~低価格だが、実用性の高い液晶一体型デスクトップ |
デルの法人向けPC「Vostro」シリーズに、初となる液晶一体型モデル「Vostro 320」が追加された。今回、2モデル用意されているVostro 320のうち、上位モデルとなる「液晶一体型ビジネスプレミアムパッケージ」を試用する機会を得たので、製品の詳細を紹介していこう。
●個人向けでも十分通用するデザイン法人向けPCといえば、デザイン性を追求していない製品が多く、どちらかというとシンプルかつ無骨なデザインの製品が多い。Vostro 320も、目立つ装飾は一切なく、見た目は非常にシンプルだ。ただ、曲線を取り入れた丸みのあるボディと、ボディ全体が光沢感のあるブラックで塗装されていることもあってか、見た目からは法人向けPCという印象はほとんど伝わってこない。逆に洗練されたマシンという印象も受ける。
低価格の個人向け液晶一体型PCには、安いとはいえ、もっとましなデザインにできなかったのか、と思う製品も数多く存在しているが、Vostro 320は個人向けPCとしても十分通用するもので、法人向けとしてのみ販売するのはちょっともったいないのでは、と思ってしまうほどだ。
本体サイズは、477.39×103.98×386.39mm(幅×奥行き×高さ)。19型ワイド液晶を採用する一体型PCとしては十分コンパクトにまとめられており、デスク上で邪魔にならないことはない。
法人向けPCでは、本体スペック以上に省スペース性が重要視される場合が多く、Vostroシリーズにも本製品とは別に、小型ボディの省スペースPCがラインナップされている。しかし、Vostro 320であれば、PC本体を設置するスペースが不要なのはもちろん、背面のスタンド上部にVESAマウント用のネジ穴が用意されており、VESAマウントアームを利用することで、デスク上をさらに有効活用できる。省スペース性を追求したい場合に、大きな魅力となるはずだ。
また、静音性に優れる点も魅力の1つ。Vostro 320はファンレス仕様ではなく、CPUなどを冷却する空冷ファンは搭載されている。しかし、その音は非常に静かで、ベンチマークテストを実行しているときなど、高負荷のかかる作業を行なっている場合でも、ファンの音が気になることは全くなかった。大規模なオフィスでは、PCの騒音が問題になることは少ないかもしれないが、中小企業などの小さなオフィスでは、ちょっとしたPCの騒音でも気になって仕事に集中できないということもあるだろう。しかし、Vostro 320ならばその点も全く心配ない。
●19型ワイド液晶を搭載
搭載する液晶パネルは、1,440×900ドット表示対応の、19型ワイド液晶だ。低価格液晶一体型PCで採用されることの多い1,366×768ドット液晶よりも高解像度で、Office系アプリケーションを利用した作業も、より快適にこなせるはずだ。
表示品質は、TNパネル採用の低価格液晶ディスプレイと同等と考えていい。上下の視野角がやや狭く、上下の視点位置の違いによる色合いの変化もやや大きいように感じる。とはいえ、シビアな発色が要求されるグラフィック系の用途でもない限り、問題になることはないだろう。
液晶表面は非光沢処理が施されており、外光の映り込みは全く気にならない。これなら、文字入力中心の作業も快適に行なえる。
1,440×900ドット表示対応の19型ワイド液晶を搭載。表示品質は、TNパネル採用の低価格液晶相当。表面が非光沢処理となり、外光の映り込みが気にならない点は嬉しい | 液晶中央上部には、130万画素のWebカメラが搭載される |
●基本スペックは固定
デルのPCは、購入時に基本スペックを自由にカスタマイズできる製品が多いが、Vostro 320では、搭載CPUの異なる2モデルが用意されてはいるものの、基本的にスペックは固定となっている。
今回試用したのは、「Vostro 320 一体型ビジネスプレミアムパッケージ」という上位モデルだ。基本スペックは、CPUがCore 2 Duo E7400(2.80GHz)、チップセットがIntel G41 Express、メインメモリはPC2-6400 DDR2 SDRAMを2GB(デュアルチャネル)、HDD容量は160GB、光学式ドライブはDVDスーパーマルチドライブとなる。また、Gigabit Ethernet対応有線LANに加え、IEEE 802.11b/g対応の無線LANも標準搭載される。それに対し、下位モデルとなる「Vostro 320一体型ビジネスパッケージ」では、CPUがPentium E5300(2.60GHz)となり、無線LAN機能が省かれている。
本体背面は、メモリスロットやHDDにアクセスできるフタなどは用意されておらず、メインメモリやHDDの交換、増量などは基本的に行なえない。中小企業向けという製品のターゲットから考えると、このスペックも納得できる範囲内ではあるが、できればメインメモリとHDDの容量ぐらいは、ある程度選択肢が用意されているとよかったように思う。
端子類は、本体背面及び右側面に用意されている。本体背面には、USB 2.0×3と、有線LANポート、キーボード・マウス用のPS/2コネクタ、音声出力に加え、法人向けPCらしく、シリアルポートとパラレルポートが標準で用意されている。右側面には、USB 2.0×3と、IEEE 1394、SD/MMC/メモリースティック対応のメモリーカードスロット、ヘッドフォン/マイク端子を用意。また、液晶輝度調節用のボタンと電源ボタンも右側面に配置されている。
●一般ユーザーにもおすすめ
では、ベンチマークテストの結果を紹介していこう。利用したベンチマークソフトはFuturemarkの「PCMark Vantage(Build 1.0.0)」と「PCMark05 (Build 1.2.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の4種類。また、Windows Vistaのパフォーマンス評価の結果も加えてある。
結果を見ると、グラフィック機能がIntel G41 Express内蔵のGMA X4500ということもあり、3D描画能力がかなり低くなっている。法人向けPCのパフォーマンスチェックとしてはあまり相応しくはないが、念のため実行してみたFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3の結果からも、3D描画能力がそれほど高いものではないことがわかる。ただ、文字入力などの作業が中心となる中小企業向けの省スペースPCという製品の位置付けを考えると、3D描画能力はほとんど不要であり、この点は特に大きな問題とはならないだろう。
その他の結果は、スペック相応となっており、Office系アプリケーションなどはかなり快適に利用できると考えていい。
Vostro 320 | |
CPU | Core 2 Duo E7400(2.80GHz) |
チップセット | Intel G41 Express |
ビデオチップ | GMA X4500 |
メモリ | PC2-6400 DDR2 SDRAM 2GB |
OS | Windows Vista Business SP2 |
PCMark Vantage Build 1.0.0 | |
PCMark Suite | 3208 |
Memories Suite | 2162 |
TV and Movies Suite | 955 |
Gaming Suite | 2146 |
Music Suite | 3912 |
Communications Suite | 4424 |
Productivity Suite | 3664 |
HDD Test Suite | 2781 |
PCMark05 Build 1.2.0 | |
PCMark Score | 5712 |
CPU Score | 7042 |
Memory Score | 5243 |
Graphics Score | 2280 |
HDD Score | 5166 |
3DMark06 (Build 1.1.0) | |
3DMark Score | 833 |
SM2.0 Score | 270 |
HDR/SM3.0 Score | 309 |
CPU Score | 2380 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |
Low | 4036 |
High | 2496 |
Windows Vistaパフォーマンス評価 | |
プロセッサ | 5.6 |
メモリ | 5.3 |
グラフィックス | 3.6 |
ゲーム用グラフィックス | 3.7 |
プライマリハードディスク | 5.6 |
Vostro 320は、スペック面こそ抜き出る部分があるわけではないものの、企業向けPCとして必要十分なスペックを詰め込むとともに、液晶一体型とすることで優れた省スペース性も実現しており、デスクを有効に活用するための省スペースPCを探している企業ユーザーにとって、非常に魅力的な製品と言っていい。
ところで、Vostro 320は企業向けPCではあるが、個人でも購入可能だ。シンプルながら、ひと目では企業向けPCとは思えない、洗練された印象のデザインは、一般ユーザーにもおすすめできる。メインメモリやHDD容量をカスタマイズできなかったり、3D描画能力が低く、ゲームやマルチメディア用途での利用が厳しい点は少々残念ではあるが、Atom搭載の液晶一体型PCよりもはるかに快適に利用できるのは間違いない。
価格は、下位モデルが69,980円、上位モデルが83,980円(8月10日現在の価格。価格は変動するので、正確な価格はデルのホームページで確認してもらいたい)。Atom搭載の液晶一体型PCよりもやや高価だが、スペック面を考えると納得できる範囲。安価な液晶一体型PCであっても、ある程度のパワーは欲しいと考えているなら、選択肢として考慮すべき存在だ。
(2009年 8月 11日)
[Text by 平澤 寿康]