大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

パナソニック、タブレットの構成比を今年度2割以上に

〜過去最高の出荷計画達成に強い意欲

 パナソニックは、同社のPC事業としては過去最大の出荷台数となる2013年度83万台の出荷計画達成に向けて、タブレットの販売拡大に取り組む。今年度は、出荷計画の2割以上が「TOUGHPAD」を始めとするタブレットになる見込みだ。

 また、4月からスタートした事業部制にあわせて、ITプロダクツ事業部に、決済端末などのビジネスユニットを統合。これらの製品や販売ルートを活用した複合商品の提案も加速する考えだ。パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部・原田秀昭事業部長に話を聞いた。

第2四半期以降の事業拡大に自信

 パナソニックのITプロダクツ事業部は、2013年度から業績開示対象事業となっている。これによると、2012年度の同事業部の実績は約1,000億円で、2013年度第1四半期(2013年4月〜6月)の業績は、前年同期比2%減の234億円となった。

 前年割れの厳しい実績でのスタートとなったが、原田事業部長の表情は明るい。その理由はいくつかある。

 1つは、第1四半期は、同社ITプロダクツ事業部において、最も売り上げ規模が小さい四半期であり、通期へのインパクトは、むしろ第2四半期以降の業績が左右するという点だ。

 また、第1四半期は前年同期比2%減となったものの、競合他社の落ち込みはそれをさらに上回るものとなっており、言い換えれば、業界全体が大きな落ち込みを見せる中で、前年同期比2%減の落ち込みに留まったことは、第2四半期以降につなげるという点でも評価できる業績だったと言える。

パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部・原田秀昭事業部長

 そして、2つ目は、第2四半期以降、前年実績を上回る見通しを立てており、それが実際に7月以降の業績に表れ始めていることだ。現時点で、第2四半期の業績を明確に示すことはできないが、「Windows XP(サポート終了)への駆け込み需要が顕在化しており、第2四半期は前年実績を上回る形で推移している。第3四半期、第4四半期はさらに上昇する可能性が高い。消費増税前の駆け込み需要も期待できる」と、原田事業部長は語る。

 特に、第3四半期に受注を集中させることで、第3四半期および第4四半期の増産へとつなげていく考えを示す。「第4四半期は、今の神戸工場の生産体制では追いつかなくなる可能性が高い。少しでも早く受注につなげて、第3四半期から、生産の平準化を図る必要がある」と原田事業部長は、増産の前倒しを視野に入れる。

 その仕掛けとして同社が注力するのが、8月下旬からスタートする「顧客商談会」である。これは8月下旬から11月末までの約3カ月間に、札幌、仙台、大宮、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、高松、福岡の10カ所で開催する主要顧客向けの商談会で、1会場あたり10〜15社の企業ユーザーを対象に、原田事業部長以下、営業、マーケティング、開発、技術、サポート部門のトップが対応。直接要望を聞くことで次の製品開発に活かすほか、新機種の導入相談やソリューション提案などを行なう場となっている。

 顧客の声を直接聞くというパナソニックのITプロダクツ事業部において、年間での重要活動の1つに位置付けているものだ。「今年の顧客商談会での重要なテーマの1つが、Windows XPからの移行相談。パートナー各社との連携によって、効果的にWindows XPからの移行を促す提案を行なっていきたい」とする。これはパナソニックが用意している移行メニューの提案のほか、今後、発表する新製品の提案活動も含まれることになりそうだ。

タブレットの品揃え拡充と機能強化に挑む

 そして、今後の事業拡大に向けて、もう1つの重要な要素が、「Let'snote」や「TOUGHBOOK」といったノートPC製品だけでなく、ITプロダクツ事業部が取り扱うタブレットに注目が集まっている点だ。

 現在、ITプロダクツ事業部では、Androidを搭載した10.1型と7型ディスプレイモデルと、Windows 8を搭載した10.1型のTOUGHPADをラインアップしている。さらに、1月にCESで発表した20型4Kタブレットも、今後の製品化が視野に入っている。

 原田事業部長は、「下期から来年(2014年)にかけ、TOUGHPADの商品ラインアップ拡大と機能強化は重点課題の1つになる」とし、「2013年度は、83万台の出荷台数の内、TOUGHPADだけで約15%の構成比に達するだろう。これにヘルスケア向けなどのTOUGHBOOKブランドで展開しているタブレットを含めると、約20%の構成比にまで高まる」とする。

 さらに、1,200億円の売上高を目指している2015年度には、「海外ビジネスでは、3割以上がタブレットになると考えている。国内をあわせた全体でも25%以上がタブレットになるだろう」とする。今後は、企業向けAndroidタブレット「BizPad」もITプロダクツ事業部で扱い、TOUGHPADへと製品ラインを統合していくことになる。

 そして、これらのタブレット製品の生産は、神戸工場を使わずに台湾の生産拠点を活用することになりそうだ。「タブレットは、まずは海外市場で販売が立ち上がると見ており、それに合わせて海外拠点での生産を優先する」(原田事業部長)。

83万台の年間出荷計画にタブレットが貢献

 このように、パナソニックのITプロダクツ事業は、第2四半期以降、前年実績を上回る形で推移するとの見通しを立てている。2013年度の業績目標は明らかにしていないが、前年実績を上回る計画を立てているのは明白だ。そして、出荷台数は前年実績の68万台に対して、22%増となる83万台を計画。同社のITプロダクツ事業として、過去最大の出荷台数を目指すことになる。

 「今年度の83万台の出荷目標は、必ず達成しなくてはならない数字。現時点でも達成できると考えている」と原田事業部長は自信をみせる。その中で同時にタブレット事業も立ち上げていく考えだ。

事業部への移行で新たなビジネス展開も

ITプロダクツ事業部の製品

 パナソニックのITプロダクツ事業部は、2013年4月の事業部制への移行に伴い、Let'snoteやTOUGHBOOKといったノートPCのほか、TOUGHPADによるWindowsやAndroidを搭載したタブレット製品を加えた。さらに、ITプロダクツ事業部の原田事業部長の立場では、これまでパナソニックシステムネットワークス社のモビリティシステムビジネスユニットで取り扱ってきた小売店向けのクレジットカード決済端末や、宅配便業界向けの情報端末などの事業も統括することになった。

 これによって、従来のITプロダクトビジネスユニットでは不可能であった新たな提案活動も開始できる体制が整ったといえる。まだ組織は別だが、新たな「事業部」としての取り組みを、幅の広いものにする可能性が生まれたといってもいいだろう。

 原田事業部長は次のように語る。「例えば、タブレットに決済機能を付加し、複合機能を持った製品へと進化させれば、他のPCメーカーにはない提案が可能になる。これはソリューション提案を加速することにもつながり、当社にとって大きなビジネスチャンスが生まれることになる」。

 原田事業部長は、ITプロダクツを統括するようになってから、「Let'snoteソリューション」、「TOUGHBOOKソリューョン」という言葉を使いながら、ソリューション事業の強化を標榜してきた。

 そこで強みとしてきたのは、「一品一様」での生産や、柔軟な「カスタマイズ対応」といったハードウェアを中心とした差別化であった。だが、ITプロダクツ事業部と、クレジットカード決済端末や、宅配便業界向けの情報端末などの事業を行なうAVCネットワークス社ターミナルシステムビジネスユニットを統括する立場となったことで、ハードウェアの差別化にも幅の広がりができ、さらにソリューション提案といった点でも、ハードウェアだけに留まらないトータル提案を行なえる体制が整ったと言える。

 パナソニックが、PC事業において、「ITプロダクト事業部」の名称を使い始めたのは2001年のこと。現在、パナソニックでオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(AIS)の社長を務める山田喜彦専務取締役が、同事業部長を務めていた時に、命名したのが最初だ。だが、それ以来、ITプロダクツ事業部といいながらも、「PC」事業部の域を出なかったのも現実だった。

 しかし、今回のITプロダクツ事業部と決算端末などを1人のリーダーの下とで統括するという体制は、名実ともにITプロダクツを事業として展開する組織へ進化したと捉えることができる。そして、原田事業部長が語る「ソリューション」が、さらに一歩進み、新たなフェーズへと踏み出したと言えよう。

 本当の意味で、ITプロダクツ事業部が動き出すのは、これからだと言えそうだ。

(大河原 克行)