レノボ「ThinkPad Edge 11"」
~11.6型液晶搭載のEdgeシリーズ最小最軽量モデル




ThinkPad Edge 11"

 レノボのノートPCブランドとしては、ThinkPadシリーズが有名だが、2010年1月に新たなブランドとして、ThinkPad Edgeシリーズが追加された。

 ThinkPad Edgeシリーズは、ThinkPadシリーズの品質と信頼性を、より手ごろな価格で実現するというコンセプトで生まれた新シリーズであり、最初に13型液晶搭載のThinkPad Edge 13"が登場。2010年4月に、14型液晶搭載のThinkPad Edge 14"と15型液晶搭載のThinkPad Edge 15"が追加された。

 ThinkPad Edge 11"は、2010年9月に登場した最新モデルであり、ThinkPad Edgeシリーズの中で、最も小型で軽いことが特徴だ。ThinkPad Edge 11"の固定構成モデルは、メモリ容量やHDD容量、WiMAXの有無、Office Personal 2010の有無などで4モデル用意されているが、今回は、Officeなしの上位モデルであるモデル032827Jを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。

●最厚部でも3cmを切るスリムなボディを実現

 ThinkPadシリーズといえば、ブラックでスクエアなボディがアイデンティティであったが、ThinkPad Edge 11"のボディは、ThinkPadのデザインをベースにしながらも、角にアールが設けられており、周囲をシルバーのモールで囲まれているため、よりカジュアルな印象を受けるが、ボディの作りはしっかりしており、質感も高い。天板とパームレストにThinkPadロゴがあるが、このiの字の点に赤色LEDが埋め込まれており、電源オン時に点灯したり、スリープ時にゆっくりと点滅するのも、デザイン的なアクセントとなっている。

 BTOで仕様を変更できるカスタマイズモデルでは、ボディカラーを光沢ありのミッドナイト・ブラック、光沢なし(つや消し)のミッドナイト・ブラック、光沢ありのヒートウェーブ・レッドの3色から選択できるが、固定構成モデルのボディカラーは、光沢なしのミッドナイト・ブラックのみとなっている。

 ThinkPad Edge 11"は、バッテリの一部が後ろに出っ張るデザインになっているが、バッテリを含めたフットプリントは、「DOS/V POWER REPORT」誌などのA4変形判とほぼ同じで、厚さは最薄部が15.6mm、最厚部でも29.5mmとスリムだ。重量は約1.5kgであり、最軽量クラスではないが、気軽に携帯できる範囲に収まっている。

 ThinkPad Edge 11"の固定構成モデルは、CPUとしてCore i3-380UM(1.33GHz)を搭載。メモリは、今回試用した032827Jの場合、2GB+1GBの合計3GBという少々変わった構成となっている(下位モデルの032826Jは2GB)。SO-DIMMスロットは2基用意されており、最大4GBまで増設可能だ。HDD容量は320GBである(032826Jは250GB)。CPUが超低電圧版なので、動作クロックは低いが、その分消費電力と発熱は小さい。プリインストールOSは、Windows 7 Professional 64bit版である。

ThinkPad Edge 11"の上面。固定構成モデルのボディカラーは、つや消しのミッドナイト・ブラックである。後ろに出っ張っているのはバッテリだ「DOS/V POWER REPORT」誌とThinkPad Edge 11"のサイズ比較。フットプリントはほぼ同じだThinkPad Edge 11"の底面。底面全体が大きなカバーで覆われている
底面のカバーを外したところ。HDDやSO-DIMMスロット、ファン、Mini PCI Expressスロットなどが見えるメモリスロットとしてSO-DIMMスロットを2基搭載。今回試用した032827Jでは、標準で1GB SO-DIMMと2GB SO-DIMMが1枚ずつ装着されている中央には、WiMAX+WiFiモジュールが実装されている。左に見えているチップは、Intel HM55チップセットだ
WiMAX+WiFiモジュールの左には、SIMスロットがあるが、日本ではWWAN搭載モデルは販売されていない。SIMスロットのさらに左にもMini PCI Expressスロットが用意されているパームレスト右側のThinkPadロゴのiの点に赤色LEDが入っており、電源オン時には点灯する天板にも、パームレストと同様にThinkPadロゴがあり、こちらも電源オン時にLEDが点灯する。スリープ中はゆっくりと点滅する

●光沢液晶と6列キーボードを採用

 液晶には、光沢タイプの11.6型ワイド液晶パネルを採用。解像度は、現在の主流の1,366×768ドットである。ThinkPadでは、主にノングレア液晶が採用されていたが、ThinkPad Edgeでは、光沢タイプの液晶が採用されている。そのため、コントラストは高いが、外光の映り込みが気になることがある。液晶上部には30万画素Webカメラが搭載されており、ビデオ会議などに利用できる。

 ThinkPad Edgeシリーズでは、キーボードのデザインもThinkPadとは異なり、6列配列となっている(ThinkPadは7列配列キーボードを採用)。キートップとキートップの間が離れているアイソレーションタイプのキーボードを採用しており、キータッチも良好だが、右側の「む」や「け」などの一部のキーのピッチがやや狭くなっている。カーソルキーの隣のPgUpキーとPgDnキーの高さが低くなっており、ミスタイプを防いでいる。ただし、Deleteキーが右上の端ではなく、Deleteキーの右側にHomeキーとEndキーが用意されているので、慣れるまで違和感を感じる人もいるだろう。

 ポインティングデバイスとして、ThinkPadでお馴染みのウルトラナビを搭載。ウルトラナビは、スティック状のトラックポイントとタッチパッドから構成されており、両方を同時に使うことも、どちらかだけを使うことも可能だ。また、トラックポイントとタッチパッドの感度を別々に設定でき、タッチパッドでのマルチジェスチャー操作にも対応するなど高機能だ。

 なお、電源ボタンが液晶ヒンジのすぐそばに配置されているため、液晶を開く角度によっては、ボタンがやや押しにくくなることがある。

 インターフェースも充実しており、USB 2.0×3(うち1つはPowered USB)、HDMI、ミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernet、マイク入力、ヘッドフォン出力の各ポートを備えているほか、SDメモリカード/メモリースティック(PRO)対応のメディアカードリーダを搭載する。

光沢タイプの11.6型ワイド液晶を採用。解像度は1,366×768ドットだ液晶上部に30万画素Webカメラを搭載。ビデオ会議などに利用できるキーボードは6列配列で、アイソレーションタイプになっている。キーピッチも十分だが、右側の「む」や「け」などのキーのピッチはやや狭くなっている。最上段には、ファンクションキーとマルチメディアキーが用意されている。また、PgUpキーとPgDnキーの高さが低くなっており、ミスタイプしにくい。ただし、Deleteキーが右上の端にないので、やや違和感を感じる
ポインティングデバイスとして、トラックポイントとタッチパッドから構成されるウルトラナビを搭載。タッチパッドは、マルチジェスチャー操作に対応しているウルトラナビでは、トラックポイントとタッチパッドのそれぞれ独立した設定が可能
電源ボタンが液晶のヒンジのすぐそばに配置されているので、やや押しにくい背面にミニD-Sub15ピン端子が用意されている

●無線LAN有効時で6時間以上の連続駆動を実現

 バッテリは、10.8V/5,200mAhの6セル仕様で、公称バッテリ駆動時間は約6.5時間となっている。実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定で、バッテリ駆動時間を計測したところ、6時間12分の駆動が可能であった(電源設定は「バランス」に設定、バックライト輝度は中)。公称駆動時間にかなり近く、バッテリの持ちも満足できる。ACアダプタのサイズは、このクラスの製品としては標準的である。

ThinkPad Edge 11"のバッテリ。本体背面から飛び出す形になっているバッテリは、10.8V/5200mAhの6セル仕様だCDケース(左)とバッテリのサイズ比較
ACアダプタのサイズは、このクラスの製品としては標準的だCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較

●モバイルノートPCとしては十分な性能

 参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage 64bit版」「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較用にパナソニック「Let'snote J9ハイパフォーマンスモデル」、NEC「VersaPro UltraLite タイプVC」、「LaVie M」、レノボ「ThinkPad T410s」、デル「Studio 15 OPIデザイン」の値も掲載した。

 今回試用したThinkPad Edge 11"は、CPUに超低電圧版のCore i3を搭載しており、通常電圧版のCore i5に比べると動作クロックが半分程度しかないので、通常電圧版Core i5を搭載したLet'snote J9ハイパフォーマンスモデルやThinkPad T410sなどに比べると、PCMark05のCPU Scoreの値も半分程度になっている。しかし実際の使用感はそこまで差があるわけではない。Webブラウズや文書作成といった、一般的な作業においてパフォーマンス不足を感じることはほとんどなく、モバイルノートPCとしては十分な性能といえる。

□ベンチマーク結果

ThinkPad Edge 11"Let'snote J9ハイパフォーマンスモデルVersaPro UltraLite タイプVCLaVie MThinkPad T410s
CPUCore i3-380UM(1.33GHz)Core i5-460M(2.53GHz)Core i7-620UM(1.06GHz)Celeron SU2300(1.2GHz)Core i5-430M(2.26GHz)
ビデオチップCPU内蔵コアCPU内蔵コアCPU内蔵コアIntel GS45内蔵コアCPU内蔵コア
PCMark05
PCMarksN/A7746509228265677
CPU Score29767149359629667375
Memory Score32405629396530666184
Graphics Score14922239168413972610
HDD Score5259283191626549484291
PCMark Vantage 64bit
PCMark Score3507未計測未計測未計測未計測
Memories Score2129未計測未計測未計測未計測
TV and Movie Score2534未計測未計測未計測未計測
Gaming Score2279未計測未計測未計測未計測
Music Score3645未計測未計測未計測未計測
Communications Score2772未計測未計測未計測未計測
Productivity Score3050未計測未計測未計測未計測
HDD Score3318未計測未計測未計測未計測
3DMark03
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)27843345271420484101
CPU Score62511447714951068
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH13222445163113672458
LOW19533893241019953808
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP89.3798.2710076.4396.63
HP10099.9710099.9799.97
SP/LP10099.9710099.97100
LLP99.9799.9710099.9799.97
DP(CPU負荷)3229276821
HP(CPU負荷)1713134212
SP/LP(CPU負荷)1188287
LLP(CPU負荷)968226
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード74.54MB/s189.4MB/s164.2MB/s60.31MB/s36.20MB/s
シーケンシャルライト73.84MB/s154.6MB/s39.58MB/s66.25MB/s40.05MB/s
512Kランダムリード31.42MB/s172.5MB/s142.6MB/s27.50MB/s23.30MB/s
512Kランダムライト33.12MB/s106.2MB/s34.53MB/s31.19MB/s24.25MB/s
4Kランダムリード0.422MB/s12.8MB/s7.629MB/s0.369MB/s0.425MB/s
4Kランダムライト1.097MB/s20.91MB/s13.66MB/s0.984MB/s0.961MB/s
BBench
Sバッテリ(標準バッテリ)6時間12分未計測4時間23分3時間39分4時間15分
Lバッテリなし10時間15分未計測7時間26分なし
Xバッテリなしなしなしなしなし

●コストパフォーマンスの高いモバイルノートPCとしてお勧め

 ThinkPad Edgeシリーズは、ThinkPadシリーズのエッセンスを受け継ぎながらも、ボディデザインやキーボード配列などを一新し、よりカジュアルで、パーソナルユースに向いたマシンへと生まれ変わった。その中でもThinkPad Edge 11"は、ThinkPad Edgeシリーズの中で最小最軽量のマシンであり、バッテリ駆動時間や重量など、モバイルノートPCとしてのバランスは優れている。

 今回試用した032827Jのダイレクト価格は91,350円だが、BTOで仕様の変更が可能なカスタマイズモデルの場合、Pentium U5400搭載のベーシックモデルなら、執筆時点ではキャンペーン価格で59,850円、Core i3-380UM搭載のハイエンドパッケージでも同じくキャンペーン価格で69,930円で購入できるので、コストパフォーマンスも非常に高い。気軽に持ち運べるモバイルノートPCが欲しいが、ネットブックでは性能的に不満があり、予算もできるだけ抑えたいという人にお勧めできる製品だ。

バックナンバー

(2010年 11月 10日)

[Text by 石井 英男]