Hothotレビュー
日本ヒューレット・パッカード「HP ElitePad 1000 G2」
~Windows 8.1 Pro 64bit搭載のWUXGAタブレット
(2014/8/25 06:00)
日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は、ビジネス向けのWindowsタブレット「HP ElitePad 1000 G2」を発売した。直販価格は69,000円(税別)からとなっている。発売からやや時間が経ったが、今回1台お借りできたので、レポートをお届けする。
今回お借りしたモデルは、Atom Z3795(1.66GHz、ビデオ機能内蔵)、メモリ4GB、128GB eMMC、OSにWindows 8.1 Pro(64bit)を搭載した中位モデルで、直販の税抜き価格は88,000円である。69,000円のモデルは64GB eMMCとWindows 8.1(64bit)を搭載している。またLTEを搭載したモデル(114,000円)も用意されている。
HP ElitePad 900をベースにCPUがBay Trail-Tに
HP ElitePad 1000 G2は、1世代前のClover Trailアーキテクチャを採用した「HP ElitePad 900」の後継モデルに当たる製品だ。前モデルはプロセッサにAtom Z2760(1.80GHz、ビデオ機能内蔵)を搭載していたが、新モデルはAtom Z3795(1.66GHz、同)を搭載。CPUの命令実行がイン・オーダーからアウト・オブ・オーダー方式へと変わったことで、性能が大幅に向上している。また、公称バッテリ駆動時間も10時間から13時間に増えた。
もう1つ変わったのは液晶ディスプレイである。HP ElitePad 900は1,280×800ドット表示対応の10.1型であったが、HP ElitePad 100 G2では1,920×1,200ドット(WXUGA)へと大きく解像度が向上した。表面を覆うガラスもCorningの「Gorilla Glass 2」から「Gorilla Glass 3」へと進化し、反射を12%低減して輝度を8%高めたという。
その一方で、筐体の設計はHP ElitePad 900を完全に踏襲する。重量こそ約630gから650g(実測655g)へと僅かに増えたが、本体サイズは両モデルともに261×178×9.2mm(幅×奥行き×高さ)であり、インターフェイスからボタンの位置まで、完全に共通である。これはHP ElitePad 900とアクセサリの互換性を持たせるためであり、企業の一括導入においてコスト面でメリットがあるためだ。
そのためインターフェイスの利用はやや不便となった。Bay Trailを搭載するタブレットの多くは、Micro USBを装備しており、USBホストポートと充電ポートを兼ねているが、HP ElitePad 1000 G2は旧モデルの筐体と共通のため、独自のコネクタとなっており、USBを使うにもACアダプタで充電するにも、この専用コネクタを介して利用する必要がある。ACアダプタもこの独自のコネクタに合わせたもの、そしてUSBポートは変換ケーブルを利用する必要がある。
実はHP ElitePadシリーズは、オフィスでの利用から、POSや発注システムでの利用も想定しており、専用の「キーボードジャケット」や「リテールジャケット」、「セキュリティジャケット」、「リテールドック」などオプションを用意しているが、それらのジャケット装着時でもポートが利用できるよう、あえて専用コネクタにしているのである。
また、リテールジャケット装着時は、米国調達基準「MIL-STD-810G」準拠の耐久性を持つようになるとしている。この専用コネクタはその規格へ準拠するための装備なのかもしれない。いずれにしても、さまざまな用途を考え、実用性ではなく、互換性や耐久性に配慮されているわけだ。
Windows 8.1 Pro 64bit版を搭載
本製品のもう1つの特徴は、64bit版のWindows 8.1(Pro)を搭載する点である。Bay Trail-T搭載タブレットは、64bit版のInstantGo対応ドライバがなかなか揃わなかった関係で、64bit搭載製品が出てこなかったのだが、HP ElitePad 1000 G2が初の対応タブレットとなった。なお、今ではレノボの「ThinkPad 8」や「ThinkPad 10」も64bitに対応している。
64bitに対応しているため、4GB以上のメモリ空間も扱えるようになった。32bitも4GBまで扱えるが、4GBのメモリを搭載しても、各種デバイスがメモリ空間を専有するため、実質アプリケーションで使えるのは3GB強までであった。このため、Bay Trail-Tタブレットの多くはメモリが2GBだった。一方本製品は64bit版が搭載されているため、メモリを4GB搭載。共有ビデオメモリを除いても、実質3.9GB程度まで使えるようになった。
実際、Windowsのタスク マネージャーで確認しても、ほぼ何もソフトを立ち上げない状態で約2.8GBのメモリの空きがあり、これならば、高解像度写真のレタッチや、複数のアプリを立ち上げてのデータ連携など、これまでの32bit対応Windowsタブレット以上にヘビーな使い方に対応できそうである。
もう1つ注目したいのはAtom Z3795の搭載である。Z3795は現時点においてBay TrailのSKUの中では最上位に位置しており、旧モデルのZ3770と比較してベースクロックが1.46GHzから1.66GHzと、200MHzも向上している。Burstクロックも2.39GHzと高速であり、その性能には期待がかかる。
明るくて見やすい液晶
さて、本製品の使い勝手について見ていこう。HP ElitePad 1000 G2は10.1型タブレットとしては平均的な重量であり、重いとも軽いとも感じない。筐体は金属製で手触りがよく、iPadを彷彿とさせる質感。ただ使用中は、樹脂製ボディのほかのタブレットと比較してやや熱く感じる点は気になった。本体上部は樹脂製であり、これは無線LANやオプションのLTEのアンテナの電波を通すためだろう。素材が別々でもいいが、同じような塗装に仕上げてもらいたかったところだ。
ボリューム調節や電源ボタンは本体左側に集中している。電源ボタンは左上部、ボリューム調節は左側面だ。左側面と言っても、本製品は背面に向かってなだらかにしぼむようなデザインとなっており、その途中で配置されているため、側面というより背面に近い印象を受ける。とは言え、この位置にあったほうが、両手でホールドした時に誤操作してしまうことが防げて良いと言える。
本体上部の右側には、画面回転のロックを防ぐスイッチと、ステレオミニジャックを装備。底面はスピーカーと専用コネクタのみだ。カメラは背面が800万画素、前面が210万画素となっている。背面カメラは画面正面から見て左側、前面カメラは正面真上に装備されている。なお、前面の右側にもカメラと思しきホールがあり、その近くにWebカメラの動作状況を示すホワイトLEDもあるのだが、こちらのホールは光センサーのようである。
さて、注目の液晶ディスプレイだが、最大輝度にした場合は確かに明るく、そして視野角も広く見やすい。色温度も適正であり、好印象である。コントラストや発色もよいのだが、いかんせんグレアタイプのため、映り込みが気になる。オフィスでの利用を考えて、この辺りはノングレアにしていただきたかったところだ。
一方WUXGAという解像度だが、製品出荷時は文字サイズの設定が最大となっているほか、Internet Explorerも解像度に合わせて自動的に拡大するので、PC Watchのような一般的なWebサイトでのデフォルトの文字の大きさでは、実測2mm強の大きさがある。10.1型タブレットを使う距離では視認性が高い。
ただこの場合、精密で滑らかなフォントなのは確かだが、せっかくのWUXGAの解像度を活かした情報量が活かされない。そこで文字の大きさを100%にしてみたところ、1文字あたり1mmを切った。もちろん視認性は低下するのだが、10.1型を使う距離では読めない大きさではないので、状況や用途に応じて切り替えて使うといいだろう。
本製品を試用して気になったのは、タッチパネルの感度である。タッチしたつもりでも、タッチされていないことが多く、感度をややシビアに設定しているようだ。やや強めに押せば問題なく反応するし、個体差かも知れないが、iPadやiPhoneの軽快なタッチに慣れた身からするとややストレスだった。
Haswell低電圧版の半分の性能
さて、最後にベンチマーク結果をお届けする。使用したベンチマークは、「PCMark 7」、「ファイナルファンタジー XIオフィシャルベンチマーク3」、「SiSoftware Sandra」の3種類。
比較用に、以前にテストしたBay Trail-M搭載タブレット(2-in-1でキーボード付き)「HP Pavilion 11x2」、およびHaswellの低電圧版となるCore i5-4300Uを搭載した「Latitude 12 Rugged Extreme」の結果を掲載する。
HP ElitePad 1000 G2 | Pavilion 11x2 | Latitude 12 Rugged Extreme | |
---|---|---|---|
CPU | Atom Z3795 | Pentium N3510 | Core i5-4300U |
メモリ | 4GB | 4GB | 8GB |
ストレージ | 128GB eMMC | 128GB SSD | 256GB SSD |
OS | Windows 8.1 | Windows 8 | Windows 8.1 Pro |
PCMark 7 | |||
Score | 2507 | 2992 | 4917 |
Lightweight | 1272 | 1864 | 3275 |
Productivity | 955 | 1180 | 2434 |
Entertainment | 1750 | 2094 | 3590 |
Creative | 4393 | 4600 | 9183 |
Computation | 7302 | 6064 | 15759 |
System storage | 3047 | 4938 | 5006 |
RAW system storage score | 800 | 3422 | 3833 |
ファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3 | |||
Low | 4435 | 4072 | 9392 |
High | 3069 | 2537 | 6379 |
Sisoftware Sandra | |||
Dhrystone | 26.08GIPS | 23.5GIPS | 52GIPS |
Whetstone | 18GFLOPS | 12.77GFLOPS | 36.15GFLOPS |
Graphics Rendering Float | 45Mpixel/sec | 43.16 Mpixel/sec | 125.6Mpixel/sec |
Graphics Rendering Double | 8.48Mpixel/sec | 8.07 Mpixel/sec | 49.42Mpixel/sec |
まずPCMarkの結果を見ると、Pentium N3510(2GHz、ビデオ機能内蔵)を搭載したPavilion 11 x2にわずかに劣っていることが分かる。これはPentium N3510がBay Trail-Mベースであり、ストレージに高性能な6Gbps対応SSDを採用しているためだ。HP ElitePad 1000 G2に搭載されるストレージはeMMC(SanDiskのSEM128)であり、ライト性能で劣る。PCMarkのスコアはストレージ性能に大きく左右されるため、このような結果となっている。ただし実用では気にならない。
一方でグラフィックス/CPU性能を計測するFFXIベンチやSandraの結果は、Pavilion 11 x2を上回っている。定格クロックこそPentium N3510に負けているが、BurstクロックはPentium N3510より高速なので、このような差が生まれたのだろう。
また、ざっくり全体的にLatitude 14 Rugged Extremeの約半分のスコア、というのが面白い。同じ低電力CPUでも、TDPやアーキテクチャの差がきっちり現れていると言えるだろう。Intelはここできっちり、CoreとAtomの性能の差別化ができている。
なお、バッテリの駆動時間だが、BBenchを用いて、液晶の輝度を半分程度に抑え、Wi-FiオンでWeb巡回をオン、キーストロークをオンにして計測したところ、約6.6時間駆動した。公称値の半分だが、InstantOnを利用して頻繁にオン/オフを繰り返して使うような実際のケースでは、ほぼ1日は持つだろう。
個人で使うにはややハードルが高いが、法人には強力な製品
以上、簡単にHP ElitePad 1000 G2を見てきたが、Atom Z3795と4GBのメモリ、WUXGAの10.1型液晶、そして64bit版Windowsを搭載した、同クラスの中では高いスペックを持つタブレットであるというのが何よりも印象的であった。USBを含むコネクタが専用であり、Bay Trail-Tタブレットとしては駆動時間がやや短いなど、欠点もあるのだが、高性能はその欠点を補ってもなお余りあるものとなっている。
特に4GBのメモリは、ノートPCのようにマルチタスクを多用したいユーザーにとって嬉しいだろう。タブレットをビジネスで本格的に使ってみよう、というユーザーにオススメしたい。