1カ月集中講座

旅先でも困らないリモートTV視聴を手にする 第3回

~既存機器を活かす「DTCP+」準拠製品を使った方法

DTCP+対応NASを用意

 今回は「DTCP+」に準拠する製品を利用したリモート視聴の手順を解説する。TVのリモート視聴に興味はあるが、録画機器を買い換えるのは難しく、今使っている録画機器を活用してリモート視聴環境を実現したい。それも、今撮り溜めている番組をリモート視聴したい。そう考えているなら、「DTCP+」対応機器を用意するのがいいだろう。

 第1回でも紹介したように、DTCP+はデジタルコンテンツの著作権保護方式「DTCP-IP」の最新版で、LAN内での録画番組のムーブやダビング、リモート視聴に加え、インターネット経由のリモートアクセス機能をサポートする。前回紹介したNexTV-F準拠のリモート視聴と異なり、現在放送中の番組のリモート視聴は行なえないが、録画機器で録画した番組をDTCP+対応機器にムーブすることで、その録画番組のリモート視聴が可能となる。手持ちの録画機器で録画済みの番組もリモート視聴が可能となるので、撮り溜めた録画番組の消費に最適と言えるだろう。

 DTCP+ベースでのリモート視聴を実現するには、まずDTCP+対応のネットワークストレージ(NAS)を用意する必要がある。DTCP+対応のNASは、表1にまとめたように、アイ・オー・データ機器とバッファローから数製品が発売されている。

 これら製品のうち、アイ・オー・データ機器の「HVL-Aシリーズ」以外は製品にトランスコーダを搭載しており、リモート視聴時のビットレートや映像解像度をリモート視聴端末から指定できる。回線速度やデータ通信容量などを考慮しつつ、最適のビットレートを自由に指定できるため、トランスコーダ搭載製品の購入は基本と考えたい。なお、トランスコーダ非搭載のHVL-Aシリーズは製造終了の旧機種となっており、現行機種は全てトランスコーダを搭載しているため、それほど気にする必要はないだろう。

【表1】DTCP+対応のネットワークストレージ

製品名容量トランスコーダ搭載DLPAリモートアクセスガイドライン2.0対応
アイ・オー・データ機器RECBOX HVL-DRシリーズ2TB/3TB/4TB
RECBOX HVL-AT1.0S1TB
(ファームウェアVer.2.00以降)
RECBOX HVL-ATAシリーズ2TB/3TB/4TB
RECBOX HVL-ATシリーズ *12TB/3TB/4TB
(ファームウェアVer.2.00以降)
RECBOX HVL-Aシリーズ *12TB/3TB/4TB×
(ファームウェアVer.2.00以降)
バッファローリンクステーション
MyBOX LS411DXシリーズ
2TB/3TB/4TB
リンクステーション
LS410DXシリーズ
2TB(*1)/3TB/4TB(*2)
(*1:在庫限り、*2:受注生産)

(ファームウェアVer.1.32以降)

 利用する録画機器側にも条件がある。録画機器側は、DTCP-IPに対応し、ネットワーク経由での録画番組のムーブをサポートしている必要がある。ただ、DTCP-IPに対応するするBD/HDDレコーダーなどの録画機器は2007年頃から登場し始め、現在では多くの機器が対応。また、録画機能を備える液晶TVにも、DTCP-IPに対応する製品が数多く存在する。そういった製品を持っているなら、表1のDTCP+対応NASを用意するだけで録画番組のリモート視聴が実現可能となる。

 なお、DTCP+対応NASと連携できる録画機器は多数存在するため、ここで全ての製品は紹介しないが、それぞれホームページに対応機器が記載されているので、そちらで確認してもらいたい。アイ・オー・データ機器はこちら、バッファローはこちら(LS410DX)およびこちら(LS411DX)に対応機器が記載されている。

 もちろん、DTCP-IPに対応しネットワークムーブが可能なら、TVチューナ搭載のメーカー製PCや、自作PCに取り付けたPC用TV拡張ボードなどで録画した番組もムーブしてリモート視聴が可能だ。録画機器として民生用レコーダーだけでなくTVチューナ搭載PCも活用可能という点は、DTCP+の魅力と言える。

バッファローのDTCP+対応NAS「リンクステーション LS410DXシリーズ」。DTCP+対応NASは2シリーズ6製品をラインナップしている
アイ・オー・データ機器のDTCP+対応NAS「RECBOX HVL-DRシリーズ」。現行製品は3シリーズ7製品を用意
アイ・オー・データ機器の「GV-MVP/XS3W」など、DTCP-IP対応TVチューナカードを搭載したPCとの連携も可能

リモート視聴用クライアントソフトがDTCP+対応NASに添付

 リモート視聴には、携帯端末と、その携帯端末に対応するリモート視聴用クライアントソフトが必要となる。このうち、携帯端末はユーザーが別途用意する必要がある。また、リモート視聴用クライアントソフトに関しては、表2にまとめたように、製品ごとに利用できるクライアントソフトが異なっている。

 HVL-DRシリーズとLS411DXシリーズには、Windows 8.1用とAndroid用、iOS用のクライアントソフトが用意され、それぞれのOSに対して1ライセンスずつ無料で利用できるようになっている。そのほかの製品については、Windows用のリモート視聴用クライアントソフトはHVL-AT1.0Sを除く全製品に標準添付となっているものの、iOS用は有料となり、Android用は対応クライアントソフトがプリインストールされた端末でのみリモート視聴が可能となる。自由度の高さでは、HVL-DRシリーズとLS411DXシリーズが有利と言えるが、WindowsはWindows 8.1のみ対応という点がやや残念。そのほかの製品については、Android端末でのリモート視聴は難しいものの、Windows PCを利用したリモート視聴が無料で実現できる点は魅力となるだろう。

【表2】製品ごとのリモート視聴用クライアントソフト
メーカー製品名Windows用Android用iOS用
アイ・オー・データ機器RECBOX HVL-DRシリーズDiXiM Play SE
Windows 8.1以降、1ライセンス無料
DiXiM Play SE
Android 4.1以降、1ライセンス無料
DiXiM Play SE
iOS 7.0.4以降、1ライセンス無料
RECBOX HVL-AT1.0S-DiXiM Player 4.0 for Android
プリインストール端末のみ利用可能
DiXiM Digital TV for iOS
iOS 7.0.4以降
1,000円+宅外視聴プレミアムアドオン(500円)
RECBOX HVL-ATAシリーズDiXiM Digital TV 2013 for I-O DATA
Windows Vista以降、標準添付、無料
RECBOX HVL-ATシリーズ
RECBOX HVL-Aシリーズ
バッファローリンクステーション
MyBOX LS411DXシリーズ
DiXiM Play SE
Windows 8.1以降、1ライセンス無料
DiXiM Play SE
Android 4.1以降、1ライセンス無料
DiXiM Play SE
iOS 7.0.4以降、1ライセンス無料
リンクステーション
LS410DXシリーズ
DiXiM Digital TV 2013 for Buffalo
Windows Vista以降、標準添付、無料
DiXiM Player 4.0 for Android
プリインストール端末のみ利用可能
DiXiM Digital TV for iOS
iOS 7.0.4以降
1,000円+宅外視聴プレミアムアドオン(500円)
HVL-DRシリーズとLS411DXシリーズではクライアントソフトとして「DiXiM Play SE」が利用可能。Android用とiOS用が用意されている
こちらはWindows 8.1用のDiXiM Play SE。HVL-DRシリーズとLS411DXシリーズではWindows、Android、iOSそれぞれ1ライセンスずつ無料で利用できる
バッファローの「リンクステーション LS410DXシリーズ」に添付されている「DiXiM Digital TV 2013 for Buffalo」。Windows Vista以降で利用可能

 なお、表1に示すように、DTCP+対応NASはファームウェアのアップデートで全製品がDLPAリモートアクセスガイドライン2.0(DLPA 2.0)に準拠している。しかし、DLPA 2.0準拠のリモート視聴用クライアントソフトである「DiXiM Play SE」は全製品に対応せず、HVL-DRシリーズとLS411DXシリーズでのみ利用可能となっている。

 DLPA 2.0は、異なるメーカー間での相互利用を実現する技術要件で、これを満たしていればメーカーや製品の違いを考えずに相互利用が可能となるはずだ。しかし実際には、相互利用可能なのはHVL-DRシリーズとLS411DXシリーズのみで、そのほかの製品では利用できない。これは、クライアントソフト側が対応するサーバー機器を指定しているためだ。ほかの製品もDLPA 2.0に準拠しているので、仕様的にはほかの機器でも利用できるはずであり、今後の対応機器の拡充を期待したい。

運用時には録画番組のムーブが必須

 機材やクライアントソフトが揃っただけでは、まだリモート視聴は行なえない。録画機器で録画した番組をあらかじめDTCP+対応NASにムーブしておくことで初めて録画番組のリモート視聴が可能となる。

 録画番組のムーブは、録画機器側から操作して行なうのが基本となる。録画機器に用意されているムーブ/ダビングメニューから、DTCP+対応NASに録画番組をムーブすればいい。ムーブの操作方法は録画機器ごとに異なるため、詳しくは利用している録画機器のマニュアルなどを参照してもらいたい。

 なお、録画機器の機種によっては、DTCP+対応NASの設定メニューから操作してムーブできる場合がある。先ほどリンクを紹介した、アイ・オー・データ機器およびバッファローのDTCP+対応NASの対応機器一覧で、「ダウンロード」または「LS410DXシリーズで操作し、対応機種から録画番組をムーブ・ダビングできる機種」に対応している録画機器がそれで、DTCP+対応NASの設定メニューから録画番組の一覧を表示してムーブが行なえる。

 さらに、DTCP+対応NASの設定メニューから操作してムーブできる機種の中には、DTCP+対応NASへ録画番組を自動でムーブできる場合もある。それら機種では、いちいち手動でムーブ作業を行なうことなく、録画終了後に自動的に録画番組がDTCP+対応NASにムーブされるので便利だ。

録画機器から録画済み番組をあらかじめDTCP+対応NASにムーブしておく必要がある
ムーブ先にDTCP+対応NASを選択
リモート視聴したい番組を選択してムーブする
利用する録画機器によっては、DTCP+対応NASの設定メニューから録画番組をムーブできる場合もある
比較的新しい録画機器では、DTCP+対応NASが番組録画を自動チェックし、録画終了後に自動でムーブできる製品もある。ムーブの手間がかからず非常に便利だ

NexTV-F準拠のリモート視聴同様、事前のペアリングが必須

 DTCP+準拠のリモート視聴を行なう場合には、NexTV-F準拠のリモート視聴と同様に、事前にサーバー機器とリモート視聴を行なうクライアント機器との間でペアリングを行なっておく必要がある。ペアリングは、サーバー機器とクライアント機器を同一のLAN内で接続した状態で、リモート視聴用クライアントソフトを起動して行なう。

 バッファローのDTCP+対応NAS「LS410DX」シリーズに付属するWindows用クライアントソフト「DiXiM Digital TV 2013 for Buffalo」の場合には、同一LAN内でソフトを起動し、サーバー一覧メニューに表示されるLS410DXシリーズの製品名の右にある家型アイコンをクリックすることで、ペアリングが設定される。ほかのクライアントソフトの場合も、ほぼ同等の作業でペアリング設定が行なえる。

 なお、DTCP+ではペアリングの有効期限は設定されておらず、一度ペアリングを行なえば基本的にそれ以降ペアリングをやり直す必要はない。この点は、ペアリングに3カ月の期限があるNexTV-F準拠のリモート視聴に対する優位点と言えるだろう。長期出張時などに利用する場合には、DTCP+準拠のリモート視聴がお勧めとなる。

LS410DXとDiXiM Digital TV 2013 for Buffaloでのペアリング手順
DiXiM Digital TV 2013 for BuffaloをインストールしたPCをLS410DXシリーズと同じLANに接続し、ソフトを起動
サーバーメニューからLS411DXシリーズの製品名の右にある家アイコンをクリック
「DiXiMリモートアクセスサービスの利用規約に同意して登録を進める」にチェックを入れて「次へ」をクリック
「登録が完了しました」というメッセージが表示されればペアリング完了

 ペアリングが完了していれば、外出先から録画番組のリモート視聴が可能となる。外出先からリモート視聴用クライアントソフトを起動し、リモートサーバーからペアリングされたDTCP+対応NASにアクセス。あとは、メニューから見たい録画番組を選択して再生するだけだ。

 再生画質は、利用する携帯機器のネットワーク通信速度と、自宅のインターネット接続サービスの上り通信速度に依存する。高画質で視聴するには、携帯機器と自宅双方のネットワーク通信速度が高速である必要がある。このあたりは、NexTV-F準拠のリモート視聴の場合と同様だ。

 ちなみに、今回実際に利用したDiXiM Digital TV 2013 for Buffaloでは、リモート視聴時の画質やビットレートを高画質、中画質、低画質から選択して自動設定できるだけでなく、映像解像度とビットレートの異なるプリセット設定から自由に選択可能。リモート視聴用のプリセット設定は、「映像解像度1,280×720ドット、ビットレート2.1Mbps」、「映像解像度1,280×720ドット、ビットレート1.6Mbps」、「映像解像度1,280×720ドット、ビットレート1.1Mbps」、「映像解像度640×360ドット、ビットレート877.3Kbps」の4種類が用意されているので、ネットワーク速度や通信容量の残量などに合わせて選択すればいいだろう。

外出先でインターネットに接続した状態でDiXiM Digital TV 2013 for Buffaloを起動し、リモートサーバーメニューを開くとペアリングされたDTCP+対応NASが表示される
番組一覧から視聴したい番組を選択すれば再生が開始される
再生時の画質は、自動設定だけでなくプリセットから選択可能。回線速度や容量の残量などに合わせて選択すればいい

今後の機能拡張でDTCP+対応NASの利便性は向上する可能性あり

 DTCP+準拠のリモート視聴は、チューナ搭載製品での実現を対象外としているために、あらかじめ録画機器で録画した番組をDTCP+対応NASにムーブしておく必要があるためやや運用が面倒だったり、放送中番組のリモート視聴も行なえないという欠点があるのは事実だ。ただ、リモート視聴に対応しない手持ちの録画機器を活用して録画番組のリモート視聴を実現できるという点は大きな魅力だ。

 また、DTCP+対応NASはファームウェアのアップデートで機能が拡張される余地がある。例えば、登場済みのDTCP+対応NASは、ファームウェアのアップデートでDLPA 2.0への対応を実現している。また、アイ・オー・データ機器の「RECBOX HVL-DRシリーズ」では、僚誌AV Watchの記事にもあるように、2015年にさまざまな機能拡張を予定しており、利便性の向上が期待できる。このように、柔軟な対応が期待できるという点もDTCP+対応製品の特徴だろう。

 放送中番組のリモート視聴を行ないたいなら、NexTV-F準拠のリモート視聴を選択せざるを得ないが、録画番組のリモート視聴だけならDTCP+準拠のリモート視聴で十分満足できるはず。自分が求める用途をよく考えた上で、どちらの方式で実現するか決めてもらいたい。

 さて、最終回となる次回は、リモート視聴端末にWindows PCを利用する場合の方法についてまとめたいと思う。

(平澤 寿康)