山田祥平のRe:config.sys

百均で買えるから「ついうっかり」を気にする必要がない幸せ

 日常的にデバイスとデバイスを接続するために使うケーブル。あるいは電源供給のために使うアダプタたケーブル。一昔前であれば、それはもうデバイスの数だけ種類があったといってもいい。ようやくずいぶん整理されてきてはいるが、後もう一息だ。

プラグが統一されるだけで手に入る至上の便利

 USB Type-Cは、接続ケーブル統一への道の第1歩だといえる。ぼくらが今、日常的に使っているデバイス、例えば、ノートPCやスマートフォン、タブレットといった機器はもちろん、各種のペリフェラルに装備されている入出力のためのポートのほとんど全てを置き換えることができる可能性があるからだ。

 従来のUSBはもちろん、ディスプレイ出力も置き換えられる。充電だって同じ端子、同じケーブルで大丈夫だ。この便利を無視できるはずもなく、多くのデバイスでUSB Type-C端子装備は急速に進むに違いない。もちろんワイヤレスのソリューションも現在進行中だ。身の回りの接続ケーブルがなくなったらどんなに煩わしさから開放されるか。それはもう、誰もが思っていることには違いないが、それはそれ、電波よりも紐が確実だと思う方も少なくないと思う。

 ちなみに、ぼくが日常的に持ち歩いて使っているレッツノートRZ4は、きわめて頑固に各種のレガシーポートを装備している。有線LANの端子は確かにあると便利だし、もういい加減無くなっても誰も困らないんじゃないかと思えるミニD-Sub15ピンも、それがあったおかげで助けられたことが何度もある。世の中まだまだ、HDMIのフルHDをサポートしていない前時代的なプロジェクタを使っている現場が少なくなく、そんなところに遭遇する機会がなぜかある。ハズレを引きやすい体質なのかもしれない。

 ただ、ミニD-Sub15ピンがなかったとしても、HDMIをミニD-Sub15ピンに変換するアダプタはあるし、USB接続の有線LANインターフェイスもある。だからこうした変換アダプタを準備さえしておけば困らない。でも、その準備を怠った時に限って必要になるのだ。日常的な外出にもノートPCを持ち出すわけだが、さすがに日常的にこれらの小物類を携行しているわけではない。そしてそういうときに限って……。

レガシーと未来を結ぶ架け橋

 各種モバイルデバイスのあらゆる端子がUSB Type-Cに統一されるのは大賛成だ。それで困ることがあるとしたら、短期的には今、気軽に百均で入手ができる各種のケーブル類では調達できないものが出てくる可能性だ。

 今、多くのデバイスが装備する端子はMicro USBだ。標準のUSB Type-Aオス-Micro USBのオスケーブルがあれば、ほとんど全てのデバイスへの充電やデータ転送ができる。その便利さは革命的で、品質的な面は吟味が必要だが、とりあえず、繋がって機能するケーブルという点では色、長さ、材質、形状など、それはもうよりどりみどりといってもいい。個人的には少なくとも持ち歩く可能性があるデバイスはMicro USB端子のもの以外は使わないと決めているくらいだ。

 将来的に全ての端子がUSB Type-Cに統一されるまでは、それなりの時間がかかるだろう。飛行機の座席に装備されているようなものまで含めれば、もしかしたら10年かかっても無理かもしれない。

 その過渡期においてはType-Cの世界とレガシーな標準USBの世界を結ぶ架け橋となるような存在が求められるだろう。少なくとも必要なのは、USB Type-Cオス-Micro USBオスだ。これがあれば、少なくとも今と同じ利便が手に入る。過渡期においては一般的なUSB Type-Cケーブルよりもずっと需要は多いはずだ。

 もっとも日本ではLightning端子を持つAppleデバイス、すなわち、iPhoneユーザーが、この手のデバイスを持つユーザーの多くを占めている。次のiPhoneがLightning端子をやめてUSB Type-C端子に切り替えるかどうかは知る由もないが、この領域はLightningというコストを削減しにくいエコシステムが背景にあるだけに微妙だ。

電源アダプタも汎用化

 USB Type-C は電源供給端子としても利用できる。従来の電圧5Vにおいても1.5Aまでサポートするのに加えて、USB PD規格によって12V、または20Vの電力を供給できるようになるからだ。最大時は20V/100Wというから5Aの電流が流れることになる。そのため、ケーブルの安全性には十分な注意が必要だろう。

 もっとも最近はモバイルノートPCなら50W程度あれば十分なことを考えれば、半分の2.5Aで済む。それほど太くて取り回しのしにくいケーブルになることは考えにくい。新モデルが出る度に電源入力端子の形状を変えてきたMicrosoftのSurfaceも、「Surface 3」では汎用的なMicro USBとなって利便性が一気に高まった。マルチデバイスが当たり前の時代に、デバイスごとに異なる電源アダプタというのは考えたくない。

 USB Type-Cによって、世の中のモバイル機器で使われているようなAC電源アダプタはその全てを汎用的なものに置き換えることができる。モバイル機器ならず、DCで稼働するデバイス全てに言えることだ。昨今では複数のUSBポートを持つ充電用AC電源アダプタが人気で、個人的にも重宝しているが、それでPCの充電も賄えるなら便利だしうれしい。これまでは、PCのAC電源アダプタに、USB端子を装備したものがあって重宝していたのだが、似たような環境が手に入るということでもある。

 機能やスペックも重要だが、もっと重要なのは汎用性だ。何もかもが同じ物理規格で統一されていることは想像以上の利便性を生む。ケーブルやプラグの物理規格は同じままで、デバイス同士がネゴシエーションし、論理的に必要な信号や電力を決めて双方向にやりとりできるのがUSB Type-Cの懐の深さだ。

 先に挙げた過渡期用のケーブル、つまり、USB Type-Cオス-Micro USB オスのケーブルさえあれば、少なくともモバイルノートPCの電源入力端子と、レガシーUSB端子はなくなっても問題はないと思う。今、モバイルノートPCにUSB端子はいくつ必要かということが話題になることが多く、2個で十分説と、3個は必要説があるが、全てのUSB端子をやめて、USB type-C端子を左右に2個ずつ用意すれば誰も文句を言わないんじゃないだろうか。

 もちろんそのためには、USB Type-Cオス-Micro USBオスのケーブル、または、USB Type-CメスをレガシーUSB Type-Aメスに変換するアダプタやケーブルが、どこでも手に入るようになる必要がある。これが百均で気軽に買えるようになることが普及ステージの第1段階クリアであり、そこがクリアできれば一気に普及に向かうだろう。

 逆に言うと、このステージをいちはやくクリアするために百均の商品企画をしている方々は、取引業者に対して、ぜひ、強くリクエストして早期の移行を促進していただきたい。こればかりはITの業界だけでは無理なのだ。

 短期的に見れば利便性の高いケーブルを高値でさばいた方がビジネスとしてうまいように思えるが、あらゆる業界が1つの方向を向いて、汎用規格を浸透させるように努めた方が、最終的にはボリュームメリットを得られるのではないか。そして、それはもちろん消費者自身のメリットにもなる。やはり、全てが同じであるということが重要なのだ。

 ケーブル10本とアダプタ10個を揃えても2,000円、しかも全国津々浦々のコンビニや百均でいつでも手に入るという段取りが整えば世界は変わる。そう仕向ければ世界を変えられる。もちろん、Micro USB普及の黎明期にあったように、ケーブルの結線によってAC充電ができたりできなかったり、データ転送ができたりできなかったりといった混乱があってはならない。それがインフラというものだ。

 将来は決まった。もう動かない。だったらいち早く対応すること以外に考えることはあるのだろうか。

(山田 祥平)