山田祥平のRe:config.sys

スマートフォンのバッテリジレンマ、そしてUltranoteはどうなる




 丸1日の使用には不安を感じることの多いスマートフォンのバッテリ。ノートPCのバッテリ残り容量が気になっていたのも今は昔、下手なスマートフォンより、ずっとバッテリが長持ちするモバイルPCから電源を借りる始末だ。

●夕方になると残り容量が心配になるスマートフォン

 フリーランスという立場なので、基本的に昼間の外出をしたとしても、夕方には仕事場に戻ることが多く、丸1日、AC電源を確保できないといった事態に陥ることはあまりない。それでも、日によってはいくつかの用件が重なり、朝出掛けて、夜、自宅に戻るまで、ノマドのように都内のあちこちを移動することもある。そうした日には、途中でなんとかスマートフォンのバッテリの継ぎ足し充電をしないと、夕方には残り容量が不安になってしまう。従来型の携帯電話ではありえなかったことだ。

 通話もそれほどするわけではないし、データ通信にしても、1日の平均は10MBを少し超える程度、多くても20MB程度だから、それほどヘビーな使い方をしているわけではないと思うが、電車での移動時間中などは、つい、使い続けてしまい、バッテリを消費してしまう。ぼく自身の考え方としては、端末の設定や無線関連デバイスのこまめなON/OFFで節電することで使い勝手を損なうのは本末転倒だと思っている。

 いわゆるガラケーとGalaxy Tabを併用していた時期には、あまりバッテリの残り容量を心配することはなかった。ガラケーではほとんどデータ通信をしなかったので、下手をするとバッテリは2~3日は保つ。一晩くらい充電を忘れても平気だった。そして、Galaxy Tabは、丸1日の持ち歩きと使用くらいではビクともしないくらいにバッテリ容量が頼もしかったからだ。

 バッテリ不安は、ある程度予測できていたので、今のスマートフォンを購入したときには、一緒にスペアのバッテリも購入した。端末本体を購入した量販店では未入荷だったので、最寄りのドコモショップに立ち寄り、SIMロック解除の手続きといっしょに購入、価格は2,100円だった。

 予備の電池があると安心だ。でも、問題は、スマートフォンの電源OFFと電源ONに時間がかかりすぎる点だ。手元の端末では、電源OFFにしてシャットダウンするのに25秒、裏蓋を外してバッテリを入れ替えるのに10秒、再び電源を入れてロック画面が表示されるまで2分、ロックを解除してもすぐに使えるわけではなく、起動プロセスが落ち着くまでに30秒程度と、トータルでは3分以上の時間がかかる。いったん予備のバッテリを使ってしまったら、自宅に戻った時点で、フル充電にした上で、空になったバッテリと入れ替えてまた充電だ。そのためにも、電源ON/OFFの時間が必要になる。これがまた面倒くさい。USBで給電していても、バッテリを外すとシャットダウンしてしまうのだ。

 こういう手間がかかることを考えると、本体バッテリはそのままで、外から何らかの方法で電力を供給し、起動状態のままで充電する方法を考えた方がいいと判断した。

 まず、格安のMicroUSBケーブルを調達しようと、100円ショップに赴いた。最近は、こうしたところでも手軽にケーブルが購入できるのはうれしい。ちょっと身の回りのショップをまわったところ、「みんなのイチバ」、「meet」で見つけることができた。逆に「ダイソー」や「キャンドゥ」、「ローソンストア100」などでは入手できなかった。

 105円なので、本数を確保してもそれほどサイフの負担にはならない。だから、持ち出す可能性のあるカバンすべてに忍び込ませておける分だけ手に入れた。

 AndroidスマートフォンをPCのUSB端子に接続すると、その状況によって、いくつかのパターンが発生する。

1. ごく普通に充電が始まる。しかもACモードなので充電速度が速い。
2. ごく普通に充電が始まる。ただしUSBモードなので充電速度が遅い。
3. データ通信ができる状態となり、充電も併行して開始されるがUSBモードなので充電速度が遅い。
4. データ通信だけができ、充電が開始されない。
5. 何も起こらない。

 1~5のどの状態になるかは、ケーブルごとに違うし、スマートフォンによっても振る舞いは異なる。また、PCのUSB端子以外の電源供給デバイスによっても異なる。理想は1なので、なんとかその状態に持って行こうと、各種のアダプタを併用することを含め、いろいろと試してみるしかない。

●ケーブル常備と補助バッテリの確保

 ケーブルの他に、小型のACアダプタも用意した。こちらは、秋葉原の裏通りを歩いていると、1A供給ができるUSB電源アダプタが数百円で手に入る。これも、カバンの数だけ用意して、ケーブルとセットにしておく。これがあれば、AC100Vさえ確保できれば簡単に充電ができる。

 問題は、100Vを確保できない状況での充電環境だ。手元には、昔購入したリチウムイオンバッテリ「エネループ KBC-L3A」があったので、もっとも頻繁に持ち歩くカバンにはそれを満充電の状態で入れてある。容量的には、スマートフォン1回分の充電には十分だ。

 ただ、テザリングをするなど、スマートフォン本体をヘビーに使うと、この容量でも不安が残る。そこで、もう少し大容量のバッテリはないものかと物色してみた。

 そこで試したみたのが、スマートフォン関連のアクセサリを直輸入販売しているOTASの取り扱い製品だ。話を聞いてみたが、最近は、iPhoneやスマートフォンのバッテリ充電グッズ、補助バッテリのニーズが急激に高まっているという。やはり、みんな、の悩みは共通しているようだ。

 同社の製品を2つ試してみた。

 まず、MiLi Power Princeは、5,000mAhの大容量リチウムバッテリだ。同梱の専用ケーブルと各種端子アダプタで、さまざまなデバイスに対応できるが、本体とスマートフォンを前述の百均ケーブルで接続した場合、状態5になったが、別のケーブルやアダプタなどを使えば正常に充電ができた。本体への充電は付属のACアダプタで行なう。重量は160gで手元のスマートフォン本体よりも重い。電源供給開始には電源ボタンを押す必要があるが、その長押しで出力が2Aになり、iPad/iPad 2などのデバイスにも充電が可能になる。

 また、MEGA POWER BANK 8800は、製品名からもわかるように、さらに大容量の8,800mAhのリチウムイオンバッテリだ。重量は237gと、さらに重くなるが、その容量は魅力だ。こちらもiPad/iPad 2に対応、2Aでの充電ができる。スマートフォンの場合も、2A供給ができればACモードで高速充電ができるので、短時間でスマートフォン本体の内蔵バッテリを満充電状態まで持って行ける。LEDインジケータで残り容量が細かく把握できる点でもポイントが高い。百均ケーブルだけを使って接続した場合は状態5となる。

 困ったことがあるとすれば、前者は専用のACアダプタ、後者は専用のUSBケーブルを使わないと充電ができない点だ。バッテリ本体の充電用電源入力が専用のDCプラグを使う仕様になっているため、専用のACアダプタ、あるいはケーブルがなければ充電ができない。理想的には、入力がMicroUSB、出力が通常のUSBになっていれば、1本の汎用的な百均MicroUSBケーブルだけで入出力を兼ねられ、ケーブルを紛失したり、持ち出すのを忘れたような場合も、簡単に調達ができるのにと思う。ただ、短絡させるなどの事故の可能性を考えると、そいうわけにはいかないのかもしれない。

 それでも、5,000mAhや8,800mAhなどという大容量の電源を、いつもカバンの中で確保できるようになっているというのは実に安心だ。何があっても大丈夫という点では、震災や停電などの備えとしても心強い。ただ、個人的には、普段の持ち歩きとしては、どうせモバイルPCを携帯しているのなら、そのバッテリを頼る方が現実的かもしれない。

●実用度はピカイチでも軽快感が損なわれる大容量バッテリ

 スマートフォンの傾向として、本体の薄型化が優先された結果、実用使用におけるバッテリの持ち時間が短くなってしまっている。その一方で、多少、本体が不格好になってもいいから大容量のバッテリを本体に装着したいユーザーも少なくないようだ。特にグローバルモデルのスマートフォンでは、インターネットで探せば、サードパーティ製のバッテリがたくさん見つかる。裏蓋とセットで売られていて、本体に大容量バッテリを内蔵させてしまえるのが魅力だ。個人的にもIDEOSの専用大容量バッテリなどを購入して試してもみた。だが、薄型本体の軽快感が損なわれるのはどうしようもなく、妥協の産物のようになっている。けれども、充電するデバイスを単一にできるという点では、この方法に勝るものはない。

 思えば、今から10年前、2001年に最初のFOMA端末として購入したN2001には、最初から予備バッテリが同梱されていた。ろくに使っていないのに夕方にはバッテリが空になるのでは実用にならないという判断だったのだろう。結局、この端末は、ほとんど使わずじまいになってしまった。当時のFOMAは地下街などではまず使えない状態だったから、圏外状態にあることが多く、余計にバッテリを食ったのだろう。

 そのFOMA端末も、今では、見違えるほどの省電力性能を身につけた。今のスマートフォンがそこまで育つには、あと、いったいどのくらいの時間がかかるんだろうか。

 2012年は、Intelの戦略転換によって、低電圧プロセッサを搭載した薄型軽量のモバイルノートPCであるUltrabookが各社から出てくるだろう。当然、バッテリも大容量は確保できないから、プロセッサの省電力機能がいかに優れていたとしても、今よりバッテリ駆動時間は短くなる可能性がある。それでもユーザーはスタイリッシュな薄型を選ぶのか、それとも多少、野暮ったくてもバッテリ駆動時間でより実用性の高いモバイルPCを選ぶのか。興味は尽きない。でも、なんだか、今のスマートフォンと似ている。同じことを繰り返しているような。これまたデジャブである。