山田祥平のRe:config.sys

正統進化したロジクールの新モバイルマウスのモビリティ

 ロジクールから新しいマウス「MX Anywhere 2」が発売された。無線3系統を切り替えて使える待望の製品だ。今回は、そのインプレッションをお届けしよう。

何を書くにも使い慣れたペンを使いたい

 「MX」の称号を持つマウスとしては、「MX Master」が発売されたのが今年(2015年)の3月だ。6年ぶりの刷新ということで大きな話題になったのは記憶に新しい。なんといっても自動クラッチでマウスホイールの「スルスル」と「カリカリ」を切り替える贅沢な機構が特徴だ。

 今回発売されたMX Anywhere 2は、MX Masterと同様に、ロジクール独自の無線システムであるUnifyingに加え、Bluetoothを2系統追加、合計3系統の無線接続を切り替えて使えるが、MXを名乗っていても、MX Masterのような自動クラッチ機能を持っているわけではない。そのネーミングからも分かるようにモバイルマウスのMX Anywhreの後継製品だ。

 最初に握ったときに驚いたのは、MX Anywhereを使い慣れた手で握った時に、本当に何の違和感もなく手に馴染んだことだ。厳密に言えば多少のフォルムの違いはあるものの、ほとんど違いを感じない。MX Masterは戻るボタンの位置がどうにも微妙で、使い始めて数カ月たった今も、なんとなく違和感を感じるのだが、このマウスにはそれが一切ない。戻るボタンも指の動きの予想を裏切らない。

 先代から変わったのは、Unifyingのみだった無線系統が3系統に増えたことと、その切り替えのためのスイッチが底部に装備されたこと、また、バッテリが単3形電池2本から充電式のリチウムイオン電池になったことだ。その充電のために、マウスの先端部にはMicro USB端子が装備されている。また、先代機は、底部のセンサー部分にスライド式のカバーがあって、それがセンサーを覆った状態にしたときに電源オフとなり、携帯時にセンサーが傷つくのを予防していたが、このカバーが省略されて独立したスライド式の電源スイッチが装備されている。

 使い勝手は申し分ない。モバイルを想定しての本体サイズではあるが、手のひらのサイズによってはデスクでこそ使いたいと思うユーザーもいるだろう。自動クラッチこそないが、「スルスル」と「カリカリ」は手動で切り替えることができる点も先代の特長をそのまま引き継いでいる。

先代ユーザーの期待を裏切らないモビリティ

 モバイルマウスに3系統もの無線システムが必要かというところには議論もあるだろう。しかも1つはロジクール独自のUnifyingだ。レシーバーはピコサイズで、MX Masterに添付されているナノサイズのものよりも一回り小さい。同社ではPlug & Forgetレシーバーとして訴求している。ピコサイズのレシーバーが欲しくて添付製品を買おうとしていたくらいなので、これはちょっとうれしい。

 ただ、先代がバッテリ室を開くと、そこにレシーバー収納スペースが確保されていて、持ち歩き時にはレシーバーをそこに入れておくことができていたのに対して、今回は、バッテリ交換式ではないために、底部を開くこともできず、当然、そこにレシーバーを収納することもできない。ピコレシーバーは嬉しいのだが、これをなくしたらと思うとちょっと心配ではある。そういう意味ではセンサーカバーの省略といい、モビリティという点では先代の方がよく考えられていたのかもしれない。

 1つは専用のUnifying、残りの2つは汎用のBluetoothということで、どうせなら全部Bluetoothでいいのにと思うユーザーもいるかもしれない。ロジクールとしては、複数台のデバイスを1台のレシーバーに接続できるUnifyingは、キーボードやタッチパッドといったさまざまな既存ロジクールデバイスを所有しているロジクールファンのためのものという。このマウスを含めて、手持ちのデバイスを1つのレシーバーで同時に使えるようにすることでロジクールのマウス/キーボード製品の可用性を高めたいというわけだ。

 仮にカバンの中にこのマウスを入れっぱなしにしているとしよう。その日によって持ち出すデバイスが異なるというのはよくあるシチュエーションだ。ある日はノートPC、またある日はタブレット、さらに別の日はMacBookといった具合だ。このマウスがカバンの中に入っていれば、どのデバイスを持ち出した日でも、再ペアリングといった面倒な作業をしなくても、底部のボタンを何度か押すだけで接続ができる。もっとも頻繁に持ち出すデバイス2台にBluetooth 2系統をあてがい、頻度の低いものにUnifyingレシーバーを刺しっぱなしにしておくというのがよさそうだ。

 レシーバーは本当に小さいが、出っ張りはゼロではない。それがモビリティをほんの少し損なうと同時に、USB端子が1つしか装備されていないデバイスでは、やはり、それをレシーバーに占有させてしてしまうのはもったいない。

点のモバイルにはマウスは必須

 そもそもなぜモバイル環境でまでマウスを使わなければならないのか。タッチパッドだけではダメなのか。タッチスクリーンでは対応できないのだろうか。

 やはり、ちょっと複雑な操作はマウスを使った方がやりやすい。その典型はドラッグ&ドロップ操作で、これはWindowsの宿命といってもいいだろう。予期せぬところにドロップしてしまう失敗はマウスさえあれば防げるものばかりだ。

 それにマウスがないとできないことも多くはないがある。

 例えばぼくは、Internet Explorerのフルスクリーンモードをよく使う。画面をスケーリングして比較的大きな文字で表示させるモバイル環境では、ただでさえ狭い画面をできるだけ有効に使いたいと思うことがあるからだ。だから、Windows 8のモダンIEは嫌いじゃなかった。それなりに使いやすく感じていたし慣れてもいた。

 デスクトップモードのIEも、通常はF11キーを押せばフルスクリーンになって、タスクバーは隠れ、IEのタイトルバーやコマンドバー、アドレスバー、お気に入りバーといった要素も隠れてくれる。それだけでずいぶんたくさんコンテンツが表示できるようになるのだ。キーボードがない場合も、ファイルメニューから遷移できる。

 フルスクリーンモードから通常のウィンドウモードに復帰するには、どうするのか。マウスがあればマウスポインタを上部につきあてれば隠れていたバーが一時的に表示される。当然タイトルバーの右端には閉じるボタンや元に戻すボタンがあるので、すぐにウィンドウを元の状態に戻せる。でも、タッチ操作だけではこれができない。

 こうした場面が毎日とはいわないが、それなりの頻度である。キーボードのショートカットとタッチパッドなどのポインティングデバイスの併用もけっこう指の動きがアクロバティックなので、やはりマウスがラクチンだ。

 それにしても、これでまた毎日使うカバンの中のガジェットが1つ増えてしまった。それでも、107gで得られる便宜としては最上級のものじゃないかと思う。

(山田 祥平)