元麻布春男の週刊PCホットライン

6台のHDDに対応したNASキット
「PROMISE SmartStor NS6700」



 家庭であれ、オフィスであれ、ネットワークがある環境であれば、ネットワーク上のストレージの便利さは読者も良くご存じではないかと思う。このコラムでも、ネットワーク接続型のストレージ(NAS)を何度となく取り上げてきた。しかし、すべて最大でHDDを4台内蔵可能な製品だった。

 複数台のHDDを内蔵可能なNASは、何らかの形でRAID技術をサポートしている。基本的にRAID技術は、利用するHDDの台数が増えれば増えるほど、冗長性を確保するための技術(対応可能なRAIDレベル)のオプションが増えると同時に、性能も向上していく。それにもかかわらず4台以上のドライブを内蔵可能なNASを取り上げる機会がなかったのは、価格が跳ね上がってしまうのが理由だった。

 加えて、内蔵可能なHDDが増えると、当然、消費電力も上がる。筐体は大型化し、電源ファンの数とノイズも増える。価格を別にしても、とても気軽に使えるようなものではなかった。

6台の3.5インチSATAドライブを収納可能なSmartStor NS6700

 しかし、最近は5〜6台のHDDを内蔵可能なNASで、個人の手の届く範囲の製品が登場してきている。今回取り上げるPROMISE Technologyの「SmartStor NS6700」も、HDDを含まない、ベアボーン状態で実売が10万円前後と、頑張れば個人でも導入可能な製品となっている。

 PROMISE Technologyといえば、創立当初は安価なIDEドライブ向けのRAIDカードで名を上げたベンダーだが、現在はSASに対応したサーバー向けのRAIDコントローラや、企業向けのラックマウント型SANストレージやNASなど、多彩な製品を扱うようになっている。AppleがThunderboltを搭載したMacBook Proを発表した際、対応製品としてプロミスのPegasus(Thunderbolt対応のRAIDストレージ)が挙げられていたことは記憶に新しい。

ホットプラグ可能なドライブベイ

 ここで取り上げるSmartStor NS6700は、今年(2011年)の3月に発表された、同社のSOHO/Home向けストレージ製品の最上位モデル。最大で6台の3.5インチSATAドライブを搭載することができる。姉妹モデルとして、4ドライブ内蔵タイプのSmartStor NS4700も用意される。もちろん、ドライブはホットスワップ可能だ。

 このSmartStor NSx700シリーズに共通する特徴は、プロセッサにデュアルコアのAtom D525(1.8GHz)を搭載すること。ここのところ、6万円〜20万円クラスのNASベアボーンには、Atomの採用が目立つが、10万円前後でデュアルコアというのは、かなりハイスペックな印象だ。メモリも1GBを搭載する。

 もう1つの特徴は、2TBを越える容量のHDDをサポートしていること。古いNAS製品の多くはサポート可能なHDDの容量が2TBまでであることが多いが、本機の互換性リストには、現在市場で最もポピュラーな3TBドライブであるWestern DigitalのCaviar Green 3TB(WD30EZRS)が掲載されている。

 本稿執筆時点でのWD30EZRSの市場価格は約13,000円というところだから、本機と合わせて約18万円ほどで18TBのNASが入手できることになる(ドライブメーカーが示す容量は10進法であり、冗長性を確保することで、実際に利用可能な容量はもっと少なくなる。念のため)。バッファローの初代TeraStationが登場した2004年末、RAID 5をサポートした1TBのNASが10万円を切ったと大騒ぎしたことを思うと、冗長性を持ったNASの容量単価が1TBで約1万円というのは隔世の感がある。

 ただし、容量の増加、特にドライブあたりの容量が増加するのは良いことばかりではない。基本的にHDDの容量増加は記録密度の向上であり、バイト単価の向上と、データ転送速度の向上の両方が見込める。しかし、RAIDで用いる場合、ドライブ容量の増加は同時にリビルド時間の増加も意味する。ドライブ1台あたりの容量が3TBにもなれば、優に半日、ひょっとすると1日がかりの作業となるかもしれない。

 SOHO/Home向けのNASでポピュラーなRAID 5の場合、RAIDアレイ中のドライブが1台故障しても、データを失わずに済む。しかし、そのままではデータの冗長性が失われるから、直ちに故障したドライブを交換して、RAIDアレイのリビルドを行なう必要がある。リビルド中は冗長性は失われたままだから、ここで何か事故が起こると、データは失われてしまう。ドライブ容量が増え、リビルド時間が延びると、それだけ脆弱な時間も長くなることを意味する。

 それを回避する最も手っ取り早い方法は、2台の故障に耐えられるRAID 6を用いることだ。RAID 6であれば、アレイに1台障害が発生し、ディスクの交換が生じても、リビルド作業中も冗長性が確保される。RAID 6を利用するには、最低4台のドライブが必要になるが、4台のRAID 6アレイでは利用可能な実容量は2台分(利用効率は1/2)となってしまい、ちょっと惜しい気がしてくる。その点、6台のドライブを内蔵できる本機であれば、RAID 6のアレイを組んでも利用効率2/3(利用可能容量は4台分)を確保できる。

 慎重を期すなら、5台でRAID 6を組んで、1台をスペアドライブとして待機させておくという贅沢な使い方も、NS6700なら可能だ。これなら、1台に障害が発生した場合、自動的にスペアドライブと交換され、冗長性を維持したままリビルドが行なわれる。頻繁にメインテナンスができないリモートオフィスのような場所でも、比較的安全に運用することが可能だ(もちろん、本機はスペアドライブをサポートする)。

 さて、今回試用したNS6700は、上述したWestern DigitalのWD30EZRSが6台インストールされた状態で届けられた。その構成は5台でRAID 5ボリュームを構成し、残る1台がスペアドライブというものだった。実際に利用可能な総容量は11TBほどで、うち9TBがファイルボリューム(NAS/CIFS)に、2TBがブロックボリューム(SAN/iSCSI)として設定してあった。ここでは、この構成のまま利用した。

 まず表1にあるテストクライアントに、付属のCD-ROMからユーティリティであるSmartNAVIをインストールし、ネットワークケーブルを接続したNS6700の電源を入れた。最初、ファンが全開で回転するためギョッとしたが、すぐにパワーマネージメントが有効になり、回転が抑えられる。回転が抑えられた状態ならそれほどでもないが、アクセスが続いてファンの回転数が上がると、個人宅のリビングや寝室に設置するのはちょっと難しい印象だ。6台のHDDを十分に冷却する必要があるのだからやむを得ないのだが、やはりオフィス向けなのだろう。


【表1】テストクライアント
マザーボード Intel DX58SO
CPU Intel Core i7-980X Extreme Edition
ブートデバイス(C:) Intel X-25M 80GB SSD
メモリ 2GB DDR3-1333 DIMM×3
グラフィックス Radeon HD 6870(900MHz/1,050MHz)
LAN オンボード
OS Windows7 Ultimate x64 SP1

6台のHDDを冷却する大型のファンに加え、80PLUS認定電源が内蔵するファンの2つのファンがある。2ポートあるLANポートは、ブロックアクセスとファイルアクセスに振り分けるという使い方のほか、アグリケーションやロードバランシングといった使い方もできる ネットワーク設定は、ドライブベイの上にあるディスプレイと2つのボタンで行なう

 試用機は、筆者の手元に届いた状態で、クラスAのプライベートアドレスが固定で割り当てられていた。これをDHCPサーバーによる自動割り当て(クラスCのプライベートアドレス)に変更する必要があったのだが、SmartNAVIからはネットワークアドレスの設定ができない。何のことはない、本機の前面パネルに用意されたディスプレイとボタンで設定を行なうのだった。また、SmartNAVIは、タスクトレイに常駐するのだが、この時、WindowsのUACに引っかかる。このあたり、もう少し完成度を上げて欲しいところだ。

 本格的な設定は、SmartNAVIではなく、ブラウザで行なう(これは他社のNASも同じ)。WebPAM PROeと呼ばれるWebベースの管理ツールは、かなりグラフィカルで、きれいな作りになっているのだが、メニュー構成がユニークで、他社のNASとは構成が相当に異なる。善し悪しというより慣れの問題ではあるのだろうが、最初は戸惑った。それを補う英文マニュアルの記述がアッサリしているのも、戸惑う要因ではないかと思う。日本語のマニュアル類は、英文マニュアルの一部を抜粋して翻訳したクイックインストールガイドだけで、情報の不足は否めない。ブラウザベースのセットアップに必要な、ユーザー名やパスワードの初期設定値も、英文マニュアルを参照する必要がある。インストール作業のフローに即した、日本語インストールガイドの添付が望まれるところだ。

設定ユーティリティのSmartNAVI。利用する前にフロントパネルでネットワーク設定を行なっておく必要がある NS6700の設定・管理ツールであるWebPAM PROe 3TBのドライブが6台並ぶ。最下段のSlot 6のドライブはスペアに設定されている

 と、マニュアルやセットアップツールに関する注文が多くなってしまったが、その一方でパフォーマンスには、ほとんど文句はない。表2は、表1のクライアントを用いて実施した、簡単なベンチマークの結果だ。テストは、CIFSによるファイルボリューム(NAS)をZドライブとしてマウントし、iSCSIによるブロックボリューム(SAN)をEドライブとしてマウントして行なっている。比較として、筆者が常用しているReadyNAS NV+のスコアも載せてあるが、だいたい2〜5倍くらい、テストによっては10倍近いパフォーマンスだ。

【表2】テスト結果

CIFS (Z:) iSCSI (E:) ReadyNAS NV+(CIFS)
RAIDレベル RAID 5 RAID 5 RAID 5相当
フレームサイズ デフォルト(1,500KB) デフォルト デフォルト
ドライブ(アレイメンバー) WD30EZRS×5 WD30EZRS×5 Samsung HD103UJ×4
CrystalDiskMark Ver 3.0.1(1,000MB)
Seq. Read 52.95MB/sec 104MB/sec 48.57MB/sec
512k Random Read 35.12MB/sec 26.1MB/sec 14.63MB/sec
4K Random Read 1.524MB/sec 0.601MB/sec 0.372MB/sec
4k QD 32 Read 1.526MB/sec 2.771MB/sec 0.366MB/sec
Seq. Write 97.4MB/sec 99.45MB/sec 22.78MB/sec
512k Random Write 94.7MB/sec 38.16MB/sec 24.87MB/sec
4k Random Write 4.36MB/sec 0.605MB/sec 0.375MB/sec
4k QD 32 Write 3.015MB/sec 0.573MB/sec 0.332MB/sec
ファイルコピー(mp4) 1.01GB(1,081,152,707bytes)
C: To Target 13.5秒 6.2秒 63.9秒
Target To C: 14.4秒 12.8秒 46.8秒

 特に1GBのファイルコピーが6秒ほどで完了したのには驚いた。カタログにある最高210MB/sec(iSCSI)という数字は嘘ではない。デュアルコアAtom、5台のHDDによるアレイ構成、最新の3TBドライブ、最適化されたソフトウェアなど、さまざまな要因が組み合わさってのことなのだろうが、これならブートをSSDにして、データは全部最初からNASに置くことを検討したくなる。

 本機は最近のNASの例に漏れず、さまざまなクライアントのバックアップへの対応に加え、DLNAやiTunes互換のメディア機能も備える。ただ、価格や冷却ファンのノイズを考えると、一般家庭向きではない。ラックマウント型のストレージを設置することは難しいが、容量と性能、そして信頼性を犠牲にしたくないという中小規模の事業所に最も適したストレージなのではないかと思う。80PLUS認定電源の採用や、アイドル時のスピンドル回転数低下やスピンダウンを規定したMAID 2.0準拠など、グリーン機能も充実している。