井上繁樹の最新通信機器事情

オンラインストレージでバックアップ
〜OSのアップグレード時やPC乗り換え時にも便利なサービス



SkyDrive



 Windows 8の発売が近づいてきた。OSのアップグレードや、PCの乗り換えを検討している人は少なくないと思うが、そんな時必要になるのが大切なファイルの一時保管場所だ。容量大きめの外付けHDDで対処するのが手っ取り早いが、今後の利便性も考慮して、オンラインストレージの同期機能を使ってみるというのはどうだろうか。

●オンラインストレージと同期機能

 ユーザー登録を含めWebブラウザだけで使えてしまうので気付いていない人もいるかもしれないが、多くのオンラインストレージではPC用のアプリを提供している。PC用アプリを使うと、Webブラウザを使わずローカルでファイルを操作する感覚でオンライン側とファイルのやり取りができる。また、Webブラウザには無い機能を搭載していたり、より容量の大きなファイルが扱えることもある。

サービス名 容量(無料分) 最大容量(有料分) ファイルサイズ制限
Googleドライブ 5GB 16TB 10GB
SkyDrive 7GB 107GB 300MB
Dropbox 2GB(*) 制限なし アカウントの容量上限
(*) 友人にサービスを紹介する等の作業をこなせば無料のまま容量拡張が可能

GoogleドライブのWeb UI。タイムライン的ファイルリストが特徴的。フォルダ管理も可能だ。ドラッグ&ドロップ対応 SkyDriveのWeb UI。Windows 8で導入されるUIと共通のデザイン。ドラッグ&ドロップ対応 DropboxのWeb UI。デフォルトで作成されるフォルダは中身を示すアイコン付き。ドラッグ&ドロップ対応
SkyDriveにデフォルトで作成されるフォルダは、名称は違うものもあるがWindowsでもデフォルトで作成される4種類と公開フォルダの計5つ Dropboxでデフォルトで作成されるフォルダは「Photos」と「Public」の2つ。各フォルダには使い方を解説したPDFファイルも入っている

 PC用アプリの中核となる機能が同期機能だ。同期機能はオンラインストレージとローカルの両方に同じフォルダ構成でファイルを置き、どちらか片方で変更があればもう一方に自動で変更を反映する。時間差はあるものの双方が常に同じ内容になるので、自動バックアップ機能と言えなくもないが、過去の変更履歴を保持するサービスでないと、誤って変更した場合元に戻せない点に注意したい。この同期機能によって「ローカルでファイル操作する感覚」を実現している。

 オンラインストレージのフォルダ構成は、SkyDriveのようにWindowsのユーザーフォルダ構成と近いサービスもあり、設定を変更して両者を同期させることも可能だ。ただし、オンラインストレージ側に置きたくないファイルがある場合や、複数のオンラインストレージを使いわけたい場合など、さまざまな状況における使い勝手を考えると、ローカルのファイルをまるごとオンラインと同期させるのは逆に面倒かもしれない。

●オンラインストレージの履歴とゴミ箱

 オンラインストレージをバックアップ用途で使う場合に特に便利なのが履歴保存機能だ。ファイルが変更される度に内容を保存するので、誤って変更してしまった場合でも元に戻せる。DropboxやSugarSyncではファイルの種類にかかわらずファイルの変更履歴を保存している。誤って削除しても一旦「ゴミ箱」フォルダに保存されるので安心だ。

Dropboxでは右クリックメニューに「以前のバージョン」にアクセスするための項目がある 以前のバージョンのファイルを表示できるほか、復元も可能だ
SkyDriveはWindows Web Appで編集したファイルの履歴を保存している。保存するタイミングはファイルを閉じた時 GoogleドライブはGoogleドキュメントのファイルの詳細な変更履歴を保存している

 また、GoogleドライブやSkyDriveのように、Webベースのオフィスアプリや特定のアプリで編集したファイルのみ、変更履歴を保存しているものもある。それ以外のファイルは変更履歴は保存されないが、削除されてしまってもゴミ箱フォルダに保存されるので、ファイルを完全に無くしてしまう可能性は低い。

●オンラインストレージの同期速度
DropboxのPC用アプリには転送速度を制限する機能がある。速いにこしたことは無いが、他の機能との兼ね合いで調節した方がいい場合もある

 オンラインストレージの弱点はローカルのストレージより遅いことだ。オンラインストレージのPC用アプリは、同期機能によりローカル側にもオンライン側のファイルのコピーを保存しておくことで、(見かけ上)ローカルと変わらない速度(レスポンス)でファイルを操作できるようにしてくれる。つまり、PC用アプリはオンラインストレージの弱点もカバーしてくれるものでもある。

 Webブラウザでオンラインストレージを使っていると、ファイルの転送に待たされることがあるが、PC用アプリを使っている場合はそんな面倒は無い。アプリがいつの間にか自動でオンライン側にファイルをコピーしておいてくれるので、極端な話速度の遅さが問題になることはない。とは言え、共有機能を使って他のユーザーとファイルの受け渡しをする時など、速度の遅さが問題になる場面もある。

サービス名 100MBの転送にかかった時間 転送速度(KB/sec)
Googleドライブ 2分47秒 613
SkyDrive 5分4秒 337
Dropbox 3分49秒 447

●PC以外の機器との同期

 オンラインストレージではPC用のアプリと同等かそれ以上にスマートフォンやタブレット端末向けのアプリが広く提供されている。だからオンラインストレージに保存したファイルはその日から、PCでも携帯端末でも、家でも出先でもアクセスできるようになる。中には携帯端末で撮影した写真画像をオンラインストレージに自動でアップロードできるアプリもある。

iOSやアンドロイドに対応したアプリも今では定番になりつつある。ただし、ファイルの閲覧は可能でも編集まで完全にできるものはまだ登場していない GoogleドライブのiOS向けアプリ。起動するとGoogleドライブではお馴染みフォルダリストが表示される SkyDriveのiOS向けアプリ。起動するとルートフォルダが表示される
DropboxのiOS向けアプリ。よく使うファイルを素早く呼び出せるお気に入り表示機能がある DropboxのiOS向けアプリにはカメラで撮影したファイルをオンライン側のアップロードする機能も

 携帯端末向けのアプリでは、ファイルのダウンロードや閲覧はもちろんのこと、一部のファイル形式に限られるが、Googleドキュメントのように文書ファイルや表計算ファイルを直接編集できるものもある。携帯端末向けのアプリの多くでは、音声ファイルの再生もできるので、接続環境さえ整えば出先で自宅の音楽ファイルの再生も可能だ。

 なお、携帯端末向けのアプリでは、オンラインストレージのファイルを全てコピーするのではなく、必要なファイルだけキャッシュという形でコピーしているものがある。空き容量を確保するためにキャッシュを削除できるアプリもあるので、あらかじめ設定画面などで調べておくと、いざという時に役に立つはずだ。

●同期以外のオンラインストレージの強力な機能

 同期以外の機能で、おそらく最も便利な機能を使えるのがSkyDriveだ。SkyDriveはPC用のアプリをインストールすると、インストールしたPCの全フォルダにSkyDrive経由でアクセスできる。あらかじめPCの電源をオンにしてインターネットに接続しておく必要はあるが、SkyDriveに肝心のファイルをコピーし忘れるということも実質無くなるのかもしれない。

SkyDriveのリモート接続機能を使うには設定タブの全般にある「このPCにあるファイルに別のデバイスからアクセスする」にチェックしておく(デフォルト) リモート接続のために必要なセキュリティコードを1回1度入力しておけば、以降特に手続きもなく左ペインのメニューからアクセスできるようになる Windows 8のUIでの表示になるが、ドライブルートやネットワークドライブにもエクスプローラー感覚でアクセスできる

 SkyDriveのリモート接続機能と同じことをするには、従来はVPN環境の構築や専用ソフトのインストールが必要だった。SkyDriveでもPC用のアプリは必要だが、そのためのアプリがOSメーカーから出されているということで、心理的ハードルが下がったはずだ。また、SkyDriveとPCの紐付けは自動発行されるセキュリティコードを1つ1回入力するだけなのでとても簡単だ。この便利さと簡単さはちょっと卑怯なくらいだ。

 また、リモート接続機能を使う場合、SkyDriveは自宅や会社にあるPCのストレージ領域も使えるわけで、テラバイト単位のローカル用ストレージが珍しくない昨今、容量面でも非常に強力なサービスだと言える。

 SkyDriveのやり方とは違うが、同じく容量面でも強力なサービスを提供してきたのがGoogleドライブだ。Googleドライブでは、Googleが提供するGoogleドキュメント形式のファイルや、縦横どちらか長い方が2,048ドット以下の画像ファイルの使用容量をカウントしない。使い方によっては容量無制限で使えるわけで、Web上で全て編集できて、全部保存しておけるなら、そもそもリモートアクセス機能自体不要だとも言える。

●まとめと感想

 オンラインストレージ自体は新しいサービスではないが、最初からオンラインストレージを使うことを想定したOSが発売されるようになったのは最近のことだ。Windowsに関して言えばWindows 8が初ということになるのだろう。オンラインストレージについて言えば、IDやパスワードが漏洩したら……、最悪ファイルが流出してしまったら……等々まだまだ不安に思う人も多いとは思うが、今後そうした不安要因も解消されていくと思われる。

 オンラインストレージを安全に使う方法としては、IDとパスワードをしっかり管理することと、ファイルを1カ所にまとめず、複数のアカウントやサービスに分割することなどが挙げられる。見られて困るようなデータは外部記憶媒体に書きだして、オンラインストレージ上からもPC上からも削除してしまうのが確実だ。BitLockerのようなデータの暗号化機能を使うのもいいだろう。

 容量についてはまずまずのサービスが登場し、速度についても同期ソフトを使えばローカルと(みかけ上)遜色無い上、無料でも使えるバックアップにもなるわけで、インターネットに接続しているなら使わない手はない。PC以外に複数の端末を使う場合、データの中継保存場所としても便利だ。おそらくWindows 8の次の世代のOSでも使われることになるだろうから、今のうちから慣れておくつもりで使い始めるというのでもいいだろう。

 本文では主にDropbox、Googleドライブ、SkyDriveについて紹介したが、他にも魅力的なサービス(SugarSyncboxAmazon Cloud Drive、etc.)があるので機会があればチェックすることをおすすめしたい。

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(2012年 10月 2日)

[Text by 井上 繁樹]