山田祥平のRe:config.sys

ドラえもんも想定外のバーチャルなどこでもドア




 ドラえもんの持っているひみつ道具の中で、どれか1つもらえるというなら、きっと「どこでもドア」を選ぶだろう。でも、バーチャルな「どこでもドア」は、すでに毎日使っている。いうまでもなく、それは検索エンジンだ。でも、ドラえもんはもっともっとたくさんのひみつ道具を持っている。

●ドラえもんの誕生日に寄せて

 この原稿を書いているのは9月3日で、ドラえもんの誕生日にあたる。彼の誕生日は2112年9月3日だが、未来から来たドラえもんは、本当はまだ生まれていない。実は、ぼく自身の誕生日も、今日、9月3日で、ドラえもんとは不思議な縁のようなものを感じる。

 今日、Googleのトップページを開いて驚いた。ドラえもんがロゴになってそこに登場しているのだ。そのロゴには、リンクが設定され、それをクリックすると「ドラえもん」を検索ワードにした検索結果が表示される。ぼくが試したときには7,650,000件がヒットしていた。

 実は、Googleのトップページがこのバナーになっていることを、午後の遅い時間になって人から知らされるまで気がつかなかった。というのも、Googleのトップページを開くことがほとんどないからだ。IEのデフォルト検索エンジンをGoogleにしているので、Googleの検索は頻繁に使うが、検索キーワードを入力するのは、IEの検索ボックスで、Googleのトップページを見る機会がほとんどなくなっているのだ。

 ニュースサイトなども、そのトップページを見る機会が少なくなっている。こちらは、RSSリーダーを使って要約を一覧し、その中から興味をひく記事に直接ジャンプするので、これまたトップページをスキップしてしまう。

 インターネットの利用スタイルとして、まずはWebブラウザを開き、最初にスタートページとしてのYahoo!やMSNのトップページというパターンは多そうだが、ブラウズのスタイルが多様化するとともに、各サイトのトップページはあまり見られなくなる傾向にあるのではないか。

 それでも、検索エンジンは、まさにバーチャルなどこでもドアで、キーワードを打ち込むだけで、インターネット上のどこにでも連れて行ってくれる。連れて行ってくれるというのは大げさな言い方かもしれないが、少なくとも、ドアの向こう側を垣間見ることはでき、そこから、ぼくらはさまざまな情報を得ることができる。そのことが、いかに、世の中を変貌させたかは、この記事を読んでいる個々人が、もっともよく知っているはずだ。きっと、Google自身も、どこでもドアであることを自負しているだろう。Googleがどこでもドアから飛び出す様子を絵にしたこのバナーが、そのことを明確に語っている。

●PCは四次元ポケットだ。

 半世紀以上を生き、そして、その半分以上をPCと関わりながら過ごしてきたぼく自身にとって「こんなこといいな、できたらいいな」の多くが現実のものとなった。すべてがテクノロジの力によるものだ。四半世紀前には夢のようなことだったことが、今は、いとも簡単にできてしまえる。それでも、一昨年よりは去年、去年よりは今年の方が、ずっとできることは増えているわけで、まさにドラえもんの四次元ポケットから出てくるひみつ道具のように、アッと驚くユーセージが、テクノロジの力によって形になる。

 そういえば、インテルが新しいマーケティング・キャンペーンとして“Sponsors of Tomorrow”を開始することを発表した。日本では、「未来をつくろう 。インテル」と訳されたようだが、「明日を支えるスポンサーとしてのインテル」といった意味合いなのだろうか。実に気の利いたスローガンだ。

 やはり、ここは想像力だ。ここ数年、世の中の多くの人のPCに対する期待感は停滞期にあったように思う。5年前のPCでも、インターネットが使えればそれで十分的なムードは、そのことを象徴している。

 今、人々に必要なのは、PCで、今、何ができるかという知識であり、そして、それをかなえるためのレシピではないか。知らないのに知っているつもりのユーザーが、あまりにも多いことにいらだちさえ感じる。

 ほんの少しでも想像力を働かせれば、PCが自分のために、どんな役割を果たしてくれるかが見えてくる。ブラウザを使ってインターネットを楽しむことしか思い浮かばないのであれば、それはやっぱり想像力が不足しているのだと思う。

 ドラえもんのひみつ道具がどこでもドアだけではないように、PCは個々人にとってのひみつ道具として機能するだけの能力を秘めている。それを引き出すのは、やっぱり個々人の想像力であり、さらにいえば、その想像を現実のものにするソフトウェアであり、ハードウェアだ。

 今、ここで新たなひみつ道具を提案できないことがもどかしいが、誰でも1つや2つのアイディアは持っているのではないだろうか。自分の想像がよほど突拍子のないものでもない限り、同じことを求めるユーザーが存在する。あるいは、自分しか思いつかないような斬新なアイディアなら、それを形にすればビジネスを成功させられるかもしれない。

 この時代、コンピュータに夢を委ねるのは、照れくささを感じるかもしれない。でも、のび太がうらやましいのは、今度はどんな夢を見せてくれるのか、どんな驚きを与えてくれるのか、そうワクワクさせるドラえもんがそばにいるからだ。でも、ぼくらにとっては、PCだって四次元ポケットだ。ドラえもんが生まれる2112年9月3日まで、あと103年。その頃、実はドラえもんこそ、PCだったことに気がつくのかもしれない。