井上繁樹の最新通信機器事情

バッファロー「WZR-450HP」
~スマホで設定ができる2.4GHz帯対応無線LANルーター



「WZR-450HP」

発売中
価格:13,600円



 バッファロー「WZR-450HP」は6月末発売の無線LANルーターだ。無線LANの接続速度が最大450Mbpsという今時の高速多機能モデルで、PCが無くてもスマートフォンやタブレット端末で初期設定ができる「AOSS2」と呼ばれる機能を搭載した国内で初の製品でもある。

●概要

 WZR-450HPはIEEE 802.11b/g/n対応の無線LANルーター。対応する周波数帯は2.4GHz帯のみで、5GHz帯には対応していない。電波出力を強化しているいわゆる「ハイパワー」モデル。有線LANは1Gbps対応で、LAN側が4ポート、WAN側が1ポートある。

同梱物一覧。本体(AOSS2セットアップカード貼付済)、アンテナ、スタンド、スタンド固定用のビス×2、LANケーブル(2m)、ACアダプタ、注意書きシール、マニュアル(詳細なものはWebで提供)正面にはAOSSボタンとMOVIE ENGINEスイッチ、ランプ類が縦に並ぶ。右側面にはロゴや、スイッチ類とボタン名称がプリントされている背面。上から、モード切替スイッチ、USB EJECTボタン、USB 2.0ポート×1、有線LANポート×4、WANポート、ACコネクタ
本体左側面。初期設定のIPアドレスやユーザーID、パスワード、SSID、暗号化キー、MACアドレスなどをプリントしたシールが貼られている左側面にはスタンドを固定できる穴がある。壁掛け時や横置き時に利用可能だ。壁掛け時にはスタンドをビスで固定する底面。排気口とRESETスイッチがある。スタンドを装着できる
底面にスタンドを装着した状態。中央左右に並ぶ2つの穴にビスを通す。スタンド装着時もRESETスイッチは隠れないようになっている(ただし、装着する向きを反対にすると隠れてしまう)天面。アンテナを装着するコネクタが3つある左下側の丸いのがアンテナ側のコネクタ。ねじ込んで固定する
アンテナを3本すべて装着した状態。本体よりもアンテナの方が3cm弱長いアンテナはほぼ無段階で最大90度曲がる。かっちり固定されるのは0/45/90度アンテナの角度設定例。各アンテナは自由に水平回転できる
アンテナの向きや角度の自由度は高いので写真のようにクロスさせることもできるアンテナを3本全て90度に曲げれば横置き時でも使いやすい

 本体背面にUSB 2.0のポートを1つ搭載しており、USB接続のストレージをつなげばNASとして利用できるほか、プリントサーバーとしても利用できる。また、USB接続のデータ通信カードに対応しており、有線接続のネットワーク接続環境が無い場合でも利用できる。

 ボタン操作で無線LANの接続設定ができるAOSSやWPSに加え、AOSS2と呼ばれる機能を搭載しており、無線LAN接続だけでなく、インターネット接続についても簡単な操作で設定できるようになった。AOSS2はスマートフォンやタブレット端末にも対応しているので手元にPCが無くても基本機能の利用には困らない。

 VPN(PPTP)サーバーを搭載しているので、インターネット経由で出先からLANに接続できる。また、ダイナミックDNSサービス(有料)を使えば固定アドレスではない環境でも、いつでも同じURLでアクセス可能だ。

●AOSS2

 バッファローが以前から提供してきたAOSSはWi-Fiの接続設定を簡単なボタン操作だけでできるようにしたものだ。AOSS2ではさらにプロバイダとの接続設定ができる。ボタン操作(もしくはタップ操作)だけでなく、AOSS2キーと呼ばれる3桁の数字の入力が必須になったが、暗号化キーよりは短く入力もしやすい。

iOS端末を使ったAOSS2使用例。最初に本体のAOSSボタンを押した後、名前が「!AOSS-」で始まるSSIDに接続するブラウザで適当なサイトを開くとAOSS2キー(3桁の数字)の入力画面にリダイレクトされる。キーの入力には画面下にスクロールすると見えるキーパッドを使うAOSS2キーを入力すると確認画面が開くので「続ける」をクリック。環境によってはここでプロバイダ情報の入力画面が開く
Wi-Fiプロファイルのインストール画面が開くので「インストール」ボタンを押して続行。AOSS2の設定は以上で終わりAOSS2の設定完了後ホーム画面にWZR-450HPのアイコンが追加されている。このアイコンはマニュアルがダウンロードできるサイトを開くためのショートカットアイコンをタップしてサイトを開いたところ。WZR-450HPのすべてのマニュアル類がリストアップされダウンロードできる状態になっている
Android端末もAOSS2に対応しているが、手持ちの端末がAOSS2に対応していない場合はAOSSアプリを使えばよいAOSSアプリのボタンを押した後はWZR-450HP本体のAOSSボタンを押す2つのボタンを押した後は接続設定が完了するまで待つだけでよい
PCでAOSS2を使う場合も、本体のAOSSボタンを押す→名前が「!AOSS-」で始まるSSIDに接続→適当なアドレスでブラウザを開く、AOSS2キーを入力、という流れは同じ画面の指示通り「aoss2.exe」をダウンロードする「aoss2.exe」を起動すると後は自動的に接続設定を行なってくれる。接続完了後マニュアルのあるサイトへのショートカットをデスクトップに作成する

 AOSS2が利用できるのはPC、Mac、iOS端末、およびAndroid端末だ。ゲーム機ではAOSS2は利用できないが、従来から提供されてきたAOSSが削除されたわけではない。従来通りAOSSを使って無線LANの接続設定が可能だ。

 AOSS2ではiOS版は専用サイトで、Android版とPC版は専用サイトとアプリを使って無線LANの接続設定を行なう。プロバイダへの接続設定についてだが、上位の(インターネット側の)モデムや回線終端装置で設定済みの場合、AOSS2では接続設定を行わない。あえて、WZR-450HP側でプロバイダへの接続設定を行なう場合は、あらかじめ上位側のモデムや回線終端装置の設定画面で「PPPoEブリッジ」または「PPPoEパススルー」を有効にする必要がある。

●ベンチマーク結果

 ネットワークの速度の測定には「CrystalDiskMark 3.0.1」を使用した。CrystalDiskMarkはローカルのHDDの速度を測定するソフトだが、LAN内の別のPCの共有フォルダをネットワークドライブとして登録して、そのネットワークドライブの速度を測定すれば、LAN内のファイルの転送速度がわかる。

 測定に使用したPCはWindows 7が2台(Core i3 + SSD、Pentium G620T + HDD)とUbuntu 12.04(Atom 2700 + HDD)が1台。2台あるWindows 7のうち1台を測定用マシンとし、残りの2台の共有フォルダをネットワークドライブとして登録して、その速度を測定した。無線LANの速度を測定する場合は測定用マシンにUSB接続の無線LAN子機(バッファロー「WLI-UC-G450」)を接続して使用した。

 テスト環境は近隣にIEEE 802.11b/g/nユーザーの多いワンルームマンションの1室。通知領域のネットワークアイコンからリストを開いて確認したところ、2.4GHz帯ユーザーは常に5件以上確認できた。無線LANのセキュリティ機能はWPA2-PSKを使用した。

 結果は以下の表の通りで、2.4GHz帯の無線LAN倍速モード(450Mbps上限)が91~182Mbps、1000BASE-Tの有線LANが456~910Mbpsだった。無線LANについては上限が伸びないもののほとんどの場合で140Mbps以上出ており、インターネットは快適に利用できる。有線LANについてはハードウェア次第だが910Mbps以上出ているので、十分に速い部類だと言える。

【表1】ルーターモード、非PPPoE接続時ベンチマーク結果(Mbps)
接続先2.4GHz(450Mbps)1000BASE-T
READWRITEREADWRITE
NTFS146.8162.8818.1868.7
Ext4(samba)91.5153.3471.5489.4
Ext4(ftp)148.1162.1910.3496.8

11n(450Mbps)のベンチマーク結果(ルーターモード、非PPPoE接続時)

【表2】ルーターモード、PPPoE接続時ベンチマーク結果(Mbps)
接続先2.4GHz(450Mbps)1000BASE-T
READWRITEREADWRITE
NTFS161.8172.7832.7853.6
Ext4(samba)122.4158.9511.4799.5
Ext4(ftp)175.2182.8536.0456.3

11n(450Mbps)のベンチマーク結果(ルーターモード、PPPoE接続時)

●NAS機能とベンチマーク結果

 WZR-450HPは背面にあるUSB 2.0ポートにストレージを接続するとLAN内のPCからアクセスできるNASとしても機能する。対応するファイルシステムはFAT32とXFSの2種類。フォーマット機能も搭載しているので、使用前にあらかじめフォーマットしておく必要は無い。初期設定では、フォーマット済みのUSBストレージを接続すれば、特に設定を変更しなくても即NASとして使える状態になっている。

「NAS」の「ディスク管理」タブ。接続しているUSBストレージの状態や設定を表示する。PCを使わなくてもFAT32かXFS形式でフォーマットできるアクセス制限の設定例。デフォルトでは全員ファイルの書き換えができてしまうので、誤ってファイルを消したりしないように、guestは読み込みのみに設定している
Webアクセス機能の使用例。インターネット経由で出先からファイル操作ができる。BaffaloNas.comを使うとアドレスが固定になる分使いやすくなるBitTorrentの使用例。なお、BitTorrentを使用する際は接続しているUSBストレージをXFS形式でフォーマットしておく必要がある

 NAS機能はユーザー単位でアクセス制限ができる。NASに保存した動画、音声、画像ファイルは搭載されている「メディアサーバー」を通じてLAN内のDLNAクライアントで視聴できる。また、「Webアクセス機能」を使うと、インターネット経由で外部からNASに保存した内容にアクセスできる。

 日本国内では使う機会はあまり無いが、P2Pでファイルの配信と受信ができるBitTorrentに対応しており、時間がかかりがちなファイルのダウンロード作業をPCの代わりに任せることができる。BitTorrentは海外ではファイル配信の手段としてメーカー自ら使うケースがあり、特にユーザーが殺到して配布サイトがダウンしかかっているような状況で威力を発揮する。

 NAS機能を使った際のベンチマーク結果は以下の表の通り。無線LANの倍速モード(450Mbps)では読み込みが50Mbps前後で書き込みが33Mbps前後だった。1Gbps有線LANではXFSを形式を使用した場合の書き込み速度が80Mbps台だった以外はすべて100Mbps以上出ていた。

【表3】USB 2.0 HDD接続時ベンチマーク結果(Mbps)
接続先2.4GHz(450Mbps)1000BASE-T
READWRITEREADWRITE
FAT51.733.4110.1101.0
XFS51.434.1107.784.7

●PPTPサーバー、セキュリティ、節電機能

 WZR-450HPはVPN(PPTP)サーバーを搭載しており、サーバーを別途用意しなくても、インターネット経由で出先からLANにアクセスできる。ダイナミックDNSサービスに対応しているので、固定IPアドレスではない環境でも、固定のドメイン名でアクセスできるよう設定できる。対応しているダイナミックDNSサービスは「DynDNS」、「バッファローDNS」、「TZO」の3種類だ。

出先からVPNで自宅LANにつなぎ、さらにリモートデスクトップを使って自宅LAN内のPCを操作しているところ。VPNを遮断しているサービスもあるので利用前には確認を節電スケジュールの設定例。すべてオフにしてしまう「スリープ」モードからの一時復帰はAOSSボタンを3秒以上押せばできる

 セキュリティ系の機能はパケットフィルタの「IPフィルター」、MACアドレスフィルタ(AOSSを使用しない場合のみ)、有害サイトフィルタ「i-フィルター」(有料、外部サービス)など。他にも来客者向けに無線LAN経由でインターネット接続のみを提供する「ゲストポート」と呼ばれる機能を搭載している。節電機能は週単位でスケジュールを設定するもので30分単位でモードを切り替えることができる。USBディスクの節電設定は管理画面の「NAS」の項目にある「ディスク管理」タブで設定する。

●まとめと感想

 WZR-HP-450はAOSS2に対応した初のモデルだ。AOSS2は従来からあるAOSSとは異なるものになったが、以前は無かったスマートフォンやタブレット端末もサポートし多くの環境でほぼ同じ感覚で簡単に使えるように注意が払われている。解説文豊富な管理画面も含め、バッファローは伝統的に使い勝手の向上に特に注力しているように見えるが、今後もこの面での努力を続けて欲しいと思う。

 速度については無線LANでは200Mbpsを越えることはなかったが、テストした環境ではほとんどの場面で140Mbps以上出ており、インターネットに利用については速度不足を感じることはないだろう。また、有線についてはFTPの速度になるが910Mbps以上出ており、LAN内でのファイルの大移動の際などに威力を発揮してくれるはずだ。

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(2012年 7月 4日)

[Text by 井上 繁樹]