山田祥平のRe:config.sys

寝かせたい、触りたい、立てたい、打ちたいを叶える全部入りタブレット「Surface Pro 3」

 もはやタッチに反応しないディスプレイはありえない。生産性のためにはキーボードも必要だ。できればペンも使えた方がいい。でも、重量は1kgを超えてほしくない。モバイルデバイスへの要求は高まるばかりだ。Surface Pro 3は、そんな状況にMicrosoftが示す1つの提案だ。

n ≒ All

 1kg近い重量がありながら、キーボードのないコンピューティングデバイスというのはちょっと考えられない。かといって、タブレット的な使い方をする時にはキーボードが邪魔に感じる。本体重量だってその分重くなり、片手で長時間支えながら使うのはつらい。

 だったらキーボードを使いたい時だけ使えるように脱着できればいいというアイディアで、多くの2-in-1モバイルPCが生まれた。でも、キーボードが重すぎて携行性が犠牲になっているものがほとんどで、本末転倒になっている。

 だったらキーボードを本体と一体化せずに別々に用意すればいい。それも一理あるが、一体化できないと今度は机のないスペースで、膝の上に載せて使うラップトップ的なスタイルで使えない。

 各社とも、いろんなことに悩み、いろんな提案をしようとしているが、まだ、これがベストという方法は見つかっていない。ユーザーは勝手なもので、“n-in-1 PC”に“All in 1”を求めてしまう。それゆえの葛藤だ。やはり1kg近いものを持ち歩くなら、そこに多くを求めてしまうのは当然だ。

もう少し欲張りたかったタイプカバーの使い勝手

 Surface Pro 3は、3:2比率の12型ディスプレイを持つタブレットだ。これまでのSurface同様、キックスタンドが装備され、本体が自立する。仰角もほぼ直立から仰向け直前までのフリーストップが実現されている。これだけ仰角に自由度があれば、天井の灯りが映り込まないように微妙な角度調整もカンタンだ。

 さらに、オプションながら、タイプカバーを装着することで2-in-1 PC的な使い方ができる仕組みを持っている。初代Surfaceから引き継がれたこのシカケ、その結合部はマグネットによるものだが、まず底部に端子接触のために吸着、さらに、折れ曲がってベゼル部に吸着するという2カ所での結合となり、さらなる安定感を確保している。

 ただ、ベゼル部分が隠れてしまうので、画面下部からの指のスライドインができなくなる。アプリバーを呼び出すための操作だが、画面上部からのスライドインでも結果は同じなので、体に新たな操作を覚えさせる必要があるかもしれない。

 でも、机の上などでのタイプのしやすさは、タイプカバーをベゼルから剥がし、机の上にベタッと設置した方が打鍵に剛性感があっていい。机の剛性がそのままキーボードの剛性になるからだ。ベゼルにかぶせればキーボード奥が宙に浮いてチルトするのだが、その状態では太鼓を打つようで音もうるさく、打鍵感も落ちる。この状態で使うのは膝の上だけにした方がよさそうだ。膝の上での使用感は、まだ不安定ではあるものの、仰角がより自由になったキックスタンドのおかげで、ずいぶんマシにはなっている。

 アスペクト比3:2の画面は縦方向で使っても快適だ。ただ、キックスタンドは画面を横方向にした時のことしか考慮されていないので、縦に使いたいなら別途スタンドを用意する必要がある。しかも、キーボードの装着用端子は画面長辺部の下部にあるので、縦方向に立てた場合には、別の方法でキーボードを接続する必要がある。

 実は、Surface Pro 2の発売当時は、純正オプションとしてBluetoothタイプカバー用ワイヤレスアダプタが用意されていたのだが、今は終息しまっているのが惜しいところだ。

 ぼくは日常的にメインの仕事環境が縦方向の画面なので、こうしたモバイルPCを使う時にも縦で使えればとは思うのだが、タイプカバーを横方向でしか合体できないために、キーボード併用時は横、タブレットとして使う時にはキーボードを外してしまい縦で使うというスタイルに落ち着いた。もちろん作業スペースが確保できることが分かっている時にはBluetoothで外付けキーボードを使うという方法も残されている。

うれしいInstantGo実装

 Microsoftではまだ確認中としているが、Surface Pro 3は事前の情報通り、InstantGoに対応していた。LTEなどのWWAN接続には対応していないが、Wi-FiおよびBluetoothによるLAN接続をスリープ時にも維持し、各種のデータ更新を継続する。役に立つ通知をしてくれるモダンアプリがまだないことや、多くの通知がスマートフォンでも同様に行なわれることで、InstantGoそのものの魅力はまだ発揮できていない状況だが、通知のメカニズムは2013年から2014年にかけてのモバイルOSのトレンドでもある。それにきちんと対応してきたというのは評価したい。

 IEEE 802.11ac対応のWi-Fiモジュールは、「Marvell AVASTAR Wireless-AC Network Controller」になっていた。きっと、新たにInstantGo対応ドライバができあがったのだろう。まれに、モジュールの存在が見失われるような不具合にも遭遇するのだが、ドライバの更新を繰り返して安定していくに違いない。

 InstantGoに対応したことで、使おうとして電源ボタンを押すと本当に瞬時に画面がオンになる。非対応機でも復帰が速いPCはあり、その差は1秒どころか、0.5秒未満にすぎないと思われるが、たったそれだけでもストレスがまったく違う。まるでスマートフォンのように復帰する。そしてWi-Fi接続も維持されている。切っていないのだから当たり前だ。

 また、InstantGo機では「パスワードのポリシー」で、1〜15分の時間を設定し、ディスプレイがオフになっていても、その時間内なら復帰時にパスワードの入力を求めないようにできる。電車の乗り換えにホームからホームへ移動するといった時には、これが便利なのだ。

 今後、例えば、Windowsの通知がスマートフォンのアプリで受けられるようになり、それがスマートフォンの通知として表示され、Android Wearに通知されるといったことができるようになるのは目に見えている。そんなに遠い先の話ではないはずだ。可能性を考えた時、InstantGoには対応していないより対応していた方がずっといい。

ある時は縦、ある時は横、またある時は……

 12型ディスプレイの解像度は2,160×1,440ドットでアスペクト比は3:2だ。そのままでは文字などの表示が小さすぎるのでスケーリングする。

 横ピクセルと縦ピクセル数から三平方の定理で対角線ピクセル数を求め、それをWindowsのデフォルトDPI値である96で除して本来必要なインチ数を割り出すと約27インチ。実インチは12なので、縮小率は約44%となる。この値を225%スケーリングすると96dpi本来のサイズにはなる。

 ただ、モバイルデバイスを使う時には、画面と目の距離が比較的近い状態で作業するので、それを15%縮小して192%で運用することにしている。工場出荷時のスケーリング値は150%だから、それよりもずいぶん大きくなっている。ぼくは、この算出方法を手元の全てのモバイルPCに適用しているので、どの解像度、どのサイズのディスプレイでも、ほぼ同じ大きさで各種のオブジェクトが表示されている。

 12型ディスプレイにこのサイズでオブジェクトが表示された状態のタブレットを、電車の中で立ったまま使うのにはちょっとした勇気が必要だ。満員電車では迷惑だろうし、メールなどのプライベートなものは周りの目が気になって目を通せない。でも、FacebookやTwitterのタイムラインを眺めたり、RSSの更新をチェックするためにFeedlyを使ってみたりといった用途にはいい。それでもさすがに立ったままでつり革につかまり、片手で操作というわけにはいかない。でも、ドア脇のスペースにもたれるようにして、両手で操作する分には大丈夫だ。こうした使い方をするにも縦位置はいい。座れた場合も両脇の人を圧迫せずに大きな画面を楽しめる。

 結局、タイプカバーと本体はバラした状態で持ち運ぶようになった。場合によっては本体をカバンの外側のポケットにいれる。まるで新聞や雑誌を入れるみたいにだ。そこからサッとタブレット部だけを出して使いたいからだ。

 また、手元にあったタブレット用スタンドの多くは、12型、800gの本体を縦置きすると不安定で、場合によっては奥方向に倒れてしまうことが分かった。部屋の在庫を漁ったところ、ちょうどいいものを見つけたので補充しておいた。100均のSeriaで購入したスタンドで、これなら安定して縦状態のSurface Pro 3を支えられる。

 この3:2のアスペクト比は、縦方向で使いたくなる魔力のようなものを持っているようだ。だから、特に文字を入力する必要がない場合は単体縦タブレットとして、キーボードが必要な時には横で合体させてクラムシェル的にと使い分けるようになった。それに、横使いでは画面の半分近くを覆い隠してしまうWindowsのソフトウェアキーボードでも、縦使いなら隠れる面積は少なくなってなんとかガマンできてしまうのだ。多くの場面でIMEのモードが日本語オンからスタートするので、そのたびにオフに切り替えなければならないのには閉口するが、これは慣れるしかなさそうだ。

汎用性こそPCの付加価値

 手元の重量計では本体が788gで、タイプカバーが288g、縦にたてるための100均スタンドは58gだった。この3点セットのほかに、たまに使うための付属ペンが16gある。全部で1,150g。うちの重量計は若干軽めの目方を示すようで正確ではないのだが、同じ重量計でNECパーソナルコンピュータのタッチ対応「LaVie Z LZ650/NS」を量ると936g。しかも12型よりさらに一回り大きな13.3型ディスプレイだ。いかにLaVie Zがすごいかが分かる。

 Surface Pro 3を縦に、LaVie Zを横にして並べ、余裕があれば富士通の「ARROWS Tab QH55/M」なども併用し、キーボードとポインティングデバイスを共有するユーティリティでも使えば、最強のインテリジェント3画面出張環境ができあがる。電源アダプタを含め、全部合わせても3kgないのだ。

 この個性の異なる3つのデバイスの中で、毎日の持ち歩きにどれを選ぶかといえば、もっとも柔軟で多岐にわたる利用スタイルを許容するSurface Pro 3になるんじゃないかと、少なくともほぼ1週間の利用ではそういう気分になってきてはいる。

 でも、800gを切るような10型程度のタッチ対応クラムシェルPCがあるなら、日常的な携行には、機動性を考えてそちらを選ぶかもしれない。残念ながらそのようなデバイスはまだ見当たらない。

 カメラとPCをとっかえひっかえしながらメモと写真の両方をとらなければならないような現場では、コンパクトで取り回しのいい機材が使いやすいからだ。まさに修羅場だ。そういう現場に12型の大きなSurfaceは似合わないように思う。調べ物をしながら原稿を書くわけではないので、こうした現場では狭い画面でも没入的にエディタが使えればそれでいいのだ。

 ただ、キックスタンドをうまく使うとSurfaceは、カメラバッグの背中や腹に固定できる。先代でも可能だったが、より薄くて軽く大きいので、もっと安定して固定できる。これならBluetoothの外付けキーボードを使ってエディタで大きなフォントを使ってメモがとれるかもしれないと気が付いた。PCを地べたに置くのは抵抗があるが、カバンに固定できるなら安心だ。メモを人に見られて気になるなんて修羅場では言っていられない。こういう使い方ができる点でもキックスタンドは偉大だ。通常より遠目の位置から覗くので、12型ディスプレイのサイズ感も活きてくる。このアイディアは次の機会に試してみたいと思う。

 1kg近いデバイスを携行するのだ。外出先のいかに多くの場所で、持って来てよかったと思えるか。なんでもできるはずのスマートフォン数台分もの重量のデバイスを持ち歩く意味はどこにあるのか。なぜ、PCでなければならないのか。思うところは多い。

 ただ視るため聴くためだけでなく、ただ読むためだけでもなく、ただ書くためだけでもない、そして描くためだけでもない。情報の消費と生産の小径を往来しながら、パーソナルコンピュータが汎用機であることを思い出させる何かがSurface Pro 3にはある。3:2で12型、キックスタンドで自立する800gの薄い平板、と言ってしまえばそれでおしまいだが、だからこその付加価値がこのデバイスには感じられる。

(山田 祥平)