日本HP「HP Omni 100」
~据え置きノート相当の消費電力に抑えた液晶一体型PC



「HP Omni 100」

発売中
直販価格:59,800円より



 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)から、液晶一体型PCの新たなモデル「HP Omni 100シリーズ」が登場した。上位に「TouchSmart PC」、フルHDパネルや地デジチューナを搭載した「All-in-One PC200」が展開される中、HP Omni 100シリーズは、同社の液晶一体型PCとしてネットトップの上に位置するスタンダードモデルに属し、実用的性能と基本機能を低価格で提供するモデル。

 今回試用したのはHP Omni 100のHP Directplusモデル。もう1つ用意されている量販店向けモデルとの違いはOSにWindows 7 Home Premium 64bit(量販店向けはProfessional 64bit)を採用している点、Office Personal 2010が非搭載な点、HDDが320GB(量販店向けモデルでは500GB)となる点、そしてHP安心サポート365が付かない点などだ。その分、価格が59,850円(量販店向けモデルは10万円前後が想定される)と大幅に抑えられている。今回は、この6万円で買える一体型PCをレビューしてみる。

●光沢/非光沢の使い分けでメリハリあるデザイン

 Omni 100は黒を基調としたカラーリング。フレームなどは光沢があるが、一方本体カバーなどはつや消しで、黒一色の中にもメリハリをつけている。液晶パネルは非光沢で、最近の液晶一体型PCとしては比較的珍しい。おそらく映像特化というよりはインターネット閲覧等の作業をメインに設計されたのだろう。また、省スペースな20型ワイドボディ、角を落とした柔らかなフォルムといった外観上の特徴は、プライベートな場所に置くデスクトップPC、という用途にマッチするだろう。

 液晶パネルのサイズは20型ワイド。解像度は1,600×900ドット。フルHDを望む声もあると思われるが、このサイズのパネルとしては標準といって良い。一般的な作業をする上での窮屈感は少ない。フレーム上部にはWebカメラも搭載しており、動画チャット等も可能な仕様。液晶一体型PCとして見ればスタンダードなレイアウトと言える。

ディスプレイサイズは20型ワイド。非光沢パネルだが、そのぶん室内照明の反射は少なく普段の作業において目が疲れにくい電源ボタンは本体正面の右下に配置液晶フレームの中央上部にはウェブカメラを内蔵。ビデオチャットアプリや添付ソフトウェアから利用できる
解像度は16:9ワイドアスペクトの1,600×900ドット。ブラウジングしながらその横で何かを表示させておく、といったことが可能な解像度だHP MediaSmartソフトウェアによりウェブカメラなどをコントロール。このアプリではそのほかにもDVDや映像ファイル、音声ファイルといったメディアファイルを統合的に管理/視聴可能だ

●シンプルながら機能的な1軸ヒンジのスタンド

 スタンドは1軸でチルト角はおよそ-5度から25度。高さ調節機能は無い。非常にシンプルな構造だけに強度は十分ではないだろうか。サイズはおよそ508×220×407mm(幅×奥行き×高さ)。質量は実測7.8kgで、部屋と部屋との持ち運びもそこまで苦にならないレベルだ。

 スタンドには開口部があるため、ケーブルはきれいににまとめることが可能だ。LAN機能に関しては最近では珍しい100BASE-TX/10BASE-Tのもの。インターネット接続では問題無いと思われるが、家庭内のLANをGigabit Ethernetで構築している際は注意が必要だ。これとは別にIEEE 802.11b/g/n対応の無線LAN機能も搭載している。

背面は下側に吸気スリット、上部に排気スリットをレイアウト。中央のHPロゴ入りカバーを外すことで左右のカバーのロックも解除され、内部ベイにアクセスできるスタンドは1軸でデザインもシンプル。中央に開口部があり、ケーブルをまとめて通してスッキリと配線できる
本体を立てた状態。やや前かがみなおよそ-5度本体を最大まで寝かした状態。この状態でおよそ25度となり、机の上で利用する上では十分なチルト角が確保されている

●インターフェイスは必要最小限な印象

 本体右側面は、輝度調節のボタンや、光学ドライブを搭載。左側面の下寄りには各種のインターフェイスが搭載されている。6-in-1のメモリカードリーダおよびUSB 2.0×2、オーディオ入出力が備わっている。

 これとは別に背面にはACアダプタ用ジャック、Ethernet、スピーカー出力、USB 2.0×4が搭載されている。インターフェイスの種類としては最小限といったところだ。上位モデルのように映像入力などは備えていない。

右側面はディスプレイの輝度を調節するボタンとHDDのアクセスLEDが搭載されている。丸みを帯びた本体デザインのため、正面から見ると隠れることになり、正面がよりスッキリとした印象となる。この上にはDVDスーパーマルチドライブが搭載されている左側面には6-in-1カードリーダとUSB 2.0×2、オーディオ入出力端子が用意されている背面は左からACアダプタ用ジャック、Ethernet、スピーカー出力、USB 2.0×4を装備。USB端子は合計6ポートということになる
キーボードとマウスはともにUSBワイヤード。どちらもごく一般的なデザインをしており、クセの無い入力操作ができるキーボード右上にはボリューム調節およびミュート用のボタンも装備。本体側にはボリューム調節の術が無いため、OS上からまたはここから操作の二択だ

●省電力CPUとグラフィック統合チップセットでノートPC並の省エネ性能

 ではスペック面を見ていこう。CPUはAthlon II X2 270u。このプロセッサはデュアルコアかつAthlon系であるため、L3キャッシュを搭載しない。動作クロックも2GHzと比較的低く抑えられているが、それと引き換えにTDPは25Wと、AMDのデスクトップ向けプロセッサとしては最小クラスを実現している。CPU-Zからステータスを見ると、製造プロセスも45nmとAMDのプロセッサとしては最先端。L1キャッシュは64KB×2×2、L2キャッシュも1MB×2という構成である。HTLinkは1,800MHzに抑えられているが、このクラスで、また省電力をアピールポイントとしたCPUとしては妥当な選択だろう。

 チップセットは「AMD 785GX」、サウスブリッジは「SB850」が組み合わされていることになっている。ただし、AMD 785GXというチップセットは、採用例はあるようだがAMD公式サイトには情報が無い製品である。GXと付くように、グラフィックス機能を搭載している。

 GPU-Zから見たグラフィックス機能は、DirectX 10.1に対応したATI Radeon HD 4270と表示されている。AMD 890GXがRadeon HD 4290、AMD 880GがRadeon HD 4250であるから、製品名からすればその中間のポジションとなるだろう。実際、GPUコアクロックは590MHzと、30MHz程度ではあるがAMD 880Gより引き上げられている。

 一方、サウスブリッジのSB850だが、SATA 6Gbpsを利用しているわけではなく、ノースブリッジがAMD 700系であることから、ノース/サウス間のバスもAlink Express II相当で結ばれていると見るのが正しいだろう。実際にSB850が接続されているのか、SB710が接続されているのかは不明だが、省電力であることもアピールポイントである製品なだけに、プロセスルールが微細で省電力なSB850を搭載している可能性も十分に考えられる。

 メモリはDDR3-1333で4GBという構成だ。64bit OSが搭載されているため、4GBの容量を使い切ることが可能となっている。HDDは320GB。搭載されていたのはWestern DigitalのWD3200AAJS。デスクトップ向けHDDとしては一般的な3.5型サイズの製品で、キャッシュ容量は8MBとなる。光学ドライブはDVDスーパーマルチ。ノートブック向けのいわゆるスリムドライブだ。

 Omni 100の電源はACアダプタ。容量は19V×4.74Aのおよそ90Wということになり、一般的な据え置き型ノートブックと同じ程度の容量である。ネットトップPCなどではACアダプタ駆動の製品が多いものの、液晶一体型PCとして見ればACアダプタの製品も多くは100W超、そして主流は電源を内蔵しているタイプである。本製品は25Wというデスクトップ向けCPUとしては超低消費電力なCPUを採用することで、ACアダプタ駆動、そしてノートブック並の消費電力に抑えているわけだ。なお、Athlon II X2 270u自体の位置付けはネットトップより上で、若干TDPレンジは高いものの、およそIntelのCULV対抗と見て良いだろう。

CPUにはTDPが25Wのデュアルコアプロセッサ、Athlon II X2 270u(2GHz)を採用チップセットはAMD 785GX+SB850とCPU-Zでは表示されているAMD 785Gに改良を加えたグラフィック統合チップセットとみられる
Omni 100はACアダプタ駆動。サイズはいわゆる据え置きノート用のACアダプタと同程度のサイズ。電源ケーブルはコンセント側が2極+アース、ACアダプタ側は3極ACアダプタの出力は約90W(19V×4.74A)。消費電力の面でも据え置きノート程度となる

●ツールレスで内部にクイックアクセス

 液晶パネル裏のカバーは中央と左右という3つの部分に分かれて構成されている。まず中央のカバーを、本体上側を持ち上げる形で開けると、左右のカバーのロックが解除され、内部のメモリスロットやHDDベイにアクセスすることができる。ここまではツールレス。HDDベイを取り出すにはマイナスドライバーもしくはトルクスドライバーが必要だが、メモリスロットに関してはすぐにアクセスできる。

 メモリスロットはSO-DIMMが2基搭載されていた。2GBモジュール×2枚で計4GBとなるが、米国サイトの資料を読む限り4GB×2枚の8GBまで拡張可能であるとされる。HDDベイはネジ1基を緩めれば、付属のレバーを持ち上げ、手前に引っ張り出すことができる。このネジがパッと見では星型のトルクスネジのように見えるが、実際にはマイナスドライバーで回せるため作業は簡単。ネジも外れて紛失することのないようバネで押さえられており、低価格なPCながらもメンテナンス性は良好だ。

 ほか、CPU周辺のカバーもマイナスドライバーで取り外し可能。中にはCPUソケットとそこから伸びるヒートパイプ、そしてmini PCI Expressカードスロットなどが確認できる。Athlon II X2 270uは通常のデスクトップ向けCPUであり、デスクトップマザーボードでよく見るAM3ソケットに搭載されている。CPU用のヒートパイプはそこから本体上部中央方向に伸びており、高密度のフィンに熱を移動させる構造だ。確認はできなかったが、フィンの手前にはシロッコファンのような形状の物体もある。しかしCPUが25W程度であるためか、本体の動作音は極めて静か。プライベートルームの落ち着きを邪魔することは無い。

背面カバーの開閉はツールレスHDDベイはネジ1個で固定されており、これを緩めた後にレバーを持ち上げ引っ張るだけで取り外し可能HDDベイのネジの拡大写真。スプリング付きで緩めた際に紛失するおそれはない。一応星型のトルクスネジの形状をしているもののマイナスドライバーでも回すことができる構造
メモリスロットはDDR3 SO-DIMM×2。仕様機では2GB×2枚が搭載されているが、米国モデルの資料によれば4GB×2にも対応するとのことマザーボード部分。中央がCPUで、ヒートパイプを通じ本体上側の排気スリット付近に設けられたヒートシンクへと熱を移動させている。CPUの左上に見えるヒートシンクはチップセットと思われるほか、mini PCI Expressカードの下には、メモリチップ用と思わしきパターンも見えるCPU部分を斜めから見たところ。CPUソケットは一般的なデスクトップ用ソケットと同じもの。ヒートシンク部分の面積もよく分かるほか、その直前の位置にはシロッコファンが搭載されていると思われる。ただ、低消費電力だけに動作音は至って静かだ
無線LANカードとみられるmini PCI Expressカード。ハーフサイズで、本製品としては唯一の拡張スロットでもある

●ゲームやエンコードに活用できるほどではないが、もっさり感はゼロ

 ではベンチマークも見ていこう。2GHzという低クロック動作なAthlon II X2 270uのパフォーマンスは、Core i3などを搭載する上位モデルには届かないが、Atomを搭載したネットトップなどと比べると、PCMarksで2倍以上の成績だ。PCMark05のCPUスコアだけ見れば3倍にも達する。

 一方で3D性能に関しては、FinalFantasy XIのような比較的古いゲームでようやく動作するといった程度だ。DirectX 10.1にも対応しているが、基本的にゲームで活用できるレベルとは言いがたい。UVD2等のビデオ再生支援機能が利用できるため、そうした用途での活用を検討したい。

【ベンチマーク結果】
3DMark 061024x7683DMarks2173
SM2.0 Score706
HDR/SM3.0 Score900
CPU Score1639
1600x9003DMarks1576
SM2.0 Score528
HDR/SM3.0 Score608
CPU Score1638
PCMark 05 Build 1.2.0PCMarks4206
CPU4624
Memory4372
Graphics2341
HDD5451
PCMark Vantage Build 1.0.1.0PCMarks3743
Memories2247
TV and Movies2333
Gaming2699
Music4262
Communications3914
Productivity3314
HDD3375
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3HIGH4055
LOW6695
ストリーム出力テスト for 地デジDP99.72
HP99.98
SP/LP99.98
LLP99.97
DP(CPU負荷)59
HP(CPU負荷)25
SP/LP(CPU負荷)28
LLP(CPU負荷)25
Windows エクスペリエンスインデックスプロセッサ5.4
メモリ5.9
グラフィックス4.3
ゲーム用グラフィックス5.4
プライマリハードディスク5.9

 Omni 100は、まずAtomネットトップを卒業した方にお薦めしたい。Atomネットトップは、低消費電力かつ低価格でPCのハードルを下げた貢献者だが、CPUの非力さゆえに通常のWindows操作に関しても、ユーザーの入力からタスクが実行されるまでの間に待たされる印象があった。そこがOmni 100では解消されているという点が大きい。インターネット閲覧などのネットトップ的作業に関して言えば十分に実用的な性能を搭載しつつ、とくにDirectplusモデルに関してはネットトップ並の価格に抑えられており、子供の学習のためにPCを導入したい、という動機であればネットトップPCに対して十分なアドバンテージがあるのではないだろうか。

 また、据え置きノートからの買い替えでも検討してみて良いのではないだろうか。どちらも90W程度の消費電力で、Omni 100の場合は液晶一体型タイプであるため収納時の設置スペースで考えれば大きく変わるものではない。もちろん可搬性という点でノートには及ばないが、その分ディスプレイサイズは大きく、解像度も従来の15.4型ノートと比べればひとまわり大きい。こうした点で快適性を求めるニーズにもマッチしているように思える。

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(2010年 10月 1日)

[Text by 石川 ひさよし]