山田祥平のRe:config.sys

Googleマップ変格活用 - 行った、行きたい、連れてって。




 Googleマップが7周年を迎えたという。それを機に新たな機能追加も目白押しで予定されている。今回は、その新生Googleマップと、インテリジェントデバイスにおける地図のあり方について考えてみることにしよう。

●地図の点と線の現在過去未来

 少なくともぼくにとって、Googleマップは、PC、そしてスマートフォンやタブレットにおいて、もっとも頻繁に使うアプリケーションの1つだ。残念ながら、PCにおけるGoogleマップは、専用アプリケーションが用意されていないことや、GPSへの対応が不十分であることから、その使い勝手は各種スマートデバイスの専用アプリに劣ってしまうが、とにかくそれらすべてのデバイスでマイマップやスター情報を共有できる便利さは実に重宝している。

 翌日行く場所が初めての場合は、あらかじめ自宅のPCで、その場所にスターをつけておく。翌日、最寄りの駅に着いたところでスマートフォンで現在地周辺を表示させると、そのスターが見つかるので、それを頼りにすれば、初めての場所でも簡単にたどり着くことができる。

 GoogleにとってのGoogleマップは、地球を映す存在であり、紙の地図をそのまま電子的なものにしただけではなく、情報の上に情報を重ねることで、臨場感を持って世界を探索するためのツールであるという。そこには便利を超えた何かがある。

 これから行きたいところ、かつて行ったところ。さらには通り過ぎた地点を結ぶ線。それぞれの点と線に思いをはせ、そして、地図がおすすめの場所を提案する。

 そもそも地図は、紙の時代、地図そのものが何かを提案することなどありえなかった。地図の読み手が、はっきりとした目的(地であったり、行動であったり)を自覚し、それを遂行するための手助けになるものにすぎなかった。ところが今は、食事をしたいと思えば周辺のラーメン屋が推薦され、味の評価がわかるかと思えば、急な飲み会に対応できる居酒屋も探してくれる。かと思えば、ストリートビューで震災で被災した家屋がまだ無事だった時点にも立ち戻れる。こうした地図との対話が始まることで、確かに便利を超えたさまざまなものが得られるようになっている。

●オフライン機能で便利さが格段に向上

 そのGoogleマップが、スマートデバイスの専用アプリにおいて、オフライン利用に対応することになるという。これまでも、オフラインで使えなかったわけではない。事前キャッシュという機能を使うことで、指定したエリアをあらかじめキャッシュしておくことで、通信ができなくても地図の表示ができたのだ。具体的にはポイントした地点を中心に16kmの範囲をキャッシュすることができた。

 複数のエリアをキャッシュすることができるので、知らない土地に出かける前には、あらかじめ、そのエリアをキャッシュしておくのが常だった。こうしておくことで、往路の飛行機の中のように通信ができない場所でも、行き先の土地勘を鍛えることができるし、めぼしいポイントにはスターをつけておくこともできる。

 新しいオフライン機能を使えば、都市を丸ごとといったイメージで地図データを保存することができるようになるという。また、キャッシュでは対応できなかった経路探索なども順次サポートされていくことになるそうなので、その使い勝手は格段に向上するはずだ。

 オンラインの環境が充実すればするほど、通信ができないときとのギャップは大きくなり、著しい不便を感じるようになる。その相対差は広がる一方で、クラウドを利用した各種デバイスの連携が求められていたここ数年の各種サービスは、新たな課題として、オフライン時にもオンライン時と同様の環境を提供し、さらに、オンラインになったところで、オフライン時の操作結果をクラウドと同期するような、いわばオンラインとオフラインがシームレスになるような機能が求められるようになっている。これは、何も地図に限ったことではなく、単なるテキストメモや写真のアップローダ、RSSニュースリーダに至るまで、色々なタイプのアプリケーションにいえることだ。

 オフライン対応は、基本的にこれまで提供されてきた事前キャッシュ機能を発展させ、ラボ扱いの実験的機能から正式機能に格上げされたものだ。残念ながら日本国内の地図は、6月末とされているサービス開始時にこの機能の恩恵を得られないそうだが、従来通りの事前キャッシュは可能なので、うまく補完しながら使ってみよう。

 どうせなら、Googleマップのデータすべてをオフラインで使えたら、とも思ったりもするのだが、なにせ、総データ容量は20ペタバイト(PB)に達するという。単位を変えると2,000万ギガバイト(GB)だ。ちょっとPCには無理だ。それでもカバー範囲は世界の75%に過ぎないという。

 また、別の新サービスとしては、Googleトレッカーというのが始まるそうだ。まさに人海戦術で20kg近いカメラを担いだトレッカーが、実際にトレイルを歩いてトレイルビューを撮影する。最初はアメリカの国立公園グランド・キャニオンからのスタートだそうで、こちらも楽しみだ。個人的にはヨセミテ・ハーフドームの最後の難関、ケーブルを伝っての登頂をぜひトレイルビューで見てみたい。自分の体験と重ね合わせて楽しめるにちがいない。

●求めたいGUIの向上

 現在のGoogleマップは、新しい機能が追加され続けてきた結果、増築改築を繰り返した家屋のように、実に複雑な構造になってしまっているように感じる。特に煩雑に感じるのがマイプレイス、マイマップ、そして、スターの関係だ。

 具体的には、マイマップはマイプレイスの集合体であり、スターはマイマップやマイプレイスとは別に、特定の地点につける目印だ。不便なのは、スターをつけた地点に自分の好きな名前をつけることができない点だ。あらかじめその地点に名前がついていてGoogleマップがその名前を把握していればいいのだが、そうでないこともある。だから、スターをつけたある地点に自分の好きな名前をつけるためには、その地点のためだけにマイマップを作成しなければならない。もし、個々のスターに対して、任意の名前をつけることができ、色々な場面でその名前をシンボルとして使えるようになれば、どんなに便利だろう。

 おそらくは、Googleマップ側も同じことを感じているのだろう。つい先日は、「自宅」と「職場」を登録することができるようになった。でも、ここで登録できるのはそれぞれの住所だけであり、自分でスターをつけた地点やマイプレイスを登録できるわけでもない。また、「自宅」や「職場」があるのなら、「滞在先」や「訪問先」とったテンポラリーのマイプレイスも登録できるようになっていればいいのにとも思う。

 いずれにしても、まだたったの7年である。そして今、半分以上の利用がモバイルからなのだという。こうしたトレンドの中で、新しい機能はまずモバイルで提供され、順次、PCでも利用できるようになっていくとのこと。欲をいえば、もう少し、PC側のインターフェイスを整理してほしいなとも思う。