4K修行僧
15.6型での4K表示は現実的なのか? 4Kノートだけで暮らしてみた
(2015/10/19 06:00)
今回は、15.6型というサイズでの4K解像度の液晶を搭載するデル「Inspiron 15 7000」について詳しく見ていく。ポイントは15.6型という小型画面での4Kの見え方と、4Kノートの可搬性という2点となる。過去の記事で書いたとおり、会社には27型の4K液晶を置いているが、これを使わず今回1カ月ほどノートの液晶のみで過ごしてみた。
まず、製品の概要を紹介しよう。ハードウェアの主な仕様は、Core i7-5500U、メモリ16GB(デュアルチャネル)、HDD 1TB、Radeon R7 M270(4GB)、3,840×2,160ドット表示/タッチ対応15.6型液晶ディスプレイ、Windows 8.1 Pro。
インターフェイスは、IEEE 802.11ac/a/b/g/n無線LAN、Bluetooth 4.0、USB 3.0×2、USB 2.0、HDMI 1.4a出力、SDXCカードスロット、100万画素Webカメラを装備。バッテリ容量は58Whで、駆動時間は最大7時間。本体サイズは377.8×261.2×19.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は2.11kgとなる。8月時点での購入価格は145,980円だった。
モバイル(も想定した)ノートとしては全般的にハイスペックで、GPUを駆使するゲームなどをやるのでなければ十分な性能を持つ。ただし、Windows 10の無償アップグレードが提供されたことで、OSはWindows 10 Proにアップグレードした。
もう1つ、ストレージをHDDから手元にあったSSD(Samsung 840 PRO 256GB)に換装した。長いことシステムドライブはSSDを使っていたので、今さらHDDには戻れないからだ。製品のBTOメニューにSSDがあれば、最初からその構成にしていたのだが、ストレージは変更できないので、到着後に自分で入れ替えた次第だ。
本製品は19.9mmという比較的薄型ノートだが、背面のネジを外せば簡単に中にアクセスできる。ネジを外し、底面カバーのツメを1つずつ外しながら開けていく。HDDのマウンタもネジを取り外し、SSDに取り替えて、元あった場所に戻す。
もげてしまったツメは、使い道がないので即ゴミ箱行きだ。
「……はて?」
「もげたツメ……?」
「……」
「南無三ッッ!」
「カバーのツメ折れとるやんけ!」
と言うわけで、製品が到着したその日に底面カバーを壊してしまった。外し方が悪かったようだ。分解する時点で保証が切れることは承知の上だったが、まさか破壊してしまうとは。同様にこの製品のストレージ換装を考えている人がいたら注意深く作業してほしい。そして、今後、同じ犠牲者を出さないため、デルにはSSDのBTOオプションを追加することを切に願う。
と言っても、ツメが折れただけで、ネジ留めすれば何の問題もなく使える。また、ストレージ性能は、シーケンシャルが5倍程度、ランダムが最大20倍近くも向上したので、換装の断行は正解だったと信じている。
現時点で一般に入手できる4Kノートとしては、このInspiron 15 7000の15.6型が最小だ。ただし、同じサイズのパネルを採用するものはほかにもある。購入の際はそれらと比較を行なった。候補となったのは、東芝の「dynabook T95」と「dynabook Satellite WS754」、レノボ・ジャパンの「Y50」、デルの「Precision M3800」などだ。
15.6型というサイズ、そして2kg前後の重量について、多くの人はモバイルという印象を持たないだろう。筆者もそうだ。しかし、会社だけでなく自宅で作業することも多くあるし、取材への直行もあったりで、ノートPCは毎日持ち歩いている。つまり、今後は15.6型/2kgのノートを持ち歩かざるを得ない。つい最近まで1kg切るかどうかという視点でモバイルノートを選定していたのだが、なにせこれより小さい4Kノートは存在しないのだから仕方ない(現時点ではデルや東芝の12.5型製品が海外発表されているのだが、今はこのことは考えないものとする。と言うか、考えたくない)。
それまで使っていたのは「VAIO Pro 13」。重量は1,060gなので、4Kノートに移行すると1kgほど増えることになる。なかばヤケクソにならないと踏ん切りがつかない重量だが、ヤケクソとは言え、抑えられるものは抑えたい。候補製品の重量は、Inspiron 15 7000が2.11kg、dynabook T95が2.4kg、dynabook Satellite WS754が2.7kg、Y50が2.4kg、Precision M3800が1.88kgだ。
この時点で候補はほぼデルの2製品に絞られた。スペックで言えば、Precision M3800の方が、世代が1つ古いとは言えクアッドコアCPUを搭載するし、何よりMini DisplayPortを装備している。前回も軽く触れたが、Inspiron 15 7000はディスプレイ出力がHDMI 1.4aなので、外部ディスプレイ接続時は4K解像度だと、リフレッシュレートが30Hzになってしまう。Precision M3800なら60Hzで出せる。そして、重量も軽い。
気持ちはかなりPrecision M3800に傾いていたのだが、Inspiron 15 7000にした理由は価格だ。Precision M3800の4Kモデルは価格が30万円近くなる。ほぼ2倍だ。スペックの差分に15万円の価値を見いだせず、Inspiron 15 7000を選んだ。なお、Inspiron 15 7000も、内蔵液晶については60Hzでの表示ができる。筆者のように、4Kノートに4K液晶を繋ぐという人はほとんどおらず、内蔵液晶で作業すると思うので、その点ではHDMI 1.4aであっても実質的な問題はないと言える。また、これは個人的にはあまり必要性はないのだが、タッチにも対応している。
ちなみに、Inspiron 15 7000はバッテリ駆動時間が7時間というのもポイントだった。他社の4Kノートは軒並み4~5時間程度だ。これだと実利用環境では3時間くらいになってしまい、取材時に心許ない。まぁ、15.6型でガチモバイルするユーザーは非常に少数なので、他社の製品の仕様が的外れなものというわけではない。
さて、前回のレビューをお届けして以降、外部ディスプレイは使わず、本製品だけで生活してみた。もちろん、通勤時には持ち歩いている。
まず、モビリティという点での感想は、重くて、でかい、だ。
もう1度言う。
重くて、でかい、だ。
連載を始める前から覚悟はしていたのだが、2.1kgのノートは重い。机の上とか、部屋から部屋などちょっと移動させるのにも、片手で持ち上げるのは結構苦労する。持ち運ぶとなるとなおのことで、カバンに入れて持ち歩くのにも、手や肩に負担がかかる。そもそも、それまで使っていたカバンには入らなかったので、通勤カバンも買い換える羽目になった。15.6型というサイズは、一般的なビジネスカバンには入らないと思った方が良い。トートバッグくらいのサイズが必要になってくる。ちなみに、15.6型が入るサイズでデザインが気に入ったカバンの定価は3万円だったが、近所のマルイで40%オフのセールをやっていたので、追加支出が1万8千円で済んだのは修行中の幸いだった(ここ笑うところ)。
と、書いていたのだが、この記事を上げる直前になって、元のカバンにもInspiron 15 7000がすっぽり収まることが分かった。自分でもなんでこんなことになったのかよく分からない。思い出してみると、初め通勤カバンと同じサイズだと思い込んでいた別のカバンに入れたところ、入るには入ったが、ぱんぱんになり、ほかのものが一切入らなくなったので、通勤カバンも同じだろうと思い込んでいた。しかし、通勤カバンの方はもう少し大きかったようだ。写真撮影するためにInspiron 15 7000を入れてみると、余裕はないがほかのものも収まってしまった(これは笑えない)。
と言うことで、15.6型も一般的なサイズの通勤カバンにはいる。
もう1度言う。
1万8千円払ってカバンを買う必要はなかった。
総括すると、2.1kgのノートの持ち運びは、健康を害するほどのレベルではないが、気合いは必要だと言っておく。自慢ではないが、筆者はあまり気合いが入った質ではない。体重も標準体重より軽いし、オラついてるというより、フラついている感じだ。4KノートやTVを買ったのも、気合いと言うよりぶっちゃけノリでしかない。しかし、2.1kgの毎日の持ち運びはノリだけでは正直きついものがある。そこで、くじけそうな精神に活を入れるため、筆者は4Kノートを持って、この連休に小豆島の近くにある鬼ヶ島(女木島)に修行の旅に出かけてきた。鬼ヶ島は4KにもノートPCにもゆかりはないが、なんとなく響きが修行感あると思い、ノリで行ってきた次第だ。
ちなみに、この重さと引き替え(?)に、本製品の筐体はかなり高い剛性を持つ。端を持ったり、パームレスト横に肘をついたりしてもびくともしない。持ち運ぶ製品だと頑丈さも気になる。デルは本製品について、高温環境でのテストや、本体のひねり、ヒンジやキー、ボタンの耐久性などの検証を行なっており、安心してモバイル利用できそうだ。
モビリティという点では、先に述べたとおりバッテリ駆動時間も気になる。これについて、BBENCHでキーストロークオン、Web巡回オン、Wi-Fiオン、液晶輝度10%の条件にて計測したところ、4.9時間駆動した。実際、取材時に使った際も、それくらいはもつ感じだった。長いとは言えないが、ある程度長時間の取材も不安なくこなせる時間だと言える。
15.6型4Kノートのもう1つのポイントが、文字などが読めるのかという点だ。
まず結論から言うと、スケーリング100%で標準の文字サイズでの運用は非現実的と思っていい。筆者は視力が1.5以上あるので、机の上に置いて、画面までの距離が30cm程度(キーボードを使う場合、この辺りが適切な距離)の状態で、一応はスケーリング100%/標準文字サイズで読むことはできる。しかし、テーブルのない取材会場で、膝の上に置いて目と画面の距離が40cmほどになると、バッテリ運用時は輝度を下げていることも手伝って、文字を読むのは相当辛くなる。視力が低い人だと全く読めないだろう。
実際、最も文字サイズが小さいデスクトップアイコンのラベルは、2バイト文字で横幅が1mmあるかないか、1バイト文字では確実に1mmを切っている。正確な計測はできてないが、「1」や「I」など細い文字だと0.5mmもない。英語しか書かれてないラベル名だと、さすがに視力1.5以上の筆者でもまともに読めない。
ただ、通常、4Kの画面を4分割してなにかしらのウインドウできれいに埋めている都合上、デスクトップを拝む機会がほとんどなく、デスクトップのファイル操作は、エクスプローラー(こちらではより大きな文字で表示される)でやっていることから、デスクトップに表示された文字が読めなくても特に不都合を感じていない。
全般的な文字の小ささの対策としては、スケーリングを上げるか、アプリごとに文字のサイズを変えるかとなる。個人的には後者をお薦めする。15.6型で4Kなど画素密度が高い環境では、文字のみならずアイコンなども小さくなり、見えにくくなる。しかし、アイコンやアプリのメニューの文字などは、そのアプリを使い続けていれば、細かいところまで視認できなくても、用途や内容を判別できるようになる。これが、タッチ前提のタブレットなどだと、アイコンの思ったところをタップできないという問題が起きるが、ノートPCはタッチパッドやマウスでの操作となるので、多少アイコンが小さくても問題なくクリックできる。一方、Webサイトの記事やメールを読むだとか、原稿を書くといった作業だと、そこに現われるのは基本的に初出の文字列であり、1文字1文字が明確に読めないと、生産性は落ち、身体的にも負荷がかさむ。
と言うわけで、多くの場合、文字だけ大きくできれば、拡大による表示量の低減を抑えつつ、広大な解像度を有効活用できる。1ドット単位でピクセルを扱うようなCADであるとか画像編集などの場合は、ドットが楽に視認できないと作業に支障が出ることもあるかもしれない。しかし、文字の読み書きが主体となる使い方をしているのであれば、スケーリングするよりもアプリごとのテキストサイズを大きくする方がいいだろうというのが、これまで15.6型4Kノートを使ってきた感想だ。特に、PC操作に慣れたユーザーなら、スケーリングで一括して全ての表示が拡大されるより、拡大表示したいアプリだけ拡大した方が使いやすいだろう。
具体的には、Chromeでは、設定→ウェブコンテンツ→フォントのサイズを中から大に、秀丸はその他→ファイルタイプ別の設定→フォントのサイズを10ポイントから14ポイントにした。これで文字の横幅は1.5mm程度(Chromeではもう少し小さい)になり、個人的には無理なく読めるようになる。Edgeには、読み取りビューモードを除いてフォントのサイズを変更できないので、ブラウザ全体の表示を125%に拡大した。Firefoxは、最初からオプション→コンテンツ→規定のフォントサイズが16ポイントなので、そのままでも読めた。ただ、繰り返しになるが、これは視力がいい筆者個人の話なので、多くの場合は、さらに大きなフォントサイズにしないと厳しいと思われる。
と言うわけで、15.6型4Kノートのモバイル運用には、一定の気合いと腕力と視力、そして表示サイズに関する工夫が求められる。言い換えるなら、ある程度の苦労が伴う。これは歴然とした事実だ。
ただし、過去にも書いたとおり4K解像度にはフルHDのウインドウを一挙に4枚開けるという利点がある。Windowsは従来からマルチタスクだが、重なっているウインドウを交互に前に持ってきて表示していたのでは、情報量の点ではシングルタスクと変わりない。PCの使い方は人それぞれだが、情報を扱う仕事/作業を行なうのであれば、4Kという解像度は実に絶妙な情報量、そして生産性の向上をもたらしてくれる。
と言うことで、今回の快適度は「2KAITEKI」としたい。
今回はフォントサイズの変更をお勧めしているが、スケーリング運用時の使用感についても気になるところだろう。これについては、次回詳しく述べることにする。