Hothotレビュー

日本HP「HP ProBook 455 G3 Notebook PC」

〜国内では珍しいCarrizo搭載の15.6型ノート

HP ProBook 455 G3 Notebook PC

 日本HPから、AMDの“Carrizo”を搭載したビジネス向けの15.6型ノートPC「HP ProBook 455 G3 Notebook PC」(以下ProBook 455 G3)が発売となった。税別直販価格は59,800円からだ。発売からやや時間が経っているが、Kaveri搭載の前モデルから性能向上があったのか、検証しながら試用レポートをお届けする。

 ProBook 455 G3は、AMDのメインストリームモバイル向けAPU“Carrizo”を搭載したノートPCだ。国内では1月下旬時点でこのプロセッサ採用したノートPCは少なく、競合のレノボが「ThinkPad E465」、「ThinkPad E565」を販売している程度。これは2014年にレビューしたProBook 455 G2の時代から状況が変わっておらず、やや寂しいところではある。

やはり気になる性能をチェック

 今回PC WatchとしてCarrizoのレビューは初となる。ProBook 455 G2の時と同様、気になる性能から見ていくことにしよう。前回からベンチマークが一部変更されているため、今回は比較用としてProBook 455 G2の結果を引用しつつ、筆者が現在利用しているデスクトップ機(ESPRIMO FH77/UD)の結果と比較してみる。使用したベンチマークは「PCMark 7」、「PCMark 8」、「ファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3」(FFXIベンチ)、および「SiSoftware Sandra 2015(G2は2014の結果)」である。

【表】ベンチマーク結果
機種名 HP ProBook G455 G3 HP ProBook G455 G2 ESPRIMO FH77/UD
CPU A10-8700P A10-7300 Core i7-4712MQ
メモリ 4GB 4GB 8GB
ストレージ 500GB HDD 500GB HDD 2TB HDD
OS Windows 7 Windows 8.1 Windows 8.1
PCMark 7
Score 2104 2125 未実施
Lightweight 1881 1785 未実施
Productivity 1308 1325 未実施
Entertainment 2135 2003 未実施
Creative 4018 3446 未実施
Computation 4441 4202 未実施
System storage 1883 1796 未実施
RAW system storage score 500 446 未実施
PCMark8
Home Accelerated 2586 未実施 2928
Web Browsing-JunglePin 0.443s 未実施 0.324s
Web Browsing-Amazonia 0.147s 未実施 0.131s
Writing 5.73s 未実施 5.43s
Photo Editing v2 0.372s 未実施 0.273s
Video Chatv2/Video Chat playback 1 v2 30fps 未実施 30fps
Video Chat v2/Video Chat encoding v2 52ms 未実施 66ms
Casual Gaming 18.3fps 未実施 19.7ms
Benchmark duration 43min42s 未実施 38min40s
Creative Accelerated 2557 未実施 3584
Web Browsing-JunglePin 0.442s 未実施 0.322s
Web Browsing-Amazonia 0.147s 未実施 0.132s
Video Group Chat v2/Video Group Chat playback 1 v2 30fps 未実施 30fps
Video Group Chat v2/Video Group Chat playback 2 v2 30fps 未実施 30fps
Video Group Chat v2/Video Group Chat playback 3 v2 30fps 未実施 30fps
Video Chat v2/Video Chat encoding v2 60.7ms 未実施 68.3ms
Photo Editing v2 0.375s 未実施 0.278s
Batch Photo Editing v2 36.5s 未実施 18.8s
Video Editing part 1v2 19.4s 未実施 14.8s
Video Editing part21v2 34.2s 未実施 19.8s
Mainstream Gaming part 1 7.9fps 未実施 5.9fps
Mainstream Gaming part 2 4.5fps 未実施 3fps
Video To Go part 1 48.4s 未実施 9.7s
Video To Go part 2 38.6s 未実施 13.8s
Music To Go 83.25s 未実施 22.02s
Benchmark duration 1h36min39s 未実施 57min54s
ファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3
Low 6372 6990 10746
High 4258 4657 7294
Sisoftware Sandra
Dhrystone 44.5GIPS 40.73GIPS 131.17GIPS
Whetstone 22.48GFLOPS 19.9GFLOPS 81.43GFLOPS
Whetstone Double 15.36GFLOPS 未実施 56.5GFLOPS
FP Shader Native 460.09Mpixel/sec 134.12Mpixel/sec 277Mpixel/sec
Double Shader Native 188.91Mpixel/sec 29.37Mpixels/sec 57.16Mpixel/sec
Quad Shader Emulate 14Mpixel/sec 未実施 7.72Mpixel/sec

 結果的に、残念ながらCarrizo搭載の本機はKaveri搭載のProBook 455 G2からから大きな性能向上を果たすことができなかった。SiSoftware SandraのCPUのベンチマークでは、CPUの整数/浮動小数点演算でともに10%程度の性能向上が見られるのだが、比較できたPCMark 7はほぼ同等、FFXIベンチではむしろ遅くなっていることが分かる。

 Carrizoに採用されているCPUコア“Excavator”は、Kaveriの“Steamroller”からL1キャッシュが倍増され、分岐予測ターゲットバッファ(BTB)が512エントリから768エントリに増やされているほか、新たにAVX2命令がサポートされている。次期CPUコア“Zen”はアーキテクチャが一新されるので、ExcavatorはBulldozerアーキテクチャの流れを汲む最後のCPUとして性能に期待がかかるところだが、残念ながらこの程度の小規模改良では性能向上に大きく寄与しなかった、ということだろう。

 ただし、ProBook 455 G2に採用されているA10-7300は1.9GHz〜3.2GHz駆動であったのに対し、本製品に採用されているA10-8700Pは1.8GHz〜3.2GHz駆動と若干ベースクロックが低下している。加えて、A10-7300ではTDPが20Wに設定されていたのに対し、本製品は15Wに設定されている点は考慮する必要がある。

 以前ProBook 455 G2をレビューした時は、P-State情報を確認できなかったので、残念ながら純粋比較はできないが、AMD CPUのP-State調節用ツール「k15tk」で確認したところ、本製品に搭載されるA10-8700PのTurboCOREは5段階とかなり多く用意されていた。TurboCOREのステップとマージンを多く取ることで、スペック上の高クロックを達成しつつTDPを下げられることは、TrinityからRichlandへの改良時で既に証明済みだ。KaveriからCarrizoへの改良も同等の手法だと捉えて良い。

 同じTDP枠でCPUのピーク性能で考えると、A10-8700PはA10-7300より25%消費電力を削減しながら、純粋なCPU性能では10%程度向上しているわけで、AMDが謳っているCPUの実行効率および電力効率改善は確認できている。

 一方グラフィックス性能について、両モデルで採用OSやドライバのバージョン、ベンチマークのバージョンの違いによって性能差が生まれた可能性はある。A10-8700Pはより一歩進めたGCNアーキテクチャを採用しているので、理論上性能は上である。

 Haswell世代のCore i7-4712MQ搭載デスクトップ「ESPRIMO FH77/UD」との比較では、PCMark8のHomeで約88%、Creativeで約71%の性能を実現している。4コア/8スレッドのCPUと比較すると純粋な性能ではやはり及ばないが、実体験としては価格差ほどの差はなく、Word/ExcelやWebブラウジングなど一般的なオフィス利用では十分な性能を実現している。

CPUに関する各種情報

HP ProBook 455 G2から筐体を一新

 続いて本体について見ていこう。前面からパッと見、旧モデルのProBook 455 G2と変わらない印象を受けるが、プロセッサ変更に伴う基板レイアウトの刷新で、内部はまったくの別物となっている。

 例えば右側面を正面から見た場合、従来は左からヘッドセットミニジャック、USB 2.0×2、光学ドライブであったが、ProBook 455 G3では光学ドライブ、ヘッドセットミニジャック、USB 2.0×2、Gigabit Ethernetの順に変更されている。右側面にあったケンジントンロックポートは、左側面に移され、左側面にあったGigabit Ethernetは右側面に移された格好だ。

 一方左側面は、左からケンジントンロック、DC入力、排気口、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、USB 3.0×2となっている。ビジネスに必要なインターフェイスは一通り揃っていると言えよう。個人的にはインターフェイスの並び方はProBook 455 G3の方が洗練されているように思える。

 電源ボタンや無線LANのオン/オフボタン、ミュートボタンのデザインは従来とほぼ共通。一方キーボードは、従来カーソルキーの左右が大きく、上下が2分割されていたものから、上下左右ともに同じ大きさで、逆T字に並べられるものとなった。非常に細かい改良だが確実に操作性は向上する。この辺りは歓迎して良いだろう。

 このほか、ヘアライン加工のパームレストや、つや消しブラックの天板など、デザイン面ではProBook 455 G2を概ね踏襲する。時間差で企業内で両製品が混在していても、気づくユーザーは少ないのではないだろうか。個人的に唯一残念なのは、ヒンジ部背面の「Hewlett-Packard」の印刷がなくなったこと。分社化に伴い使えなくなったということだろうが、1931年創業からの歴史を感じられなくなってちょっと寂しい気がする。

マットな質感の天板は従来通り、指紋がつきにくい
ヒンジ部背面の「Hewlett-Packard」は予想通りなくなってしまった
右側面。左からDVDスーパーマルチドライブ、ヘッドセットミニジャック、USB 2.0×2、Gigabit Ethernet
左側面。左からケンジントンロックポート、DC入力、排気口、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、USB 3.0×2
パームレスト部はヘアライン仕上げで、高級感がある
無線LANのオン/オフやミュートボタンを備えている
底面。2ピースのカバーはネジ1本で外せる
手前のカバーを外すと、HDDおよびメモリにアクセスできる
奥のカバーは無線LANモジュールが装着されている。M.2接続になっていることが分かる
1基スロットの空きパターンが見える
手前に備わったDVDスーパーマルチドライブはトレイ式

使い勝手は従来通り

 それでは使い勝手を見ていこう。液晶はラッチレスで開くタイプで、これは従来と変わりない。ヒンジもガタつきが少なく、ビジネス向けらしい堅牢性を備えている。

 キーボードはアイソレーションタイプ。テンキー付きながら、キーピッチは実測19.04mmで、これも従来とほぼ同等だ(測定誤差程度)。先述の通り、カーソルキーが逆T字配置となり、使い勝手が向上している。ただストロークが従来同様浅く、ペタペタした印象は拭えない。オフィスで長時間文章を入力することを考えると、もう少し余裕のあるストロークを実現して欲しかったところだ。

 タッチパッドは幅が実測103.52mm、奥行きが約52.8mmと従来同様。左右クリックボタンは独立しており、こちらはストロークが十分確保されており、柔らかく静かに反応するため使い勝手は良い。オフィス利用では結局外付けマウスを使うことが多いと思われるが、パームレストは広いため、もう少し大型のタッチパッドを採用しても良かったのではないかと思う。

パームレスト右側にスワイプ式の指紋センサーを装備する

 スピーカーに関してこだわるオフィスユーザーは少ないと思うが、このクラスとしては十分な音量と音質を実現しており不満はない。パームレストの右側に指紋センサーを搭載しており、生体認証を利用したセキュリティ対策が可能だ。

 液晶は1,366×768ドット表示対応の15.6型で非光沢タイプ。蛍光灯が明るいオフィスでも映り込みが気になることはない。若干色温度が高めに設定されている印象を受けるが、この辺りはWindowsの設定で調整すれば良いだろう。TNパネルを採用している関係上、視野角が上下/左右ともに狭い。

 TDPが15Wに設定されていることもあり、全体的に熱くなることはなく快適にであった。ファンの騒音は少し甲高い排気音がする程度で、不快になることはなかった。せっかく15型の大型筐体を採用しているわけだから、CarrizoのConfigurable TDPで15Wに制限するのではなく、20〜30W辺りにターゲットを設定しても良かったのではないかと思う。

 付属するACは45Wタイプ。従来から若干軽量化されているが、特筆すべき点はない。なお、今回は貸出期間が短く、バッテリ駆動時間を計測できなかった。Carrizoの性質を考えれば、従来より若干駆動時間(BBenchで約5時間)が伸びている可能性はある。

オーソドックスなテンキー付きキーボード
キーピッチは約19mmで、十分余裕があり打ちやすい
カーソルキーが逆T字となり、より自然なレイアウトに
タッチパッドのボタンは独立式
タッチパッドは実測約103.5×52.8mmと従来同様
液晶画面。非光沢で色温度はやや高め
上下/左右の視野角は狭く、TNパネルと見られる

Carrizo搭載のモバイルノートが待ち遠しい

 以上、ProBook 455 G3を概観してみた。性能についてはProBook 455 G2から大きく向上していない点は残念ではあるが、一般的な用途では十分な性能を確保している。またインターフェイス周りは改良が見られ、前機種から洗練されているように思われる。

 価格も税別59,800円から、今回お借りした上位モデルでも税別69,800円と比較的リーズナブル。メモリは標準で4GB×1とシングルチャネル動作だが、4GBをもう1枚追加しても8万円以内に収まり、グラフィックス性能の向上が期待できる。オフィス用途のみならず、エントリークラスの3Dゲームもこなせるので家庭用としても好適だ。

 願わくばやはりCarrizoの低いTDPを活用し、11.6〜13.3型クラスのモバイル機でも出して欲しかったところ。Carrizoのような、家庭でも会社でも1台でニーズが満たせるプロセッサが登場しているわけだから、メーカーはそれを活用したモバイル機を出して頂きたいところではある。

 もっとも、海外でメインストリームとなる14〜15型が売れなければ、なかなかモバイル機の開発に回す資金が生まれてこないのだろう。そういった意味でも本機は重要な役割を担っている。日本HPの法人向け製品は個人でも問題なく買えるので、「リーズナブルで万能なノートが欲しい」というユーザーは、購入を検討してみてはいかがだろうか。

(劉 尭)