平澤寿康の周辺機器レビュー

Intel「SSDSA2M040G2GC」
~容量と速度を抑えた廉価版SSD



Intel「SSDSA2M040G2GC」



 Intelから、SSDの新モデル「X25-V」が登場した。今回登場したのは、34nm MLC NANDフラッシュを採用する「X25-M Mainstream SATA SSD」をベースとしつつ、容量と速度を抑えた廉価版で、ネットブックなど低価格ノートPCをターゲットとした製品だ。いち早く試用する機会を得たので、従来モデルとの比較を中心に紹介していこう。

●見た目は従来モデルと全く同じ

 まずはじめに、外観からチェックしていこう。

 写真を見てもらうと一目瞭然だが、SSDSA2M040G2GCの外観は、従来モデルのX25-M Mainstream SATA SSDと全く同じである。今回試用した個体は、本体上部にスペーサーが取り付けられているものだったが、スペーサーを含めた本体の厚さは9.5mm。幅と奥行きは2.5インチHDDと同じとなっており、従来モデル同様、厚さ9.5mmの2.5インチHDDと全く同じ感覚で利用できるようになっている。

 本体カラーは、スペーサーがブラックで本体はシルバー。本体の形状、カラーとも従来モデルと全く同じとなっており、新モデルに特別なマークなども付けられておらず、型番をチェックしなければ、どちらが新モデルかわからないほどだ。

 重量は、実測値で77gであった。容量160GBの従来モデル(実測値で82g)よりも5gほど軽いが、これは容量が少ない分、内蔵されているフラッシュメモリチップが少ないからと考えられる。

本体サイズは、従来モデル同様、厚さ9.5mmの2.5インチHDDと全く同じ厚さは、スペーサーを含めて9.5mm。側面のネジ穴なども2.5インチHDDと同じだ接続インターフェイスはSATAだ
重量は、実測値で77gと、従来モデルよりもわずかながら軽い従来モデル(左)との比較。型番を見なければ全く見分けが付かない

●基板の構造は従来モデルと同じだが、搭載フラッシュメモリチップが大幅減

 従来モデル同様、スペーサーを固定している4本のネジを外すと本体カバーが開けられ、内部の基板を取り出せる。基板の構造は従来モデルと全く同じだ。コントローラチップには「PC29AS21BA0」、キャッシュメモリにはMicron製の256Mbit SDRAMチップ「MT48LC16M16A2P-75IT」をそれぞれ搭載している。これらは34nm MLC NANDフラッシュを搭載する従来モデルと全く同じだ。

 それに対し、フラッシュメモリチップは5個しか搭載されておらず、10個あるフラッシュメモリチップ搭載パターンのうち5個が空きとなっている。もちろん、基板裏面にも、従来同様10個のフラッシュメモリチップ搭載用のパターンが10個用意されているが、こちらは全てが空きとなっている。また、搭載されているフラッシュメモリチップは、容量64Gbitの「29F64G08CAMD1」。これは、従来モデルの、容量80GBモデルに採用されているフラッシュメモリチップと同じものだ。つまり、SSDSA2M040G2GCは、従来モデルの容量80GBモデルから、フラッシュメモリチップを5個省いたものというわけだ。

内部基板の様子。コントローラの「PC29AS21BA0」と、キャッシュメモリのMicron製「MT48LC16M16A2P-75IT」は従来モデルと同じ。フラッシュメモリチップは、容量64Gbitの「29F64G08CAMD1」が5個のみ搭載されている基板裏面。フラッシュメモリチップを搭載するパターンはあるが、チップは搭載されていない

●フラッシュメモリチップ半減によりパフォーマンスも低下

 IntelのSSDは、NANDフラッシュメモリに対して10チャネルの並列アクセスを行なうことによって、非常に高速なアクセス速度を実現している点が大きな特徴だ。しかし、SSDSA2M040G2GCでは搭載されるフラッシュメモリチップが減少しているため、同時アクセスチャネル数も減少することになり、当然パフォーマンスが低下しているものと考えられる。

 そこで、従来モデルとして容量160GBの「SSDSA2M160G2GC」を用意し、ベンチマークテストで速度を検証してみた。利用したベンチマークソフトは、CrystalDiskMark 2.2.0と、HD Tune Pro 3.50、Iometer 2008.06.28の3種類。IOmeterのテストは、アクセスパターンとして「File Server Access Pattern」に加えて、4KB、16KB、64KBのランダムリード50%、ランダムライト50%の全4パターンを実行。実行時間は各テストとも5分とした。テスト環境は下に示す通りで、SATAの動作モードはAHCIモードで行なっている。

テスト環境
CPUCore 2 Quad Q8200
メモリPC2-6400 DDR2 SDRAM 4GB
マザーボードGIGABYTE EP45-UD3R
ビデオカードRadeon HD2400 PRO
OSWindows 7 Ultimate

 CrystalDiskMarkの結果を見ると、やはりかなり速度が低下していることがわかる。読み出し速度は、従来モデルの2割強減ほどにとどまっているものの、書き込み速度は半減といっていいほどの速度低下となっている。やはり、並列アクセス数が半減している影響はかなり大きいようだ。とはいえ、搭載されているキャッシュメモリがうまく働いているため、容量4KBのランダムアクセス速度は従来モデルとほとんど変わらない。

X25-V
CrystalDiskMark 100MBCrystalDiskMark 1000MB

X25-M
CrystalDiskMark 100MBCrystalDiskMark 1000MB

 この傾向は、HD Tuneの結果にも表れている。シーケンシャルアクセス時では、読み出し速度はそれほど大きな落ち込みではないものの、書き込み速度は半減に近い速度となっている。また、ランダムアクセスの結果も、キャッシュからデータがあふれる状況が多くなるせいか、テスト後半になるほどIOPSが大きく低下してしまっている。

X25-V
HD Tune 8MB ReadHD Tune 8MB Write
HD Tune 512KB ReadHD Tune 512KB Write
HD Tune 64KB ReadHD Tune 64KB Write
HD Tune Random ReadHD Tune Random Write

X25-M
HD Tune 8MB ReadHD Tune 8MB Write
HD Tune 512KB ReadHD Tune 512KB Write
HD Tune 64KB ReadHD Tune 64KB Write
HD Tune Random ReadHD Tune Random Write

 IOmeterの結果は、CrystalDiskMarkはHD Tuneの結果と異なり、従来モデルと同等か、やや上回る結果がやや目立つが、Queue Depthを32に設定した状態では、従来モデルよりも大きく低下する結果が多くなっている。この結果からも、やはり搭載フラッシュメモリチップ減少によって、従来モデルと比較して速度が大きく低下してしまっていると結論づけて良さそうだ。

Iometer 2008.06.28 Windows 7 UltimateIntel SSDSA2M040G2GCIntel X25-M(34nm) 160GB
Queue Depth:1Queue Depth:32Queue Depth:1Queue Depth:32
File Server Access PatternRead IOPS740.527808958.311994736.989418939.809148
Write IOPS185.372772237.328592183.646239236.023575
Read MB/s7.99264210.3697697.96024410.199597
Write MB/s2.046212.5731111.9991042.594619
Average Read Response Time1.07631126.8653711.03771926.632036
Average Write Response Time1.08740426.3464611.27100729.51834
Maximum Read Response Time358.503917372.1239293.40168334.463355
Maximum Write Response Time27.056052369.208541267.477994332.584977
4KB Random
(Read 50%,Write 50%)
Read IOPS3606.13945431935.6430043410.62605637621.712638
Write IOPS637.384185785.327881361.654132335.019182
Read MB/s14.086482124.74860513.322758146.959815
Write MB/s2.4897823.0676871.4127111.308669
Average Read Response Time0.2759011.001630.2917570.850107
Average Write Response Time1.56762140.7437322.76232295.492683
Maximum Read Response Time7.5661884.1513054.851836266.948884
Maximum Write Response Time358.658651634.308857294.664939841.194144
16KB Random
(Read 50%,Write 50%)
Read IOPS2832.6112529922.7822622783.97589414560.597773
Write IOPS264.875642129.367094269.909281273.89041
Read MB/s44.259551155.04347343.499623227.50934
Write MB/s4.1386822.0213614.2173334.279538
Average Read Response Time0.3516153.2239250.3577272.19678
Average Write Response Time3.773848247.3435693.702095116.807974
Maximum Read Response Time7.2989569.8322813.7125995.354836
Maximum Write Response Time386.358977772.232252293.281881596.067771
64KB Random
(Read 50%,Write 50%)
Read IOPS1470.9359272596.5386651638.2637164024.135163
Write IOPS49.30486351.344167104.490053112.253306
Read MB/s91.933495162.283667102.391482251.508448
Write MB/s3.0815543.209016.5306287.015832
Average Read Response Time0.67840812.3227880.6086967.950986
Average Write Response Time20.279487623.0604169.568488284.794174
Maximum Read Response Time7.5158920.1068775.12867813.010415
Maximum Write Response Time616.4926461546.547068290.338757677.961123

●容量と速度に納得できるならおすすめ

 今回取り上げたSSDSA2M040G2GCは、従来モデルと比較して速度が大きく低下してしまっているうえに、容量も40GBと少ないため、SSDとしての魅力は従来モデルからかなり損なわれていると言わざるを得ない。ただ、廉価版と言うことで、実売価格は15,000~16,000円程度と比較的安価に設定されており、価格面での魅力は十分にある。INDILINX製コントローラを搭載する他社製SSDでも、容量32GBモデルは13,000円以上で販売される例がまだまだ多く、それらとも十分に対抗できるはずだ。

 速度は従来モデルよりも遅いため、特に大容量のファイルにアクセスする時には若干遅さを感じる場合もあるかもしれない。それでも、HDDよりは十分に高速であり、HDDからの交換で快適度が向上することは間違いないだろう。そしてなにより、Intel製SSDという安心感は大きな魅力となるはず。もちろん、ノートPCだけでなく、デスクトップPCでも大容量を必要としないシステムドライブとして利用するといった用途なら十分活用できるだろう。SSDに大容量と圧倒的な速度を求めている人には少々厳しいかもしれないが、容量面と速度に納得できるなら、価格的にも十分オススメできる製品だ。

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(2010年 1月 8日)

[Text by 平澤 寿康]