Hothotレビュー

日本エイサー「Aspire V5-122P-N44D/S」

〜国内唯一のAMD Temash搭載11.6型モバイルノート

Aspire V5
発売中

価格:オープンプライス

 日本エイサー株式会社は、国内初となるAMD Temash搭載の11.6型モバイルノートPC「Aspire V5-112P-N44D/S」(以下:Aspire V5)を発売した。価格はオープンプライスで、実売価格は5万円前後だ。発売からかなり時間が経過してしまったが、今回1台お借りできたので、従来のBrazosと性能を比較しながらレポートをお届けしたい。

 Aspire V5シリーズは、11.6型の軽量薄型のモバイルノートである。より廉価なIntelモデルも用意されているが、今回ご紹介するV5-112P-N44D/Sは国内で唯一AMD Temashを搭載。Temashは世界初のクアッドコアx86 SoCということもあり、実力が気になるところである。

バッテリ駆動時最大1GHz、ACアダプタ駆動時1.4GHz駆動のA6-1450

 まずは本機で最大の目玉となるTemashの性能を検証する。3月時点にTDP 15WのKabiniこと「A4-5000」についてレビューをお届けしたが、当時はまだリファレンス品で、一般小売される製品ではなかった。Aspire V5はようやく製品という形になったものだと言える。

 本製品に搭載されるSoCは「A6-1450」と呼ばれるもの。AMDの製品情報によれば、CPUの動作クロックは1GHz〜1.4GHz、コア数は4基。GPUの動作クロックは300MHz〜400MHz、ストリームプロセッサ数は128基などとされている。ただ本来はクラムシェル型ノートPCではなく、タブレット/ハイブリッドPC向けとして位置づけられた製品であり、TDPは8Wと抑え目になっている。

 実際に「CPU-Z」や「HWiNFO64」でCPU情報を取得したところ、コントロールパネルの電源オプションで「高パフォーマンス」を選ぶと、バッテリ駆動時は最大1GHz、ACアダプタ駆動時は1.4GHzで駆動することが確認できた。

CPU-Z 1.65ではまだA6-1450の情報が少ない。最小動作クロックは600MHzだ
ACアダプタ駆動時は1.4GHzまで上昇する
バッテリ駆動時は1GHz駆動となる。電圧もかなり低下している
HWiNFO64の結果

 つまり、このSoCには2月にAMDが発表した「Turbo Dock」技術が応用されているとみられる。本来はピュアタブレット状態時には性能を落としてバッテリ駆動時間を伸ばして発熱を抑え、一方キーボードドック/AC電源動作時は最大性能が出せるように設計された技術だが、これをクラムシェルの本製品で有効にしているわけである。なお、下記のベンチマークはすべてACアダプタ利用時の結果である。

 ベンチマークは「PCMark 7」、「ファイナルファンタジーXI(FFXI)オフィシャルベンチマーク」、「SiSoftware Sandra」を使用し、比較用として以前レビューしたCore i3-3217U搭載の「LesanceNB S3112/T」、Core i5-3337U搭載の「Aspire R7」、Atom Z2760搭載の「ARROWS TAB Wi-Fi QH55/J」、そしてTemashの前身となるBrazosを採用した「ThinkPad X121e」の結果を掲載している。

 また、ThinkPad X121eは筆者の手持ち機器のため、新たに「Cinebench R11.5」によるCPU性能の比較、そして新「3DMark」によるGPU性能の比較を行なってみた。


Aspire V5 ThinkPad X121e Aspire R7 LesanceNB S3112/T ARROWS TAB Wi-Fi QH55/J
CPU A6-1450 E-450 Core i5-3337U Core i3-3217U Atom Z2760
メモリ 4GB 8GB 8GB 4GB 2GB
ストレージ 500GB HDD HDD 320GB 500GB HDD HDD 500GB eMMC 64GB
OS Windows 8 Windows 8 Pro Windows 8 Windows 8 Windows 8
PCMark 7
Score 1225 1083 2826 1567 1425
Lightweight 679 1107 1325 1547 939
Productivity 355 641 838 1016 586
Creative 2877 1919 5753 4419 2968
Entertainment 1241 1054 2686 1307 1034
Computation 3855 2267 15957 11544 3801
System storage 1515 1304 1604 1374 2968
ファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3
Low 3196 3527 6169 4888 1424
High 2206 2334 3775 3231 858
SiSoftware Sandra
Dhrystone 18.21GIPS 7.44GIPS 49.64GIPS 35GIPS 9.14GIPS
Whetstone 12GFLOPS 6.12GFLOPS 31.39GFLOPS 22.68GFLOPS 5.8GFLOPS
Cinebench R11.5
CPU 1 0.54 - - -
3DMark
Ice Storm 18548 15333 - - -
Graphics score 22196 20076 - - -
Physics score 11775 8394 - - -
Graphics test 1 98.49 89.95 - - -
Graphics test 2 94.61 84.78 - - -
Physics test 37.38 26.65 - - -
Cloud Gate 1577 1305 - - -
Graphics score 1942 1931 - - -
Physics score 952 612 - - -
Graphics test 1 8.29 9.44 - - -
Graphics test 2 8.61 7.56 - - -
Physics test 3.02 1.94 - - -
Fire Strike 221 213 - - -
Graphics score 257 228 - - -
Physics score 1329 753 - - -
Graphics test 1 1.26 0.95 - - -
Graphics test 2 1.01 1.05 - - -
Physics test 4.22 2.39 - - -
Combined test 0.31 0.39 - - -

 まずPCMark 7だが、1.65GHzのBrazosことE-450を搭載するThinkPad X121eとの比較では約2割のスコアアップが確認できた。細かく見るとLightwightとProductivityでスコアがARROWS TAB Wi-Fi QH55/J以下となってしまっているが、実はPCMark 7は3月に1.4.0へのアップデートを行なっており、スコアの互換性がなくなってしまっているのが原因である。今回取得したスコアの中でAspire R7のみがバージョン1.4.0のPCMark 7を使用しているので、こちらも合わせて参照されたい。

誇らしげにパームレスト貼ってある「ULTRA LOW VOLTAGE」のシール。1GHz駆動時は0.875Vなので確かに低いが、1.4GHz駆動時は1.125V。Haswellがこの電圧なら4GHz程度で回るのも、また事実である……

 もはやGPUではなくCPUベンチマークとなっているFFXIオフィシャルベンチマーク3では、ThinkPad X121eに後塵を拝する結果となった。このベンチマークではCPUクロックやIPC(クロックあたりの命令実行数)がモノを言うため、少なくともちょっと古めのアプリケーションでは、クロックが低い分も合わせてコアあたりの性能はE-450より低下していると言える。

 一方最新命令を積極的に使うSiSoftware Sandra、マルチコアを積極的に使うCinebench R11.5では、ThinkPad X121eより大幅に高い性能を示しており、このあたりは4コアや最新の設計の強みが出ている結果と言えるだろう。

 3D性能を評価する3DMarkでも、Ice StormとCloud Gateでは約20%の差をつけており、GPU性能を含む全体的な性能向上が見られる。このあたりはさすがAPUといったところだろう。

 ただFire Strikeの結果からもわかるよう、DirectX 11に対応しているからと言って、最新のゲームがサクサク動くレベルのGPUかと言われれば、難しいというのも事実である。しかしFFXIのような古いゲームはCPU性能も重視されるため、これもクロックが低くIPCもそれほど高くないTemashにとってネックとなりそうだ。

 AMDはAPUになってから、盛んにアプリケーションの最適化の必要性を謳っており、世界中の開発者に協力を求めているが、それはこのベンチマーク結果を見ればよく分かる。少ないGPUリソースを効率よく使いながら、マルチコアに対応した新設計のアプリケーションでなければ、APUの性能が活きてこない。Aspire V5もその将来性に賭けたマシンの1つと言えるだろう。

AMD搭載ノートPCとしては薄くて軽い。約4時間の駆動が可能。

 では本体を見ていこう。スペック上の公称本体サイズは約289×206×19.55〜21.2mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.38kgとされている。実測は1,353gで、過去のAMD搭載ノートを見渡しても、かなり薄型軽量な部類に入ると言える。(失礼だが)「タッチ付きでAMD……」という先入観付きで持ち上げたら驚くほどである。本体も薄く出っ張りが少ないため、カバンにサクッと入りそうだ。

 本体はシルバーを基調としており、なかなか清潔感がある。タッチパネルは滑りがよく、試した限りではそれほど指紋が目立たなかった。液晶パネルの視野角は広い部類とは言えないが、色温度が適正で、色味の調節は不必要だと感じた。このあたりは素晴らしい。ただタッチパネルを内蔵している関係上液晶側が重く、大きく角度をつけて広げられないのはややマイナスポイントかもしれない。

 ただ薄型のため、排気ファンはそれなり高速に回転するようで、アイドル時でも一般的なリビングで聞こえる程度の音、負荷時ではそれなり甲高い音を発する。しかし、TDPが8Wということもあり排気や本体はそれほど熱くない。これは改善点と言えるかも知れない。

 また、薄型化のために、バッテリは3セルで内蔵されており、交換はできないようになっている。一応底面パネルを開けば内部を覗くことも可能だが、ネジがシールで封印されているため、今回分解はしなかった。ただ底面には増設バッテリ用と思われる追加の端子がついており、将来的にこれによるバッテリの拡張が可能かもしれない。

 なお、バッテリ駆動時間については、今回計測トラブルの関係で、バッテリ切れになるまで計測ができなかった。参考までに電源プランを「バランス」、輝度を30%に設定して、BBenchでキーストローク/Web巡回をオンにして計測したところ、残り約28%のところで約3時間駆動できた。逆算すると、残り5%までは約3.96時間の駆動が可能だろう。3セルバッテリでこれだけ駆動できれば、6セルで8時間駆動も実現可能だろう。AMD搭載ノートとしては画期的と言える。

 付属のACアダプタはかなり小型で、コンセント一体型となっている。そのためケーブルが細く取り回ししやすい。専用のキャリングケースが付属するのも、初心者にはなかなか親切だと言える。

 ただしその代わりインターフェイス回りが削られ、ディスプレイ出力はMini DisplayPortのみでミニD-Sub15ピンは付属の変換アダプタ、Ethrenetも付属のUSBアダプタを利用する。USBも3.0が1基、2.0が1基のみで、SDカードリーダ、ヘッドフォンジャックがある程度とやや物足りない。この辺りは致し方ないところだ。

 個人的に一番気になったのは電源ボタンの位置で、本体右側面にある。よって右手で本体を持ち上げると誤って切ってしまうことがあった。クラムシェル型でここにつけるなら、Let'snoteに採用されているようなスライド式にすべきだろう。ちなみに個人的な意見では、Alienwareのようなキーボード上部中央配置が、最も誤押が少ない一方でアクセスしやすい場所であるように感じる。

 また、LEDインジケータも、電源ランプとバッテリ充電ランプの2つと必要最小限で、HDDアクセスランプや無線LAN状態表示ランプがない。コストの兼ね合いもあると思うが、これらは欲しかったところだ。

本体パッケージ
付属品一覧。キャリングケースの付属は親切だろう
Mini DisplayPort→ミニD-Sub15ピン変換アダプタ
USB Ethernetアダプタ
変換アダプタを取り付けたところ
付属のACアダプタ
ACアダプタは182gと軽量である
コンセントの向きを縦と横の2種類から選べるのは良い
本体は1,353gとAMD機としては軽量
本体を開いたところ
明るいシルバーを基調としており、清潔感がある
本体右側面。電源スイッチ、ヘッドフォンジャック、USB 2.0、ACアダプタ入力がある
左側面はケンジントンロックポート、排気口、USB 3.0、Mini DisplayPort、そしてSDカードリーダが並ぶ
本体背面は何もない
インジケータは電源とバッテリの2つのみ
ThinkPad X121e(右)と比較したところ
タッチパネルを内蔵していながらパネルの厚みは抑えられている。また、キーボード側は大幅に薄くなっている
液晶は光沢タイプだが、タッチ操作による指紋の付着は少ない
液晶の視野角はそれほど広くない
本体底面
拡張バッテリ用のポート

打ちやすいキーボードと良好なタッチパッド感度

 キーボードは、最近の日本エイサー製品で多い、アイソレーションながらも、一部右側のキーが合体しているタイプ。具体的には「\」と「BackSpance」、「む」と「Enter」、「ろ」と「右Shift」、スペースバーと「無変換」、「変換」である。これは英語配列のフレームをそのまま流用しているためだ。

 とは言え、主要キーは18.5mmのピッチがあるほか、ストロークも浅いながらもクリック感はしっかり確保されており、11.6型ノートとしては打ちやすい部類に入る思う。

 タッチパッドはおおよそ90×50mm。マルチタッチに対応しており、2本指によるジェスチャー操作にも対応。一部マルチタッチ対応タッチパッドでは、2本の指をきちんと左右一列に揃えないと操作できなかったりと何かとストレスが溜まるものもあるが、本製品のタッチパッドは認識もよく使い心地が良かった。

 先述のタッチパネルの感度も含めて、ユーザーインターフェイス回りの完成度は11.6型としては合格点であり、特に不満はない。

キーボードやタッチパッドの配列
主要部は18.5mmのピッチが確保されている
タッチパッドの幅は約90mm
タッチパッドの奥行きは約50mm

AMDの最新APUを取り入れた意欲的なモデル

 以上簡単に見てきたが、Aspire V5はモバイルノートPCとしての使い勝手をきちんと抑えつつ、AMDの新アーキテクチャの採用で薄型化と軽量化を実現した製品と言える。アプリケーションの得意不得意はあるものの、従来のE-450搭載のThinkPad X121eと比較してCPUで約1.5倍〜2倍、GPUで約1.2倍の性能向上を実現しつつ、SoCになることで消費電力が半減し、バッテリ駆動時間も伸びているのは、十分評価に値するだろう。

 ストレージがHDDなので、Windows Updateやウィルスチェックなどディスクアクセスが多発するシーンでは、ストレスになると感じることがあった。特にThinkPad X121eやAspire R7もそうだが、HDD採用機であるにもかかわらずHDDランプがないというのは、「操作していてなぜか普段より遅いけど、遅い原因が何なのか、タスクマネージャーを開いてみるまではわからない」というのが、何よりのストレスである。腕に覚えがあるユーザーは、保証が切れるのを承知の上で安価なSSDに交換してしまうのが良いかもしれない。

 Temashに採用される“Jaguar”CPUコアは、ソニーコンピュータエンタテインメントとMicrosoftの次世代ゲーム機「PlayStation 4」、「Xbox One」にも採用が決定されている。それらのゲーム機の動作クロックはまだ明るみに出ていないし、コア数も8と多いので直接比較はできないが、Aspire V5はその性能の一部を垣間見ることができる、貴重なPCと言えるだろう。

(劉 尭)