■平澤寿康の周辺機器レビュー■
バッファローから、SSDの新モデル「SHD-NSUHシリーズ」が登場した。ノートPCのHDDからの移行用途をメインターゲットとした製品となっており、ノートPCで使いやすいよう、さまざまな工夫がなされている。今回、容量128GBの「SHD-NSUH128G」を試用する機会を得たので、詳しく見ていくことにしよう。
●2.5インチHDDとほぼ同じ形状を採用し、取り付けの問題を回避一般的なSSDは、ほとんどが厚さ9.5mmの2.5インチHDDに合わせた形状を採用しており、その点はSHD-NSUHシリーズも同じだ。ただ、9.5mm厚2.5インチHDDの実際の形状をよく見てみると、上部は側面付近がわずかに高さが低くなっていたり、底面のネジ穴部分が底面よりわずかに高くなっていたり、SATAコネクタ部が全体的に低くなっているなど、その形状には微妙な違いがある。そして、ノートPCによっては、内蔵HDDの収納スペースを、そういったHDDの形状の特徴に合わせてギリギリまで削っているものもある。
それに対し、一部のSSDでは、9.5mm厚2.5インチHDDの、規格上の外形寸法ギリギリの筐体を採用している場合がある。そのようなSSDは、前述のようなノートPCでは、引っかかってうまく収まらない場合がある。
そこでSHD-NSUHシリーズでは、多くのノートPCに問題なく搭載できるよう、本体上部は側面付近が一段低く、底面のネジ穴部は底面よりわずかに高くて、SATAコネクタ部がむき出しになるとともに、全体的に低くなるという、9.5mm厚2.5インチHDDの形状の特徴をほぼ全て取り入れた筐体を採用した。実際にHDDと並べて比べてみると、可能な限りHDDと同等の形状が再現されていることがよくわかる。これなら、一部のSSDが物理的に搭載できなかったノートPCでも、ほぼ問題なく搭載できるはずだ。
●USBポートとHDD複製ソフト付属で、容易に交換可能
ノートPCのHDDをSSDに交換する場合に、最も面倒な作業となるのが、利用中のHDDに保存されているデータをSSDに転送する作業だ。ノートPCの場合、SATA接続のHDDとSSDを同時に接続することは基本的に不可能。ノートPC以外にデスクトップPCも持っているなら、ノートPCからHDDを取り出し、デスクトップPCにそのHDDと交換用SSDを接続してデータを転送できる。が、1台のノートPCしか持っていない場合には、交換用SSDを、SATA-USB変換アダプタなどを利用して接続する必要がある。
その点、SHD-NSUHシリーズは、本体に標準でUSB 2.0ポートが用意されており、直接USBポートに接続できるようになっている。こういった仕様のSSDは、特に珍しいものではないが、ノートPCのHDD交換用途をメインターゲットとしているSHD-NSUHシリーズとしては、外せない仕様であり、ユーザーにとっても大きなメリットがある。
加えてSHD-NSUHシリーズには、HDDの内容を複製したり、データのバックアップを行なう「Acronis True Image HD」が標準添付されている。つまり、SHD-NSUHシリーズをUSB接続し、Acronis True Image HDを利用することで、ノートPCでも手軽にHDDからSSDに移行できるわけだ。こういった点は、さすが大手周辺機器メーカーらしい配慮だ。
このように、USB接続でも利用できるため、ノートPC内蔵HDDの複製やデータ転送も簡単に行なえる | 標準で、HDDの複製・バックアップソフト「Acronis True Image HD」が付属しているため、別途HDD複製ツールを用意する必要もない |
●コントローラは、JMicron製「JMF612」採用、Trimコマンドもサポート
では、内部の仕様をチェックしていこう。
SHD-NSUHシリーズで採用されているコントローラは、JMicron製として初となるキャッシュメモリ対応コントローラ「JMF612」だ。従来の低価格SSDで広く採用されていた、同じくJMicron製の「JMF602」では、使用中に極端にアクセス速度が低下し、PCが固まったように感じる“プチフリーズ”と呼ばれる現象が見られたが、JMF612ではキャッシュメモリによって、このプチフリーズ現象をほぼ解消している。ちなみに、SHD-NSUHシリーズでは、64MBのキャッシュメモリ(DDR2 SDRAM)を搭載している。
また、Windows 7のTrimコマンドも標準でサポート。これにより、Windows 7環境で、効率的なデータの書き換えが行なえるとともに、長寿命化にもつながる。
メモリは、MLCタイプのNANDフラッシュメモリを採用。今回試用したSHD-NSUH128Gでは、64GbitのMLC NANDフラッシュメモリチップが基板表裏に8個ずつ、計16個搭載されていた。
基板表面。コントローラとしてJMicron JMF612を採用。キャッシュメモリには、Hynixの「HY5PS1G1631CFP」を搭載。MLC NANDフラッシュメモリチップは、Samsung製の「K9HCG08U1D」が8チップ搭載されている | 基板裏面。こちらにも、MLC NANDフラッシュメモリチップ「K9HCG08U1D」が8チップ搭載されている |
●速度的にも申し分なく、交換用SSDとしておすすめ
では、速度をチェックしていこう。今回は、ベンチマークソフトとして、CrystalDiskMark 2.2.0と、HD Tune Pro 3.50、Iometer 2008.06.28の3種類を用意し、デスクトップPCに取り付けて速度を計測。USB接続時の速度は、CrystalDiskMark 2.2.0のみで計測した。また、比較用として、INDILINX製コントローラを採用するHANA Micron製「HMSM128G-10」(容量128GB)と、Intel製SSD「X25-M Mainstream SATA SSD」の第2世代モデル「SSDSA2MH160G2GC」(容量160GB)でも同じテストを行った。テスト環境は下に示す通りで、OSはWindows 7 Ultimateを利用した。
CPU | Core i5-750(3.2GHz) |
マザーボード | Intel DP55KG(Intel P55 Express) |
メモリ | PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2 |
ビデオカード | Radeon HD 4670 |
HDD | Western Digital WD3200AAKS(OS導入用) |
OS | Windows 7 Ultimate |
まず、CrystalDiskMark 2.2.0の結果を見ると、データサイズ1,000MB時で、シーケンシャルリード232MB/秒、シーケンシャルライト153MB/秒と、十分高速な速度が記録されている。INDILINX製コントローラ採用のHMSM128G-10や、IntelのSSDSA2MH160G2GCとの比較でも、遜色のない速度が発揮されていることが良くわかると思う。
一方、HD Tune Pro 3.50の結果では、リード時の結果は、比較的安定した速度が発揮されているのに対し、ライト時の結果はグラフが大きなノコギリ状となっており、速度の上下差がかなり大きくなっていることがわかる。他のSSDでは、これほど大きな速度のブレは見られないことを考えると、少々気になるところではある。ただ、ランダムアクセスの結果は、JMF602などのキャッシュメモリ非対応コントローラを採用するSSDのような極端なIOPSの低下は起きていない。このことから、わゆるプチフリーズ現象が発生する可能性は低いと考えていい。
最後にIometerの結果だ。こちらは、HMSM128G-10やSSDSA2MH160G2GCに比べると若干劣っている。ただ、傾向はHMSM128G-10に比較的近く、Iometerの結果からも、プチフリーズ現象はほぼ発生しないと考えて良さそうだ。
ちなみに、USB接続時の速度はかなり遅いが、当然これはUSB 2.0自体の転送速度が影響しているためだ。USB接続で利用するのは、基本的にHDDとの交換前のデータ転送時のみであり、USB接続時の速度が遅くとも、普段の利用に特に大きな影響はない。
CrystalDiskMark 2.2.0 | |||
---|---|---|---|
SHD-NSUH128G 100MB | SHD-NSUH128GUSB接続100MB | HMSM128G-10 100MB | SSDSA2MH160G2GC 100MB |
SHD-NSUH128G 1,000MB | SHD-NSUH128GUSB接続1,000MB | HMSM128G-10 1,000MB | SSDSA2MH160G2GC 1,000MB |
【表2】Iomaterの結果
Iometer 2008.06.28 Windows 7 Ultimate | SHD-NSUH128G | HMSM128G-10 | Intel X25-M(34nm) 160GB | ||||
Queue Depth:1 | Queue Depth:32 | Queue Depth:1 | Queue Depth:32 | Queue Depth:1 | Queue Depth:32 | ||
File Server Access Pattern | Read IOPS | 1882.87 | 234.07 | 1697.97 | 1898.67 | 736.99 | 939.81 |
Write IOPS | 470.9 | 58.59 | 422.94 | 473.43 | 183.65 | 236.02 | |
Read MB/s | 20.32 | 2.54 | 18.38 | 20.55 | 7.96 | 10.2 | |
Write MB/s | 5.11 | 0.64 | 4.57 | 5.14 | 2 | 2.59 | |
Average Read Response Time | 0.48 | 109.24 | 0.56 | 13.58 | 1.04 | 26.63 | |
Average Write Response Time | 0.21 | 109.69 | 0.13 | 13.1 | 1.27 | 29.52 | |
Maximum Read Response Time | 10.99 | 606.61 | 146.6 | 207.14 | 293.4 | 334.46 | |
Maximum Write Response Time | 2.44 | 618.98 | 25.72 | 202.11 | 267.48 | 332.58 | |
4KB Random(Read 50%,Write 50%) | Read IOPS | 3004.46 | 3740.58 | 5939.42 | 17423.35 | 3410.63 | 37621.71 |
Write IOPS | 131.99 | 77.95 | 847.07 | 517.86 | 361.65 | 335.02 | |
Read MB/s | 11.74 | 14.61 | 23.2 | 68.06 | 13.32 | 146.96 | |
Write MB/s | 0.52 | 0.3 | 3.31 | 2.02 | 1.41 | 1.31 | |
Average Read Response Time | 0.33 | 8.55 | 0.17 | 1.84 | 0.29 | 0.85 | |
Average Write Response Time | 7.57 | 410.05 | 1.18 | 61.79 | 2.76 | 95.49 | |
Maximum Read Response Time | 10.79 | 81.36 | 9.69 | 22.97 | 4.85 | 266.95 | |
Maximum Write Response Time | 4155.96 | 7279.32 | 169.19 | 250.48 | 294.66 | 841.19 | |
16KB Random(Read 50%,Write 50%) | Read IOPS | 2530.15 | 3047.22 | 3176.17 | 6883.76 | 2783.98 | 14560.6 |
Write IOPS | 27.65 | 62.25 | 592.9 | 641.09 | 269.91 | 273.89 | |
Read MB/s | 39.53 | 47.61 | 49.63 | 107.56 | 43.5 | 227.51 | |
Write MB/s | 0.43 | 0.97 | 9.26 | 10.02 | 4.22 | 4.28 | |
Average Read Response Time | 0.39 | 10.5 | 0.31 | 4.65 | 0.36 | 2.2 | |
Average Write Response Time | 35.97 | 513.39 | 1.69 | 49.92 | 3.7 | 116.81 | |
Maximum Read Response Time | 28.51 | 27.83 | 10.62 | 14.41 | 3.71 | 5.35 | |
Maximum Write Response Time | 4657.16 | 10515.04 | 168.62 | 263.71 | 293.28 | 596.07 | |
64KB Random(Read 50%,Write 50%) | Read IOPS | 1576.38 | 1780.55 | 1907.96 | 3226.65 | 1638.26 | 4024.14 |
Write IOPS | 11.42 | 117.74 | 159.77 | 164.23 | 104.49 | 112.25 | |
Read MB/s | 98.52 | 111.28 | 119.25 | 201.67 | 102.39 | 251.51 | |
Write MB/s | 0.71 | 7.36 | 9.99 | 10.26 | 6.53 | 7.02 | |
Average Read Response Time | 0.63 | 17.97 | 0.52 | 9.92 | 0.61 | 7.95 | |
Average Write Response Time | 87.3 | 271.82 | 6.26 | 194.88 | 9.57 | 284.79 | |
Maximum Read Response Time | 11.28 | 42.63 | 10.76 | 19.97 | 5.13 | 13.01 | |
Maximum Write Response Time | 4680.41 | 8099.75 | 169.64 | 411.08 | 290.34 | 677.96 |
SHD-NSUHシリーズは、速度的にはライバルとなる製品と比較して、特に大きく劣る部分は見られず、以前のJMicronコントローラ搭載SSDとは違い、現在の売れ筋SSDとして申し分ないパフォーマンスが発揮される製品だ。
また、SHD-NSUHシリーズのウリはパフォーマンスだけではない。9.5mm厚2.5インチHDDとほぼ同じ筐体形状を実現することで、一部のノートPCで見られた物理的に搭載できないという問題を解消するとともに、USB 2.0ポートの搭載と、HDD複製/バックアップソフトの標準添付によって、簡単にノートPCのHDDを交換できるように配慮されている点は、他の製品に対するかなり大きな優位点となるはずだ。
また、バルク品として販売される例の多いSSDの中で、パッケージ品としてバッファローのサポートが受けられる点も魅力の1つ(もちろん、ノートPCのHDDを交換する場合に、ノートPCの保証まで面倒を見てくれるわけではないが)。さまざまなトラブルに自力で対処できるスキルを持っている人ならともかく、ノートPCのHDDをSSDに交換したいけれど、作業にやや不安があるという人にとって、この点はかなり大きな魅力になるはずだ。そういった意味では、PC上級者だけでなく、SSDに興味のある中級者にも十分おすすめできる製品と言っていいだろう。
(2010年 2月 26日)