■大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」■
斉木社長 |
バッファローは、サプライ事業を行なうバッファローコクヨサプライを合併すると発表した。コクヨS&Tが保有するバッファローコクヨサプライの全株式を、バッファローの親会社であるメルコホールディングスが取得。2012年4月1日付けで、バッファローに事業統合する。
バッファローの社長であり、バッファローコクヨサプライの社長を兼務で務める斉木邦明氏は、「リソースを一本化することで、より戦略的な事業展開が可能になる。サプライ市場における存在感をさらに高めていきたい」と、今回の統合がサプライ事業強化の一環であることを強調する。斉木社長に、今回の合併の狙いと、今後のサプライ事業戦略について聞いた。
●合併の狙い
バッファローが入居するビル |
--バッファローコクヨサプライをバッファローに合併させる狙いはなんですか。
斉木 メルコグループとコクヨS&Tは、2007年2月に業務提携を行ない、同年8月からバッファローコクヨサプライとしてサプライ事業を展開してきました。当初は年間50億円強の事業規模でしたが、2010年度実績では103億円の事業規模に拡大し、今年度は約120億円の事業規模と、この間、約2倍に事業へと成長させることができました。
今回の事業統合は、こうした過去5年間の経験をベースに、さらに、戦略的に事業を拡大していくという狙いがあります。これまでバッファローとバッファローコクヨサプライは、別々の企業でしたから、当然のことながら営業体制も別々です。バッファローで120人、バッファローコクヨサプライで100人という営業担当者がバラバラに動いていた。しかし、これからは、この2つの営業組織をあわせることで、220人という営業担当者が1つの体制として、周辺機器、サプライを担当することになり、より効率的で、より質の高い営業活動を展開することができるようになります。
売り場づくりを店舗が行ない、それを支援する周辺機器の営業体制と、棚取りをして、その製品構成、展示までをラウンダーが行なうサプライビジネスの営業手法とは異なりますから、それぞれのノウハウを活かして、トータルでの提案ができる効果は大きいと言えます。販売パートナーである量販店からも、「取引の窓口を一本化できないか」というご提案は何度もいただいていました。これがようやく実現できます。
また、バッファローでは月間250万台、バッファローコクヨサプライでは月間200万台という商品を扱っていますが、今回の統合により、これを1つの物流体制で展開できるようになる。月間500万台規模の物流を一本化できるわけですから、このメリットも大きいといえます。エンドユーザーに対して、より購入しやすいサプライ製品を提供できる環境が整ったともいえるでしょう。
--営業部門以外の組織統合はどうなりますか。
斉木 現在、プロジェクトチームを設置し、統合に向けた検討を進めている段階ですが、バッファロー社内にサプライ事業部を新設し、約30人規模で、マーケティング、商品企画、開発および一部生産を担当することになります。品質保証や管理部門はそれぞれバッファローの各組織に統合されることになります。商品企画では、バッファローの周辺機器の商品企画チームと連動した形での取り組むことも増えるでしょう。
私は、今回の統合にあわせて、バッファローコクヨサプライの約120人の正社員のほか、契約社員、派遣社員などを対象にした人員削減は一切行なうつもりはありません。より効率的な配置転換といった観点での異動はあるにしても、すべての人材をそのまま異動させ、活用していく予定です。
すでにバッファローコクヨサプライには、役員を除き約20人のバッファロー社員が異動していましたし、この約1年の間に、名古屋の本社を含めて、札幌、仙台、東京、大阪、福岡の各拠点において、同じ建物の中に拠点を統合し、相互に連携できるような体制も整えてきました。企業文化の共有化という点ではずいぶん進んでいたといえます。
--見方によっては、サプライ事業からの撤退を視野に入れた統合という捉え方もできそうですが。
斉木 サプライ事業分野から撤退するということはまったく考えていません。むしろ、攻めて行くための統合だと捉えてください。営業、開発、サポートといったリソースを有効に活用し、オペレーションの速度をさらに上げ、デジタルホームからサプライまで、あるいは通電系の製品から非通電系の製品に至るまでの幅広い製品群を、ワンストップで提供することができるようにします。量販店をはじめとする販売パートナーやエンドユーザーに対しても、トータル提案ができるようになるわけです。これまで以上に攻めの姿勢が打ち出せると考えています。
--バッファローコクヨサプライのスタート当初から、最終的には統合することを視野に入れていたのですか。
斉木 それはありませんでした。ただ、ここ数年、コクヨさんがオフィス製品に力を注ぎ、本業へのリソース集中といった動きがみられていました。そうした中で、どういった形で企業経営をするのが最適なのかといったことを、1年ほど前から模索していました。その検討の中での1つの選択肢が、今回の統合ということになります。
バッファローコクヨサプライは、2年度目から単年度黒字化していますし、この4年で事業規模も約2倍へと成長した。こうした成長をさらに加速させるための体制としたわけです。
--ブランド戦略に変更はありますか。
斉木 2011年1月から、サプライ製品のブランドとして、「iBUFFALO」を導入しています。これは、周辺機器総合ブランド「BUFFALO」の兄弟ブランドとして、引き続き活用していきます。
また、今後の海外事業展開においては、iBUFFALOのブランドを活用していくことになります。つまり、ブランド戦略には変更はありません。現在、バッファローコクヨサプライとして取り扱っている製品数は、iBUFFALOおよびBUFFALOで約2,400種類、アーベルブランドが100種類強、コクヨブランドの製品数は約2,000種類となっています。むやみに製品数を増やしていくというよりも、差異化した製品の投入に力を注ぎたいと考えています。
--コクヨS&Tとの関係はどうなりますか。
斉木 共同開発をしていくということはなくなりますが、バッファローブランドの製品をコクヨが取り扱ったり、コクヨの製品をバッファローが代理店の1社として取り扱うといった提携関係は続くことになります。製品のロードマップについても情報を共有しています。
--新体制になって、今後、どんな製品が登場することになりますか。
斉木 バッファローが発売するさまざまな製品の中で、もっとも差異化が明確なのがサプライ事業だと思っています。マウスでは、BlueLEDマウスを製品化し、光学式マウスをすべて置き換えてしまうような勢いでの製品提案を行なっていますし、誰が貼っても絶対に気泡ができないスマートフォン向けの液晶保護フィルム「イージーフィットタイプ」といった製品も投入し、高い人気を博しています。イージーフィットタイプは、当社が特許申請している独自技術によって実現したものです。こうした他社にはない差異化した製品を、これからも継続して投入しつづけなくてはならない。
BlueLED採用のマウス「BSMBUE07」シリーズ | 気泡が入らないiPhone用液晶保護フィルム「BSIPP6FE」 |
ただ、対抗メーカーに比べると、まだ非通電系の領域で差をつけられている。ここはもっと積極的に展開してからなくてはならない。非通電系はデザイン先行の分野というように捉えられがちですが、ここに機能性といったものを付け加えた提案を行ないたいと考えています。
私は今年(2012年)の年初に、社内に向けて「すべての事業部門において、他社が半年は真似ができない差異化製品を投入するように」と徹底しました。2011年は、そうした製品が出せなかったという反省があります。
たとえば、「おもいでばこ」は他社にはない差異化製品ではありますが、これも本来ならば2010年に発売しなくてはならない製品でした。また、地デジ8チャンネル分を8日間自動録画する「ゼン録 DVR-Z8」も、昨年末に投入できなかったという反省があります。こういう点も改善していかなくてはならないわけです。4月から新設するサプライ事業部を含めると、バッファロー社内には、6つの事業部がある。そのすべての事業部から、最低でも1つずつは「他社が追いつけない」という差異化製品を投入したい。それが今年の重要なテーマです。
おもいでばこ | ゼン録 DVR-Z8 |
--今後、サプライ事業の成長戦略はどう描いていきますか。
斉木 バッファローは、サプライ市場においては、すでに第2位のポジションを獲得したといえますが、トップメーカーであるエレコムと比較すると、事業全体で3倍程度の売り上げの差があります。また、プリンタ用インクカートリッジといった当社が参入していない分野を除き、直接競合する製品だけの比較においても2倍程度の差があります。まずは早期に、競合分野だけの比較で五分五分のところにまで持って行きたいですね。
これまでは、年率20%程度の成長率を遂げ、月間10億円程度の事業規模へと成長させることができました。今後も継続的には20%成長を維持しつづけるは厳しいと言えますが、それでも、バッファローのサプライ事業部として、2012年度は150億円の売り上げ規模にはしてかなくてはならないと考えています。繰り返しになりますが、これからも攻めの姿勢は変わりませんよ。