山田祥平のRe:config.sys
「これだけ手帳」の時代は遠く
(2016/5/20 06:00)
スマートデバイスにおいてもっとも重要な要素の1つが通知だ。そのデバイスで起こりつつあること、起こったことを適切な方法で知らせてくれる。それに気が付き、人はそのデバイスを操作するきっかけを得てアクションを起こす。その通知について考えてみた。
あのデバイスで起こっていることをこのデバイスで知りたい
人々の多くが常に通信状態にあるデバイス、例えばスマートフォンを持ち歩くようになった。もはや持ち歩くのはもちろん、ほぼ肌身離さずという感じで、寝る時やリビングルームでくつろいでいる時どころか、風呂に入っている時まで手放さないというケースも少なくないらしい。
そりゃ、そんなデバイスを持ち出し忘れて外出したら不安になる気持ちも分かるというものだ。おサイフケータイを持ち出し忘れたら電車にも乗れないだろうし、サイフを忘れてもスマートフォンを忘れなければ1日の生活くらいはなんとかなると思うつわものもたくさんいる。そのくらいいつも密着しているなら、自分に対するコミュニケーションは、そのデバイスにだけイベントが起こり、それが音や振動で通知されればそれでいいだろう。
たいていの場合はそれでいい。ところがそうは問屋がおろさない。
個人的にはどうかというと、自宅にいる時は、充電器にマナーモードのままスマートフォンを装着したらそれっきりということが多く、デスクトップPCに向かって仕事をしている時などは、かかってきた電話にさえ気が付かないことも少なくない。手元で使っているスマートデバイスは何台もあるが、そのどれもにメールやSNSなどのためのアプリが入っていて、それぞれが個別に通信して自分宛のメッセージを受け取る。だから、基本的に、どのデバイスを使っていても、なんらかのデバイスを手に取ればそれで済むわけだ。クラウドのおかげで、こうした点は便利になったとは思う。
ところが、電話は特定のデバイスにしか着信しない。だからマナーモードのままだと着信に気が付かなかったりするわけだ。もちろん、そんなに広い家ではないのだから、体から離す時は、マナーモードを解除する癖をつければ、多少離れたところにある充電器に装着していても着信には気が付くかもしれない。でも、それじゃ、スマートではない。
腕でイベントを知るあの手この手
目の前のデバイス以外で起こっているイベントを知るための方法はいろいろとある。例えば、Android WearやApple Watchは、ポケットやカバンの中からスマートフォンを取り出すことなく、そこで起こっているイベントを知ることができる。腕に付けているだけで、やれ電話がかかってきた、メールが届いた、メッセージがやってきたなどを知ることができ、それなりの返事も出すことができたりする。
最近は、腕時計を付けない方が増えてきているようだが、時間を知るために、いちいちポケットからスマートフォンを出すよりも、腕にチラリと目をやる方がラクチンだ。ぼくがAndroid Wearを愛用していた時には、常に、盤面に時刻が表示されるようにしていたが、多少バッテリにインパクトがあったとしても、せっかくそんなデバイスが腕にあるのなら、時間を常時表示していない方がもったいないと思っていた。
余談だが、Android Waarを愛用していた、と過去形で書いたが今は、ちょっとお休みしている。というのも、金属製の腕時計を付けていた過去の長い期間には経験したことがないアレルギー反応に悩まされたためで、シリコンのベルトのせいなのか、ホンワリ暖かい本体のせいなのか分からないが、それを外したところでどうなるものでもないかもしれないが、念のためにということで、今はお休み中だ。今年(2016年)のGoogle I/Oでは新しいバージョンのAndroid Wearも発表されたようなので、様子を見て再開しようかなどとも考えている。
話が逸れたが、Android Wearのようなことが複数のデバイスの間で上手く機能してくれれば便利だと思う。例えばマナーモード状態で隣の部屋においてあるスマートフォンの着信が、自室のデスクトップPCに通知として現れれば、その場で電話を取れなくても、着信に気が付いて折り返し電話することができるかもしれないし、実際、iOSとMac OSの間では、着信通知どころか、電話を取って話をすることさえできる。
デバイスを串刺したい
ぼくが日常的に使っているのは、Pushbuletというアプリだ。このアプリは、Windows、iOS、Androidをはじめ、各プラットフォーム用のものが用意され、デバイスごとの通知を、ほかのデバイスに配信することができる。それだけではなく特定のデバイスに対して、ファイルやテキストデータなどをプッシュすることもでき、なかかな便利なアプリだ。
スマートフォンで撮影した写真にコメントをつけてSNSに投稿するような場合も、写真はスマートフォンで撮影し、コメントはPCで書いて、スマートフォンにプッシュし、それを合体させて投稿といったことができる。鍛錬不足で、スマートフォンのフリック入力はPCのキーボードの方が高速だ。だからこそ合わせ技を使う。デバイスの合わせ技がここにある。
Microsoftは、コルタナを同様の機能を実現するためのエージェントとして位置付けようともしているようだ。まだ、日本リージョンではインストールできないが、通知情報を共有することができるようになるらしい。
スマートフォンでの検索の続きをPCで継続したり、その逆にPCでマークした地図上の位置情報をスマートフォンでナビさせたりと、とにかくマルチでスマートデバイスを使っているユーザーには、いろいろと便利なユセージモデルが考えられるはずだ。
今は、スマートなデバイスがたくさんあってよりどりみどりの状態だ。Microsoftの昨今の戦略を見ていると、最終的に、同社のサービスに収束するのだから、もはやエンドユーザーが使うプラットフォームは何でもいいと考えているようにさえ見える。
ところがエンドユーザー側は、スマートフォンがあればPCはいらないとか、タブレットは中途半端だとか、デバイスを1台に限定したがっているようにも感じられる。
この時代、それでは損だ。大きなPC、中くらいのPC、小さなPCと、その日に応じてノートPCを使い分けるなんてのは極端だとしても、とにかく競合よりは協調を意識して活用をうまく進める方が豊かな暮らしが実現できるんじゃないか。そして、そのカギとなるのが串刺し通知だ。
最近は、スマートフォンを2台持ちというエンドユーザーも多いと聞く。個人的にも、以前は、ノートPCで電話もできたらいいなと思ったりしていた時期もあったのだが、どう考えても通話するならハンドセットを使った方がいいと思い直している。
これからのIoTの時代、人々が日常的に使うスマートデバイスは、今よりももっともっと増えていくだろう。よりスマートなデバイス、普通のデバイス、あまりスマートではないデバイスと、中にはスクリーンを持たないデバイスだって当然あるはずだ。それらをどのように使い分け、使い合わせるか。世の中、まだまだおもしろく、そして便利になりそうだ。