山田祥平のRe:config.sys

ブックとノート、どっちがエライ




 Windows 7のプリインストールPCが量販店の店頭に並び始めた。何軒かのぞいてみたが、確実に、それまでの店内よりも活気があることがわかる。そんな中から流行のCULVノートを試してみた。果たして、ポスト・ネットブックとして、受け入れられるのだろうか。

●知らない人にとっては十分にモバイル

 CULVノートPCは、Consumer Ultra Low Voltageの頭文字をとったもので、Intelの超低電圧版プロセッサを搭載したノートPCカテゴリの呼称だ。実際に使ってみたのは、東芝の「dynabook MX/33」で、具体的には、1.30GHzのCeleron 743を搭載し、1MBの2次キャッシュを持ち、システムバスクロック800MHz、メモリバスクロック800MHzとなっている。チップセットはIntel GS40 Expressだ。

 PCとしてのスペック的としては、だいたい3年前の最新型モバイルノートPCといったところだろうか。たとえば、2006年のLet'snote秋モデルは、1.2GHzのCore Soloプロセッサーを搭載、2MBの2次キャッシュを持ち、FSBは533MHzだった。

 2次キャッシュの容量では負けるが、クロック周波数やバスクロックはMXが勝っている。それに、メインメモリは2GB、HDDは250GBもある。PCとしての実力は、3年前の最新鋭機よりも、CULVノートPCの方が上だろう。また、CULVノートPCには、Core 2 Duoを搭載した製品もあり、そちらを選べれば、もっと快適な環境が手に入る。

 dynabook MX/33は、量販店等で8万円弱、ポイント還元10%程度で入手できる。ネットブックよりも、ちょっと上の価格帯だ。ちなみにこの価格を出せば、製品を吟味することで、もっと高スペックのノートPCが普通に手に入る。ただ、その場合、ノートとはいってもモバイルにはほど遠い、据え置き型として使うしかないモデルになってしまうだろう。

 MX/33の重量は1.58Kgで、JEITAバッテリ動作時間測定法(Ver1.0)によるカタログスペックで9.5時間の駆動が可能だ。これをモバイルPCと呼ぶかどうかは微妙だというのは内緒にしておき、とりあえず、その気になれば持ち歩ける。いや、持ち歩いてみようというモチベーションはわいてくる。特に、これまで、重量級のノートPCを据え置きで使っていたユーザーが買い替え対象として検討したときには、驚くほど軽くて安いPCに見えるだろう。まして、3年以上前のPCを現役で使っているユーザーにとっては、Windows 7 Home Premiumという最新のOSが入り、聞いたこともないような大容量のHDD、そして、使い切れるのかどうか見当もつかない量のメインメモリを搭載する。そして、3年以上前の購入時以来、気にしたこともなかったPCの価格としては、破格に近いプライスだ。

 JEITAによれば、この上半期のPC出荷台数は前年を割っているが、ネットブックを含む小型ノートは堅調だという。CULVノートPCの登場は、そのトレンドに拍車をかけるかもしれない。

●これから起こるいくつかのトレンド

 東芝では、このカテゴリの製品を「ネットノート」と呼んでいる。確かにCULVノートPCなどという呼び方よりは、ずっとわかりやすい。東芝としては「ブック」は「読む」ことしかできないが、「ノート」は「書く」ことができるので、「ブックよりノートがエライ」という論法らしい。

 でも、一般的な消費者が、ネットブックとネットノートはどっちの性能がよくて、さらに、普通のノートPCとどう違うのかというところまでは、その呼称では、まだわかりにくい。いっそのこと、「ネットブック・プロ」とか「スーパーネットブック」、「ネットブック・ターボ」といった呼称でもよかったかもしれない。相対的にネットブックよりも上であることを直接訴求した方がわかりやすかったのではなかろうか。

 ちなみに、東芝のネットブックdynabook UXの量販店価格は65,000円程度でポイント還元10%といったところだ。その価格差は15,000円程度となる。

 だが、この15,000円相当の違いは大きい。たとえば、液晶ディスプレイのサイズはUXの10.1型ワイド1,024×600ドットに対して、MXは11.6型ワイド1,366×768ドット。搭載OSは、UXがWindows 7 Starterであるのに対して、MXはWindows 7 Home Premiumだ。筐体サイズだけ見れば、UXの方がモバイルっぽいのは確かだが、PCとしての使い勝手は、MXの方が圧倒的に上だろう。

 ネットブックのUXには、WiMAXモジュール内蔵のものが用意されている点が魅力だ。もし、ネットブックにグラフィックスのデジタル出力が許されていて、HDMI端子などが用意されているのなら、あえてネットブックを選ぶというのもありだとは思うが、そうは問屋が卸さない。この状況では、やっぱりネットノートのMXを選ぶのが賢明だし、個人的に相談されたら、絶対にそっちを薦める。

 MXのHDMI出力をリビングの50型テレビにつなぎ、本体液晶をOFFにして、フルHD解像度でしばらく使ってみたが、これは使えるという感触を持った。マウスやコンパクトなキーボードをワイヤレス接続して、本体は、ふたを閉じて置いておき、必要なときだけ持ち出すような使い方をしてもいいし、リビングのソファの傍らに置いておいてもいいなという気になってきた。ただ、フルHD解像度出力ではパフォーマンスが落ちる。さすがに荷が重いのだろう。でも十分に実用になる。

 いずれにしても、持ち運びのできる薄型ノートPCが、ここまで身近な価格に降りてきたことで、PCの使われ方にも変化が現れるに違いない。これは、ちょっとうれしいことだ。

 たとえば、

・一般の人々がPCを自宅の外に持ち出すようになる。
・移動先でのみならず、移動中にもPCを使うようになる。
・一人が複数台のPCを持つようになる。
・PCを家族といえども他人にはさわらせず一人で独占して使うようになる。
・肌身離さずPCを持ち歩くようになり、さらなる薄型軽量化のニーズが生まれる。

 これらは従来のモバイルPCが、懸命にチャレンジして作ろうとしてきたトレンドだが、CULVノートPCの登場で、いよいよ、それが現実のものになりそうな感触を持っている。とにかく提案しなければブレークスルーは起こらない。そして、人々は次のようなことに気がつくかもしれない。

・自宅にいて起きている時間は意外に少ない。
・特に平日は、寝ている時間以外、ほとんど自宅にいない。
・携帯電話があれば固定電話がいらないみたいに、もしかしたら自宅にPCはいらないんじゃないか。
・たとえ自宅にPCを持つとしても、価格対性能比の高いデスクトップPCをTVにつなげばいいんじゃないか。

 こうして一体型PCやオールインワンノートPCのトレンドは薄らぎ、デスクトップPCと薄型ノートPCの2台体制が次のトレンドになる。もちろん、そこでは、クラウドでのサービスが重要な役割を果たすようになる。これから2〜3年先のトレンドを予想してみたがどうだろう。

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