元麻布春男の週刊PCホットライン

5万円を切る低価格17型ノート
日本HP「ProBook 4710s」



HP ProBook 4710s

 前回は持ち運ぶことを前提にした、筆者にとってのノートPCの話をした。今回は、メインマシンとして使うノートPC、それも持ち運びをほとんど考慮しないマシンを取り上げてみたいと思う。それは17型ワイド液晶を採用した日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の「ProBook 4710s」だ。

 なぜこのマシンを取り上げることにしたのか。それはこのマシンの圧倒的な価格にある。本稿執筆時点で展開されているスーパープライスキャンペーン第二弾によると、最小構成の価格は48,300円。最初のキャンペーンモデルに対し、光学ドライブをDVDスーパーマルチドライブからDVD-ROMドライブに変更することで、さらに1,680円の低価格化を図っている。いずれにしても本体価格は軽く5万円を切り、配送料を含めても51,450円に過ぎない。

 17型の液晶を搭載したノートPCが5万円を切るというのは、さすがに尋常ではない。低価格と言われるネットブックだって、そのくらいの値札をぶら下げたものはいくらでもある。何かトリックがあるのか、それとも? というわけで、貸し出しをお願いすることにした。

 借用した試用機のスペックは表1の通り。残念ながら最低価格構成のモデルは貸し出し用に用意されていないとのことで、若干異なるスペックのマシンとなった。だが、最低価格構成となるキャンペーンモデルと試用機の差は、メモリ搭載量やハードディスク容量といった量的な違い、無線LANやBluetoothを搭載するといった機能的な違い、さらにはプリインストールOSの違い(これが差額の面で最も大きい)といった部分。基本的には同じCPUとチップセット、グラフィックスチップが搭載されており、性能の推定は可能と思われる。

  スーパープライスキャンペーン ・モデル スーパープライスキャンペーン第二弾モデル 試用機(第二弾モデルをベースにBTOした場合) 差額
プリインストールOS Windows Vista Home Basic SP1 Windows Vista Business SP1 8,400円
CPU Intel Celeron T1600 (1.66GHz/667MHz)  
チップセット Intel PM45  
メモリ 1GB DDR2-800 4GB DDR2-800 6,300円
メモリソケット 2ソケット(空き1) 2ソケット(空きなし)  
グラフィックス ATI Mobility Radeon HD 4330 (HDMI端子付き)  
ディスプレイ 17.3型ワイド(カメラなし)1,600×900ドット 17.3型ワイド(200万画素カメラ付き) 3,150円
HDD 160GB 5400rpm 320GB 5,400rpm (WD3200BEVT) * 5,250円
オプティカルドライブ DVDスーパーマルチ DVD-ROMドライブ DVD-ROMドライブ(Optiarc DDU820S) *  
拡張スロット Expressカード/34  
メモリカードリーダー 5 in 1スロット(SD/MS/MS Pro/xD/MMC)  
無線LAN なし Intel WiFi Link 5100 4,200円
Bluetooth なし あり 1,050円
モデム なし  
ネットワークコントローラ 1000BASE-T/100Base-TX/10Base-T(Marvell Yukon)  
バッテリ 8セルリチウムイオン  
PCリサイクルラベル なし あり 3,150円
価格 49,980円 48,300円 79,800円 31,500円
* 参考までにカッコ内に試用機に用いられていたHDDと光学ドライブを記したが、実際に販売されるPCでは異なるパーツが使われる場合がある

 さて搭載するCPUのCeleron T1600だが、華々しいファンファーレと共にデビューするCoreシリーズのプロセッサと違って、ひっそりと後から追加されるバリューPC向けのプロセッサだけに、どんなCPUなのかあまり知られていないのではないかと思う。ざっくり説明すると、L2キャッシュの容量を減らした1.66GHz動作のMerom(65nmプロセス)ということになる。

 MeromコアのCore 2 Duoと共通するのは、まずデュアルコアであること、64KBのL1キャッシュ、SSE3補助命令(Supplemental SSE3)までの拡張命令対応、64bit拡張(x64)とExecute Disable Bit対応といった部分。35WのTDPやFSB 667MHzも、メインストリームのCore 2 Duoと同じだ(Core 2 Duoは後にFSB 800MHzモデルが追加されているが)。

 異なるのは、L2キャッシュサイズが1MBに減らされていること、SpeedStepやDeeper Sleep(C4ステート)といった高度な省電力機能を持たないこと、VTやTXTなどの付加価値機能を備えないことの3点だ。仮想化支援のVTを持たないため、本機ではProfessional以上のWindows 7が備えるWindows XPモードは利用できないことになるが、日本HPはダウングレードサービスを提供しているから、どうしてもXP互換環境が必要な企業ユーザー等は、こちらを利用してWindows XPをネイティブ利用することになる(基本構成のVista Home Basicに対し11,550円アップ)。

 省電力機能については、あるに越したことはないが、持ち運び用のノートPCでないことを考えれば、本機にとっては大きな問題ではない。全体的に見て、据え置き用ノートPC向けのプロセッサとしては、かなりお買い得感のある製品ではないかと思う。

 本機のウリはなんといっても17.3型ワイドの大型液晶ディスプレイだ。最近では珍しいノングレア処理された1,600×900ドットのパネルは、垂直方向の視野角が若干狭いように感じられるが、作業中に自分の顔や背景が映り込まないという点で、とても好ましい。ただ、ディスプレイの開閉はラッチレスだが、片手で開けようとすると本体まで持ち上がってしまう傾向がある。

 キーボードは、最近流行のセパレートタイプのキートップを持つもので、独立した10キーパッドを備える。主要キーのキーピッチはフルピッチ(19mm)だが、最下段のWindowsキーやFnキー、右Ctrlキー/Altキー等の幅が狭くなっている。とはいえ、キーボードパネルを面で支える構造になっている(後述)こともあり、タイピング時にたわんだり、グラグラする感じはない。

 キーボードの手前にあるタッチパッドは、右端にスクロール領域を持つもので、Synaptics製のドライバが組み込まれている。が、Pavilionシリーズなどコンシューマー向けのHP製ノートPCと異なり、タッチパッドを無効にするハードウェアスイッチは用意されていない。トラックパッドのボタンは、左右ともストロークが非常に深く、最近のノートPCに慣れていると、とまどうくらいだ。

黒一色のProBook 4710s。液晶トップカバーは押すと若干たわむが、見た目に安っぽさは感じない 大きさのイメージがつきにくいので、HP mini 1000(Vivienne Tamエディション)を上に乗せてみた。底面積は約2.5倍というところ セパレートタイプのキートップを持つキーボード。上の電源スイッチの左側にあるのはQuickLook 2を呼び出すボタン

 本体前面には、HDDアクセスLED、無線LANのハードウェアスイッチ(LED付き)、メモリカードリーダ、ヘッドフォンジャックとマイクジャックが並ぶ。カードリーダはSDカードを挿してもカードがハミ出さないタイプだが、メモリースティックはフルサイズ対応で、メモリースティックデュオにはアダプタが必要となる。

 本体左側面には、セキュリティーケーブルホール(ケンジントンロック)、RJ-45ジャック(Gigabit Ethernet)、排熱用のベント(通気口)、アナログRGB端子(ミニD-Sub15ピン)、HDMI端子、USB 2.0ポート×2、ExpressCard/34スロットが並ぶ。ファンの音は無音とは言えないし、SpeedStepのないプロセッサでもあるが、低負荷時にはそれなりに静かにはなる(稼働中は停止しない)。外部ディスプレイ端子を2種類備えるのは、ノートPCとしては比較的珍しい仕様だ。

 本体右側面には、USBポート×2、光学ドライブ、ACジャックがある。ACジャックの上にはバッテリステータス用のLEDがあり、バッテリ充電中(オレンジに点灯)、バッテリ充電完了間近か(水色に点灯)、バッテリ完全放電間近か(オレンジの点滅)といったステータスを表す。

4710sの左側面。USBポートの上にあるExpressCard/34スロットにセットされているダミーカードをイジェクトしてある 本体右側面。USBポートと光学ドライブの間のフタはモデム用のRJ-11ジャックだと思われるが、日本ではこのオプションは提供されない

 これら以上に本機の特徴となっているのが底面だ。通常は底面にある内部アクセス用のパネルが本機には全く存在しない。言い替えれば、メモリの増設やHDDの交換の際は、キーボードやパームレストを外す「大工事」となる。一般ユーザーに不可能ではないものの、決して万人向きの作業ではないので、購入に際してオプションを選択する時は注意する必要がある。

 こうした内部アクセスがほとんどできない筐体は、ネットブック等でよく見られる。筐体の外殻に内部アクセスの開口部を設けると、金型等のコストが上がるだけでなく、強度も低下する。本機では、外殻の開口部を省略すると同時に、キーボード/パームレストの下にも樹脂製のフレームを設け、マザーボードやHDDを挟み込む構造となっている。これにより、17.3型液晶パネルに対応した大型筐体を樹脂で構成することを可能にすると同時に、本機に一定の剛性感を与えている。

 もちろん、こうした構造は内部アクセスしにくく、アップグレードやメインテナンスを困難にする。これらを犠牲にしたのも、コストとのトレードオフなのだろう。同じProBookシリーズの15.6型ワイド液晶モデルである4510s(Intelプラットフォーム)や4515s(AMDプラットフォーム)も、同様の底面に内部アクセス用の開口部を持たない構造になっているようだ。

本体の底面。バッテリをリリースするラッチ以外、ユーザーがアクセスできるものはない トップカバーとキーボードを外したところ。この状態でメモリモジュールの交換や増設が可能になる さらにパームレストを外したところ。中央部メモリモジュール下に無線LANモジュールが見える。その右側がHDD、そのさらに右にBluetoothモジュールがインストールされている。本体全体を黒い樹脂製のカバーが覆っており、筐体の剛性を確保すると同時に、キーボードを面で支える構造になっている。このカバーを外し、CPUにアクセスするには、さらに20本以上のTorxネジを外す必要がある

 こうしたコスト削減を行なう一方で、内部アーキテクチャに関しては、本機はゴージャスな仕様となっている。通常こうした安価なPC、コスト重視のPCには、チップセット内蔵グラフィックスを使うのがセオリーだ。上に挙げた4510sはGL40チップセット内蔵の4500MHDグラフィックス、4515sはRS780MNチップセット内蔵のRadeon HD 3200グラフィックスを、それぞれ採用する。

 ところが本機はPM45チップセットに、外付けグラフィックスチップとしてRadeon HD 4330を採用しており、とても5万円PCの構成とは思えない。最低価格構成による15.6型液晶の4510sや4515sとの価格差は約9,000円だが(本稿執筆時点。これも凄い価格ではある)、液晶サイズの違いに加え、このチップセットとグラフィックスの違いを加味すると、本機の方がお買い得感が高い(持ち運ばないことが前提となるが)。

Windows VistaのWindowsエクスペリエンスインデックス 安価なPCだが、ドライブ保護機能を備える

 こうした内部構成を反映して、本機の性能はなかなか侮れない。図はWindows Vista BusinessでのWindowsエクスペリエンスインデックスだが、一番低いサブスコアが4.1というのは、5万円以下のPCとしてはかなり優秀なのではないかと思う。前々回に行なったのと同じ、簡単なベンチマークテストを行なってみたが、やればできる子、という印象を受ける。単純なCPU性能ではCore 2 DuoやTurion 64にかなわない(これは動作クロック的にも納得できる)が、外付けグラフィックスの効果はかなり高い。もちろんAtomベースのシステムとは比較にならない。

    ProBook 4710s ThinkPad X200s (Core 2 Duo) Pavilion tx2 (Turion 64) Aspire Revo (Atom/ION)
CrystalMark 2004R3 Mark 70099 63216 72794 30143
ALU 14878 18483 16745 5027
FPU 15700 17744 17106 4100
MEM 9417 12007 11204 4812
HDD 7427 5442 10507 5352
GDI 4794 6319 4696 1543
D2D 2448 1435 2876 2979
OGL 15435 1786 9660 6230
PCMark05 v120 PCMark 4326 4244 4041 1909
CPU 3997 4540 4115 1405
Memory 3505 4807 2637 2357
Graphics 4040 2035 2438 1986
HDD 5019 3934 4820 4317
PCMarkVantage(1,024×768) PCMark 2705 2914 2479 未計測
Memories 1664 1616 1578
TV and Movies * 1000 2125 1918
Gaming 2298 1838 2099
Music 2916 2823 2688
Communications 2811 3155 3039
Productivity 2559 2865 2347
HDD 2852 2136 3180
* Windows Media Centerを持たないVista BusinessがプリインストールされたProBook 4710sでは、一部のテストが実行できないため、ハードウェア本来の性能より低いスコアとなる

 機能的にも、モーションセンサーを用いたHDD保護機能である「HP 3Dドライブガード」の採用、システム(OS)を起動することなくOfficeのデータを閲覧できるHP QuickLook2(要Outlook 2003以降のインストール)の搭載など、単なる激安PCでないことは明らかだ。ネットブックやネットトップでは絶対に到達できない性能と機能を備えているとも言える。

 もちろん、重量が3kgを越える本機(カタログ値3.05kg)は持ち運びには適していない。だが、ディスプレイ込みで5万円以下で購入可能な据え置き型PCとして見た場合、デュアルコアプロセッサを採用し、外付けグラフィックスを搭載したPCがほかにどれくらいあるだろう。逆にノートPCである本機は、分離型より持ち運びは容易だし、バッテリ駆動というUPS機能まで内蔵する(カタログ値で最長約4時間)。もう少しパフォーマンスが欲しければ、3,150円の追加でPenrynベースのデュアルコアCeleron(Celeron T3000、1.8GHz、FSB 800MHz)を選択することもできる。

 このProBook 4710sは、UXGAに迫る1,600×900ドットの解像度を持つ17型ワイド液晶を搭載しながら、価格が5万円を切るというだけで、ほとんど反則のような存在だ。さらに外付けグラフィックスやモーションセンサーによるドライブ保護など、このクラスのPCでは通常考えられない機能も備える。当然、キャンペーンモデルをそのまま購入しても悪くないが、後から追加することが難しいことを踏まえると、無線LANくらいは追加しておいた方が良いかもしれない。試用機が搭載するIEEE 802.11a/b/g/n対応のWiFi Link 5100だけでなく、IEEE 802.11b/g対応に限定される代わりに半額(2,100円)のBroadcom製モジュールもラインナップされている。常用ではなく非常用と割り切るのなら、後者で十分とも言える。

 また8,400円の出費になるが、ここでWindows Vista Businessを選択しておくと、5,150円でWindows 7 Professionalへの優待アップグレードを受けることが可能だ(コンシューマーモデルではないので、無償の優待アップグレードにはならない)。合計13,550円でWindows 7 Professionalと、手間いらずのドライバディスクが入手できると考えれば悪くない。筆者的には、キャンペーンモデルに対し、Broadcom製無線LANモジュール(追加金額2,100円)とVista Business(同8,400円)を追加、メモリを2GB(同3,150円)に拡張したあたりがお薦めしたい最小構成(計61,950円)だ(個人の場合はPCリサイクルラベル3,150円も追加した方が良い)。

 おそらく多くのユーザーが躊躇するのは、本機が日本HPのホームページ上で法人向けとなっていることだろう。だが、実際には個人ユーザーでも、ホームページから購入できるという。また一般的なコンシューマ向けのPCと異なり、リカバリディスク(オプション3150円)も、OS本体とドライバ/アプリケーションディスクが分かれており、リカバリの際に必要なモジュールだけ選択して組み込めるという、ユーザーによってはかけがえのない大きな利点がある。1台目のPCとして、据え置き型の低価格PCが欲しいという人にはもちろん、とりあえずネットブックを買ったものの、自宅で使う「母艦」にはもう少し使いでのあるPCが欲しい、というユーザーにも最適な1台ではないだろうか。

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