山田祥平のRe:config.sys
マウスの父、ダグラス・エンゲルバート氏逝く
(2013/7/5 00:00)

「自然なものなど存在しない。ただ慣れ親しんでいるだけ」。ダグはそういった。そして、今日に至るまで、誰が「マウス」の名付け親であるかは定かではない。でも、マウスの父は、まぎれもなくエンゲルバート氏だ。
コンピュータとの対話はマウスからタッチへ
2013年7月2日、マウスの考案者であるダグラス・エンゲルバート(Douglas Carl Engelbart)氏(1925~)が逝去されたそうだ。
エンゲルバート博士がマウスを思いついたのは1961年のことだ。そして、そのときに生まれたのがポインタという概念だ。その詳細は、氏のSRI(スタンフォード研究所)勤務時代の論文『Augmenting the Human Intellect: A conceptual framework(人の知性の増大-概念フレームワーク)』(1962年)に記述されている。詳細は2006年のレポートをご覧いただきたいが、
With a "pointer," he indicates two points of interest, moves his left hand rapidly over the keyboard, and the distance and elevation between the points indicated appear on the right-hand third of the screen.
とある。
今、世の中がタッチのマンマシンインターフェイスに、まるで民族大移動のように突き進もうとしている中の訃報であり、1つの時代の終わりを感じさせるニュースだ。
1960年代、エンゲルバート氏は、コンピュータを誰でも自由に、そして、カンタンに使えるようになることを目指した研究を進めていた。だが、コンピュータは、とても個人が使える代物ではなく、彼の研究は周辺の支援を得ることはできなかった。インタラクティブにコンピュータと対話することなど笑い話にすぎなかった時代だ。だが、彼はそうではないと考えた。
エンゲルバート氏が、コンピュータと対話するアイディアを思いついたのは、海軍のレーダー技師時代のことだ。その当時、彼は、ライトペンを使ってレーダーのブラウン管と対話していた。今にして思うと、機械との対話の原点は、指かライトペンかの違いはあるにせよ、タッチそのものだったことがわかる。そして、彼はスクリーンを介してコンピュータと対話することを思いついたのだ。
2006年、Logitechの日本法人ロジクールのはからいで実現したインタビュー時、エンゲルバート博士は、まさかマウスがこんなに長く使われ続けるとは思ってもいなかったとおっしゃっていた。当時、Logitechは、会社に多大な貢献をした同氏のために、オフィススペースを社屋の中に提供し、同氏は毎日そこに通っていたのだ。
先日、サンフランシスコで開催されたBuildカンファレンスで、基調講演の壇上に立ったMicrosoft CEO、Steave Ballmer氏が、「タッチ、タッチ、タッチ、タッチ、モア・タッチ」と連呼していたのを思い出す。まさに、時代はタッチに移行しようとしている。
エンゲルバート氏にお会いした2006年の翌年、2007年には最初のiPhoneが発表されている。また、最初の商用Android端末が発表されたのは2008年だ。できることなら、このタッチ全盛の時代を、氏がどうとらえているのかをお聞きしておきたかったと悔やまれる。
慣れ親しめば不自然も自然になる
マウスにはけっこう縁があったと思っている。ぼくが初めて日常的にマウスを使うようになったのは、仕事で使うことになったNECのPC-100(1983年)に付属していたものだった。日本のパソコン史上、GUIをサポートした初のパソコンだ。
そのあとは、PC-9800シリーズでも使えるようになったし、PC-8801でマウスを使うアスキーのお絵かきソフト「InkPot」(1986年)のマニュアルなども書かせてもらった。また、ゼロックスのAltの流れを組むStar(1981年)の日本語版J-Starのマニュアルなどにも関わった。
ずっとマウスを使ってきたし、今もなお、マウスを使っているのだが、エンゲルバート氏がいうほどには不自然なデバイスであるとは思わなかった。PC-100に付属していたワープロソフト、ジャストシステムのJS-Wordは、ぼくが初めて触れたワープロソフトだったし、それでマウスによる文書編集はもちろん、キーボードによるローマ字かな漢字変換による文字入力にも慣れ親しんだ。
どちらかというと、そのローマ字変換の方が、習うより慣れろの世界で、最初こそストレスたっぷりだったものの、今では、こうして日本語を入力していても、ローマ字変換ながらアルファベットを使って入力しているという感覚がまったくない。近年、スマートフォンを使うようになり、ローマ字変換を使わずに、ソフトテンキーのフリックで入力しているが、これは、わざわざ練習した。当然、最初はフルキーボードのローマ字入力より遅くてイライラさせられたが、なんとか慣れようとがんばった。まるで、かつてローマ字入力を練習したときのようだ。まさか、この年になって、新しい文字入力の方法を練習するとは思わなかったが、それでもなんとかなっているような気がする。まさに、これが自然じゃなくて慣れ親しむということなんだと、エンゲルバート氏のことを思い出した。
いつも傍らにマウスがあった
今、マウスには2つのボタンがある。その右側のボタンをコンテキストメニューの表示に使うことを考えた人は天才だと思う。タッチでいうならタップ&ホールド、つまり長押しだ。
グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)では、スクリーン上に見えていないものを操作するのが難しい。でも、操作の対象となるオブジェクトを選択して、右クリックすれば、できることが目に見える形で提示される。困ったときは右クリック。それさえ覚えておけばなんとかなる。でも、右クリックや長押しは、直感では思いつきにくいユーザーインターフェイスで、だからこそ、Appleはマウスに右ボタンをつけることを頑なに拒み続けたのだろう。
エンゲルバート氏が最初に考案したマウスにも、ボタンは1つしかなかった。でも、ぼくが初めて使ったマウスには、最初からボタンが2つ付いていた。緑のボタンが2つ付いたMicrosoft Mouseだ。同社がMicrosoft Wordを発表したときに、同時に発表されたものだという。
1996年にはホイール付きのMicrosoft InteliMouseが発表されている。これを考えた人も天才だと思う。これなら直感的にスクロールに使えることが容易に想像できるからだ。確か、この年の春にはサンフランシスコでMicrosoftのカンファレンス、PDCが開催され、そこでおみやげとしてもらったホイール付きのInteliMouseに大喜びしたことを思い出す。この年のPDCでは、ActiveXテクノロジーが初登場し、NeXTのCEOだった故スティーブ・ジョブス氏が基調講演のゲストとして登壇したのはずなのだが、まったく記憶がない……。
それよりも、InteliMouseの記憶が鮮明で、立ち寄ったパソコンショップで、追加にいくつか買ってお土産にしたくらいだ。Windows 95が出荷された直後の頃で、その早期導入事例の仕事で、日本全国の導入企業取材のために飛び回っていた頃だ。当時のスケジュールデータを見てみると、そのころから、だんだんインターネットが身近な存在になり、情報を消費するために、パソコンを道具として、書くよりも読むことの方が多くなりつつあったことがわかる。そのためにはマウスのホイールはとても便利なものだった。この年には、Intenet Explorer 3が発表になっているが、それが今、Internet Explorer 11になろうとしているのかと思うと感慨深い。
こうして昔のことを書き連ねるとキリがない。でも、ぼくがパソコンを使うようになった最初の最初から今に至るまで、常に、マウスは傍らにあった。その父であるダグラス・エンゲルバート氏が逝った。ぼく個人の人生の中で、たった一度でも会って話ができてよかったと思う。心より、ご冥福をお祈りしたい。
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