ASUSTeK「U20A」
~今注目の低価格モバイルノート



ASUSTeK「U20A」

7月下旬 発売予定
価格:オープンプライス



ネットブックの「Eee PC」で成功を収めているASUSTeKが、IntelのCULV(Comsumer Ultra Low Voltage:コンシューマ向け超低電圧)版プロセッサを用いて、スタイリッシュなモバイルノートPCを本格的に展開する。その先駆けとなるのが、6月に発表された「U」シリーズだ。本稿で取り上げる「U20A」は、このUシリーズにラインナップされた12.1型液晶のモデルだ。

●趣向を凝らしたスタイリッシュなデザイン

 ASUSTeKのU20Aは、12.1型の液晶ディスプレイを採用するノートPCだ。298×230×22~29.6mm(幅×奥行き×高さ)で、A4サイズよりやや大型と、この液晶サイズの製品としては標準的なサイズだ。厚みも、最厚部で30mmを切っており、まずまずスリムなスタイルになっている。

 重要なのは、この厚みでトレイ式の光学ドライブを内蔵した2スピンドルノートであるという点だ。本体側の光学ドライブ上下の余裕はほとんどないし、液晶パネルもかなり薄型になっている。同社がいかに薄さを追求しているか、写真を見るとお分かりいただけると思う。

 ただ重量に関しては、意外に重みを感じる。重量計による実測では1.88kgと多少重量のあるスペックではあるが、極端に重いというほどでもない。ただ、持ったときの感触が非常にズッシリしている。おそらく本体のスリムさから受けるイメージとの乖離だろう。見た目ほど軽量さを感じなかったのは違和感を覚えたポイントだ。

 デザインは黒を基調とした光沢感のあるもの。よく見ると、青いラメが埋め込まれている。光の加減によってはそれがうっすらと浮かび上がるようになっており、単純な光沢ブラック1色よりもクールな印象を受ける。全体のデザインはソニーのシリンダーフォルムを彷彿させるヒンジ部を持たせる一方で、無駄な曲線などがないなど、洗練されたデザインといえる。

 ポート類はオーソドックスだが、USBポートが左右側面に割り振られて配置されている点やExpressCard/34を備えるあたりが魅力だろう。スロットにはダミーカードが装着されてはいるが、基本的にはカバーなどなく端子類はむき出し。このあたりも無駄のないデザインという印象だ。

本体左側面。音声入出力、SDカードスロット、HDMI出力、ミニD-Sub15ピン出力、USB×2を備える本体右側面。DVDスーパーマルチドライブ、ExpressCard/34スロット、Ethernet、USBを備える。LANはGigabit Ethernet対応。ほかに、IEEE 802.11n対応無線LANとBluetoothも備えている前面部には各種インジケータを備える。黒いボディに白色LEDがよく映える
SDカードスロットとExpressCard/34スロットの保護はダミーカードを使用本体背面。メモリスロットとHDDへはドライバーのみで簡単にアクセスできる
面積としてはDOS/V POWER REPORT誌より一回り大きいサイズとなる重量は実測で約1.88kg。12.1型ノートPCとしてはやや重い部類に入るターガス製のブリーフケースが付属。仕切りの多い実用的なデザインのバッグだ

 12.1型の液晶ディスプレイは光沢があり、発色や輝度は良好だ。ただ、映り込みがかなり激しいのは気になるところだ。解像度は1,280×800ドットと、このサイズでは標準的なものとなっている。最近では1,366×768ドットという16:9比のパネルも増えているが、PC用途では縦解像度が高い利点を得られることや、慣れ親しんでいる1,280×800ドットを好む人も多いのではないだろうか。

 この液晶は周辺光量センサーを装備しており、環境に合わせて輝度の微調整が自動的に行なわれる。またASUSTeK製品ではおなじみのSplendid Video Enhancement技術もサポートしているので、画面の色合いやコントラストの調整を簡単に行なうことができる。

 キーボードは1つ1つのキーが独立した、いわゆるアイソレーションキーボード。キー幅は実測で17~18mm程度といったところ。極端に小さいキーがないどころか、向かって右寄りのキーは大きくなっており、十分な余裕を感じる。

 タッチパッドは標準的なサイズ。左右のボタンが一体となった最近増えているタイプだが、この手の製品でありがちな思い通りのボタンが押せないということはなかった。長さがきっちりしていることもあって左右のボタンがはっきり分割されているということだろう。

 これらキーボードとタッチパッドは、バックライトが埋め込まれており、暗部でもキー入力が行ないやすいように工夫されている。キーボードのバックライトはキーボードのFnキーとF3&F4キーの組み合わせで3段階に輝度調整が行なえるほか、もちろん消灯することもできる。

 タッチパッドのバックライトは、指に追従して横一線に光る。本製品のタッチパッドはマルチタッチにも対応しており、このバックライトもちゃんと2点を検知するようになっている。ちなみに、こちらの輝度調整や消灯機能はなく、キーボードバックライトの調整とは切り離されている。タッチパネルの厚みもあって暗部でまぶしいというほどもないことから、常時一定の光量で光る仕様となっているのだろう。

 このほかの装備としては、液晶上部に130万画素のWebカメラ、Altec Lansing製のスピーカーといったあたりが特徴。前者は30万画素クラスWebカメラを内蔵するPCがまだまだ少なくないことを考えれば嬉しい仕様といえる。後者のスピーカーは、サポートしているSRSプレミアムサウンドが無効の状態ではキレのないサウンドだったのだが、有効にすると一気に雰囲気が変わる。このスピーカーとSRSプレミアムサウンドの組み合わせによって、このクラスの製品としては質の良いサウンドを得られている印象を受ける。

 バッテリは本体背面後方に装着される。11.25V/5,600mAhの6セルのバッテリとなる。省電力機能も同社独自のPower4Gear Hybridが用いられており、4種類のプロファイルを持たせることができる。基本的にはWindowsの電力管理と連動させたものとなるが、サイドバーを閉じるなどの付加機能が備わっている。このプロファイルを切り替えるスイッチも独立して用意されており、利便性は高い。

 ACアダプタはまずまず小型のものだ。今回のテスト機は海外仕様のACアダプタとケーブルが付属していたのだが、その重量は275g。変換アダプタ込みでの重量なので、国内仕様のケーブルを運搬する場合は、もう少し軽く見積もっていいだろう。

1,280×800ドットの12.1型液晶を搭載。光沢タイプで発色は鮮やかだか、映り込みが激しいのがネック周辺光量センサーを備えており自動調整が行なわれる。その有効/無効はキーボードから設定できる画面の色合いやガンマなどを設定するSplendid Video Enhancement Technologyも備える
キーボードはいわゆるアイソレーションタイプのキーを採用。キーサイズ、ピッチには余裕を感じる設計だキー幅は実測で17~18mm程度となっているタッチパッドはサイズも十分。ボタンは左右が一体化したタイプになっている
キーボードにバックライトを搭載。暗部で文字の認識に困らない十分な光量がある。ちなみに、写真は最大輝度時のものキーボードバックライトの輝度はキーボードを用いて3段階に調節することができるタッチパネルにもバックライトを搭載。指に追従して横一線が光る仕組み
液晶上部には130万画素のWebカメラを内蔵するスピーカーはAltec Lansing製のものを内蔵するSRSプレミアムサウンドもサポート。有効にすることで一気にサウンドの雰囲気が良くなる
バッテリは本体背面後方に装着される付属バッテリの仕様は11.25V/5,600mAhの6セルタイプバッテリ重量は実測330gとなった
省電力プロファイルを切り替える独立したスイッチを備えるプロファイルを設定するPower4Gear Hybridがプリインストールされている海外版ACアダプタとCDケースとの比較。サイズは国内版のACアダプタとほぼ同じという
海外版のACケーブルとACアダプタと総重量は実測で275gこちらは日本版のACアダプタ。ケーブルは日本仕様に合ったものが付属する(写真提供:ASUSTeK)

●CULV版Core 2 SoloとIntel GS45の組み合わせ

 CPUはIntelのCore 2 Solo SU3500を搭載。CULVと呼ばれるモバイルノートPC向けの超電圧版CPUで、シングルコアとはいえCore 2シリーズにラインナップされるプロセッサである。動作クロックは1.4GHzで、200MHzを7倍してクロックを生成。最低倍率は6倍となるので、1.2GHzまでクロックが下がる。

 チップセットはIntel GS45+ICH9-MEを搭載。内蔵グラフィックはHD映像のアクセラレーションにも対応するIntel GMA 4500HDなのが特徴。メモリは4GB(2GB×2)、HDDは320GB。OSはWindows Vista Home Premiumがプリインストールされており、グラフィック性能やメモリ、HDDの容量はライセンス上の制約を受けるネットブックとは一線を画すものとなる。

 ちなみに本製品は2スピンドル構成となるが、リカバリはHDDリカバリとリカバリCDの2パターンを利用できる。ただし、リカバリCDを用いた場合は、一部アプリケーションを別途をインストールする必要があるなど手間がかかる。基本的にはHDDリカバリを利用するべきだろう。

CPUはCore 2 Solo SU3500(1.4GHz動作)を搭載アイドル時は1.2GHzまでクロックが下がる
Core 2 SoloはシングルコアでHyper-Threadingも搭載しない。なお、画面のCPU使用率はバッテリ駆動テストに使用したWMV9ファイルを再生している状態HDDは320GBを搭載。約半分の容量でパーティションが分割された状態で出荷されている

 最後に本製品のパフォーマンスをチェックするために実施したベンチマークテストの結果を紹介する。まずは、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と、HDBENCH.NETの「HDBENCH Ver3.40beta6」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の結果を紹介する。OSなどが異なるのであくまで参考に留めて欲しいが、Eee PC 1008HAの結果を引用している。

 Atom N280のネットブックと比べて、スコアが上下するところはあるものの、メモリとグラフィックの性能の高さは安定しており、Core 2とIntel GS45というプラットフォームを利用するメリットがここに出ている。FF Benchの結果も良好だ。

 バッテリ駆動時間のテストには、引用元の記事に近い条件として、1.5Mbps、704×396ドットのWMV9ファイルを、液晶輝度最大で再生し続けた際の駆動時間を測定した。結果、3時間を超える駆動時間を得られている。また、海人氏制作の「BBench」を用いて、1分ごとに無線LANによるWeb巡回を行った際のバッテリ駆動時間も測定してみたが、こちらは4時間29分28秒。液晶輝度最大の状態であることも考えれば、かなりの長時間利用が可能と判断して良いだろう。

 このほか、バッファローの「ストリーム出力テスト for 地デジ」による動画再生もテストしてみたが、1080pの映像をテストするDPモードではコマ落ちが発生。720×1,080ドットのHPモードならCPU使用率こそ高めではあるが何とか視聴できるといったところだ。DPモードまでフルに活用できないのはCPUがやや非力なためで、少々惜しくもあるが、製品の液晶解像度が1080pに満たないことを考えると、バッテリ駆動時間などで得られる別のエクスペリエンスのほうを重視すべきだと思う。

【ベンチマーク結果】
U20AEee PC 1008HA(参考)
CPUCore 2 Solo U3500 (1.4GHz動作)Atom N280(1.66GHz動作)
ビデオチップIntel GS45 ExpressIntel 945 GME Express
メモリ4GB1GB
OSWindows Vista Home Premium SP1Windows XP Home Edition SP3
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark Score23521661
CPU Score24341556
Memory Score33442523
Graphics Score1168633
HDD Score50554774
HDBENCH Ver3.40beta6
All4370740797
CPU:Integer9788698645
CPU:Float9958068702
MEMORY:Read5547851204
MEMORY:Write5635351552
MEMORY:Read&Write10994490180
VIDEO:Recitangle918158
VIDEO:Text490410192
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VIDEO:BitBlt5351208
VIDEO:DirectDraw12629
DRIVE:Read6432159534
DRIVE:Write5704754151
DRIVE:RandomRead2247025104
DRIVE:RandomWrite2476426202
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
LOW21301543
HIGH1483NA
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP77.2NA
HP99.97NA
SP/LP99.97NA
LLP99.97NA
DP(CPU負荷)100NA
HP(CPU負荷)61NA
SP/LP(CPU負荷)29NA
LLP(CPU負荷)18NA
バッテリ駆動時間

3時間18分53秒2時間37分

Windows Vistaのエクスペリエンスインデックス測定結果

 国内ベンダー製PCにもライバルが多い12.1型モバイルノートの本製品だが、参考価格が99,800円となっているのも大きなポイントだ。このクラスではデュアルコアのCore 2 Duoを搭載する製品も多いわけで、スペックだけ見ればよりよいコストパフォーマンスを持つ製品はあるだろう。

 しかし、バッテリ駆動時間や洗練された本体デザインなどを考えれば、価格相応の価値はある。とくに、2スピンドルで最厚部30mm未満というスリムなデザインは大きな魅力で、デザインだけでなく高い実用性を持ったノートPCを求める人にお勧めしたい製品だ。

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(2009年 7月 22日)

[Text by 多和田 新也]