メモリ屋社長のちょっとタメになるメモリ話

メモリは修理できるってご存じでしたか? 弊社での修理工程をご紹介

 みなさま、こんにちは。センチュリーマイクロ株式会社代表の嶋野です。上の写真は今回の内容とは関係ないのですが、実装直後のシート状態のメモリがたまたま入ってきたので掲載してみました。基本的に工場で実装後は枠が取られた状態で納入されるので、社内でもこの状態のメモリーモジュールを見ることは実は稀なのです。

 さて、前回のコラムの公開後、コラムネタのご要望をいただき、ありがとうございました。その中に「メモリってどうやって修理するの?」というご質問や、以前弊社Twitterにて修理の話をしたさいに、「メモリって修理できるんだ!」といった反応がございましたので、今回はメモリ修理の流れを簡単にご説明したいと思います。

※あくまで弊社における修理の一例です。

1. 外観チェック

 まずは傷や凹み、欠けなどがないか、顕微鏡も用いながら外観をチェックします。側圧や衝撃によりDRAMが浮いてしまっていないかもチェックポイントです。

端子傷の例

 汚れが酷い場合は、検査機器に搭載する前に簡単に清掃も行ないます。

2. 電気検査

 外観に異常がなければ、電気検査にかけます。メモリに応じて専用のテスターを使い分け、Open/Shortテストやマーチングテストなど、複数の項目を交えて検査していきます。

DDR3/DDR4用の専用テスター
テスター検査画面

 断線や電気的短絡が不具合原因であれば、この電気検査でほとんど検出されます。

3. 実機検査

 次に、じっさいのマザーボードに搭載してMemtestやR.S.Tなど、各種検査プログラムを実行します。実機検査では可能なかぎりお客様の環境に近い構成で行なえるよう、複数種類のマザーボードを用意しています。DRAM故障の場合は、ここでどの位置のDRAMが壊れているのか特定することができます。

R.S.T..検査画面

 通常の試験で不具合が出ない場合は、高温環境で試験を行なったり、複数種類のマザーボードでテストを行なったりと、さまざまなパターンを試す場合もあります。

4. 修理作業

 故障箇所を特定できたら、部品を交換します。抵抗やコンデンサ等の部品は半田ごてを用いて交換しますが、DRAMチップは専用のリワークマシンを用いて交換します。

リワークマシン

 熱が加わりますので、細かく温度プロファイルを調整し、製品へ負荷がかからないよう交換します。

 取り外す様子は下記ような感じです。

5. 再検査&クリーニング

 故障部位の交換が終わったら2と3の検査を再度行ないます。不具合が改善されていることを確認したら、最後に製品を綺麗にクリーニングします。

 汚れたラベルの貼り替えや端子清掃のほか、汚れが酷い場合は特殊な溶剤を使用しメモリ全体の洗浄も行ないます。

端子清掃の様子

 なお、ご家庭でメモリのクリーニングを行ないたい場合は、キムワイプなどの紙製ウエス、あるいは綿棒を用いて、無水エタノールで端子部分をそっと拭いてあげると良いです。ティッシュペーパーは繊維が残りやすいうえ、表面が粗く傷がつきやすいためお勧めしません。

 これらの工程をもって、故障メモリは修理完了し、お客様のもとに返却されます。

 交換で終わらせてしまえば簡単なのですが、故障原因を明確にしたい、最初に手に取って頂いた製品を末永く使って頂きたいなどなど、さまざまな理由により弊社では基本的に修理対応を行なっています。

 今回は以上となります。コラムネタはまだまだ募集中ですので、引き続き弊社Twitter宛にリクエストを頂ければと思います。

嶋野 康生

センチュリーマイクロ株式会社代表取締役社長。PCパーツショップのサポート、台湾系マザーボードメーカーを経て、2005年7月にセンチュリーマイクロに入社。マーケティング担当として入社したが、Webマスター・営業などさまざまな業務を担当後、現職に至る。PC、スマホはもちろん、カメラやクルマ、バイクなど多趣味かつ新しいモノ好き。たまにものすごく脱線します。