山田祥平のRe:config.sys

Windowsは今「パーソナル」にいちばん遠いOS




 長い間、不在の状態が続いている第3の領域。携帯電話、PCに続くパーソナルデバイスのカテゴリが属するはずの領域だ。しかも、PC用のOSとして圧倒的なシェアを誇るWindowsは、ずっと、そこから遠い位置にある。今回は、これからの暮らしに大きな影響を与えかねないその位置づけについて、考えてみることにしよう。

●600〜900gの領域を再確認

 今、現役で手元で使っているデバイスを、その重量で分類してみると、800g前後のところが空席であることに気がついた。デスクトップPCの重量を言及しても話にならないので、いわゆるモバイルデバイスの重量に注目してみる。

 手元で使っているもののうち、モバイルPCという点でもっとも重量があるのがパナソニックの「Let'snote B10」のマイレッツ倶楽部プレミアムエディションで1.88Kg、その次が「Let'snote S9」のマイレッツ倶楽部プレミアムエディションで1.3Kg、さらに「Let'snote J9」が1.21Kgとなっている(いずれも実測、J9はジャケット込み)。すべて2Kgを切っているのはさすがにLet'snoteだ。

 そこからグンと下がってNECの「LifeTouch NOTE」が723g、次が「GALAXY Tab」で382g(カバーつきで使っているので計478g)、そして最後にスマートフォンの「AQUOS Phone SH-12C」が138gとなっている。

 実は、Let'snoteに関しては、以前愛用していたRのフォームファクタがもっとも気に入っていた。特に最後に使っていたR8は、重量も900gを切っていたので、ちょうど、今、現役で使っているデバイス群の間の空席を埋める。また、一時期愛用していた「VAIO type P」は、600gを切っていた。処理性能やスタンバイ時のバッテリ消費量を無視すれば、これもまた魅力的なフォームファクタだった。

 カバンの中に入れて持ち運ぶのであれば、Let'snote B10の1.88Kgでも、そんなに負担になるわけではない。いざとなれば軽量バッテリを装着することで、さらに150gを減量できる。ましてS9もJ9も、カバンに入れてしまえば、乱暴な言い方かもしれないが、大きな差を感じることはない。

 話題のデバイスとしては、iPad(680g)やiPad2(601g)がある。カバーをつけて100g増えるといったところだろうか。

 どんなところでも、どんな体勢でも負担なく使える重量という点では、経験的に600〜900gのデバイスが欲しい。その重量レンジの中で、処理性能は高ければ高いほどいいし、バッテリ駆動時間も長ければ長いほどいい。そういう意味では、Let'snoteのR8は、ギリギリで、その条件を満たしていた。

●見つからない最新鋭機

 こんなことを考えたのは、先週、個人的にちょっと入院してしまうという事態になり、病院のベッドで過ごす時間が長かったからだ。ベッドの脇にはサイドテーブル。液晶TVがフレキシブルアームで固定され、セットトップボックスがつながっている。TVの視聴はプリペイドカード決済で、セットトップボックスにはLANの口も用意されていた。説明を見るとLAN使用料は1時間150円となっていた。ちなみに、そのセットトップボックスには、壁からのLANケーブルが接続されている。試しにその口にPCを直結したら、普通にLANが使えてしまったことは内緒だ。なお、電源の確保には問題はなかった。

 病室内での携帯電話の使用は禁止されていたが、周りの入院患者を見渡すと、通話以外のメールのやりとりなどは、みんなベッドの上でも楽しんでいたようだがルールはルールだ。ただ、無線LAN機器等の使用は特に禁止とは明記されていないようだったし、総務省の「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」によれば、無線LANやWiMAX機器の使用については問題がなさそうなので、今回は、WiMAXにインターネット接続を全面的に依存した。

 WiMAX内蔵PCと、WiMAXルーターの2本立てで対応したのだが、部屋は6Fで、6人部屋の廊下側だった。外部からの電波侵入という点では懸念もあったのだが、まったく問題なく接続できた。室内の奥まったエリアにおいても、いつのまにかWiMAXが実用になるようになっていることを頼もしく実感できた次第だ。

 さて、こういう事情もあって、いわゆる「寝モバ」と呼ばれる時間を長く過ごしたのだが、何台かのデバイスを持ち込んではみたものの、上記のラインアップの中では、どれも帯に短し、たすきに長しで、それぞれが中途半端に感じた。

 Androidデバイスは、処理能力やアプリケーションの点で、どうしても不満が残る。もちろん、ベッドに寝たままでTwitterのタイムラインを追ったり、届いたメールをチェックする分には不満はないのだが、そこからウェブを開いたり、メールに少し長めの返信をしようとなると、やっぱりWindows機がほしくなる。

 仕方がないので、J9を使うのだが、やりたいことのニーズは完全に満たせても、1kg超という重量は「寝モバ」には、かなりの負担だ。退院して自宅に戻り、以前使っていたRを枕元に置き、同じように使ってみると悪くない。やはり、900gを切っているというのは大きいようだ。手元のWindows PCは、基本的に、すべて同じことができるようにしてあるし、データも同期されている。だから純粋に使い勝手で比較することができた。

 でも、現状のモバイルPCの各社ラインアップを見ても、まともな処理性能とバッテリ駆動時間を満たした上で900gを切るソリューションというのが見当たらない。まして、700g以下になると、あったとしても、その領域はAndroidデバイスとなってしまい、Windows機が不在だ。ここが激戦区となって、WindowsとAndroidがオーバーラップするような状況を期待したいところだが、どうも、そのムードはなさそうだ。

 どうしてそうなるかというと、この領域は、どうしても第3の領域になってしまうからだ。どうせ携帯電話は持つ。これは現代人として必須アイテムと考えていい。手持ちのすべてのデバイスの中から1台だけを持ち出すとすれば、どうしても携帯電話になってしまうだろう。

 2台目はどうか。スマートフォンとしての携帯電話で、多くのことができるようになってきている今、画面が多少大きくても、機能的、処理能力的に中途半端なデバイスでは困ることも多い。だから2台目はノートPCになる。多くの場面では、テーブルや机の上に置いた状態で使うことになるので、さほど重量にもシビアではない。極端な話、いつのまにか、100gは誤差程度に認識されるようになってしまっている。

 そして、3台目のデバイスとして何を選ぶか。実は、多くの場合は選ばないのだ。この第3の領域をカバーするには、コストもエネルギーも必要だ。一般のユーザー、ましてやコンシューマがなかなかそこまで踏み切れないのは無理もない。

 ここに果敢にチャレンジし、かなりの成功を納めたiPadはすごいと思うが、第3のデバイスである点には変わりはない。このデバイスのすごいところは、実は、PC的なデバイスを持ち歩くことの潜在需要を掘り起こした点にあるんじゃないか。そして、シングルユーザーモデルであることで、この手のデバイスは、パーソナルモバイルデバイスなんだということを知らしめた点も高く評価しなくてはなるまい。たとえ家族であろうと携帯電話を人に貸したりしないように、iPadも人には使わせたくないという意識を持たせることに成功した。ただ、多くのユーザーは、メールというセンシティブな情報に関して、パーソナルユースでは、携帯電話に閉じて完結しているので、そのあたりが中途半端になっているのがもどかしい。このあたり、TwitterやFacebookのようなSNSがもう少し広く浸透すれば、事情はさらに変わってくるに違いない。

●Windowsデバイスがめざすべきは2台目以降のハードルの低さ

 2台目以降のAndroid、iOSデバイスを持つのはコスト的なハードルこそあれ、管理運用はとてもたやすい。iOSは、iOS5のリリースによって、さらにそのハードルは低くなることがわかっている。

 その一方で、Windowsデバイスはどうかというと、AndroidやiOSの足下にもおよばない。しかも、この10年、何も変わっていない。多少はクラウド連携で、ましにはなっているものの、ドラスティックな変化は起こっていない。まるで、2台目以降のWindows機を使うのはおかしいといわんばかりだ。多くのコンシューマが、メールを携帯電話に一元化してしまった原因の一環は、Windowsのせいだといってもいいんじゃないかと思う。そして、第3の領域としての、900〜600gレンジのWindowsデバイスの市場が育たない原因も、そこにありそうだ。もちろん、そこに目をつけて、一気に勝ち組にまわるサードベンダーがいたっておかしくなかった。でも、そうはならなかった。

 Microsoftは、コンシューマをターゲットにしたマーケティングを強力に推進しようとしているのだそうだ。考えてほしいのは、PCが必要ないと思っている人に、強引にPCを使わせようと頭をひねるよりも、PCが便利だと思っている人に、もう1台、さらにもう1台と、複数台のPCを使ってもらえるように仕向ける方がずっとたやすいということだ。そのために何をすればいいのかを、今こそ、真剣に考えて欲しいと思う。現状のいびつさが、決してデバイスベンダーのせいだけではないことは、Microsoftだってきっと理解しているはずだ。