大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

「マウスコンピューター」から「mouse」へ。ブランド変更に込められた意味とは?

〜同社小松社長インタビュー

新ロゴ

 株式会社マウスコンピューターが1月21日付けで、ロゴおよびブランド名を変更した。新たなブランド名は、これまで同社製品の愛称として使われていた「mouse(マウス)」。また、同時に、「期待を超えるコンピューター。」を新たなコーポレートメッセージとして打ち出したほか、同社が開発および製造拠点を置いている長野県飯山市にちなみ、国産ならではの信頼感を表現する「飯山TRUST」のメッセージも発信する。新ロゴの制定およびブランド変更の狙いは何か。そして、新たなメッセージに込めた意味とは何か。マウスコンピューターの小松永門社長に聞いた。

−−マウスコンピューターは、2016年1月21日付けで、ロゴおよびブランド名を「mouse(マウス)」に変更しました。この狙いは何ですか。

マウスコンピューターの小松永門社長

【小松】もっと多くの方々に、私たちの会社を知っていただきたいということが1つ。そして、知っていただいた人たちに対しては、親しみを持っていただき、信頼していただける会社となりたい、ということがもう1つの狙いです。つまり、マウスは、コンピュータを開発、製造している会社であり、信頼できる会社として広く認知されたい。そうした思いが、ロゴ変更の原点にあります。

 実は、今から数年前のことなのですが、あるところで会社の説明をする機会がありました。そのときに、「マウスコンピューターとは、なんの会社ですか?」と聞かれました。名前から、IT系の仕事をしている会社だということは分かるが、PCのメーカーであるということを知らない人もかなりいたわけです。また、中には、「外資系企業ですか?」という人もいました。

 この時に感じたのは、私たちが作っている製品をもっと多くの人に使ってもらうためには、私たちの会社のことをもっと多くの人に知っていただかなくてはならない。そして、信頼してもらえる会社にならなくてはならないということでした。1993年にPC事業を開始してから、BTO(Build to Order=受注生産)を中心にビジネス展開してきましたが、より多くのお客様に、BTO PCを届けるには、「BTO PCは一部の人のものである」という今までのイメージを変えることが重要だと考えています。そこには、今回のロゴ変更の意図があります。

−−「コンピューター」という言葉を取ったということは、コンピューター以外の領域にも踏み出していくことを宣言する狙いがあるのですか。

【小松】コンピューターに加えて、その周辺機器でもビジネスをやっていくという意味ではそういう言い方ができるかもしれませんが、当社が、PC事業を中核に置く姿勢はこれからも変わりません。当社のコアビジネスはPCです。コンピューターという言葉をとった意味は、むしろ、古くから当社製品を使っていただいているユーザーの方々が愛着を込めて、「マウス」と呼んでいただいたり、ソーシャルメディアに「マウス」と書き込んでいただいていることを、そのまま取り入れたものだと言った方がいいかもしれません。

 今回、ロゴとともに、新たなコーポレートメッセージとして、「期待を超えるコンピューター。」を制定しました。これは、ロゴと一緒に使用する機会も多いと言えますが、ここでコンピューターという言葉を使っているように、我々はコンピューターを開発、製造する会社であるということを明確にしています。mouseと短くすることで、より親しみやすく、覚えてもらいやすくするという狙いもありました。

−−なぜ、このタイミングでロゴを変更したのですか。

【小松】本来ならば、2013年が創業20周年でしたから、そのタイミングでのロゴ変更がよかったのかもしれませんが、慎重に議論を重ねた末、今年(2016年)になってしまったというわけです。結果として、大きな節目には当たらないタイミングになってしまいましたが(笑)。

−−ロゴの名称は、ほかにも候補があったのですか。

【小松】認知度を高めるためには、どんなロゴがいいのかという観点から、さまざまな検討を行ないました。

 例えば、我々の強みである国内生産ということを訴えるのであれば、「iiyama」というブランドを活かす手もありましたし、ゲーミングマシンとして高い評価を得ている実績からすれば、「G-Tune」というブランド名をそのままロゴにするという手もあったでしょう。さまざまな可能性を検討し、その中から、市場調査を行なったり、これまでの実績と今後の方向性という観点から、しっくりと来る名称を選びました。市場調査においては、これまで当社製品を購入していただいたユーザー様が、新たなロゴになった場合にも継続的に購入をしていただけるのかどうかということも、重要な要素としました。

 選定は、ごく限られた人数で行ないました。ただ、社員に対しては、2〜3年前から、近い将来、ロゴを変更するようなことを少しずつ匂わしていましたから(笑)、いよいよ来たなという感じで受け取ったのではないでしょうか。1月21日に開催した社内のお披露目会では、あえて私は何も喋らず(笑)、デザイナーにそのデザインの意図を細かいところまで説明してもらいました。そうした方が、このロゴ変更の意味が伝わると思ったからです。

−−新たなロゴは、「mouse」という小文字であること、そして、丸みを帯びた書体としていますね。このあたりのこだわりはなんですか。

【小松】多くの人に、愛着を持ってもらえるデザインにしたいということを前提にしていましたから、候補の中からそうしたイメージにあったものを選定した結果が、全てを小文字にしたことと、この書体に決めた理由となっています。最後に残った候補案の中には流れるような書体のものもありましたが、最終的にこのロゴにしたのは、従来のマウスコンピューターのイメージを継承したものにしたいという点と、愛着を持ってもらえるという点でした。

−−継続性と愛着という点では、チーズのロゴマークもありますが。

【小松】これもこだわった部分です。チーズのマークは多くの人に愛されてきましたし、チーズから出ている尻尾にも人気がありました(笑)。ですから、継承したいとは思っていたのですが、ここも思い切って変更しました。

尻尾の生えた旧ロゴ

 これまで使用してきたチーズのモチーフを継承し、三角形をベースにしながらも、ひと目で見て覚えてもらえるマークであることを意識しました。それと、最初は、三角形の頂点は下向きだったのですが、これを180度回転させて、頂点を上向きとすることで、これからさらに上昇するという願いを込めました。シンプルであり、力強く、ユーザーにとって誇りとなるデザインを目指しました。

天板に入った新しいチーズロゴ

 ユーザーの間からは、最初は「かつてのマークがなくなって寂しい」という声がありましたが、見慣れてくると、「このマークもいいね」という声が出てきています。今後は、PC本体の天板部分などに、このマークを順次入れていくことになります。また、G-TuneやMADOSMAにも、mouseのロゴを入れることを検討していきたいですね。

新mouseロゴの入ったPC
CM記念モデルMB-B500E

−−新たなロゴやロゴマークは、黄色を基調としたものに変更していますね。

【小松】かつてはチーズを意識したオレンジ色でしたが、今回の黄色は、マウスの生産拠点がある飯山市に咲く「菜の花」の色をモチーフにしています。ここにも国内生産であるという特徴を反映しています。

−−一方で、社名は「株式会社マウスコンピューター」のままですが。

【小松】もちろん、一緒に社名を変更するというのも1つの手ですが、そうなると、ロゴ変更とは異なり、さまざまな影響が出てくることになります。社名まで変更するとなると、取引先の皆さまにご迷惑をかけてしまうため、社名は変更せずに、ロゴのみを変更したというわけです。

−−新たなコーポレートメッセージである「期待を超えるコンピューター。」の意味を教えてください。

【小松】この言葉は、我々が創業以来、取り組んできたモノづくりのDNAを、1つの言葉に集約したものだと捉えてください。ここに込めた意味は、お客様の期待を、いい意味で「裏切る」企業になりたいということです。最新の技術を搭載したデバイスをいち早く製品化し、しかも購入しやすい価格で提供するのがマウスのモノづくりです。

 「期待に応える」という言い方もありますが、これでは受け身の姿勢でしかありません。マウスは、自分たちで考えて、ポジティブな姿勢で、モノをつくり、お客様の期待を超えたい。そして、この考え方は、製品そのものだけでなく、サービス、サポートにも広げていきたい。マウスは、20年以上に渡るBTO PCの製造で培ってきた「ニーズにきめ細かく応える製品」、「徹底した品質管理」、「手に取りやすい価格設定」、「24時間365日のきめ細かいサポート」という特徴があります。それらの全てにおいて、お客様の期待を超えていきたいと考えています。

 正直なところ、言葉にしてみると、かなり強い印象があり、私自身、最初は、この言葉を打ち出すことに少し抵抗がありました。しかし、これが我々のビジネスの原点であり、DNAです。それならば、これをコーポレートメッセージとしてしっかりと打ちだそうと考えたわけです。

−−このコーポレートメッセージは、何年先まで考えたものですか。

【小松】少なくとも10年以上は使いたいと思っています。ただ、そうは言いながらも、これはマウスにとって普遍的なメッセージであり、基本姿勢であるとも思っています。もし、このコーポレートメッセージを使わなくなるときが来たら、それは、多くの人から、「マウスのコンピューターは、期待を超えるものばかりだね」と言っていただけるようになった時でしょうね。その時には、「期待を超えるコンピューター。」の次の目標が、きっと生まれているはずです。

−−今回のロゴ変更、新たなコーポレートメッセージとともに、「飯山TRUST」というマークを打ち出しましたね。

飯山TRUST ロゴ

【小松】マウスには、日本で開発し、日本で生産しているという強みがあります。国産ならではの信頼感をどう表現するか。ぜひ、このタイミングでそのあたりを訴求したいと考えました。それが「飯山TRUST」です。マウスの開発および生産拠点の中心は、長野県飯山市にあり、そこで、PCの開発から製造までの一貫体制を構築しています。国産ならではの信頼感を、「TRUST」という言葉に込め、これからもより良い製品をお届けしていくことを約束する信頼のマークが「飯山TRUST」ということになります。

 今年4月以降に出荷される、飯山工場およびその関連工場において生産された国内製造モデルには、梱包箱にこのマークを表示する予定ですし、今後は、製品そのものに、「飯山TRUST」のシールを貼付することも考えていきたいですね。

−−「飯山TRUST」の文字の上のマークには、どんな意味がありますか。

【小松】このマークは、日の丸をモチーフとし、同時に、山から昇る太陽のようなイメージを表現し、日本のモノづくりを照らし、牽引していきたいという思いを込めています。そして、この三角部分は、山であるとともに、mouseの新ロゴのチーズの三角形部分を切り取った部分にもなっています。この三角形の角度は同じですから、ぴったりと当てはまるようになっていますよ(笑)。飯山TRUSTのロゴ案だけでも、20以上ありましたが、その中から納得の行くものを選定できたと思っています。

−−今回のロゴ変更に伴い、TV CMをかなり積極的に展開していますね。

【小松】これは、マウスの認知度を高めるための重要な施策の1つです。まずは、製品品質の高さ、続いて24時間365日のサポート体制の強み、そして、最後には「結構売れている」という言葉を使いながら、多くの人に使われている安心のブランドであるということを訴求しています。中村獅童さんを起用したのは、古き良き「日本の伝統芸能歌舞伎」のイメージが、我々の日本生産と通じること、そして、中村獅童さんが偶然ねずみ年であったということも影響しています。2つ返事でご了承をいただきました。同時に、キャンペーンを実施していますが、中村獅童さんのサイン入りノートPCをプレゼントするキャンペーンには、2月中旬で約6,000件の応募があります。2月末までの締め切りにどれだけの件数が集まるのか楽しみですね。

−−今回のロゴ変更、新たなコーポレートメッセージ、そして、飯山TRUSTの発信によって、マウスはどう変化していきますか。

【小松】今回の取り組みは、より多くの方々から、親しみやすく、覚えてもらいやすい存在になることを目指したものです。そして、信頼される製品を作り続ける企業であることを、お客様や社会と約束するという意味もあります。日本のユーザーがPCを購入する際に、「マウス」の製品が必ず選択肢の1つとしてあがるようになりたい。

 そのためには、マウスという会社がどういうモノづくりをしている会社なのか、そこから生まれる製品やサービスはどういうものなのかということを、もっと知っていただきたい。そのための努力をさらにしていきたいと考えています。それが、マウスの次の成長に繋がりますし、多くのお客様に喜んでいただけることに繋がると考えています。

−−新たなロゴがスタートした2016年は、マウスにとってどんな1年になりそうですか。

【小松】最優先事項は、PCビジネスをしっかりと伸ばしていくということです。PC市場全体は減少傾向にありますが、マウスにとって主軸の事業であることに変わりはありません。これまでは30代〜40代の男性が購入ターゲットの中心となっていましたが、それに加えて、40代以上の男性ユーザーや、幅広い年齢層の女性ユーザー、そして、法人ユーザーに対しても、もっと積極的にアプローチをしていきたいですね。また、若年層にもPCの魅力を伝えていきたいと思っています。社会人になれば、PCは必ず使うことになりますし、若い人たちにとっても、PCが不要というわけにはいかないでしょう。あらゆる層の人たちに、PCの魅力を伝えることができる取り組みを加速したいですね。

 2つ目は、PCビジネスの取り組みの中でも、マウスが得意とする領域に、よりフォーカスしたいと考えています。

 ここでは、まず1つ目がゲーミングPCのG-Tuneです。今年はオリンピックイヤーでもあり、スポーツゲームも盛り上がりを見せています。ゲーミングPC市場におけるG-Tuneの存在感をさらに高めていきたいですね。

 もう1つは、クリエイター向けPCです。2月18日に、「DAIV」という新たなブランドをスタートしました。これは、「Dynamic Approach Imagery of Visual」(ビジュアルへの力強いアプローチ)という意味をこめたもので、日本のPCメーカーからも、グラフィック性能にこだわったしっかりとしたPCを投入できるということを、このブランドで確立したいと考えています。画像編集作業を行なうプロフェッショナルのクリエイターのほかにも、ハイアマチュアユーザーなどもターゲットにしていきたいです。デスクトップPCと、ノートPCのラインアップを投入していくことになります。DAIVは、今年が初年度となりますから、まず認知度を高めることが重要な取り組みになります。

 そして、3つ目がモバイルです。ここでは、8.9型のタブレットや10.1型の2in1 PCをラインアップし、さらに、Windows PhoneのMADOSMAを投入しています。先頃、MADOSMAも新たな製品を投入することを発表しましたが、スマホ、タブレットを含めて、モバイル全体での強化も図っていきます。

 新たなロゴでスタートした1年目は、信頼の企業としての認知を高めるとともに、ぜひ、お客様の「期待を超えるコンピューター」を投入していきたいですね。この1年の取り組みを楽しみにしていてください。

(大河原 克行)