井上繁樹の最新通信機器事情
コレガ「CG-WGR1200」
~11acとGigabit Ethernetに対応したお手頃価格の速度重視モデル
(2013/8/12 00:00)
コレガの「CG-WGR1200」はIEEE 802.11ac Draft(以下11ac)に対応した無線LANルーターだ。無線接続速度は1Gbpsを超えない867Mbpsだが、有線はGigabit Ethernet(以下GbE)に対応し、お手頃価格で11acならではの速度を体験できるポジションの製品だ。
概要
コレガのCG-WGR1200は11acに対応した無線LANルーターである。2.4GHzと5GHz帯の無線LANに対応し、接続速度は11ac(5GHz帯)使用時最大867Mbps、11n(2.4GHz帯)使用時最大300Mbpsとなっている。内蔵アンテナは2本。SSIDは2.4GHz帯、5GHz帯のものが1つずつ設定済みだが、2.4GHz帯についてはゲーム機など低めのセキュリティ設定で使うことを想定した「セカンドSSID」が用意されている。有線LAN部分はWAN、LANともにGbE対応で、LANポートは4つ搭載している。
11ac対応で1Gbps以上の接続速度を実現している製品と比較すると地味に見えるが、対応機器が少なく11acを活かしきれる状況はまだ先であること、有線LAN部分がしっかりGbEに対応していること、そして1万1千円前後の実勢価格であること、などなどを踏まえると価格とバランスの取れた仕様と言えるかもしれない。
筐体は動作ランプ類のある正面から見ると左右対称だが、横方向から見ると非対称な台形に近い形で、天面が底面と平行ではない。箱と言うよりやや不定形な石碑のような形状で、設置方法は縦置きのみとなっている。大きさは55×160×190mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は350g(本体のみ)。
ACアダプタはコンセントに並べて挿せる細身のコンパクトタイプで、プラグを挿したときにケーブルが横方向に出るため隣と干渉しにくい。最大消費電力は8Wでアイドル時の実測値は4.3W(サンワサプライ「ワットモニター」で測定)だった。
初心者向けの機能として、接続した回線を自動判別して設定を自動で行なう「つながるポートスイッチ」を搭載している。また、接続設定を画面で指示してくれるCD-ROM(Windows用)を同梱している。
紙のマニュアル類は導入手順をまとめた「らくらく導入ガイド」、使用方法を一通り解説した「お使いの手引き」、さらに「ニンテンドーDS・Wiiを接続する」を加えたの3種を同梱しているが、いずれも公式サイトからPDF形式のものをダウンロードできる。より詳しい内容のものについては「詳細設定ガイド」があり、こちらはダウンロード版(PDF形式)のみとなっている。
管理画面と搭載機能
管理画面はエクスプローラー風なツリー状メニューを左サイドバーとして配置した見通しの良いものになっている。メニューの展開は高速で待たされることはない。トップバーにはSSIDや無線LANの暗号化設定の表示に加えインターネットの接続状態の表示がある。面白いのは動作状態を示すLEDランプをオン/オフするスイッチがあること。節電のためのものだが、階層メニューをたどることなく、管理画面を開いたら即電源オン/オフできるのは分かりやすくていいのかもしれない。なお、節電機能のオン/オフは1週間単位でスケジュール設定できる。
搭載している機能は無線及び有線LAN接続のためのもの以外では、ダイナミックDNS、パススルー、バーチャルサーバー(ポートフォワーディング)、DMZなどサーバー設置に便利な機能と、パケットフィルタやMACアドレスフィルタなどのセキュリティ系の機能など、いわゆるブロードバンドルーターが搭載している機能は網羅している。対応しているダイナミックDNSサービスは「Dyn」、「IvyNetwork」、「@Net DDNS」(J:COM)の3種類。
他メーカーであまり見かけない機能としては、WANから管理画面にアクセスする際に使用するポートを変更する機能(「管理」-「リモート」)や、管理画面を開くときに使える(LAN内でのみ有効な)ドメイン名を変更できる機能(「LAN側設定」-「ルータIP」)などが挙げられる。後者については自分で自由にドメインを選ぶ機会はそうそうないものなので、「遊べる」機能として楽しめるかもしれない。
なお、11acや11nを使う場合についての注意だが、どちらも利用する帯域幅を増やす操作に加えて、「ショートガードインターバル」を使う設定(「自動」)にする必要がある。ショートガードインターバルは無線ならではの事情として、特に通信距離が長い場合など経路が複数できて起きる受信ミスを減らすための機能だ。
ベンチマーク
ベンチマーク測定には、測定用のソフトを動かすクライアント側PC(Core i5-3210M、メモリ8GB、SSD)と、測定のためにファイルを送受信する先であるサーバー側PC(Core i3-2120、メモリ8GB、SSD)の2台を使用した。サーバー側はCG-WGR1200に直接有線LANケーブルで繋ぎ、クライアント側は無線LANと有線LANを切り替えた。無線LAN子機はエレコムの「WDC-867U3」をクライアント側PCのUSB 3.0ポートに接続した。
行なった測定は2種類。1つがサーバーの共有ドライブをクライアントのネットワークドライブとして登録してそのドライブの速度を「CrystalDiskMark」で測定するもので、OSはクライアント、サーバー共にWindows 8 Proだ。もう1つが、サーバー側で稼働しているFTPサーバーを使ってファイルの転送速度を測定するもので、OSはクライアントがWindows 8 Pro、サーバーがUbuntu 13.04、FTPサーバーは「vsftpd」を使用した。測定環境は鉄筋コンクリートのマンションの1室で距離は5m以内。
CrystalDiskMarkによる速度の測定結果は以下の表1の通り。いずれもRAMDISKを使用した場合の測定結果で、11acはリード302.3Mbps、ライト326.8Mbpsとどちらも300Mbpsを超えた。11nについては倍速モードを使わない場合を測定したのだが、こちらはリード86.2Mbps、ライト85.4Mbpsだった。有線LANはリード735.4Mbps、ライト914.2Mbpsだった。
接続規格 | 11ac | 11n | 1000BASE |
---|---|---|---|
接続速度 | 876 | 130 | 1Gbps |
リード | 302.3 | 86.2 | 735.4 |
ライト | 326.8 | 85.4 | 914.2 |
FTPによる速度の測定結果は以下の表の通り。11ac使用時と有線LAN接続時について測定した。サーバー、クライアント共にRAMDISKを使った場合に加え、参考までにサーバー、クライアント共SSDを使った場合についても測定している。11acはリード約254~312Mbps、ライト約358~419Mbpsで、1Gbps有線はリード約621~866Mbps、ライト約847~852Mbpsだった。
test1 | test2 | test3 | test4 | test5 | |
---|---|---|---|---|---|
リード(get) | 288.9 | 314.8 | 231.4 | 315.9 | 287.1 |
ライト(put) | 383.1 | 404.8 | 403.2 | 402.9 | 402.5 |
test1 | test2 | test3 | test4 | test5 | |
---|---|---|---|---|---|
リード(get) | 290.1 | 312.0 | 254.0 | 306.3 | 249.4 |
ライト(put) | 371.0 | 418.8 | 400.2 | 358.3 | 367.5 |
test1 | test2 | test3 | test4 | test5 | |
---|---|---|---|---|---|
リード(get) | 691.5 | 629.1 | 865.9 | 853.0 | 620.9 |
ライト(put) | 847.1 | 849.6 | 852.2 | 852.2 | 850.5 |
test1 | test2 | test3 | test4 | test5 | |
---|---|---|---|---|---|
リード(get) | 862.4 | 876.5 | 555.1 | 611.2 | 851.3 |
ライト(put) | 933.7 | 940.9 | 939.9 | 955.6 | 885.6 |
2種類の速度測定結果を総合してみると、11acはリードは300Mbps前後まで、ライトは400Mbps前後まで出ている。1Gbps有線LAN並とはいかないが、少し古いPCでGbE使用した場合の実効速度並みである。
まとめと感想
CG-WGR1200の11ac接続機能は接続速度が1Gbpsを超えるトップクラスの製品ほど高速ではないが、11nからの乗り換えであれば大幅な高速化が望めるだけの数字は出ている。数字的には少し古いPCで1Gbps有線を使用した場合の実効速度に近いので、100Mbpsの有線LANを使ってきたユーザーはもちろん、1Gbpsの有線LANを使ってきたユーザーが乗り換え候補に入れてもおかしくないポジションの製品だと言える。
無線LANルーターとしての機能は以前からルーター類には搭載されてきたお約束の機能を漏れなく網羅しているので、サーバーを設置して使うなど少し凝った使い方をしてきたユーザーにもマッチする。ただし、外部ストレージを接続して使うNAS系の機能はないので、それらの機能を必要とするユーザーはほかの選択肢を探す必要がある。
最後となったが、少し気になったのは縦置き対応のみながら、本体が軽量軽量なので比較的倒れやすいこと。設置の際は倒れて排気口を塞いだりしないようにケーブル処理など工夫しておくのがおすすめだ。