大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

いよいよ第4世代に踏み出したThinkPadとは?



 ThinkPadはいよいよ第4世代へ向かう。

 レノボ・ジャパンは、ThinkPadシリーズの新製品として、SMB(中小企業)向けの「ThinkPad Edge」シリーズを新たに投入した。これまでのThinkPadに新たに追加した製品で、「お求めやすい価格、シンプル」をコンセプトに開発した点がこれまでのThinkPadとは異なるという。

 「伝統に支えられたThinkPad SPIRITSを注入した製品。品質と信頼性には自信がある」と、研究・開発を担当するレノボ・ジャパンの内藤在正取締役副社長は語る。

 ThinkPad Edgeによって、新たなThinkPadの世界を作ることができるのだろうか。

●ThinkPad誕生から18年目の2010年
レノボ・ジャパンの内藤在正取締役副社長

 '92年に初代ThinkPadが発売されてから、2010年は18年目を迎える。内藤副社長はその間を4つの世代に分ける。

 第1世代は、'92年〜'99年の創成期である。

 米IBMのトーマス・ワトソンSr.が会議中に発した「THINK」という言葉をもとに、IBMで使用されるメモ帳には「THINK」の文字が箔押しされるようになり、ここから命名されたThinkPadは、ビジネスの成功を支援するツールとして、またPCの利用環境をオフィスの机の上から解き放す役割を担うツールとして、多くのユーザーに利用されてきた。2000年には累計出荷で1,000万台を達成、2003年には累計出荷2,000万台を達成している。

 ThinkPadのブランドを確固たるものにした時期を第1世代だとすれば、第2世代は、2000年〜2004年までの時期。内藤副社長は、「整合性、共通性の強化の時期」と表現する。

 数多くのラインアップが用意される一方で、ThinkPadのアイデンティティが見えにくくなった時期でもあった。そこで、改めてThinkPadのアイデンティティを確立。キーボードの品質、パワースイッチの位置の固定といった細かいところにも踏み込んで、ThinkPadの共通性を高め、同時に大和で開発されるThinkPadならではの品質を確固たるものに高めていった。この時期には、セキュリティチップの搭載や、ハードディスク・アクティブ・プロテクションといった新技術を採用していった点も見逃せない。

 そして、第3世代はレノボに移行した2005年以降。「圧倒的な高性能とユーザビリティ、環境配慮に取り組んだ時期」と表現する。

 快適な操作環境を実現するには、それを支える高性能が必要であるという考え方のもと、設計や部品などを見直し、ビジネスツールとしての進化を遂げたのがこの第3世代だったというわけだ。

 そして、2010年からは、いよいよ第4世代に入ることになる。それを象徴する製品がThinkPad Edgeということになる。

第4世代のThinkPadとして新たに投入した「ThinkPad Edge」

 「ビジネスツールとしての本道は変えていない。その上で、気持ちを新たに開発したのがThinkPad Edge。ThinkPadであり続けながら、新たなニーズに対応するために、もっと安くThinkPadを作りたい、もっと多くのお客様へThinkPadの経験を提供したいという狙いから開発した新たなThinkPadになる」と、内藤副社長は位置づける。

 シンプルなデザインを前提とし、最新機能の搭載を重視。ThinkPadの象徴的キーボードレイアウトであった7列キーボードをやめ、フレーム付き6列キーボードを採用し、使用頻度が少ないNum Lock、Scroll Lock、Pauseなどのキーを廃止したことも、シンプル化への象徴的な取り組みだといえる。

 ThinkPad Edgeの「Edge」は、エッジが立ったデザインという意味からネーミングしたという。デザイン面でもこだわりをみせたという姿勢が、このネーミングに込められている。

●コストを抑えてもThinkPadブランドのため妥協しない
第4世代のThinkPadへのこだわりを説明する内藤在正取締役副社長

 内藤副社長は、ThinkPad Edgeの開発をスタートするのに際し、開発チームに対して、一定のコスト目標を掲げながら次のように語ったという。

 「コストはこれだけしかかけられない。だが、コストをかけられないから仕方がないというような妥協する考え方は一切捨ててほしい。キーボード1つをとっても、ThinkPadブランドが持つ信頼性を裏切らない製品を作ってほしい」。

 マグネシウムなどの素材は使えないのはコスト要求からも明らかだった。それでも、ThinkPadが持つ堅牢性や、モバイル性を失わないことが徹底された。

 「コストを抑えたところを、知恵で解決してほしい」。

 知恵は随所に盛り込まれている。

 ThinkPad Edgeおよび同時に発売するThinkPad X100eでは、LCDリアカバー(天板)部をドーム形状とすることで、高価な金属や複合素材を使用することなく、外的な圧力に耐えうる強度を実現。さらに、トラックポイントも設計を見直し、高さを0.4mm低くし、LCDとのギャップを最小化。キーストロークもThinkPad Edgeでは2.5mmを実現し、「伝統のキーボードタッチを実現した」という。

 また、冷却設計にも力を注ぎ、内部エアフローを改善し、騒音レベル、表面温度など、「ThinkPadのクライテリア(評価基準)にミートするレベルを実現している」としたほか、防水機能についても、「従来のThinkPadで採用しているドレン(配水管)構造はコストの関係で採用できなかったが、防水シート、バスタブ構造によって、液体こぼしのダメージを最小化している」という。

 開発拠点である大和事業所では、「拷問テスト」と呼ばれる試験がある。ThinkPadを落としたり、ゆすったり、押したり、水をかけたり、長時間開閉し続けたりといったテストだ。

 ThinkPad Edgeもこれらのテストを受け、ThinkPad品質をパスしている。実際、それらの映像は同社サイトで見ることができ、今後も順次、テストに関する新たな映像を公開する予定だという。

●AMDのVISION Proに短期間で対応した開発

 もう1つ、ThinkPad Edgeにとっての大きな挑戦は、短期間での開発であった。

 「実際の開発期間は5カ月足らずだった」と内藤副社長。

 「これだけの期間で本当に開発できるのかどうか。開発者の誰かが、提案したリーダーを、後ろから羽交い締めにして、『それはできない、やめてくれ』と言い出してもおかしくないほどだった」と内藤副社長はジョークを交えながら明かす。

AMDのVISION Proのロゴ

 スピードを重視した背景には、AMDのVISION Proにいち早く対応したかったという思いもある。

 日本AMDの吉沢俊介社長は、「VISION Proは、ビジネスで利用するためのプラットフォーム。いまや、ビジネスシーンにおけるビジュアル・コミュニケーションや関連ツールの利用は必須。ビジュアルを活用したプレゼンテーションやコミュニケーション、マルチモニターを活用するシーンの増加、トレーニングやビデオカンファレンスにも優れたビジュアル性能が求められることになる。VISION Proはこうしたビジネス利用の要求に対応したものになる」と語る。

 新たなThinkPadが、VISION Proにいち早く対応した意味はここにある。ThinkPad Edgeは、VISION Proへの対応によって、ビジネスツールとしての新たな要素を盛り込みながら進化することを目指した。

 「開発期間、価格、信頼性、機能。どれをとっても、妥協はしなかった。納得のいく製品が完成したと思っている」と内藤副社長は語る。ThinkPadの生みの親である内藤副社長は、ThinkPad Edgeの完成度に強い自信を見せる。

 いよいよ第4世代のThinkPadがスタートする。果たして、どんな評価が市場から得られるのだろうか。

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