山田祥平のRe:config.sys

LifeTouch NOTEが持つ3つのプラスアルファ




 かつてのモバイルギアを彷彿とさせるNECの「LifeTouch NOTE」に、3G通信対応モデルが追加された。いつでもどこでも通信ができて欲しい、こうした端末だからこそ、この対応はうれしい。量産機を試す機会を得たので、その所感を紹介することにしよう。

●1つめのプラスアルファは3G通信対応

 すでにPC Watchでも、さまざまなレビューが紹介されているように、LifeTouch NOTEは7型ワイドのタッチパネル液晶を持つAndroid端末だ。トレンドのタブレットではなく、いわゆるノートPCのようなクラムシェル形状で、タッチタイプが十分に可能なキーボードを実装している点を大きな特徴としている。

 その3G版は「FOMA HIGH-SPEED対応ワイヤレスWAN内蔵」とされ、具体的には、ドコモのSIMを装着することで、FOMAネットワークを介した3Gデータ通信ができる。NECとしては、ドコモの定額データプラン契約で使われることを想定しているようだ。

 SIMカードを装着するスロットは、バッテリを外してアクセスできる。装着は簡単だ。FOMAカードを装着し、適切なAPNを設定すればすぐに通信ができるようになる。また、自己責任となるが、日本通信の各種SIMでも同様に通信ができる。先だって発売が開始された1GBごとの従量制データ通信サービスb-mobile Fairの120日間、または、1GBに達するまで9,800円、以降は、1GBごとに8,350円をチャージしていくというシステムを、この端末で使うのも悪くないかもしれない。

 b-mobileのSIMはFOMAカードそのものであり、ネットワークの足回りもFOMAのものを使う。ただ、LifeTouch NOTEに装着しても、APNは手動設定する必要があるし、画面上部のステータスバーに表示される電界強度を示すアイコンに×印がついてしまい、通信ができるかどうかは通信してみないとわからないという状況だ。ただ、試した限り、通信そのものは正常に行なえた。

 なお、音声通話ができるSIMを装着しても、音声通話はサポートされない。そもそも電話アプリが存在しないのだ。ただし、スピーカーとマイクは内蔵されているので、Skypeのようなアプリを使えばIP電話には使える。

●2つめは、その7型スクリーン

 3G版は、Wi-Fi版の約699gに対してちょっとだけ重量が増え、723gとなっている。613gのiPad 2と比べてしまうと、ちょっと重い感じがする。ただ、きっとiPad 2はSmart Coverをつけて持ち歩きたくなるだろうから、カバーの重さ100g強を加算すると似たような重さになる。華奢そうに見えるiPad 2に対して、クラムシェル形状のLifeTouch NOTEは、カバーをつけずに持ち歩いても平気という頼もしさがある。

 そもそも7型液晶とキーボード装備という出で立ちは、どのようなシーンで生きてくるのだろうか。個人的にはGALAXY Tabの7型液晶をとても気に入っていて、PCとスマートフォンの中間にくるデバイスとしてずっと使ってきた。

 LifeTouch NOTEは7型液晶とはいっても、その解像度は800×480ドットで、GALAXY Tabの1,024×600より低い。7型液晶デバイスとしては、手元に日本通信のLight Tabがあるが、それと同じ解像度でアスペクト比も同様。また、マルチタッチに非対応で、抵抗膜方式であるという点でもLight Tabと共通している。

 抵抗膜方式のタッチパネルは、操作するのにちょっとコツがいる。静電容量方式とは違って、基本的には圧力で検知するので、指の腹などの「面」で操作してしまうよりも、爪先などの「点」で操作した方が快適に使える。ノック式ボールペンのペン先を出さない状態にして、それを使ったりしてもいいし、そもそもLifeTouch NOTEには、操作用のスタイラスが本体下部に装着されている。ただ「戻る」操作は、どうしてもキーに頼ることになるので、スタイラスやボールペン先を使うより、ツメ先でひっかくような感覚で操作するのがもっともよさそうだ。あるいは、指の腹を使った「面」操作でも、若干強めにスクリーンを押し、なでるというより、こするという感覚での操作がおすすめだ。

●3つめは、そのフルキーボード

 LifeTouch NOTEには、ジャストシステムのキーボード対応版「ATOK」がプリインストールされている。その使い勝手は、キーアサインを含めてPCで使うATOKそのものだ。ただ、Windows版のATOKはキーアサインを自由にカスタマイズできるが、こちらはできない。でも、Ctrl+Hでカーソル位置の前の文字を削除したり、Ctrl+Pで英文字、Ctrl+Oで半角後変換、Ctrl+KやLでの文節の切り直しなど、普段からPCでATOKをデフォルトキーアサインで使っていれば、何の違和感もなく日本語入力ができる。ファンクションキーへの機能割り当ても同じだ。

 また、LifeTouch NOTEは、Aのキーの隣にMenuキー、左Shiftキーの下にFnキー、その右にCtrlキーが配置されているが、システムの設定で、これらのキーの役割を入れ替えることができる。個人的にはAの隣はCtrlが使いやすいので、Windowsではそうしているが、同じことがこの端末でもできるのはうれしい。

 贅沢かもしれないが、ここまでPCと同じ感覚で日本語入力ができると、今度はアプリ側にも対応を求めたくなる。ただ、Androidアプリの多くは、こうした実キーボードを装備していることを想定しているものがほとんどなく、まして、タッチタイプで文字が入力されているなど思ってもいない。

 個人的にはPCでのテキスト入力は、「秀丸エディタ」を使っていて、自分自身で使いやすいようにキーアサインを割り当てている。秀丸登場以前から使っているワープロやエディタを含めて、同じキーアサインで四半世紀、文章を書いてきた。そして、Wordなどのワープロソフトを使うときも、マクロで割り当てた同じキーアサインだし、その他のソフトも、以前、ここで紹介したユーティリティ「KeyMouXr」を使って、同じキーアサインでテキスト入力ができるようにしている。自分自身では、文字入力時のミスタイプがきわめて多く、常に、Ctrl+Hでカーソル直前の文字を削除できないと、入力効率がガタ落ちになってしまうので、より正確にタイプするように心がけるより、間違えても、瞬時に修正できる環境を作ることを選んでしまった。ダイヤモンドカーソルを未だに使い、Ctrl+Oで行末、Ctrl+Kで行頭なんていうのは、MS-DOS版一太郎を使っていたときからのキーアサインで、そこから離れられないというのは内緒だ。

 もし、LifeTouch NOTEのキーバインド変更機能が、各キーにフル対応し、すべてのキーの割り当てと、修飾キーと文字キーの組み合わせへの機能割り当てを、任意にできるようになっていれば、熱狂的なファンがつくかもしれない。まさに、インテリジェントなキーボードデバイスになるだろう。そうすれば、右Shiftキーがないことや、カナキーの「め」の隣に「ろ」がないことなど、問題なくなる。アプリに依存せず、いつもの自分のやり方でキー入力ができることを望むユーザーがいる。特に、こうしたデバイスが気になるユーザーには決して少なくないはずだ。PCにあまりにも近いからこそ、微妙な違いがストレスにつながる。こうした細かい部分こそ、PC同様に自在であってほしいと思うのだ。

●LifeTouchそのものが常時携帯デバイスのプラスアルファ

 LifeTouch NOTEの電源アダプタは、ノートPCなどで使われているものとあまり変わらない。定格は19V、3.6Aだ。手元にあったレッツノートの電源アダプタが、16Vで、プラグの形状が同じだったので、電圧が低い分には大丈夫だろうと試しに使ってみたら、普通に充電できてしまうようだ。もちろん、メーカーの保証範囲外だが、これなら出張などでアダプタを兼用できるので、荷物が1つ減らせるというものだ。ただ、丸1日の外出では、たとえ帰宅が午前様になってしまったとしても、バッテリのことを心配しなくてもいいスタミナを持ち合わせている。

 LifeTouchのAndroid 2.2ではOSの標準機能としてテザリングもできる。LifeTouch NOTEなら、ほとんどバッテリの心配がいらないモバイルルーターとして使うことができるわけだ。PCはもちろん、iPod touchやiPadなどといっしょに持ち歩いて、複数のデバイスを使い分けるといったことも現実的になってくる。

 Android端末は、複数のものを行ったり来たりしても負担にならない。クラウド連携のおかがげで、データの受け渡しをほとんど気にする必要がないからだ。手元のスマートフォンで書きかけたメールが長くなりそうで入力が面倒になってきたら、それをいったん下書きに保存して、LifeTouch NOTEを開いて続きを書くなんてことが簡単にできる。メーラーが対応していなくてもクラウド連携のサービスがいくらでもある。まさにデバイスがクラウドを介してシームレスにつながるわけで、だからこそ、LifeTouch NOTEのような端末がプラスアルファとして生きてくる。

 もちろん、通信をスマートフォン側に頼り、そちらにインターネット接続を任せるという運営方法もあるだろう。ただ、昨今のスマートフォンはルーターとして丸1日の使用をするにはバッテリが心配だ。LifeTouch NOTEをルーターにし、データトラフィックのハブとして使えばその心配もない。そういう意味で、3G対応はうれしい仕様だし、願わくば、海外での現地キャリアが使用できるようにSIMロックフリーであれば、もっとよかったと思う。日本国内だけで使うのなら、3G対応のみならず、WiMAX対応機も用意されていればもっとよかったかもしれない。