山田祥平のRe:config.sys

iTunesがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!

 



 


 毎年恒例のiPod新モデルが登場した。これ以上何がやれるのかと、毎年楽しみにしている時期なのだが、個人的には今年は想定内の進化で、正直なところ、ちょっとがっかりだ。だが、iTunesは大きな進化を遂げた。新しくなったiTunesをさっそく試してみよう。

●間に合わなかったビートルズ楽曲のネットワーク配信

 2009年9月9日。この日、ビートルズのオリジナルCDがすべてリマスタリングされて再発された。個人的にはそんなに熱心なビートルズファンではないのだが、手元には1987年に初CD化されたときの盤がすべて揃っている。あれから22年が過ぎ、新たにリマスターされたわけだが、よくなったのか、悪くなったのかを判断するのは、もう少し先延ばしになりそうだ。何しろ、22年前のCDは、押し入れの奥底にしまい込まれ、探し出してきて聴き比べるのはたいへんだ。もちろん、それらのCDからリッピングしたデータはiPodに入っているが、ビットレートは96Kbps。でも、新たに入手したボックスセットをリッピングしたあとも、そのままライブラリとして残してある。

 さて、ビートルズの楽曲がiTunesストアで買えるようになるという噂は現実のものにならなかったが、2009年9月9日という9が3つ並ぶ、この日、新しいiPodが発表され、出荷が開始された。日本では時差の関係で9月10日になってしまったのはご愛敬だ。ちなみに、Amazonに予約しておいたビートルズのボックスセットはちゃんと9月9日の朝に届いた。きっと、ネットワーク配信が間に合っていたとしても、ボックスセットは購入しただろうと思う。そういう世代なのだ。

 新しいiPodだが、今日は、銀座のアップルショップで実物をさわってきた。展示された実機をさわれたのは、iPod nanoだけだったが、届いたばかりとのことで、楽曲も転送されていない状態だった。カメラが付き、スピーカーが付き、FMチューナが付き、そして、たった0.2インチとはいえ大きくなったディスプレイは、数字以上に大きくなったように感じられた。iTunesに新搭載のGenius MIX機能も単体で使える。これはちょっとうらやましい。

 iPod touchは容量アップのみ、ここはやはり128GBのものがほしかった。でも、手元の第2世代iPod touchを、今朝、PCに接続したら、最新のiPhone OS 3.1.1に更新された。3.0に有償アップデートしていたので、今回は無償だ。そして、Genius MIX機能にも対応している。

 iPod shuffleはカラーバリエーションの追加と容量アップ、iPod Classicはディスコンになるんじゃないかと思っていたが容量アップで持ちこたえた。

 毎年恒例なので、本当は買い増したいところだが、どうも、今回は、今ひとつ食指が動かない。買うとしたらnanoなのだろうけれど、しばらく考えることにしよう。

●生まれ変わったiTunes

 iTunesは新バージョンの9.0になって、まるで生まれ変わったような印象だ。あちこちに手が入り、使いやすさに磨きがかかっている。

 見かけの点では、カラムブラウザーが楽曲一覧の左側に表示できるようになり、カラムを選択することができるようになっている。今までは、ジャンル、アーティスト、アルバムを曲リストの上部に表示するだけだった。はっきりいってこれはスペースの無駄で、特に、iTunesが勝手に日本語に書き換えたジャンルなどは役に立たないから腹立たしい。

 iPodとの同期時の作業に関しても使いやすくなっている。iPodの容量がライブラリの容量に満たない場合、すべての楽曲を転送することができないので、転送する楽曲を選択しなければならないのだが、今まではプレイリスト単位だけだったものが、アーティスト単位、ジャンル単位でも指定できるようになった。似たようなことをするために、今までは、スマートプレイリストを作って対応してきたが、その必要がなくなるかもしれない。ただ、スマートプレイリストは、条件の入れ子ができるようになって、すごく便利になっている。ここにも注目だ。

 今回の新機能のうち、もっとも気に入ったのは、Genius MIXだ。Geniusは、指定した楽曲をベースにして、それといっしょに聴いて心地よいと思われる楽曲を集めてくれる機能だが、それとは別に、12個の謎のプレイリストを作ってくれるようになった。

 「謎」のとしているのは、そのプレイリスト内に入っている曲のリストは、再生してみるまでわからないからだ。手元の環境では、下記の12個が生成された。

Gospel & Religious MIX
Pop MIX
カントリー MIX
クラシック MIX
ポップ MIX
ポップ MIX 2
ポップ MIX 3
ポップ MIX 4
ロック MIX
ロック MIX 2
ロック MIX 3
ロック MIX 4

 ここでも、以前のiTunesが勝手にジャンル名を書き換えた弊害が残っているようだが、ライブラリ内の曲が、なんらかの基準で集められ、ジャケット4枚分のアートワークを持つオムニバスとしてプレイリストもどきになる。この内容がいつ更新されるのか、そして、何曲入っているのかはわからない。

 ちなみに、OSを更新したiPod touchには、プレイリストとして、このGenius MIXを転送することができる。転送先のtouchでは、プレイリストやアーティスト、曲といったボタンの前にGeniusというボタンが新設され、転送したGenius MIXを呼び出せるようになった。touch上では9枚分のジャケットがアートワークになって表示される。そして、ここでも次に再生される曲は、再生するまでわからないのだ。

 これは実におもしろい。ただ、手元のiTunesライブラリには28,000曲が登録されているが、どうも、Genius MIXには選曲に偏りがあるようで、同じアルバムからの楽曲が、ずいぶんだぶって選曲されている。Geniusのアルゴリズムと同様、このMIXの機能も謎に包まれている。

 ぼくの使い方では、iPodには、直近に追加した16GB分、32GB分といった感じで音楽を転送して外出の際に持ち出していたが、Genius MIXによって、ライブラリ全体から忘れていたような曲がピックアップされる可能性もあり、開いて聴くのが楽しみだ。まさに、自分好みの曲だけをかけてくれるラジオ局といった印象だ。

 Geniusは、わざわざベースの曲を指定して、リストを作る必要があった。それはそれで気分を反映したリストがその場で作れるので便利なのだが、MIXは、まさに自動的におまかせで生成される点で性格を異とする。これをうまく機能させられれば、偶然を誘発できる。

 なお、このGenius MIXは、最初、iTunesの左ペインに出現せず、困り果てていたのだが、いったんGeniusをオフにして、再び、オンにしたら表示され、使えるようになった。これは、ちょっとしたバグかもしれない。

●ホームシェアリング機能でPCからPCへネットワーク経由で楽曲をインポート

 ネットワーク関連ではホームシェアリング機能が目新しい。ライブラリ内の楽曲を、ホームネットワーク内の異なるPCで共有するためのものだ。前からライブラリを共有する機能はあったじゃないかと思うかもしれない。でも、以前のライブラリ共有とは、まったく異なる機能として実装されている。

 ホームシェアリングでは、ネットワーク内にある異なるライブラリの曲一覧し、任意の曲を再生することができる。ここまでは従来のライブラリ共有と同じだ。それに加えて、曲をインポートできるのがホームシェアリングの新しいところだ。つまり、楽曲ファイルをコピーしてきて、自分のライブラリとして登録することができる。プレイリストも参照できるので、曲を選ぶのもたやすい。

 母艦PCからiPodに曲を転送するのは簡単だが、モバイル用に持ち出すノートPCに曲を転送するのは、けっこうな手間がかかる。それがより簡単になったのはうれしい。どうせなら、母艦PCのiTunesから別のライブラリに楽曲をプッシュしたり、再生回数などの統合などができるようになってほしいものだ。

 なお、新しいiTunesは、Windows 7のこともきちんと考慮しているようだ。iTunesのタスクバーボタンを右クリックしたときのジャンプリストにはタスクとして、iTunesストアを開いたり、その検索が項目として表示される。また、楽曲を再生しているときのボタンにポインタを重ねればサムネールが表示されるが、そのサムネールに再生/一時停止、前へ、次へのボタンが装備され、ミニプレーヤーのような使い方ができる。アルバムジャケットを別ウィンドウで表示させて最小化しておけば、そのとき再生されている曲のアルバムジャケットがサムネールとして表示される。使い勝手としては、もう一息ではあるが、いちはやくWindows 7に対応してきたことを素直に喜びたい。