能装置ではなく、あくまで加工機械の一種である。

 そもそも、製造業においては20年近く前から、3Dプリンタを使って試作品を作るラピッドプロトタイピングという手法が使われており、最近開発された新しい装置というわけではない。それにも関わらず、最近注目が集まっている理由は、これまで工場などで使われてきた3Dプリンタが大型で、価格も数百万円から1億円以上と高価だったのだが、2〜3年前から小型のパーソナル3Dプリンタが登場し、価格も十万円程度からと個人にも手が届く範囲に降りてきたからであろう。

 こうした低価格なパーソナル3Dプリンタは、「パーソナル・ファブリケーション」というムーブメントと密接な関係がある。パーソナル・ファブリケーションとは、MITメディアラボのN・ガーシェンフェルド氏らによって提唱された「コンピュータやネットワークを活用した個人によるものづくり」のことで、3Dプリンティングの技術を駆使することで、自分が欲しいハードウェアを自分で作ろうという試みでもある。その概念に基づき、「RepRap」と呼ばれるオープンソースの3Dプリンタ開発プロジェクトがスタートした。RepRapプロジェクトからいくつかの派生製品が産まれ、キットや完成品などの形で販売されているのだ。

 通常のプリンタにも、インクジェットやレーザー、昇華型など、種々の方式があるように、一口に3Dプリンタといってもさまざまな方式がある。代表的な方式としては、糸状の樹脂を熱で溶かして積層する熱溶解積層方式(FDM)や、樹脂や金属の粉末にレーザーを照射して焼結させる粉末焼結方式(SLS)、紫外線硬化樹脂にレーザーを照射して硬化させる光造形方式(SLA)、石膏粉末を結合剤で固めていく方式などがある。方式によって長所と短所があるので、目的に応じて使い分けるのがベストだが、パーソナル3Dプリンタのほとんどは、機構が比較的単純で低価格化に向く、熱溶解積層方式を採用している。

 RepRapプロジェクトから生まれたパーソナル3Dプリンタとしては、Makerbotの「Replicator」シリーズや、ホットプロシードの「Blade-1」などがある。Replicatorシリーズの最新モデルである「Replicator 2X」は、2つのヘッドを持ち、2色の材料を使った造形やサポート材料の利用も可能だ(サポート材料については後述)。ホットプロシードは、パーソナル3Dプリンタの可能性にいち早く着目し、3年前に3Dプリンタキット「CupCake CNC」の国内販売を開始した。CupCake CNCはキットであり、ユーザーが自分で組み立てる必要があったが、その後継として開発されたBlade-1は組み立て済みの完成品であり、ハードルが下がっている。

Makerbotの3Dプリンタ「Replicator 2X」。価格は2,799ドル。デュアルヘッドで2色造形も可能。最大造形サイズは246×152×155mm(幅×奥行き×高さ)、積層ピッチは0.1〜0.34mmである
ホットプロシードの3Dプリンタ「Blade-1」。価格は136,500円。最大造形サイズは100×100×100mm(同)、積層ピッチは0.2〜0.4mmである

3Dプリンタは3Dデータがなければタダの箱

 3Dプリンタは、確かに大きな可能性を秘めた装置であるが、3Dプリンタを手に入れただけで誰もが“もの”を作れるというのは全くの誤解だ。

 3Dプリンタで造形を行なうには、その物体の詳細な3Dデータが必要になる。3Dプリンタは、あくまで3Dデータに基づいて造形を行なう装置でしかない。「PCはソフトがなければタダの箱」などと言われることがあるが、3Dプリンタも3Dデータがなければタダの箱なのである。

 通常のプリンタは、WordやExcelなどの文書でも、デジカメで撮影した写真でも、Webページの画面キャプチャでも、印刷するためのデータは無数に存在し、そのデータの作成にことさらスキルが必要というわけではない。テキストファイルでもいいし、年賀状などに使えるイラストやテンプレートも多数ネットで公開されているので、それを利用してもいい。通常のプリンタを購入したが、印刷するデータがなくて使えないなどという話は聞いたことがない(もちろん、人によって稼働率は異なり、年賀状印刷にしかプリンタを使っていないという人もいるだろうが)。

 しかし、複雑な3Dデータは、素人が簡単に作れるようなものではない。3Dデータを作るには、大きく分けて2つの方法がある。

 1つは、3D CADソフトや3D CGソフトを使って、3Dの物体をモデリングする方法だ。3D CADソフトは、ドローソフトの発展系である2D CADソフトよりも、操作が複雑で使いこなすのが難しい。3D CGソフトは、粘土細工を作るような感覚で物体をモデリングできるものもあるが、やはり複雑な物体をモデリングするには、かなりのスキルが必要である。どちらも、こうしたソフトを触ったことがない人が、すぐに習熟できるようなものではない。

 もう1つの方法は、3Dスキャナを使い、実際の物体をスキャンして3Dデータを作成する方法だ。3Dスキャナも、以前は数十万円から数百万円以上と高価であったが、最近はKinectなどを活用した低価格な3Dスキャナが登場している。ただ、3Dスキャナを使えば、簡単に3Dデータが作れると思われるかもしれないが、3Dスキャナで作れる3Dデータは、当たり前だが、現実の物体をスキャンして作るので、まだこの世にない形状の3Dデータを得ることはできない。また、実物の形状を正しくスキャンできるかというと、外から見て分からない内部の形状をスキャンすることも不可能だ(おわんのような単純な形状なら上下左右からスキャンすれば可能だが、例えば、首が細くなった花瓶があったとして、その内側の壁に彫刻が施されていたとしても、3Dスキャナでその情報を得ることはほぼ不可能だ)。つまり、3Dスキャナは、人体をスキャンしてその人の精巧なフィギュアを作るとか、現実にある物体の外形をコピーすることは可能だが、3Dデータ作りのごく一部の領域しかカバーできない。

 3Dプリンタの普及に伴い、3Dデータに対する需要が増加することは間違いない。絵や写真などでは、著作権フリーの素材を配布しているサイトがあり、3Dデータについてもこうした動きはある。とはいえ、やはり自分で自由に3Dデータをモデリングできないと、3Dプリンタの真価は発揮できない。3Dモデリングのスキルを持った人材が、さまざまな分野で重用されるようになるだろう。

製造業の現場では以前から使われていた3Dプリンタ

 3Dプリンタは、基本的には外装のプロトタイプ(試作品)を作るための機器だ。低価格なパーソナル3Dプリンタで造形できる物体は、サイズは最大でも十数cm立方程度で、積層面の跡も目立つことがある。造形物の強度も、金型を使った射出成型や鋳造で作られるものに比べると低い。

 業務用のハイエンド3Dプリンタを使えば、もっと大きなサイズでより表面が滑らかな造形が可能になるが、ハイエンド3Dプリンタであろうとも、内部の電子回路や機械部品などを外装と一緒に作ることはできない。このあたりを勘違いしている人もいるようだ。

 PCでも家電でも、外装デザインはもちろん重要だが、中身がなくてはタダのハリボテだ。3Dプリンタという言葉から、見ている間に(数十分とか)、造形できると思っている人もいるようだが、現時点の3Dプリンタは造形にかなりの時間がかかる。サイズによって変わるが、小さいものでも数時間、大きなものになれば20時間や30時間かかることも珍しくない。だから、3Dプリンタで商品を量産するというのはあまり現実的ではないのだ。

 しかし、現在、3Dプリンタが最も活躍している分野がある。それは製造業だ。3Dプリンタの登場以前は、ある製品のボディデザインを決める場合、木などでモックアップを作ったり、試作用の金型を作り、試作品を作ってテストをし、改善点があれば再び試作品を作るというプロセスを経て、実際のボディデザインを決定していた。金型を作るには多大な費用と時間がかかるが、3Dプリンタを使えば、3D CADでモデリングした3Dデータを元に造形ができるので、試作品の製作に必要な費用と時間を大きく節約できる。以前本連載で紹介した、セルシスの人型入力デバイス「QUMARION」も、3Dプリンタで何度もプロトタイプを作って、形状を検討したという。

 つまり、「3Dプリンタが製造業を変えていく!」という認識は、少々遅れていて、しばらく前から製造業の現場では3Dプリンタが活用されているのだ。試作品を作るだけでなく、組み立てを助ける治具作りにも3Dプリンタは使われている。

3Dプリンタ「uPrint SE Plus」導入を手伝う

 筆者は、3Dプリンタには以前から興味を持っていたが、なかなか実際に触る機会がなかった。パーソナル向けの低価格製品が登場したとはいえ、3Dモデリングの経験がない筆者が、気軽に購入できるものとは言いがたいからだ。

 しかし、先日、知人の会社がSTRATASYSの3Dプリンタ「uPrint SE Plus」を導入することになり、その導入を手伝うことができた。STRATASYSは3Dプリンタ専業メーカーで、業務用ハイエンドモデルの「FORTUS」、業務用ミドルレンジモデルの「Dimension」、業務用エントリーモデルの「uPrint」など、各種の3Dプリンタを製造している。日本では、丸紅情報システムズが販売総代理店となり、各製品の販売を行なっている。

 今回、知人の会社が導入を決定したのは、uPrintシリーズの上位モデルであるuPrint SE Plusで、本体価格は268万円である。業務用としてはエントリーモデルでも、パーソナル向けの低価格3Dプリンタに比べると、価格が1桁上になる。造形方式は、最も一般的な熱溶解積層方式であり、線状のABS樹脂を熱で溶かして積層していくものだ。uPrint SE Plusの最大造形サイズは203×203×152mm(同)で、積層ピッチは0.254mmまたは0.33mmである。積層ピッチは、低価格なパーソナル3Dプリンタとそれほど変わらないが、最大造形サイズが大きくなる。

 uPrintシリーズを導入するには、まず丸紅情報システムズで、設置やメンテナンスなどに関するトレーニングを受ける必要がある。知人の会社では3Dモデリングのできる人はいるのだが、丸1日トレーニングを受ける時間がないということで、代わりに私が導入トレーニングを受けて、導入時に立ち会い、セッティングなどの作業を行なうことになった。トレーニングの内容は、uPrintの開梱と設置、初期設定、主なメンテナンス、造形データ作成ソフトのインストールと基本的な使い方、サポート材除去液の取り扱いなど多岐にわたるが、導入ガイドもわかりやすく、専門的な知識のない筆者でも、十分理解できた。

 uPrint SE Plusの本体サイズは、660×670×800mm(同)で、重量は76kgとかなり重い。uPrint SE Plusの搬入は、ワゴン車で行なわれたが、本体が入っている大きな箱以外に、アクセサリ類が入っている箱や、超音波洗浄機が入っている箱などもあり、かなりの大荷物だ。今回は、地下の部屋に設置することもあり、本体は外で梱包を解いてから、本体のみを運び込むことにした。一応、成人男性が2人いれば持てなくはないが、今回は万全を期し、4人で運び入れた。

 uPrint SE Plusの設置自体はそれほど難しくはない。まず、材料スプールが格納されるマテリアルベイを置き、その上にuPrint SE Plus本体を載せる。次に、造形チャンバー内に取り付けられている輸送用保護材を取り外す。それから、マテリアルベイと本体をケーブルで接続したら、導入は完了だ。なお、造形中に停電や瞬電などが起こるのを防ぐために、UPSの利用も推奨されている。

uPrint SE Plusの付属品などの箱。上に積まれている大きな箱には、超音波洗浄機が入っている
uPrint SE Plusの本体が入っている箱。箱のサイズはかなり大きい
アクセサリボックスの中身。モデル材料スプールやサポート材料スプール、LANケーブル、メンテナンス用工具、耐熱手袋などが入っている
材料スプールを格納するマテリアルベイ。マテリアルベイの上にuPrint SE Plus本体を載せて使う
uPrint SE Plus本体は箱が大きく、そのままでは設置場所に運び込むのが難しそうだったので、外で梱包を解いてから、本体を運ぶことにした
uPrint SE Plus本体が入っている青い袋を外しているところ
uPrint SE Plus本体をマテリアルベイの上に載せる。本体は60kgくらいあるので、持ち上げるには最低2人は必要だ
uPrint SE Plus本体の設置が完了したところ。数十万円クラスの低価格3Dプリンタに比べると、かなり大きい
造形チャンバー内に取り付けられている輸送用保護材を取り外す。保護材は発泡スチロールやオレンジ色の樹脂でできている
付属のケーブルで、マテリアルベイと本体を接続する
本体の右にあるのはUPSである。UPSはオプション扱いだが、利用が推奨されている

モデル材料とサポート材料をローディングする

 本体の設置が完了したら、モデル材料とサポート材料をそれぞれのキャリアに入れ、本体にローディングする作業を行なう。uPrint SE Plusでは、モデル材料とそれを支えるためのサポート材料の2種類の材料を使って造形を行なう。パーソナル向けの低価格3Dプリンタでは、サポート材料を使わず、モデル材料だけで造形する製品が多いが、モデル材料だけでは、造形できる形状に制限が出てくる。

 例えば、周囲が少し持ち上がったお皿のような物体を考えてみよう。熱溶解積層方式では、樹脂を加熱して細い線状にしたものを一筆書きの要領で、1面1面描いていくことで、造形を行なう。しかし、皿を横から見ると、そのカーブは大きくオーバーハングしており、下の層と上の層の重なり部分が小さくなるため、上の層を支えることができなくなってしまう。

 しかし、サポート材料が使える製品なら、サポート材料でモデル材料を支えることで、そうした造形状の制約がなくなる。もちろん、サポート材料は完成したら不要なので、指で折り取って捨てたり、どうしてもサポート材料を除去しきれない場合は、強アルカリ性のサポート材除去液と超音波洗浄機を利用して、サポート材料を除去することになる。モデル材料とサポート材料では同じ白色でも色が多少異なり、サポート材料の方が純白に近い。

 材料の本体へのローディングが完了したら、LANケーブルを本体に接続し、ネットワーク関連の設定を行なう。uPrint SE Plusは、LAN経由で造形データを転送するためで、固定IPアドレスの割り当てが推奨されている。

 PCには、付属の造形データ作成用ソフト「CatalystEX」をインストールしておく。3Dプリンタでは、通常STLデータと呼ばれる3Dデータ形式に対応しているが、そのSTLデータから、実際に造形を行なうための造形データを作製してくれるのが、CatalystEXだ。

 CatalystEXでは、サポート材が必要な箇所は自動的にサポート材を使うようになっており、想定造形時間なども表示される。また、スケール機能も備えており、実物のサイズを自由に変更して、造形データを作ることもできる。

 今回は最初に、実物の4分の1サイズの模型を造形し、次に本番のサイズで造形することにした。uPrint SE Plusでの造形は、土台作りから始まる。モデリングベースの上にサポート材で土台が作り出されていき、土台が十分な高さになったら、本番の造形が始まるのだ。4分の1サイズの模型は、問題なく造形できたので、次に実際のサイズでも造形してみた。実際のサイズは、モデリングベースのほぼ全域をカバーするサイズであり、造形完了には10時間以上がかかった。なお、uPrint SE Plusでは、造形が完了したら自動的に電源を落とす機能も用意されているので、金曜日に完成した3Dデータを土日かけて造形したい、といった場合に便利だ。

モデル材料スプールとサポート材料スプールが1巻ずつ付属する
材料スプールを入れるキャリア。ヒンジ部分が赤いのはモデル材料用
こちらはサポート材料スプール。材料ガイドが黒色である
左がモデル材料用キャリア、右がサポート材料用キャリア
マテリアルベイのフタを開けたところ。左がサポート材料用(下に黒字でSと書かれている)、右がモデル材料用(下に赤字でMと書かれている)
マテリアルベイの内部。右奥の穴から、材料が本体にロードされる
マテリアルベイに材料キャリアを差し込み、キャリアが認識されると本体のディスプレイにスプール残量が表示される。ロードと表示されているボタンを押すと、材料がロードされる
LANケーブルを接続し、本体にIPアドレスを割り当てる
材料のロードが完了し、待機中の状態
PCに造形データ作成ソフト「CatalystEX」をインストールし、STLデータから造形データを作成。uPrint SE Plus本体にネットワーク経由で転送する
造形データの転送が完了すると、ディスプレイにデータのファイル名が表示される。造形開始と表示されているボタンを押すことで、造形が開始される
造形をスタートさせると、チップとチャンバー内の加温が始まる
チップ温度とチャンバー内温度が所定の温度まで上昇すると、造形がスタートする。直接、目的の物体を造形するのではなく、まず、モデリングベースの上にサポート材によって土台が造形される
土台が完成したら、その上に目的の物体の造形が開始される
造形中は、ディスプレイに造形完了までの残り時間が表示される
造形が完了すると、ディスプレイに「造形完了」と表示される
造形が完了したところ。テストのため、本来のサイズよりもかなり小さくして造形した
モデリングベースを本体から取り外し、造形品をベースから取り外す。ベースをたわめて、隙間にスクレーパーを差し込めば、簡単に造形品を外せる
モデリングベースの造形した部分には跡が残る。次に造形する場合は、その跡にできるだけ重ならないようにすると、高い精度で造形できる
モデリングベースから取り外した造形品。下に土台となるサポート材が付いているほか、他の部分にもサポート材が付いているので、サポート材を全て取り外す必要がある。サポート材とモデル材では色がやや異なり、サポート材の方が純白に近い色だ。また、右上にヒゲのようなサポート材が延びているが、これも不要な部分だ
サポート材が内側に深く入り込んでいる場合は、サポート材を除去するのに超音波洗浄機とサポート材除去液を利用する必要があるが、単純な形状なら手でサポート材を取り外すことができる
取り外した土台部分。土台なので網目の密度はそれほど高くはない
造形中にパージバケツにゴミが溜まるので、造形が終了する度にゴミを捨てる必要がある
サポート材を全て取り外したところ。データ通り、きちんと造形されている
側面には穴が空いているのだが、こうした加工は3Dプリンタの得意とするところだ
こちらが元データ。今度は原寸で出力してみることにした
CatalystEXでは、物体を輪切りにし、その断面のツールパス(樹脂を積層していく経路)を確認することができる
CatalystEXで、STLデータを造形データに変換すると、必要なモデル材料とサポート材料の量や、造形にかかる時間を知ることができる。この場合だと、モデル材料は約141立方cm、サポート材料は約42立方cm必要であり、造形時間は10時間53分かかる
大きいものを造形させると、数十時間かかることもあるが、造形が完了すると自動的に電源を切るモードも用意されているので、会社などで週末に造形させておく場合に便利だ
ほぼモデリングベース一杯のサイズで造形を行なっているところ。先ほどと同じように、まずはサポート材で土台を造形していく
【動画】サポート材で土台を造形しているところ
【動画】モデル材で物体の造形を行なっているところ。オーバーハングしている部分など必要な箇所にはサポート材も使われる
【動画】サポート材で土台を造形しているところ。スムーズかつ正確な動きに見とれてしまう

今後の3Dプリンタの進化に期待

 3Dプリンタが動いている姿は見ていてもなかなか面白い。時間はかかるが、1層1層積み上げていくことで、着実に完成に近づいていく。動作中の騒音もかなり静かで、あまり気にならない。3Dプリンタは決してここ数年で新たに誕生した機器ではないが、通常のプリンタに比べればはるかにその歴史は短く、まだまだ進化の余地は大きいだろう。既存の方式とは全く異なる方式の登場により、造形速度が1桁以上上がるといった可能性は十分あり得る。ただし、3Dプリンタがすべての家庭に必要かというと、そんなことはないだろう。3Dデータを送ると造形してくれる3D造形サービスを使う方が、3Dプリンタの導入やメンテナンスにかかるコストを考えると、安くすむ場合もある。

 なお、「一般社団法人3Dデータを活用する会・3D-GAN」では、3Dデータの活用に関する相談やモデリング講座、3Dスキャン講座などを定期的に行なっている。3D-GANの事務局は、秋葉原駅と御徒町駅の間の高架下を利用した「2k540」内にあり、各社の3Dプリンタや3Dスキャナも展示されているので、3Dプリンタに興味がある人は、一度問い合わせてみてはいかがだろうか。

(石井 英男)