井上繁樹の最新通信機器事情

ロジテック「LAN-W300N/IGRB」
~スマートフォンサイズのGbE対応無線LANルーター



発売中
価格:6,000~7,000円前後



 今月発売されたロジテック「LAN-W300N/IGRB」はスマートフォンサイズのコンパクトな無線LANルーターだ。11n倍速モードに対応し1Gbps対応の有線LANポートを4つ搭載するなど機能面では据え置きタイプの無線LANルーターと同等ながら持ち歩きに適したサイズなのが特長だ。

●11n倍速対応、1Gbps有線LANポート搭載でスマートフォンサイズ

 ロジテック「LAN-W300N/IGRB」はIEEE 802.11b/g/nに対応した無線LANルーターだ。内蔵アンテナは2本で対応周波数帯は2.4GHz、SSIDは2つまで同時利用できる。無線LAN部分は11nの倍速モードに対応しており理論上の速度上限は300Mbps。有線LAN部分は1Gbps対応でWANポートも含め5ポート搭載している。WPSに対応しているのでボタン操作で接続設定が可能だ。

同梱物一覧。本体、電源ケーブル、LANケーブル、初期SSID及び暗号化キーが印刷されたシール、注意書きシール、インストールディスク(8cm CD-ROM)、説明書類×6本体正面本体天面。正面のランプと背面の端子の名称の刻印がある
本体背面。左から1Gbps対応のLANポート×4、WANポート、電源端子本体底面。ROUTER/AP切り替えスイッチ、RESET/WPS兼用ボタン、暗号化キーとMACアドレスがプリントされたシール、型番とシリアル番号がプリントされたシール
正面から見て右側面(左側面は対称)。縦置きスタンドを付けた時にはまる溝がある縦置きスタンドを付けた状態

 本体サイズは128×70×14.8mm(幅×奥行き×高さ)で本体重量は83g。手に持った感覚は非常に軽量なスマートフォンだ。1Gbps対応の有線LANポートを4ポート搭載しながらこれだけ小さい製品は珍しい。ACアダプタモデルの「LAN-W300N/PGRB」はさらに小さく、本体サイズは128×70×14.8mm(幅×奥行き×高さ)で重量は63.5g。同梱しているケーブルは470mmのLANケーブルと1.02mの電源ケーブルが1本ずつ。

 定格消費電力は5W。ワットチェッカーで計測したところ、無線LANと有線LANでそれぞれ1台ずつPCをつないだ状態で4Wだった。

 同梱している紙のマニュアルは接続方法を中心に解説した簡易的な内容のものだが、WindowsやMacはもちろん、iPhoneやAndroidなどスマートフォンやタブレット端末、DSやWii、PSP、PS3などゲーム機まで網羅している。より詳細なマニュアルは同梱のCD-ROMに収録されている他公式サイトで公開されている。

●SSIDは2つ、本体IPアドレスはアクセスポイントモードでも固定

 まずは無線LAN部分について。LAN-W300Nは2つのSSIDが使える状態で出荷されている。SSIDに設定されている暗号化方式は、1つはWPA2でもう1つはWEP(128bit)。WEPを使うように設定されているSSIDはLAN内へのアクセスを制限できるので、客人用として、あるいはセキュリティ機能の低いゲーム機用として使うのに適している。チャンネル幅についてだが、出荷時は「20MHz」に設定されているので、11nの倍速モードを使うためには「40MHz」に変更する必要がある。

「無線設定」の「基本設定」。「無線設定」のモードは本機ではAP(アクセスポイント)のみ(変更不可)。データレート(通信速度)の制限ができる「有線設定」の「WAN設定」。PPPoEはもちろんマルチPPPoEにも対応している(最大2つまで)
「無線設定」の「基本設定」にある「マルチSSID設定」。LAN内にはアクセスできないように設定できるAP(アクセスポイント)モード時の管理画面。ルーターモード時同様最初に開かれるのはステータス画面

 次に有線LAN部分について。LAN-W300Nは出荷時の設定ではルーターモードになっており、ISPとの接続設定済みの終端装置やモデム(あるいはそれらの機能を搭載したルーター)とつないで使う場合は設定の変更は不要だ。

 少々変わっているのがLAN内での本体のIPアドレスの扱いで、ルーターモードでもアクセスポイントモードでもあらかじめ設定された同じIPアドレスを固定で使う。アクセスポイント(ブリッジ)モードではDHCPサーバーからIPアドレスを自動取得するルーター製品が目立つが、本機の場合IPアドレスを自動取得する機能自体が無い。初めて見るとびっくりするが、IPアドレスを自動取得させた場合管理画面を開くために人間がIPアドレスを調べる手間が要ることを考えると、むしろこちらの方が便利なのかもしれない。

 ただし、アクセスポイントモードでは少々不便が生じることがある。例えば、ルーターのIPアドレスが「192.168.1.1」で、ルーターモードに設定した本機のIPアドレスが出荷時設定のように「192.168.2.1」だと、本機のみ別ネットワーク扱い(サブネットマスクが両方とも「255.255.255.0」だった場合)になるのでそのままでは管理画面を開けない。管理画面を開くにはPCのIPアドレスを一時的に「192.168.2.~」のように第3セグメントまで同じものに変更するなど一手間必要になる。アクセスポイントモードで管理画面を頻繁に開くのであれば、同一ネットワークで共存できるように設定しておくのがおすすめだ。

「かんたんセットアップツール」の起動画面セットアップ時はLAN-W300Nをルーターモードにする必要があるLAN-W300Nとの接続方式を選択する画面。ここでは「PCの内蔵無線」を選択した
SSIDと暗号化キーを入力するウィンドウがポップアップする。入力が終われば接続設定自体は完了だ必要であれば管理画面へのショートカットをデスクトップに作成してくれる

 それから、LAN-W300Nの接続方法についてだが、IDやキーの手入力やWPSに加えて、同梱のセットアップソフトが使える。Windows Vista/7限定ではあるが、ケーブルのつなぎ方まで面倒を見てくれるので特に初心者にはありがたいだろう。

リモートデスクトップ機能を使って出先から自宅のPCに接続している様子ポートフォワーディングとDDNSを使って公開したWebサーバーの画面

 その他搭載している機能についてだが、DMZ、DDNS、ポートフォワーディングなどサーバー公開用の定番機能を搭載しているので、Webサーバーの公開やインターネット経由でのリモートデスクトップが可能だ。セキュリティ系の機能は無線LAN機器のMACアドレスフィルタがあるくらいで、パケットフィルタやログの保存機能は搭載していない。

●LAN-W300Nのベンチマーク結果

 ベンチマークの測定はルーターモードとアクセスポイントモードの両モードで行なった。ルーターモードでの測定はPPPoEクライアント機能を使ってインターネットに接続した状態で行なった。測定環境は近隣に11b/g/nユーザーの多いワンルームマンションの一室。暗号化方式はWPA2-PSK(AES)を使用した。

 ベンチマークの測定には2台のPCを使用した。1台はWindows 7 SP1で、もう1台はWindows Vista SP2。前者は無線LANで、後者は有線LAN(1Gbps)でLAN-W300Nに接続した。測定に使ったソフトは「CrystalDiskMark 3.0.1」で、Windows 7 PC上でWindows Vista PCの共有フォルダネットワークドライブとして登録して測定した。なお、Windos 7マシンの無線LANアダプタとしてバッファロー「WLI-UC-G300N」を使用した。

 ベンチマーク結果を見ると11nの通常モードで約66~86Mbps、倍速モードでは約91~108Mbpsだった。アクセスポイントモード時の11n通常モードの速度が70Mbps前後台でやや遅い以外は、倍速モードでは100Mbpsを越えるなど、なかなかいい数字が出ている。外部アンテナが無く内蔵アンテナも大きくできない小さな筐体の製品としては健闘していると言えるのではないだろうか。

 なお、表中の「Ext4」はUbuntuマシンの共有フォルダを使って測定した結果で、同じく表中の「ProFTPD」はUbuntuマシン上にセットアップしたFTPサーバーを使って測定した結果を示している。どちらもWindowsマシンと比べて数字が伸びる傾向があるので参考値として入れてある。

 

【表】 LAN-W300Nのベンチマーク結果
ルーターモード(PPPoE接続時)

速度(Mbps)
接続規格読み込み書き込み
11n80.0086.10
11n x2108.2699.90
11n x2(Ext4)89.72114.20
11n x2(proFTPD)140.58107.83
1000BASE-T329.1193.97
1000BASE-T(Ext4)370.26731.91
アクセスポイントモード

速度(Mbps)
接続規格読み込み書き込み
11n67.0178.16
11n x298.1591.32
11n x2(Ext4)89.14130.90
11n x2(proFTPD)131.87105.20
1000BASE-T331.6893.8
1000BASE-T(Ext4)488.40633.00

LAN-W300Nのルーターモード時のベンチマーク結果LAN-W300Nのアクセスポイントモード時のベンチマーク結果

●まとめと感想

 LAN-W300Nは据え置き型の無線LANルーターの機能をスマートフォンサイズのボディに詰め込んだコンパクトで軽量な無線LANルーターだ。それでいて1Gbps対応のLANポートを4つ備え、11n倍速モードに対応するなど速度面で健闘したところも頼もしい。

 今回実際に使ってて気になったのは本体の発熱だ。熱いという程ではないが、かなり温かくなる。ベンチマークを測定している時も含めトラブルが起きることは無かったが、熱がこもるような場所に設置したり、放熱板でもないかぎり本体に何かを密着させて使うことは避けた方がいいだろう。

 アクセスログやパケットフィルタが無いのは少々残念だが、据え置きでも持ち歩きでも使える本格スペックの無線LANルーターとして活躍できる場面は多いのではないだろうか。

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(2011年 10月 27日)

[Text by 井上 繁樹]