■ゲーミングPC Lab.■
マウスコンピューターが、Intelの最新CPU「Core i7-2600」を搭載したハイエンドPC「MDV ADVANCE S」をリリースした。本製品はスリム、ミニタワー、ミドルタワーの3ラインアップある中のミドルタワーモデル。拡張性の高さを活かしグラフィックスカードにGeForce GTX 470を組み合わせたゲームでの性能も十分なモデルだ。
●剛性の高いVGAサポートバー付きミドルタワーケースを採用マウスコンピューターは、Sandy Bridge発表に合わせ通常のデスクトップPCラインに3モデル、NVIDIA Quadroを搭載したクリエーター向けモデル、そしてゲーミングPCのG-Tuneシリーズ2モデルと充実したラインアップを投入してきた。デスクトップPCラインでは、スリムとミニタワーモデルがLuvMachinesブランド、ミドルタワーの本製品はMDV ADVANCE Sブランドである。
LuvMachinesとMDV ADVANCE Sとの間では、同じSandy Bridgeを搭載するモデルでも仕様に違いがある。CPUはどれもCore i7-2600まで対応するが、LuvMachinesではCore i5も選べるのに対しMDV ADVANCE SはCore i7-2600のみ。グラフィックスカードのオプションもスリムよりミニタワー、ミニタワーよりもミドルタワーのMDV ADVANCE Sの方がより高性能なカードを搭載することが可能となっている。
なお、Core i7-2600は、オーバークロックモデルのCore i7-2600Kを除けばSandy Bridge世代の最上位CPU。3.4GHz駆動のクアッドコアCPUであり、Hyper-Threadingにも対応することで8スレッドを同時実行できる。同じ4コア/8スレッドのCore i7-870と比べると動作クロックが引き上げられたとともに、アーキテクチャにも改良が加わり、パフォーマンスは大きく飛躍している。
メモリは標準で2GBのPC3-10600 DDR3 SDRAM×2枚。注文時のカスタムでは16GBまで拡張できる。4GB以上搭載する際には基本的にWindows 7の64bit版と組み合わせたい。
統合グラフィックスを搭載するのもSandy Bridgeの特徴だが、先にも書いた通り本製品はグラフィックスカードを組み合わせており、パフォーマンス向けの構成。搭載するGPUは今回の評価機ではGeForce GTX 470というNVIDIAのGPUとしては1世代古いモデル。このほか、バリエーションとして、より低価格なGeForce GTX 460や、高性能なGeForce GTX 570/580搭載モデルも用意されている。GeForce GTX 470を含め、全てDirectX 11世代の高性能なGPUである。
マザーボードはIntel P67 Expressチップセットを搭載したMSI製の「P67A-S40」。これは一般向けには販売されないOEM専用モデルとされている。市販モデルのP67A-C43に近いデザインだが、OEM向けにカスタマイズされていることが考えられる。フォームファクタはATX。P67を搭載しつつもPCI Express x16スロットは1基でありコストパフォーマンス重視と見られるが、x1スロットおよびPCIスロットが各3基あるので、これまでのPCで使っていたPCI拡張カードがある場合、それらを利用できる。
そのほか、ストレージは1TBのSATA HDD、光学ドライブはDVDスーパーマルチドライブを搭載する。また、CPUクーラーはリテール品ではなく導風板付きでバックプレート固定タイプのものが採用されていた。
これらの構成パーツは注文時のカスタマイズに対応する。MDV ADVANCE SはショップブランドPCとしてはそこまで自由度が高いというわけではなく、先にも述べた通り、CPUとグラフィックスカードが固定されたバリエーションモデルを選んだ上で、それ以外のメモリやストレージ、光学ドライブ、アクセサリ、そしてOS等ソフトウェア等がカスタマイズ可能な項目となる。なお、ストレージはHDDのほかSSDやそのRAID構成も選択できる。
●VGAサポートバー付きの剛性重視なミドルタワーケースを採用採用されているケースは、マウスコンピューターのLuvMachinesシリーズやMDV ADVANCEシリーズのものと同様だ。シンプルなデザインだが、ピアノブラックの質感の高いカラーリングで、素材は剛性の高いスチール。グラフィックスカードの固定にVGAサポートバーも搭載されさらに剛性を高めている。
ケースのサイドパネルは一般的なネジ止め。手回しスクリューではないためツールレスとはいかず、ここが不便を感じるならば交換しておくと良いだろう。なおサイドパネルは左右とも取り外し可能。内部のスペースはミドルタワーとしては十分なもの。バリエーションモデルにGeForce GTX 580を搭載するものもあるから、そのあたりまで対応可能だが、Radeon HD 5970となるとやや難しいかもしれない。ケースファンはリアの12cmファン1基のみだ。
フロントの5インチベイは4基。内1基はDVDスーパーマルチドライブに、もう1基はフロントインターフェイスパネルに使用されており、空きは2基となる。光学ドライブの箇所にはカバーが付き、デザイン的にフラット感が出ている点が好印象。3.5インチベイは無いが、5インチベイ直下に2基分のシャドウベイと、さらにその下にはホルダー式で簡単に着脱できるシャドウベイ×4基が用意されている。なお、ホルダーとHDDとの間にはゴムブッシュが挟まれる構造。
電源ユニットは十分な余裕のある容量850Wモデル。プラグイン式で必要なケーブルのみで構成できるが、出荷時は全て接続した状態であるようだ。サイドパネルを開けたついでに不要なケーブルを外しておけば、エアフローがさらに向上するかもしれない。なお、GeForce GTX 460搭載モデルでは電源が500Wになるようなのでその点注意したい。
●Sandy BridgeのCPU性能にGeForce GTX 470のゲーム性能の相乗効果
ではパフォーマンスをチェックしていこう。MDV ADVANCE Sはゲーマー向けがメインというわけではないが、ベンチマークソフトとしてはゲーミングPC Lab.の通常ベンチマークを採用している。利用したソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.2.0」、「PCMark 05 Build 1.2.0」、「3DMark Vantage Build 1.0.2」、「3DMark06 Build 1.2.0」および、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】」、「バイオハザード5ベンチマーク」、「ロストプラネット2ベンチマーク」。比較対象は諸事情から動画編集PCである。ゲーマー向け構成ではないためGPUはエントリー向けだが、CPUにはCore i7-920を搭載しておりメモリも6GBと、少し前ならコストパフォーマンスの良さで人気だった構成だ。
評価機のスペック | 比較用自作PCのスペック | ||
CPU | Core i7-2600 | Core i7-920 | |
マザーボード | MSI | MSI X58M | |
メモリ | PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2 | PC3-8500 DDR3 SDRAM 2GB×3 | |
ビデオカード | GeForce GTX 470(バルク) | GeForce GTS 450(MSI N450GTS Cyclone 1G OC/D5) | |
HDD | Samsung HD103SJ | Western Digital WD20EARS | |
OS | Windows 7 Home Premium 64bit | Windows 7 Professional 64bit | |
MDV ADVANCE S | 自作PC | ||
CPU | Core i7-2600(3.4GHz/3.8GHz) | Core i7-920(2.66GHz/2.93GHz) | |
チップセット | Intel P67 Express | Intel X58 Express | |
ビデオチップ | GeForce GTX 470 | GeForce GTS 450 | |
メモリ | 4GB | 6GB | |
ストレージ | 1TB(Samsung HD103SJ) | 2TB(Western Digital WD20EARS) | |
OS | Windows 7 Home Premium 64bit | Windows 7 Professional 64bit | |
PCMark Vantage Build 1.0.2.0 | |||
PCMarks | 12154 | 6134 | |
Memories | 7693 | 5546 | |
TV and Movies | 6323 | 4974 | |
Gaming | 11597 | 8450 | |
Music | 9513 | 5180 | |
Communications | 13667 | 5902 | |
Productivity | 9120 | 3615 | |
HDD | 5281 | 3373 | |
PCMark 05 Build 1.2.0 | |||
PCMarks | 12752 | 9231 | |
CPU | 12637 | 8807 | |
Memory | 12429 | 8857 | |
Graphics | 22093 | 15246 | |
HDD | 8541 | 5945 | |
3DMark Vantage Build 1.0.2 1,280×1,024ドット | |||
3DMark Score | 18536 | 10913 | |
Graphics Score | 15106 | 8814 | |
CPU Score | 58133 | 38228 | |
3DMark06 Build 1.2.0 1,024×768ドット | |||
3DMarks | 24931 | 16659 | |
SM2.0 Score | 9820 | 6492 | |
HDR/SM3.0 Score | 12000 | 7903 | |
CPU Score | 6711 | 4692 | |
Windows エクスペリエンスインデックス | |||
プロセッサ | 7.6 | 7.4 | |
メモリ(RAM) | 7.6 | 7.5 | |
グラフィックス | 7.8 | 7.2 | |
ゲーム用グラフィックス | 7.8 | 7.2 | |
プライマリハードディスク | 5.9 | 5.9 | |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】 | |||
1,280×720ドット | 18891 | 10304 | |
1,920×1,080ドット | 9721 | 4829 | |
バイオハザード5ベンチマーク DX10(アンチエイリアス:8X、モーションブラー:オン、影品質:高、テクスチャ品質:高、画面クオリティ:高) | |||
1,280×720ドット | ベンチマークテストA | 150.5 | 82.6 |
ベンチマークテストB | 140.1 | 88.4 | |
1,920×1,080ドット | ベンチマークテストA | 89.0 | 46.4 |
ベンチマークテストB | 97.4 | 51.8 | |
ロストプラネット2ベンチマーク DX11(アンチエイリアス:CSAA8X、モーションブラー:on、影品質:HIGH、テクスチャ品質:HIGH) | |||
1,280×720ドット | ベンチマークテストA | 63.9 | 33.4 |
ベンチマークテストB | 54.4 | 26.7 | |
1,920×1,080ドット | ベンチマークテストA | 43.9 | 21.5 |
ベンチマークテストB | 38.5 | 17.8 |
結果を見るとMDV ADVANCE Sの圧勝である。分かりやすいところでPCMark 05の各項目を見ると、Core i7-2600はCore i7-920のおよそ4割アップ、メモリもデュアルチャネルのDDR3-1333がトリプルチャネルのDDR3-1066に対して4割アップ、GeForce GTX 470は同GTS 450の4割アップという結果で、Overallとして見ても約4割アップという結果となっている。
2つの3DMarkのCPUスコアでも同様の傾向であるから、Core i7-2600のCPU演算性能はおよそこのようなポジションであると言えるだろう。PCMark Vantageでは2倍前後のスコアアップも見られ、(GPUが異なる点もあるが)アプリケーションでの処理性能でも高さを見せつけている。
グラフィックパフォーマンスはベンチマークにもよるが、およそGTS 450の2倍。フレームレートを見ても十分にゲームが楽しめる環境と言えるだろう。
高性能なGeForce GTX 470を搭載するモデルとして動作音もポイントになるが、本製品ではケースがしっかりしている分、ノイズレベルも比較的抑えられている。多少のファンノイズが漏れる点は仕方がないとしてもビビリ音はせず、ゲームに没頭できるレベルだ。1つ下のラインナップには、より低消費電力なGeForce GTX 460を搭載するモデル、上にはリファレンスデザインでも静かなGeForce GTX 570/GTX 580があるため、今回のGeForce GTX 470はそれらよりもノイズレベルが大きいはずなのだが、このレベルに抑えられていれば十分だろう。
MDV ADVANCEだけに、LuvMachinesシリーズよりも高性能だが、同時に若干価格も高いことは事実。しかしエントリー構成で89,800円からで、今回のモデルは99,750円、GeForce GTX 580を搭載したモデルで129,990円からと、お買い得感は十分ある。
性能はSandy BridgeのCPU性能に加え、ディスクリートGPUによるグラフィック性能も十分。日常作業から3Dゲームまで幅広く対応できるゆとりが本製品の魅力だ。新アーキテクチャのSandy Bridgeに、手間なしに乗り換えたい方は注目の製品と言えるだろう。
(2011年 1月 17日)
[Text by 石川 ひさよし]