~1台4役の高機能リモコン付きの液晶一体型PC |
レノボ・ジャパンから登場した「IdeaCentre A600」は、21.5型ワイド液晶を搭載したコンシューマ向けの液晶一体型PCだ。液晶一体型PCは、デスクトップPCの中でも人気があり、多くのメーカーから発売されているが、IdeaCentre A600は、エアー・マウスやVoIPのハンドセットとしても使える1台4役の高機能リモコンが付属するなど、エンターテイメント機能が充実していることが特徴だ。
IdeaCentre A600は、HDD容量やGPU、無線LAN、リモコンの有無などの違いで2モデルが用意されているが、今回は上位モデルの「30115FJ」を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。
●曲線を活かしたスタイリッシュなデザインIdeaCentre A600を利用しているところ。4in1リモコン、キーボード、レーザー式マウスはすべてワイヤレスだ |
IdeaCentre A600のボディは、液晶の下側が滑らかにカーブした、スタイリッシュなデザインである。液晶パネル部分と周囲の額縁部分は同じパネルでカバーされており、段差がないので、見た目もすっきりしていて美しい。リビングに置いても、雰囲気を壊すようなことはなさそうだ。
本体サイズは、520×27~60×463mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約12kgである。ボディカラーは光沢のあるブラックのみだ。上位モデルでは、マルチメディアキーボードとレーザー式マウスに加え、4in1リモコンが付属する。キーボードとマウスは、2.4GHz帯対応の無線式であり、4in1リモコンはBluetooth対応である。
●Core 2 DuoとMobility Radeon HD 4350を搭載まず、PCとしての基本性能から見ていこう。CPUとしては、Core 2 Duo P8700(2.53GHz)を搭載。最新のCore iシリーズではないが、十分なパフォーマンスを実現している。
チップセットは、グラフィックス統合型のIntel GM45 Expressを採用しているが、上位モデルでは、単体GPUのATI Mobility Radeon HD 4350を搭載しており(下位モデルは非搭載)、チップセットのグラフィックス機能は利用されていない。
メモリは標準4GBで、これ以上増設はできない。HDD容量は、上位モデルが500GB、下位モデルが320GBで、3.5インチHDDが採用されている。光学ドライブとしては、スロットインタイプのDVDスーパーマルチドライブを搭載。OSはWindows 7 Home Premium 64bit版がプリインストールされている。
●フルHD表示対応液晶を搭載液晶は21.5型ワイドで、解像度は1,920×1,080ドットのフルHDだ。光沢タイプの液晶で、発色は鮮やかで、コントラストも高いが、外光の映り込みがやや気になる。液晶の上部には、30万画素Webカメラとデジタルマイクを搭載しており、ビデオチャットなどに利用できる。液晶の右下には、タッチセンサー式のディスプレイ・コントロールが搭載されており、指を近づけるとタッチセンサーのバックライトが点灯する。ディスプレイ・コントロールでは、液晶輝度の調整、ディスプレイのON/OFF、光学メディアのイジェクトが可能だ。液晶を左右に回転させるスイベル機能は持たないが、上下のチルトの調整は可能だ。
キーボードはワイヤレス式で、薄くて軽い。右側には、テンキーの代わりにタッチセンサー式のマルチメディアボタンとタッチパッドが用意されている。キーボード左端に、左クリックボタンが用意されているので、キーボードを両手で持って、右手でタッチパッドを、左手でクリックボタンを操作できる。キーボードやマウスは2.4GHz帯を利用しており、到達距離は約20mと長い。キーボードのタッチは良好だが、「ろ」キーのみやや横幅が狭くなっている。
ワイヤレスマウスはレーザー式で、机などの材質を選ばない。マウスの両側面にもボタンが用意されており、5ボタンマウスとして利用できる。
上位モデルには、Bluetooth対応の4in1リモコンが付属している。このリモコンがなかなかユニークで、通常のWindows Media Center対応リモコンとして使う以外に、SkypeなどのVoIP(インターネット電話)のハンドセットや、空中でポインターを操作できるエアー・マウス、Wiiリモコンのように振って楽しむバーチャル・コンソール・ゲームコントローラとしても利用できる。
エアー・マウスボタンを長押しすることで、エアー・マウスモードになり、エアー・マウスボタン内部のLEDが点灯する。このモードでは、リモコンを液晶画面に向けて、レーザーポインターやWiiリモコンを使う感覚でポインターを操作する。Wiiリモコンを使ったことのある人なら、すぐに慣れるだろう。
また、リモコンの上部にスピーカー、下部にマイクが内蔵されており、電話ボタンを長押しして、電話モードに切り替えることで、リモコンをVoIPのハンドセットとしても使える。Skypeでハンドセットを使ってみたところ、音質はそこそこだが、電話としてなら十分実用的だと感じた。
エアー・マウスモードで利用している様子。Wiiリモコンと同じような操作感覚だ |
●IEEE 802.11n対応無線LANとBluetooth Ver.2.1に対応
インターフェイスとして、USB 2.0×6(左側面2、背面4)やIEEE 1394(4ピン)、Gigabit Ethernetなどを装備するほか、SDカード/MMC/xD-ピクチャーカード/メモリースティック(PRO)に対応した6in1マルチ・カード・リーダーを搭載する。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LANとBluetooth Ver.2.1+EDRに対応する。
液晶下部にステレオスピーカーを搭載するほか、背面にサブウーファを搭載しているので、迫力のあるサウンドを楽しめる。付属のACアダプタからの電源供給で動作するが、ACアダプタの出力は150WとノートPCに比べると大きく、ACアダプタのサイズも大きめだ。
●単体GPUを搭載しているが、3D描画性能はそれほど期待できない
参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」である。HDD以外の基本パーツは、ノートPC向けパーツを利用しているため、比較対照用として、レノボ「ThinkPad X201」「ThinkPad T410s」「ThinkPad T400s Windows 7モデル」、デル「Studio 15 OPIデザイン」、日本HP「HP Pavilion Notebook dm3a」、NEC「LaVie M」の値も掲載した。
なお、IdeaCentre A600は、64bit版Windows 7を搭載しているが、PCMark05の総合スコアであるPCMarksは、32bit版Windowsでないとすべてのテストを実行できないため、結果はN/Aとしている。PCMark05のCPU Scoreは6393であり、最新のCore i5搭載ノートPCには及ばないが、一般的なCore 2 Duo搭載ノートPCのスコアより高いので、特別に重い作業をさせるのでなければ、性能的に不満を感じることはないだろう。さらに、3.5インチHDDを搭載しているため、2.5インチHDD搭載のノートPCに比べると、PCMark05のHDD ScoreやCrystalDiskMarkの結果が上回っている。
また、単体GPUのMobility Radeon HD 4350を搭載しているので、3D描画性能も気になるところだ。3DMark03のスコアは、Intelの統合チップセット採用ノートPCに比べて、数倍になっているが、最新ゲームソフトを快適に遊べるだけの性能を持っているかどうか、ゲームベンチマークもおこなってみた。
その結果、バイオハザード5は1,280×720ドット表示で17.6fps、ストリートファイターIVは1,280×720ドット表示で40.35fps、ラストレムナントは1,280×720ドット表示で19.53fpsとなった。ストリートファイターIVは一応遊べるレベルだが、バイオハザード5やラストレムナントはもっと解像度を下げないと厳しそうだ。Mobility Radeon HD 4350は、エントリークラスのGPUであり、統合チップセットに比べれば描画性能は高いものの、重めの最新ゲームを動かすには力不足といえるだろう。
□ベンチマーク結果IdeaCentre A600 | ThinkPad X201 | ThinkPad T410s | ThinkPad T400s Windows 7モデル | Studio 15 OPIデザイン | HP Pavilion Notebook PC dm3 ハイパフォーマンスモデル | LaVie M | |
CPU | Core 2 Duo P8700 (2.53GHz) | Core i5-540M (2.53GHz) | Core i5-520M (2.4GHz) | Core 2 Duo SP9400 (2.4GHz) | Core i5-430M (2.26GHz) | Core 2 Duo SP9300 (2.26GHz) | Core 2 Duo SU2300 (1.2GHz) |
ビデオチップ | Mobility Radeon HD 4350 | CPU内蔵コア | CPU内蔵コア | Intel GS45内蔵コア | Mobility Radeon HD 4570 | GeForce G105M | Intel GS45内蔵コア |
PCMark05 | |||||||
PCMarks | N/A | 6163 | 5677 | 4480 | N/A | 5124 | 2826 |
CPU Score | 6393 | 7637 | 7375 | 6092 | 6677 | 5593 | 2966 |
Memory Score | 5253 | 6286 | 6184 | 5276 | 5738 | 5087 | 3066 |
Graphics Score | 4442 | 2670 | 2610 | 2057 | 5234 | 3460 | 1397 |
HDD Score | 6738 | 5534 | 4291 | 4471 | 4646 | 5360 | 4948 |
3DMark03 | |||||||
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 8890 | 4111 | 4101 | 2493 | 10687 | 8446 | 2048 |
CPU Score | 1604 | 1121 | 1068 | 980 | 1604 | 1544 | 495 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |||||||
HIGH | 5872 | 2516 | 2458 | 2487 | 5991 | 5678 | 1995 |
LOW | 8807 | 3885 | 3808 | 3868 | 8933 | 8626 | 1367 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | |||||||
DP | 99.97 | 100 | 96.63 | 99.93 | 100 | 99.93 | 76.43 |
HP | 100 | 100 | 99.97 | 99.93 | 100 | 99.93 | 99.97 |
SP/LP | 99.97 | 99.97 | 100 | 99.97 | 99.97 | 99.93 | 99.97 |
LLP | 99.97 | 100 | 99.97 | 99.97 | 100 | 99.93 | 99.97 |
DP(CPU負荷) | 40 | 19 | 21 | 48 | 19 | 48 | 68 |
HP(CPU負荷) | 23 | 10 | 12 | 19 | 11 | 25 | 42 |
SP/LP(CPU負荷) | 13 | 7 | 7 | 10 | 8 | 17 | 28 |
LLP(CPU負荷) | 10 | 6 | 6 | 7 | 8 | 15 | 22 |
CrystalDiskMark 2.2 | |||||||
シーケンシャルリード | 123.1MB/s | 72.04MB/s | 36.20MB/s | 47.04MB/s | 60.85MB/s | 68.01MB/s | 60.31MB/s |
シーケンシャルライト | 122.9MB/s | 70.53MB/s | 40.05MB/s | 48.16MB/s | 60.53MB/s | 63.80MB/s | 66.25MB/s |
512Kランダムリード | 53.46MB/s | 32.85MB/s | 23.30MB/s | 26.89MB/s | 27.79MB/s | 27.00MB/s | 27.50MB/s |
512Kランダムライト | 75.92MB/s | 35.23MB/s | 24.25MB/s | 30.03MB/s | 40.09MB/s | 24.73MB/s | 31.19MB/s |
4Kランダムリード | 0.751MB/s | 0.462MB/s | 0.425MB/s | 0.450MB/s | 0.424MB/s | 0.345MB/s | 0.369MB/s |
4Kランダムライト | 1.665MB/s | 1.171MB/s | 0.961MB/s | 1.049MB/s | 1.399MB/s | 0.909MB/s | 0.984MB/s |
●家庭向け液晶一体型PCとしての完成度は高い
IdeaCentre A600の上位モデルは、タッチパッド付きの使いやすいキーボードや高機能な4in1リモコンが付属するほか、ボディデザインも洗練されており、家庭で使う液晶一体型PCとしての完成度は高い。単体GPUの描画性能がやや中途半端なことが残念だが、軽めのゲームなら十分に遊べる。ノートPCに比べて、液晶画面が大きく、解像度が高いことも魅力だ。PCを持ち運ぶ必要はないが、タワーマシンを置くスペースがないという人に、特にお勧めしたい。
(2010年 4月 27日)
[Text by 石井 英男]