山田祥平のRe:config.sys

そうなんだよ、欲しかったのは画面付きキーボード

 コンバーチブルPCとして世界最小最軽量を誇る「Let'snote RZ4」。10.1型画面で745gの筐体は、その機動力という点で類を見ない。今回は、モバイルパートナーとしてのRZ4を使ってのインプレッションをお届けしたい。

もはや手放せないモバイルパートナー

 実は、この製品、人前で使ってはならないという条件の下で、9月の頭、IFAの取材から量産試作機を評価させてもらっていた。試作機といっても完成度は高かった。正式な製品を手にして約1カ月が経過したが、その印象はほとんど同じだ。それにしても、人前で使えないモバイル機器を持ち歩くというのがこれほどまでにつらいものとは思わなかった。

 10月頭に製品が発表され、堂々と人前で使えるようになったわけだが、記者会見などで使っていても、ほとんど誰も新しいLet'snote、しかも、世界最小最軽量のRZ4だということに周りの知人友人が気がついてくれない。その存在感はいい意味で希薄だ。遠目にはAtom搭載タブレットに外付けキーボードをドッキングさせているくらいにしか見えないようなのだ。

 いずれにしても、これで約2カ月ちょっとの付き合いになる。RZ4を持ち歩くようになってからは、よほどのことがない限り、8〜10型タブレットを持ち歩くことがなくなった。かといって、RZ4の液晶を折り返して、タブレットとして使うわけではない。このサイズ、この軽量さなら、液晶を開いて首の部分、つまりヒンジのあたりをつかんで、まるでタブレットのようにして使っても、特に不便を感じないからだ。それでいて、ちょっと検索したいといった場合にも、まともなキーボードが目の前にある。画面の半分近くを覆い尽くすやっかいなソフトウェアキーボードを使う必要がないのだ。

 2-in-1 PCにはいろいろなタイプのものがあるが、キーボードと画面は、なんらかの方法でガッチリとドッキングできなければならないと思っている。そうでないと、机の確保できない場所での利用が不便きわまりないからだ。不安定な結合だと膝の上で使う際などに、落下の心配が常につきまとう。でも、液晶が360度回転するタイプではその心配がない。

 そのことはNECパーソナルコンピュータの「LaVie Z」を使っていても痛感していた。安心なのだ。同機は液晶回転タイプではなく、手元の製品はタッチ対応のクラムシェルだが、タブレットとしてこの製品を使いたいとは思わないので、レノボの「YOGA」シリーズのように液晶を折り返せないことに何の不便も感じなかった。その軽量さとカバンへの収まりの良さは、かつてない機動性をもたらしてくれた。まさに名機だ。

 ただ、13.3型という画面サイズはさすがに大きすぎる。電車の中で座れたときに使うにしても、机のないカンファレンスやプレスイベント会場で一眼レフカメラと交互に持ち替えながらメモを取るにも、さすがにこのサイズはつらい。取り回しに不便を感じる。

 もちろん、モバイルのすべての要素を1台のノートPCに求めるのであれば、13.3型はオールマイティだと思う。大は小を兼ねられるが小は大を兼ねない。宿泊を伴う出張に、PCを1台だけというケースでは、間違いなく「LaViie Z」を選ぶだろう。もっとも2台併せても1.7kgしかないというのは驚異的でさえある。今となっては2台とも持参する気になりそうだ。

 ただ、日常はそんな外出ばかりではない。やはり、その日の用事にあわせて機材は選びたい。となると、どうしても、RZ4の機動性を選んでしまうのだ。

 このサイズ感なら、カバンからサッと出して、電車の座席の両側に座る第三者の邪魔をすることなくタイプができ、用が済めば、素早くカバンにしまうことができる。これは10.1型ならではだ。745gだからこその恩恵もある。かといって、8型では小さく中途半端感が否めない。

 RZの称号から分かるように、これは紛れもないRシリーズの後継だ。Jシリーズが出て引退を余儀なくされたRシリーズの復活でもある。Rシリーズは本当に愛用したシリーズだった。他ベンダーに浮気していてLet'snoteに戻ってきたのはR4を手にしたからだ。最後に使っていたR8は実測で900gを切っていたので、一気に150g近いダイエットがかなったことになる。

結果が見えるキーボード

 ここで気が付くのは、これまでぼくらはタブレットにまともなキーボードが装備されていないから生産性が低いと思ってきたということだ。実際には、生産性のために、タブレットになんとかまともなキーボードをアタッチしようとしてきた。このとき、主はタブレットで、キーボードは従だった。

 RZ4はここを覆した。

 ちなみに、RZ4のキーボードは、浮石型(アイソレーションキーボード)としては実に打鍵しやすい。パナソニックは、浮石型は従来型に明らかに劣るとしているが、液晶が360度回転する筐体で、従来型のキートップを使うのは無理だという。なぜなら、液晶を折り返してキーボードが底面にきた時に、つかむ手の爪で、ボロボロとキートップが落ちてしまう可能性があるからなのだそうだ。

 浮石型のキーボードが使いにくく感じるのは、そのキートップの遊びによるものではないかと思っている。ところが、RZ4のキートップは、10.1型の画面に合わせて縮小されているため、それまでのMXやAXなどと構造は変わっていないのに、この遊びが圧縮されている。結果として、ぐらつきが少なく打ちやすくなっているのではないか。このあたり、大きいから打鍵しやすいと思いがちだが、決してそうではないようだ。

 要するに、RZ4のキーボードは打ちやすくまともなもので、それに画面が付いている。極端に言えば、画面付きのキーボードだと言ってもいいだろう。いわば打鍵結果が見えるキーボードだ。そう考えたら、モバイルパートナーとしてのPCの必要十分条件を一気に整理することができた。すべての中心を画面に置いていたから、無理難題を押し付けることになってしまっていたわけだ。

大サイズタブレットの連携で利用シーンを拡大

 それではRZ4の画面はキーボードのオマケにすぎないのだろうか。1,920×1,200ドット、アスペクト比16:10という画面は、視認性もよくタッチの追随性も満足できるものだ。さすがにそのままではWindowsデスクトップが使い物にならないので、ぼくの場合は198%にスケーリングしている。Windowsが96dpiを期待するのに応えれば234%が必要だが、目から近い位置で使うノートPCということでそれを15%縮小した値だ。ぼくは使っているWindowsの画面はほぼすべてこの公式でスケーリングを設定しているので、表示されるオブジェクトサイズはどの画面もほぼ同じになる。

 画面領域がそれで足りない時こそ、タブレットの出番だ。できれば「Surface」のような自立する比較的大サイズのWindowsタブレットがいい。これをRZ4のサイドに置き、併せて使うのだ。Mouse without BordersやDOKODEMOのようなユーティリティを使えば、キーボード、ポインティングデバイス、クリップボードを共有できるので、RZ4のキーボードとスライドパッドで、かたわらにおいたWindowsタブレットの操作ができる。あたかもマルチディスプレイのように使えるのだ。

Core Mの実力おそるべし

 想定外だったのは、意外にバッテリが持たないことだ。ぼくの使い方では、正味5時間といったところだろうか。日常的な外出にはまったく困ることはないが、丸1日のカンファレンスなどでは不安になる。以前は、タブレットやスマートフォンで済ませていたことの多くを、ちょっとしたことでもRZ4でするようになったため、使う時間も増えているのだと思う。

 ただ、試しに液晶を閉じてもスリープしないように設定して電源を入れっぱなしで持ち歩いてみた。InstantGoどころか、AlwaysGoの状態だ。すると、バッテリは10時間以上持つ。ずっとつけっぱなしでも、スリープさせても、あまり変わりがない印象だ。つまり、Core Mプロセッサの威力は画期的で、がんばらなければならないのは、画面に代表されるほかのデバイスなのだなということが分かる。ちなみにこの使い方では、満充電とスッカラカンを繰り返すことになり、バッテリの積算充電回数がグッと増えてしまうので、早々に運用をあきらめた。

 不満があるとすれば、スリープからの復帰が決して速くない点だ。4秒近い。InstantGo機の復帰の早さに慣れきってしまっているので余計にそう感じるのだろう。パナソニックによれば、HDDパスワードを設定することで1秒、閉じた液晶を開いたことを認識するマージンとして1秒を当てているため、実質2秒が4秒近くになっているという。実際、HDDパスワードを解除して、電源スイッチで復帰させると、復帰に要する時間は半減した。ハードディスクパスワードは、BitLockerで代用できそうで、それで1秒は節約できるが、液晶の開閉によるスリープと復帰の便利さは捨てがたい。これらの仕様はLet'snoteで共通だというが、InstantGo非対応の過去機、現行機はもう少し早い。ここはひとつ、さらにがんばって欲しいものだ。というよりも、この製品こそInstantGoに対応させてほしかった。企業ニーズはゼロに近いそうだが、これから先もそうであるとは限らない。

欲張らないから究極のモバイルPCになれた

 745gという重量は、タッチ非対応であればもっと軽くなるだろう。それでもやはりタッチは譲れない。ほとんどの操作はキーボードとポインティングデバイスで行なうが、カジュアルな使い方をするときにはタッチを多用する。この製品は、さまざまな使い方のスタイルの同居を許すのだ。

 ちなみに、今でも、この筐体は、片手で本体部分をしっかり支えながら液晶を開かないと、本体がいっしょに持ち上がってしまうくらいに軽い。ところが、ボディがフラット気味で、液晶を開くときに、本体をつかむ場所がなく、さらに、立ったままで本体を開くのには、慣れないと両手を使っても苦労する。もし、堅牢さに影響を与えないなら、例えば、液晶左上部にちょっとした切り欠きを作るなどの工夫があってもよかったかもしれない。通常サイズの標準的な有線LAN端子やVGA端子を装備するために増えてしまっている厚みが、開くときの手助けになっているというのは皮肉な話だ。

 最近は、ポケットの中のスマートフォンがメールなどを着信したことを、腕につけたAndroid Wearで知り、返事が必要なことが分かると、スマートフォンではなく、RZ4を取り出すようになった。そのほうが用事を済ませるのに要する時間は圧倒的に短い。

 モバイルパートナーとしてのデバイスに、2-in-1、まして、オールインワンを求めてはならない。そんなことはとっくに分かっていたはずなのに、昨今のぼくらは、タブレットに夢を見つつ、スマートフォンに無理難題を押し付けてきた。RZ4は、やっぱりPCは必要だよね、便利だよねということに、改めて気が付かせてくれるデバイスだ。でも、そこにオールインワンを求めてはならないのは教訓だ。RZ4は究極のモバイルPCを追求した結果であり、その領域で実に魅力的なデバイスに仕上がっているということを理解する必要がある。

 願わくば、あと100g……。ぼくは、RZ4を使い始めてから、開発陣に敬意を表して、記者会見で配布されるA4書類とそれを入れる角2封筒の存在がなければ、もっと小さいのでいいのになと思いつつ、カバンを極軽素材のものに買い替えた。

(山田 祥平)