1カ月集中講座
NASとクラウドを併用して目指すストレージ充 第3回
~自宅のNASをパーソナルなクラウドストレージに
(2014/8/23 06:00)
NASはファイルをLANで保管する場所というイメージが強い。実際、その機能に徹した製品も多いが、中身はLAN、ひいてはその先にあるインターネットにも接続可能なコンピュータである。十分な性能のハードウェアであれば、オンラインストレージ化も可能だ。
オンラインストレージ化したNASは、PCのWebブラウザはもちろん、AndroidやiOSを搭載したタブレットなどのモバイル端末などでも利用できる。“スマートフォンからでも必要なデータにいつでもアクセスできる”はクラウドストレージサービスの専売特許ではない。
今回はNASのリモートアクセス機能とその可能性について考えてみたい。
リモートアクセスでできること
Bフレッツなどの一般の回線サービスと一般のISPを使っているなら、基本的にはNASを含めたLANに繋がった機器へインターネット経由でリモートアクセスが可能だ。NASの場合、LAN内での利用を想定しているDLNAなどのメディアサーバー系の機能以外、ほぼ全部の機能を利用できる。
ただし、PCやMac用のアプリはNASの検索管理と同期(バックアップ)、iOSやAndroid向けアプリは基本機能に絞られていることが多い。LAN内同様、本格的に使う場合はPCやMacのWebブラウザを使う必要がある。ちなみに、iOSやAndroidのWebブラウザを使っても正常に動作するとは限らない。
「LAN内と同じようにエクスプローラー上にNASのフォルダを表示させたい」となると、VPNの構築など一手間が必要になるが、NASに保存しているファイルの閲覧と操作が目的であれば比較的簡単だ。リモートアクセスのために、設定を簡略化する機能が搭載されている場合もある。
なお、リモートアクセス機能を使う場合は、アプリのインストールやシステムの設定変更ができる管理画面の公開と、ユーザーIDとパスワードの管理には慎重になる必要がある。
リモートアクセスに必要な設定
NASのリモートアクセス機能を使うのに必要な設定として「ポート転送」と「ダイナミックDNS」が挙げられる。どちらもルーターの設定だ。
ポート転送は、特定のポートの通信をLAN内の特定の機器に転送する機能で、通常はインターネット側からは「見えない」LAN内の機器が「見える」ようになる。オンラインストレージはインターネット側から見えないと成り立たないので必須の設定だ。
ダイナミックDNSは、固定ではないIPアドレスの機器に、固定のドメイン名を割り当てるサービスだ。ルーターをインターネットに接続すると、ルーターにグローバルIPアドレスが割り当てられ、インターネット側から「見える」状態になる。そのグローバルIPアドレスが変わる度に、外からアクセスするためのIPアドレスや設定変更の手間を省いてくれるものだ。ISPや専門の業者が提供していることが多いが、NASの場合、メーカーが無料の専用サービスを提供している例もある。ダイナミックDNSの代わりに固定IPアドレスを利用する方法もあるが、必要性を感じる人を除けば、価格に見合うほどの利便性はないだろう。
このほかに、NASのPPPoE接続機能を使う方法もある。ルーターはPPPoEでインターネットに接続しているが、同じようにNASをPPPoEでインターネットに直接接続することで、インターネット側から「見える」状態にできる。当然ながらNASがPPPoE接続に対応している必要があり、複数のPPPoE接続(マルチセッション)に対応したモデムや終端装置、複数のプロバイダ契約も必要になるので利用できる環境は限られる。
ここでは、ユーザーが手作業で設定を変更する必要がある場合について紹介したが、QNAPの「CloudLink」ポート転送やダイナミックDNSの設定をユーザーに代わってNASがやってくれる機能もある。また、中にはポート転送の設定もダイナミックDNSの設定も変更する必要がない製品もある。
リモートアクセス可能なスマートフォン/タブレット用アプリ
スマートフォンやタブレットをNASと組み合わせて使うと、外部ストレージなどを持ち歩かなくても、少ないストレージ容量をNASが補完してくれるメリットがある。
NASを活用するために用意されているスマートフォン/タブレット用アプリは大きく分けて4種類ある。「ファイル操作アプリ」「写真や音楽、動画の閲覧再生アプリ」、「NASの管理アプリ」、「ファイルのダウンロード管理アプリ」だ。4種類のうち複数の機能を併せ持つものもある。
ファイル操作、写真、音楽、動画の閲覧再生の2種類のアプリは、ファイルのプレビューと表示、コピーと移動と削除、そして「共有」ができる。共有機能はNAS上のファイルのダウンロードリンクを生成するものが多い。共有する際は公開期間設定やパスワード制限が可能なものもある。
NAS管理アプリは、本体に直接アクセスした場合に比べて機能は省略されているが、アプリ単位での起動と終了、システム全体の再起動とシャットダウンなど、シンプルながら効果的なトラブルシューティング機能が搭載されている。
ほかにはユーザー権限の設定やログ表示、パフォーマンスメーターなども利用できることが多い機能だ。また、製品によっては、PCやMacのWebブラウザから利用できるWebベースのUIを、iOSやAndroidでもそのまま使えることもある。
ダウンロード管理アプリは、FTPやHTTP、bitTorrentを始めとするプロトコルに対応している。移動時などの隙間時間にダウンロード指定しておくことで、大容量のファイルを実質待ち時間なしで受け取ることができる。
また、ここまでに紹介した4種類のアプリ以外で覚えておきたいのが、オンラインノートアプリである。例えばQNAPのNAS製品はAndroid用の「Qnotes」が利用可能だ。Qnotesは、NASにインストールする「Notes Station」と連携するアプリで、ToDo機能や「Google Calendar」との同期が可能なカレンダー機能を搭載し、Evernoteからのインポートも可能。Chrome限定だがWebページのキャプチャも直接取り込めて便利だ。
さて、最終回となる次回は、従来のNASの枠を越え、プラットフォーム化しつつあるNASについて取り上げる予定だ。