元麻布春男の週刊PCホットライン

RAID 6対応の「TeraStation Pro」を試す



 2004年暮れに発売になったバッファローの「TeraStation」は、RAID 5による容量と冗長性のバランス、1TBという当時としては画期的な大容量、個人にも手が出る約10万円という価格などがアピールして、この種のデバイスとしては大きなヒット商品となった。個人向けのRAID 5ストレージというカテゴリを作ったのは、TeraStationの功績と言っても言い過ぎではないだろう。

 このエポックメーキングな初代TeraStationは、その後、約1年間にわたり他社のキャッチアップを許していない。これも実に画期的なことで、TeraStationは、低価格RAID 5 NASの代名詞となった。その後、個人向けのNASには、新しくLinkStationというブランドが用いられるようになったが、今もTeraStationは法人向けのバッファロー製NASのブランドであるTeraStation Proとして使われ続けている。

本機の前面パネル。TeraStationのブランドが受け継がれている

 今回紹介するのは、この「TeraStation Pro」を代表するモデルであるTS-QVHL/R6シリーズの4TBモデル(TS-QVH4.0TL/R6)。1TBのHDDを4台内蔵する。価格は13万円と、同容量の個人向けモデルに比べて割高だが、より信頼性と可用性に配慮した機能を備えている。上位には6ドライブモデルや8ドライブモデルも用意され、より大容量のサポートと、さらに多彩なRAIDレベルのサポートが行なわれている。

 4ドライブモデルの本機がサポートするRAIDレベルは、RAID 6、RAID 5、RAID 10、RAID 1、RAID 0、そして4台のHDDをそれぞれ個別に利用する「通常モード」がサポートされる。工場出荷時の設定は4台のHDDによるRAID 6だ。

 RAID 6は、HDDの障害発生時にデータを復旧するのに必要な冗長データ(パリティ)を2セット用意するもの。2つのパリティの生成方式を変えることで、最大で2台のHDDに障害が発生した場合もデータを復旧可能な強力な安全性を誇るが、最低でも4台のHDDが必要で、しかも2台分の容量がパリティに費やされる。

 つまりHDDを4台内蔵する本機の場合、実際にユーザーデータを保持できるのはHDD 2台分ということになってしまう。任意の2台の故障に耐えられるという点で、同じく4台中2台分の容量となるRAID 10より強力なデータ保護機能を持つことになる。その一方で2組のパリティを計算し、記録する必要があるため、書き込み性能に対するオーバーヘッドが大きくなる。容量効率や性能より、高可用性を重視した初期設定といえるだろう。

前面ドアの内側には、エアフィルタが用意されているドライブベイとドライブベイの間には、エアフローのための隙間があるホットスワップ可能なドライブベイ。右側(4という数字の下)には、ミニD-Sub15ピンらしきコネクタが用意されているが、マニュアルには本機では使用しないと書かれている
ドライブベイの真後ろにある冷却ファンは、筐体を開けなくても交換可能だ背面には2ポートのUSB 3.0ポートがあり、USB HDDへの高速なバックアップが可能。一番上に見えるUSBとHDDの切り替えスイッチは、これまた本機では使用しないとされており、HDDに固定して使うようマニュアルには書かれている

 RAID 6で可用性を向上させても、故障したHDDを放置していてはデータの安全性は低下してしまう。故障したHDDは速やかに交換する必要がある。それを実現するため、本機はHDDのホットスワップをサポートする。つまり、NASを運用したまま故障したドライブを前面のドアを開けて引き抜き、新しいドライブに交換することが可能だ。

 新しいドライブに交換すると、システムはRAIDアレイのリビルドを始める。RAID 5では、このリビルド中にほかのドライブに障害が生じるとお手上げになってしまうが、RAID 6であればそんな事態でもデータを失わないで済む。それが2台分の容量を犠牲にしても、RAID 6をサポートする意義と言えるかもしれない。本機ではホットスワップに加え、ホットスペア(HDDを1台待機状態にしておき、RAIDアレイを構成するHDDに障害が生じた際に、スペアHDDを障害が発生したHDDと置き換えること)もサポートしているが、リビルド中の安全性という点で、RAID 6が上回る。

 さらに信頼性を向上させる機能として、本機は2つのGigabit Ethernetによるポートトランキング機能を備える。ポートトランキングは、複数のGbEをまとめて利用することで、ポート間のロードバランシングを行なうと同時に、万が一、片方のケーブルが断線した場合も残ったケーブルで通信を続けられる仕組み。ただし、この機能(リンクアグリゲーションとも呼ばれる)に対応したスイッチやハブが必要になる。

 また、2つあるGigabit Ethernetのうち、1ポートをLANに、もう1ポートで本機(あるいはサポートされているTeraStation Proの他モデル)同士を接続することで、NAS間の自動レプリケーション(複製)を設定することもできる。普段利用しているNASに障害が発生し、アクセスできなくなった場合、レプリケーション先に自動的にアクセス先を変更するフェイルオーバーも可能だ。USBドライブを使ったバックアップも可能で、USB 3.0の採用により従来以上に高速なバックアップが期待できる。

 メカニカルな部分でも、冷却ファンにダブルボールベアリングの高信頼性ファンを採用、万が一交換が必要になった時も、筐体を開けずに背面から交換することができる。前面ドアは内部にエアフィルタが施されており、ホコリの吸い込みを防いでいる。ホットスワップ可能なドライブベイも、4台のドライブが密接しているのではなく、若干の隙間を空けて実装されており、エアフローを確保するデザインとなっている。

 性能面で注目すべき機能は、本機の採用するプロセッサがIntel Atom D510であることだろう。ネットブックの失速等で、一時ほどの注目を集めることのなくなったAtomプロセッサだが、実はストレージの世界ではかなり採用が増えている。特に、HDD込みで10万円から40万円前後のクラスでは、相当のシェアを獲得しつつある。本機が採用するAtom D510は、デュアルコアで動作クロック1.66GHzと、Atomプロセッサの中でも高性能な部類に入るから、性能的にも期待が持てる。搭載メモリも2GBで、このクラスのストレージとしては大容量だ。

日常的な操作や設定は、NASNavigator2と呼ばれるユーティリティから行なう。本ユーティリティは、LAN上のTeraStationを見つけ出し、そのステータスを表示するWebベースのセットアップだが、RAIDアレイやディスクのデータを消失さえる操作には、必ず確認番号の入力が求められるRAIDアレイの設定は、通常モードのディスクからアレイに参加するディスクを選んで、適切なRAIDレベルのアレイを作成するだけ。作成そのものはアッという間に完了するが、ファイルシステムのチェックには数時間から十数時間を要する

 というわけで、簡単なベンチマークテストを行なってみた。クライアントに使ったのは表1のようなPC。比較には、筆者が普段利用しているNASの1台であるNetgearのReadyNAS NV+を用いた。ReadyNAS NV+はRAIDの自動拡張を行うX-RAIDで構成されているが、冗長性に関してはRAID 5相当とされる。ちなみにReadyNAS NV+のプロセッサは、Open SPARCベースで、ちょっと変わりダネである。

【表1】テスト環境
マザーボードIntel DX58SO
CPUIntel Core i7-980X
ブートデバイス(C:)Intel X-25M 80GB SSD
メモリDDR3-1333 DIMM 2GB×3
グラフィックスRadeon HD 6870 (900MHz/1,050MHz)
LANオンボード
OSWindows 7 Ultimate x64 SP1

【表2】ベンチマーク結果


TS-QVH4.0TL/R6ReadyNAS NV+
RAIDレベルRAID 6RAID 5RAID 5相当
CrystalDiskMark Ver 3.0.1 1,000MB/sec
フレームサイズデフォルト(1518bytes)デフォルトデフォルト
Seq. Read64.1265.7448.57
512k Rnd Read64.9566.4214.63
4K Rnd Read8.9799.0310.372
4k QD 32 Read37.4937.730.366
Seq Write39.5144.8222.78
512k Rnd Write49.1137.8724.87
4k Rnd Write7.0016.4140.375
4k QD 32 Write30.2531.110.332
ファイルコピー(MP4) 1.01GB(1,081,152,707bytes)
C: To Target23.9秒25.4秒1分3秒9
Target To C:18.7秒12.7秒46.8秒

 さて、テストの結果だが、デュアルコアのAtomは、このクラスのストレージ向けプロセッサとしては、やはり高速で、RAID 6の本機は、ReadyNAS NV+の性能を大きく上回る。特にランダムアクセスでは大きな差がついているが、ファイルコピーでも2~3倍以上高速だ。また、コマンドキューイングの効果も顕著だが、これには2GBの大容量メモリが貢献している可能性が高い。

 もう1つ気づくのは、初期設定のRAID 6とRAID 5でそれほど大きな性能差がないことだろう。上述したように、RAID 6では書き込み時のオーバーヘッドが増大するのだが、このテスト結果を見る限り、その差は最小限にとどまっている(測定誤差を考えれば、差はほとんどないと言っていい)。今回はアクセスするクライアントPCが1台だったため、台数が増えるともう少し差がつくのかもしれないが、小規模事業所であれば、性能を理由により可用性の高いRAID 6をあきらめる必要はないと考えられる。純粋に容量と可用性を天秤にかけてRAIDレベルを選べば良いだろう。

 出荷時設定がRAID 6になっていること、ポートトランキングによるネットワーク障害への対応、レプリケーションやフェイルオーバーのサポートなど、TS-QVH4.0TL/R6は、可用性を高める機能が豊富だ。これから感じるのは、IT管理者のいない遠隔地のオフィスや支社に設置して、極力システムを止めないようにしたい、という利用法だ。このような用途に本機は最も適している。外形は、HDDを4台内蔵するNASとしては標準的で、初代TeraStationのように大きくないため、設置も容易だと思われる。個人でRAID 6の信頼性や、ポートトランキングが必要だとはあまり思えないが、重要なデータを扱う小規模事業所には最適な製品と言えるだろう。