■山田祥平のWindows 7カウントダウン■
すでに周知されているように、Windows 7はメールクライアントを同梱しない。また、VistaにあったWindowsカレンダーもなくなってしまっている。アップグレードインストールの場合は、Vista環境のものを引き続き使うことができるが、新規にPCを購入したり、クリーンインストールした場合には、自前で環境を整える必要がある。
●Windows Live おすすめパックで、アプリをまとめてインストールごく一般的なユーザーは、Windows環境におけるメールソフトとして、Outlook Expressを使ってきたのではないだろうか。あるいは、Microsoft Officeをプレインストールした環境では、Officeスウィートの1アプリケーションであるOutlookを使っていたかもしれない。両者は名前が似ていることで混同されやすかったのだが、内容は似て非なるものだ。Outlook Expressがメールやニュース専用のクライアントだったのに対して、Outlookは予定やToDoなどを統合的に管理する個人情報管理ソフトだ。
混乱を回避するためかどうか、Vistaでは、Outlook Expressの名称は使われなくなり、その代わりに、「Windowsメール」が提供されるようになった。さらに、スケジュール管理ソフトとして、「Windowsカレンダー」も提供されていた。Windows 7では、これらが両方とも同梱されなくなり、入手もできなくなってしまった。
Windows 7のスタートメニュー直下には、Vistaまではあった「電子メール」や「インターネット」の項目がない |
代替ソフトとしては「Windows Live メール」が提供される。マイクロソフトのオンラインサービスであるLiveによる無料ソフトだ。
具体的には同サービスのダウンロードページを開き、言語を選択した上で、Windows Live おすすめパックをダウンロードして実行する。これによって、ウィザードが起動し、Liveで提供される各種のアプリケーションを、選択してインストールすることができる。そして、この中にメールも含まれている。カレンダーが見あたらないが、これは、Windows Live メールが予定表の機能も含むためだ。
なお、おすすめパックの中には、メールの他に、
・フォトギャラリー
・ムービーメーカー
・Toolbar
・Writer
・ファミリーセーフティ
・Microsoft Office Outlook Connector
・Messenger
などが含まれ、チェックして一気にインストールしてしまうことができる。
「Windows Live おすすめパック」はLiveサービスで提供されている各種のアプリケーションを一度にインストールできるインストーラだ。特にWindows 7に特化しているわけではないので、Vista環境やXP環境でも利用できる |
●メール環境のドラスティックな変化
インストールしたWindows Live メールを実行すると、最初に電子メールアカウントの設定のためのウィザードが起動する。ここでは、メールアドレスとパスワードを入力する。Live Hotmailのアカウントがあれば、それを入力すればいいし、もし、ISPのメールなどを送受信したい場合は、そのメールアドレスを設定すると、受信メールサーバー、送信メールサーバーなどを設定する画面に遷移し、ISP固有の情報を入力できるようになる。なお、受信メールのプロトコルは、POP3、IMAP、HTTPの3種類をサポートする。パワーユーザーであれば、特に、難しい操作でもなんでもない。普段使っているgmailであろうがなんだろうが、アッという間に設定してしまうことができるだろう。
だが、このあたりの事情をよくわかっていないユーザーが、新しいPCに乗り換えたときに、メールが使えないことに気がつき、その次にとる手段は、新たなソフトのインストールというよりも、ISPが提供するウェブメールの利用ではないだろうか。
あるいは、もう、インターネットメールは使わないことにして、メールはすべて携帯電話ですませるという選択をするかもしれない。Vistaまでは、スタートメニュー直下にあった「インターネット」「電子メール」という項目がなくなっていることも、ユーザーの動向に何らかの影響を与えるだろう。そういう意味で、Windows 7は、PCを使うユーザーのメール環境にドラスティックな変化をもたらす可能性を持っているといえそうだ。
なにしろ、出荷状態でインターネットメールも読み書きできないクライアントOSなのだ。もっともPCベンダーが、そのままの状態でPCを出荷するかどうか。マイクロソフトとしては、OEM各社に対して、特に「Windows Live おすすめパック」をプリインストールして出荷するようには要請していないということなので、逆に、既存のサードパーティ製メールソフトが脚光を浴びるようになったり、新たなメールソフトが登場して成功を収める可能性も出てきた。それがマイクロソフトの考えるエコシステムにつながっていく。
Windows Liveメールでは複数のアカウントを扱える。Liveメールサービスを含めておき、そこにすべてのメールを移動すれば、どのPCでも同じ受信トレイを扱える |
●クラウドサービスとの組み合わせは便利だが……
仮に、XP環境でOutlook Expressを使っていたユーザーが、新しいPCを調達して、過去のメール環境を引き継ぎたいと考えたときには、どうすればいいのだろう。
もっとも簡単な方法は、Windows 7に付属の「Windows転送ツール」を使って、XPから各種のデータを吸い出し、それをWindows 7に適用することだ。メールデータを転送の対象にしておき、あとで、Windows Live メールをインストールすれば、過去のメールデータを引き継ぐことができる。古いXP PCの代替としてWindows 7 PCを入手したような場合は、古いPCの内蔵HDDに保存された個人データの容量は、現在、数千円で購入できるメモリカードやUSBメモリ、外付けHDDなどにスッポリと収まってしまうはずだ。こうしたストレージを使えば、移行の作業も簡単にできるだろう。もちろん、ネットワーク経由でデータをやりとりする方法もサポートされている。この「Windows転送ツール」については機会を見て、詳細に紹介することにしたい。
Windows転送ツールでは、各種のデータや設定を、古いPCから新しいPCに移行するための手順をナビゲートする |
ただ、こうした方法でアカウントや過去のメールデータを移行するよりも、LiveアカウントのLiveメールを、いったんXPパソコンにインストールし、Liveメールに過去のメールをすべて移動させておき、新しい環境にインストールしたLiveメールに同期させるほうがいいかもしれない。
移行ツールを使った場合は、結局ローカルPCのみでデータを扱うことになるが、Liveメールのサービスと組み合わせた複数アカウントを設定し、ISPのメールを受け取ったら、Liveメールの受信トレイに移動させてしまえば、以降、ウェブはもちろん、どのPCのLiveメールでも同じメールを読み書きすることができるようになる。
クラウドのサービスと組み合わせた新たな環境の方が便利なのは当たり前だ。そこに、PCに関する詳しい知識を持たないユーザーを、どのようにして誘導するかは、OSとしてのWindows 7の仕事ではないということだ。