Hothotレビュー
スペックコンピュータ「SUPERGAMER俺」
~ハードウェアコントローラ付きのゲーミング向けAndroidタブレット
(2013/10/8 06:00)
スペックコンピュータ株式会社から、ハードウェアのコントローラ付きタブレット「SUPERGAMER俺」が発売となった。直販価格は16,800円だ。今回1台お借りしたので、試用レポートをお届けする。
画面の左右にコントローラを配置
SUPERGAMER俺の最大の特徴は、画面の左右にハードウェアコントローラを配置した点である。左側には、十字キー、L2、L3、音量+/-で、左上側にはL1ボタンの合計9個のボタンとアナログパッドを装備。一方右側は、A/B/X/Y、R2、R3、SELECT、START、右上側にはR1の合計9個のボタンとアナログパッドを装備。合計18個のボタンと、アナログパッドを2個備えている。フォルムとしては「PS Vita」を一回り大きくした感じだ。
このボタンとアナログスティックは、専用の割り当てユーティリティを用いて、ゲーム上のソフトウェアボタンに割り当てられる。画面下部に常時表示されるメニューバーの中心に、ゲームパッドの形をしたアイコンがあるが、これをタップするとユーティリティが起動。表示されているボタンをソフトウェアボタン上にドラッグ&ドロップして割り当て、アナログパッドはピンチイン/アウトでスライドの大きさを決め、「SAVE」ボタンで保存する。
直感的で分かりやすい上、起動中はゲームが一時停止して誤操作を防ぐなど、なかなか良く考えられている。ゲームごとにプロファイルが自動的に切り替わるため、ソフトウェアの存在を意識する必要もない。
今回は貸出機ということもあり、ソフトウェアボタンが表示される6種類のゲーム「NBA2K13」、「Riptide GP2」、「Trial Xtreme 3」、「Syder Arcade HD」、「Dead Trigger」、「Samurai II:VENGEANCE」の6つが予め用意され、ボタンも割り当て済みの状態になっていた。そこで6種類のゲームともにプレイしてみたが、ハードウェアボタンがしっかり機能し、ゲームを楽しむことができた。
ハードウェアボタンでソフトウェアボタンを割り当てる最大の意義は、やはり指で画面を覆ってしまわないことに尽きる。例えばシューティングゲームのSyder Arcade HDでは、ソフトウェアボタンを操作していると、その部分の敵が指で見えなくわけだが、ハードウェアボタンに割り当てればその部分も見えるため、より敵の動きを予測しやすい。また、HDMIで出力してTVでプレイする場合にも、ハードウェアボタンは有効だ。
ただし制限がないわけではない。本製品のタッチパネルは5点マルチタッチに対応しているが、ハードウェアボタンによる割り当てでの同時押しも、5つを超えられない。また、ボタンマッピングをせずに、ハードウェアボタンに対応しそれのみでプレイできるゲームは、一般的ではないようである。本機のAndroidのホームはボタンで操作できるので、少なくともハードウェア的にはなんらかのドライバが用意され、対応ゲームを作るのは不可能ではないと思うが、その場合一般的なスマートフォンとの互換性を考慮する必要がある。
また、ジャイロセンサーを使うようなレーシングゲームや、画面全体を大きくスワイプしたり、ランダムな位置をタッチするような、そもそもスマートフォンやタブレットのハードウェアを活用した前提で作られたゲームに対しては、本機のハードウェアボタンは無意味である。あくまでもコントローラを使うような、従来型のゲームを前提とした設計であると言える。
筆者はiOSやAndroidを使い始めてから多数のゲームをプレイしてきたが、このようなボタンで操作するゲームはシューティング系、格闘系、RPG系に限られているように思う。いわゆる熱心なゲーマーが遊ぶようなゲームだ。一方で、「パズドラ」が代表するようなパズルゲーム、「Infinity Blade」が代表するような視点固定型のアクションゲームを始め、リアルタイムストラテジーやリズムゲーム、ボードゲームなど、スマートフォンのタッチ操作を駆使した、いわゆる直感的な操作が可能なゲームを中心にプレイするならば、わざわざ本機を選ぶ理由はない。
“SUPERGAMER俺”のネーミングの通り、やはり“スーパーゲーマー”向けの製品であるわけだ。
ハードウェアボタンは全体的に固め、しかし薄型ながら剛性はある
続いて特徴的であるハードウェアボタンを中心に、ハードウェアを見ていく。
パッケージは簡素なもので、靴のパッケージをひと回り小さくしたようなものと言えば分かりやすいだろうか。内容物は本体とACアダプタ、Micro USBゲストケーブル、Micro USBホストケーブル、簡易マニュアルと至ってシンプルである。
ACアダプタは専用のプラグタイプで、5V/2A出力に対応。Micro USBから充電できないのは不便である。旅行などに行く際はACアダプタを持ち歩かなければならないからだ。ただしUSB機器を接続できるMicro USBのホストケーブルが付属するのは親切だと言えよう。
本体は7型液晶を中心に、コントローラを左右に配置したフォルム。PSPやPS Vitaと同じく、無難なデザインだ。液晶上部にカメラも装備している。本体上部には、マイク、Micro USBコネクタ、Mini HDMI出力コネクタ、DC IN、電源ボタンを装備。一方底面にはステレオミニジャックを備える。右側面にはmicroSDカードスロットを搭載。背面はスピーカー、カメラ、リセットボタンとなっている。
筐体全体はプラスチックでラメ入りのガンメタル塗装だが、コントローラボタンのところには、ヘアライン仕上げの金属風パネルを装備しており、L2/L3/音量+/-/R2/R3/SELECT/STARTボタン周りは内側にカットされるなど、やや高級感がある。本体サイズは236×120×12.2mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約359g。コントローラ付きだと思えばそれなりに軽量で、持ち運びも苦にはならないだろう。
本体が薄いため、コントローラとして握った場合、ややホールド感に不安を覚えるが、剛性が高いため、力を入れて操作してもねじれたりたわんだりすることがない。その代わりボタンのストロークが浅く、全体的に硬い印象だ。
筆者が操作していて気になったのはアナログパッドで、反発が結構強いため、10分間程度のプレイで親指の根本が疲れるのを実感した。もちろん慣れもあるとは思うが、PSPのアナログパッドが硬いと思ったゲーマーは、本製品はそれ以上に硬いと思うことだろう。薄さとのトレードオフもあると思うが、長時間のプレイならPS Vitaのようなスティック型にして欲しかったところだ。
また、十字キーを使うなら問題ないが、左側のアナログパッドを使う場合、L1がやや遠いという印象だ。押せなくもないし、それほど多用するユーザーも多くないとは思うが、デザイン時に少し考慮して欲しかった。
液晶は視野角が狭く、ほぼ正面から見る必要がある。また色温度がやや高く、青っぽい。輝度は最大にすれば屋外でも視認できるレベルだ。バッテリは、輝度を30%にし、3Dゲームをプレイした場合おおよそ3時間駆動した。決して長い方ではないが、1日持ち出して息抜きにプレイする程度の利用であれば問題ないだろう。スピーカーは低音が乏しく、あくまでもおまけレベルだが、このサイズを考えれば十分だ。
OSは7型としては珍しいタブレットUIを採用。本体が横置き前提のため、こうなっているのだろう。また昨今、多くの低価格タブレットはGoogleのPlayストア非対応だが、本機は利用できる。
解像度が高くないため、多くの3Dゲームが快適に動く
それではゲームをプレイする上で重要となる性能について検証したい。ベンチマークソフトには、「AnTuTu Benchmark 4.0.3」と「3DMark 1.2」を利用。比較用にiriverの「ITQ701」の結果を加えてある。
ちなみにSUPERGAMER俺の主な仕様は、プロセッサがRockchip RK3066(デュアルコアCortex-A9、1.6GHz、メモリ1GB、ストレージ8GB、1,024×600ドット表示対応7型ワイド液晶ディスプレイ、OSにAndroid 4.1.1を搭載している。
本製品はデュアルコアのRockchip RK3066を搭載しているため、AnTuTuのCPU関連のベンチマークでは、さすがにクアッドコアのTegra 3を搭載するITQ701に劣ったが、GPU関連のベンチマーク、およびストレージのI/OはともにITQ701を上回り、総合性能もITQ701を上回った。実際にWebブラウジングやホーム画面での操作をしても、キビキビしている印象だ。
Antutu | SUPERGAMER俺 | ITQ701 |
---|---|---|
Total | 15367 | 13997 |
Multitask | 2956 | 2865 |
Dalvik | 1383 | 1006 |
CPU integer | 1299 | 1949 |
CPU float-point | 935 | 1291 |
RAM Operation | 1017 | 1538 |
RAM Speed | 968 | 449 |
2D graphics | 1256 | 769 |
3D graphics | 3595 | 2779 |
Storage I/O | 1328 | 741 |
Databese I/O | 630 | 610 |
3DMarkでも、Graphics test1とPhysics testでこそITQ701に後塵を拝したが、Graphics test 2では上回った。
3DMark | ITQ701 | SUPERGAMER俺 | edenTAB | Optimus LTE | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Normal | Extreme | Normal | Extreme | Normal | Extreme | Normal | Extreme | |
Storm score | 3633 | 1944 | 2983 | 2216 | 1608 | 1183 | 3742 | 2095 |
Graphics score | 3220 | 1637 | 2683 | 1912 | 1427 | 1012 | 3731 | 1880 |
Physics score | 6596 | 5669 | 4905 | 4987 | 2886 | 2896 | 3782 | 3496 |
Graphics test 1 | 12.5 FPS | 7.6 FPS | 7.9 FPS | 7.2 FPS | 4.6 FPS | 3.6 FPS | 16.7 FPS | 10.1 FPS |
Graphics test 2 | 15.9 FPS | 6.7 FPS | 22.4 FPS | 9.8 FPS | 9.5 FPS | 5.7 FPS | 15.8 FPS | 6.9 FPS |
Physics test | 20.9 FPS | 18 FPS | 15.6 FPS | 15.8 FPS | 9.2 FPS | 9.2 FPS | 12.0 FPS | 11.1 FPS |
ただし、ITQ701は1,280×800ドットの液晶を搭載していて、メニューバーを除いた解像度は1,280×736ドット(942,080画素)だが、本製品は1,024×600ドットの液晶で、実解像度は1,024×552ドット(565,248画素)。画素数で言えば4割少なく、その分描画負荷が低いためスコアが高い。
上記6タイトルのゲームについては、Dead Trigger、Riptide GP2、Trial Xtreme 3、Syder Arcade HD、Samurai II:VENGEANCEの5タイトルともにストレス無くプレイできた(なお、Dead TriggerはTegra最適化タイトルでもある)。NBA12K3は重く、ちょっとプレイしにくいと感じた。
ソフトウェアボタンが操作しにくいと感じているゲーマーにおすすめ
以上のように、SUPERGAMER俺はゲームに特化したハードウェアのAndroidタブレットである。コントローラ部を除けば純粋なAndroidタブレットであり、好きなゲームをプレイする際に、「ソフトウェアボタンでは感触がなくプレイしにくい」、「TVに出力してプレイしたい」といったコアゲーマーならではのニーズに応えられる製品となっている。
欲を言えば、せっかくコアゲーマー向けなので、Snapdragon 800やTegra 4などの最新SoCを採用して欲しかったし、液晶やコントローラはもう少し改良の余地があったのだろうが、16,800円という価格でPlayストアをサポートし、多くのゲームをプレイできるのは評価できる。最新SoCやIPS液晶を採用した次機にもに期待がかかるところである。