1カ月集中講座
パーソナル3Dプリンタ導入の手引き 第2回
~最新パーソナル3Dプリンタ一挙14製品を紹介
(2014/1/16 06:00)
前回は、パーソナル3Dプリンタを導入するときにチェックしておきたいポイントについて解説した。今回はそれを踏まえ、現在、日本で購入できる主なパーソナル3Dプリンタを紹介していきたい。ここでは、すでに出荷が開始されている製品のみ紹介しており、未発売の製品やクラウドファンディングで現在進行中のプロジェクトなどは取り上げていない。
パーソナル3Dプリンタ14製品の基本スペックを比較
まず、今回紹介するパーソナル3Dプリンタ14製品の基本スペックを表にまとめてみたので、参考にしていただきたい。今回取り上げたパーソナル3Dプリンタは、全て熱溶解積層(FDM)方式を採用しているが、販売価格は5万円程度から50万円程度までと幅広い。基本的に、30万円以下の3Dプリンタはシングルヘッドであり、デュアルヘッドやトリプルヘッドを備えた3Dプリンタは30万円を超える価格帯になる。
製品名 | atom3D プリンター | Blade-1 | CellP | Cube | CubeX |
製造元 | Genkei.LLC | 株式会社ホットプロシード | 有限会社岡田商店 | 3D Systems, Inc. | 3D Systems, Inc. |
販売元 | Genkei.LLC | 株式会社ホットプロシード | 有限会社岡田商店 | 株式会社イグアス BRULE, Inc. | 株式会社イグアス BRULE, Inc. |
販売価格 | 129,800円(組み立てキット) | 136,500円 | 147,000円(組み立てキット) | 168,000円(イグアス)、129,800円(BRULE) | 417,900円(イグアス)、358,000円(BRULE) |
造形方式 | 熱溶解積層方式 | 熱溶解積層方式 | 熱溶解積層方式 | 熱溶解積層方式 | 熱溶解積層方式 |
ヘッド数 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
本体サイズ (幅×奥行き×高さ) | 325×275×268mm | 360×300×310mm (スプーラーを含まない) | 400×400×418mm (電源ユニット、突起物除く) | 260×260×340mm | 515×515×598mm |
本体重量 | 不明 | 5kg | 約10kg | 4.3kg | 36kg |
最大造形サイズ (幅×奥行き×高さ) | 140×140×135mm | 100×100×100mm | 200×180×180mm | 140×140×140mm | 275×265×240mm |
ノズル径 | 標準0.4mm | 0.4mm | 0.4mm | 不明 | 不明 |
積層ピッチ | 0.025~0.3mm(0.4mmノズルの場合は、最大0.3mm積層) | 0.1~0.4mm | 最小0.1mm | 0.2mm | 0.1/0.25/0.5mm |
ヒートベッド | オプション | ○ | オプション | × | × |
造形可能素材 | ABS/PLA/木材樹脂/HIPS/ナイロン/ペースト状の流体(射出機構が変わるので、別途オプション) | ABS/PLA/NinjaFlex | ABS/PLA | ABS/PLA | ABS/PLA |
サードパーティ製フィラメント | ○ | ○ | ○ | × | × |
サポート専用材料 | × | × | × | × | × |
利用ソフト | スライスソフト「KISSlicer」、プリンタ制御ソフト「Pronterface」 | スライスソフト「KISSlicer」、プリンタ制御ソフト「Pronterface」 | Cell Print | Cube Software | CubeX Software |
インターフェイス | USB | USB | USB | USB/USBメモリ/無線LAN | USBメモリ |
スタンドアロン動作 | × | × | × | ○ | ○ |
製品名 | CubeX Duo | CubeX Trio | DS.1000 | Np-Mendel | PRN3D |
製造元 | 3D Systems, Inc. | 3D Systems, Inc. | 株式会社ディビジョン・エンジニアリング、スマイルリンク株式会社 | OPENCREATORS | マイクロファクトリー株式会社 |
販売元 | 株式会社イグアス BRULE, Inc. | 株式会社イグアス BRULE, Inc. | スマイルリンク株式会社 | アイコスモス | マイクロファクトリー株式会社 |
販売価格 | 459,900円(イグアス)、398,000円(BRULE) | 522,900円(イグアス)、458,000円(BRULE) | 183,750円 | 159,000円 | 49,800円(組み立てキット) |
造形方式 | 熱溶解積層方式 | 熱溶解積層方式 | 熱溶解積層方式 | 熱溶解積層方式 | 熱溶解積層方式 |
ヘッド数 | 2 | 3 | 1 | 1 | 1 |
本体サイズ (幅×奥行き×高さ) | 515×515×598mm | 515×515×598mm | 270×280×255mm | 425×425×400mm | 420×250×320mm |
本体重量 | 37kg | 38kg | 5kg | 9kg | 不明 |
最大造形サイズ (幅×奥行き×高さ) | 230×265×240mm | 高さ240×幅185×奥行き265mm | 105×105×105mm | 180×180×160mm | 170×170×160mm |
ノズル径 | 不明 | 不明 | 0.4mm | 0.4mm | 0.4mm |
積層ピッチ | 0.1/0.25/0.5mm | 0.1/0.25/0.5mm | 0.05~0.35mm | 0.1~0.35mm | 最小0.05mm |
ヒートベッド | × | × | × | ○ | ○ |
造形可能素材 | ABS/PLA | ABS/PLA | ABS/PLA/ナイロン | ABS/PLA | ABS/PLA |
サードパーティ製フィラメント | × | × | ○ | ○ | ○ |
サポート専用材料 | △(PLAをサポート材として利用可能) | △(PLAをサポート材として利用可能) | × | × | × |
利用ソフト | CubeX Software | CubeX Software | スライスソフト「Slic3r」、プリンタ制御ソフト「Repetier-Host」 | スライスソフト「Cura」、プリンタ制御ソフト「Pronterface」 | スライスソフト「Cura」、プリンタ制御ソフト「Pronterface」 |
インターフェイス | USBメモリ | USBメモリ | USB | USB | USB |
スタンドアロン動作 | ○ | ○ | × | × | × |
製品名 | Replicator 2 | Replicator 2X | SCOOVO C170 | UP Plus 2 |
製造元 | MakerBot Industries, LLC | MakerBot Industries, LLC | 株式会社オープンキューブ | PP3DP |
販売元 | BRULE, Inc. | BRULE, Inc. | 株式会社オープンキューブ | 株式会社サンステラ BRULE, Inc. |
販売価格 | 264,800円 | 325,800円 | 189,000円 | 188,880円(サンステラ、2月以降は199,500円)、199,300円(BRULE) |
造形方式 | 熱溶解積層方式 | 熱溶解積層方式 | 熱溶解積層方式 | 熱溶解積層方式 |
ヘッド数 | 1 | 2 | 1 | 1 |
本体サイズ (幅×奥行き×高さ) | 320×490×380mm | 320×490×531mm | 376×333×404mm | 245×260×350mm |
本体重量 | 11.5kg | 12.6kg | 約15kg | 5kg |
最大造形サイズ (幅×奥行き×高さ) | 153×285×155mm | 160×250×150mm | 150×150×175mm | 140×140×135mm |
ノズル径 | 0.4mm | 0.4mm | 0.35mm | 0.4mm |
積層ピッチ | 0.1/0.2/0.3mm | 0.1/0.2/0.3mm | 最小0.1mm | 0.15~0.4mm |
ヒートベッド | × | ○ | × | ○ |
造形可能素材 | PLA/Flexible Filament | ABS/PLA/Dissolvable Filament | PLA | ABS/PLA |
サードパーティ製フィラメント | ○ | ○ | ○ | ○ |
サポート専用材料 | × | ○ | × | × |
利用ソフト | MakerWare | MakerWare | SCOOVO Studio | UP! |
インターフェイス | USB/SDカード | USB/SDカード | USB | USB |
スタンドアロン動作 | ○ | ○ | × | × |
それでは、1機種ずつ紹介していくことにしたい。
オープンソースで開発された3Dプリンタ組み立てキット
atom 3Dプリンターは、オープンソースの3Dプリンタコミュニティ「RepRap」の日本コミュニティ「RepRap Community Japan」のコアメンバーによって開発されたオープンソースのDIY型3Dプリンタであり、組み立てキットがGenkei.LLCから販売されている。
あくまで組み立てキットなので、一から自分で組み立てる必要があるが、その分、構造をよく理解できるので、トラブル時の対処がしやすくなる。また、組み立てに自信がない方向けに、組み立てワークショップも随時開催されているほか、組み立て済み製品も販売されている(組み立て済み製品の価格は169,800円)。
構造はオーソドックスだが、Genkeiが開発した新型ホットエンドと新型ホットエンドにより、高い耐久性と確実な樹脂の射出を実現している。造形可能な素材は、ABSやPLAだけでなく、ナイロンや木材樹脂にも対応する。ただし、ヒートベッドはオプションとなっており、ABSを利用する場合はヒートベッドが必須となる。最大造形サイズは、140×140×135mm(幅×奥行き×高さ)で、パーソナル3Dプリンタとしては標準的な大きさだ。最小積層ピッチは、0.025mmと非常に薄いが、0.025mmで安定して出力するには、設定と調整に根気が必要だ。スライスソフトやプリンタ制御ソフトもオープンソースのものを利用するようになっており、スライスソフト「KISSlicer」、プリンタ制御ソフト「Pronterface」が標準ソフトとして推奨されている。
atom 3Dプリンターは、しっかりと調整を行なうことで、高い精度で造形が可能である。単に3Dプリンタを使うだけでなく、その構造を理解したいという人や、自分でカスタマイズを行ないたいという人にお勧めだ。
国産パーソナル3Dプリンタの草分け的存在
Blade-1は、株式会社ホットプロシードが開発・販売しているパーソナル3Dプリンタだ。ホットプロシードの代表取締役である湯前裕介氏は、パーソナル3Dプリンタの可能性にいち早く着目し、3Dプリンタが今のように持てはやされるより前の2009年夏に、Makerbotのパーソナル3Dプリンタキット「CupCake CNC」の輸入販売を開始するなど、この分野での草分け的な存在である。Blade-1もRepRapベースの3Dプリンタだが、湯前氏が改良を施し、フレームとレールが一体になったアルミ製フレームを採用することで、高い精度と静粛性を実現している。溶解ヘッドはオール金属製であり、耐久性も高い。
ヒートベッドを標準搭載しており、造形素材としてABSとPLAを利用できるほか、弾力性のあるNinjaFlexにも対応する(ホットプロシードではNinjaFlexの販売も行なっている)。最大造形サイズは100×100×100mm(同)とやや小さめだ。積層ピッチは0.1~0.4mmで、atom 3Dプリンター同様、スライスソフトとして「KISSlicer」、プリンタ制御ソフトとして「Pronterface」を利用することが推奨されている。
Blade-1は、最初に述べたように、国内で製造販売されているため、日本語での手厚いサポートを受けられることが魅力だ。海外製3Dプリンタは、問題なく動いている間はいいが、いったんトラブルが起こると、その対応に時間がかかることがある。しかし、Blade-1の開発元のホットプロシードは、メールなどでのユーザーサポートを受けられることはもちろん、修理体制も整っている。しっかり調整を行ない、パラメータを適切に設定すれば、大手メーカー製パーソナル3Dプリンタに負けない、高精度な造形が可能だ。
造形可能サイズの大きさが魅力の組み立てキット
CellPは、CellP projectメンバーで開発が進められているRepRapプロジェクトから派生した3Dプリンタである。岡田商店が、CellPの組み立てキットを販売しているほか、組み立てや調整が不安だという人のために、組み立て調整サービス(35,000円)も行なっている。筐体はMDF製だが、箱型のフレームを採用しており、剛性は十分だ。
造形素材として、ABSまたはPLAを利用できるが、ヒートベッドはオプションとなっており、ABSで安定した造形を行なうにはヒートベッドが必要となる。最大造形サイズは200×180×180mm(同)であり、20万円以下のパーソナル3Dプリンタとしては大きいことも魅力だ。積層ピッチは最小0.1mmで、スライス/プリンタ制御ソフトとしては、CellP専用ソフト「Cell Print」を利用する。Cell Printは完全日本語化されており、岡田商店がサポートを行なっているいるので、英語が苦手な人にもお勧めだ。また、ホットエンドやタイミングベルト、エクストルーダ、制御基板といった、主要パーツが単品販売されているので、トラブル時の修理もしやすい。
CellPも、コミュニティでの情報交換が盛んであり、デュアルヘッド化やスタンドアロン化などの改良を行なっているパワーユーザーも存在する。オープンソースベースの組み立てキットは組み立てや調整に手間はかかるが、しっかり調整すれば、高精度な造形が可能で、ブラックボックス的な部分がないため、トラブルへの対処がしやすい。atom 3Dプリンターと同様に、3Dプリンタを自分で組み立て、その構造を理解したいという人や、改良してさらに性能を向上させたいという人にお勧めだ。
コンパクトでスタイリッシュな3Dプリンタ
Cubeは、3D Systemsが開発したパーソナル3Dプリンタである。3D Systemsは、業務用3Dプリンタ市場ではStratasysと並ぶ大手メーカーであり、数百万円から数千万円以上まで、幅広い製品ラインナップを誇る。Cubeは、同社の3Dプリンタラインナップの中で最も低価格なモデルであるが、完成度が高く、初心者でもすぐ使えることが魅力だ。本体サイズが260×260×340mm(同)とコンパクトで、重量も4.3kgと軽いため、狭い机の上などにも気軽に置いて使える。また、3Dプリンタとしては珍しく、ホワイト、グリーン、マゼンタ、シルバー、ブルーの5色のボディカラーが用意されており、好みの色を選べることも特徴だ。
ヒートベッドは非搭載だが、PLAだけでなく、ABSにも対応する。プラットフォームはガラス製で、専用の液体糊を塗ることで、プラットフォームから樹脂が剥がれてしまうことを防いでいる。フィラメントは、単にスプールに巻かれたものではなく、専用カートリッジを利用するようになっているため、サードパーティ製フィラメントを利用することはできない。最大造形サイズは140×140×140mm(同)と、本体サイズの割には大きい。積層ピッチは0.2mmである。タッチパネル付き液晶とUSBメモリ接続用のUSBポートを備えており、USBメモリから造形データを読み込んで、PCを接続せずにスタンドアロンで造形できることも魅力だ。スライス/プリンタ制御ソフトは、専用ソフト「Cube Softwere」を利用する。表記は英語だが、グラフィカルなアイコンが多用されているので、分かりやすい。
Cubeは、フィラメントのランニングコストが高いことが欠点だが、使い勝手が優れているので、初めて3Dプリンタを購入する人に向いている。ただし、2014年1月に3D Systemsから新製品「Cube 3」が発表された(同時に現行のCubeはCube 2に改称された)。Cube 3は、デュアルヘッドながら1,000ドル程度と非常に魅力的な価格で、性能も向上している。もう少し待てば、Cube 3の出荷が開始されると思われるので、そちらを待っても良いだろう。
トリプルヘッドモデルも用意されているハイグレード機
CubeX、CubeX Duo、CubeX Trio
- 販売元:イグアス、BRULE
- 価格(CubeX):CubeX 417,900円(イグアス)、358,000円(BRULE)
- (CubeX Duo):459,800円(イグアス)、398,000円(BRULE)
- (CubeX Trio):522,900円(イグアス)、458,000円(BRULE)
CubeXシリーズは、3D Systemsが開発したパーソナル3Dプリンタで、Cubeの上位機種となる。Cubeはコンパクトな筐体がウリであったが、CubeXの本体サイズは、515×515×598mm(同)とかなり大きい。価格も30万円後半~50万円超と高く、パーソナル3Dプリンタとしては最上位クラスだ。シングルヘッドモデルとデュアルヘッドモデル、トリプルヘッドモデルの3モデルが用意されており、デュアルヘッドモデルでは2色を使った造形や1色+サポート専用材料での造形、トリプルヘッドモデルでは3色を使った造形や2色+サポート専用材料での造形が可能である。
こちらもCubeと同じく、ヒートベッドは非搭載だが、ABSとPLAに対応する。フィラメントは専用カートリッジを利用するため、サードパーティ製フィラメントは利用できない。最大造形サイズは、ヘッドの数によって異なり、シングルヘッドモデルが275×265×240mm(同)、デュアルヘッドモデルが230×265×240mm(同)、トリプルヘッドモデルが185×265×240mm(同)となる。バスケットボールの直径が245mmなので、シングルヘッドモデルやデュアルヘッドモデルなら、ほぼバスケットボールサイズの造形が可能だ。積層ピッチは0.1/0.25/0.5mmで、Cubeと同じくタッチパネル液晶とUSBメモリ接続用ポートを備えており、PCを接続せずにスタンドアロンで造形が可能だ。スライス/プリンタ制御ソフトは、専用ソフト「CubeX Softwere」を利用する。
大型の物体を2色以上で造形したいという人にお勧めの製品だが、こちらも、2014年1月に、3D Systemsから後継機種となる「CubePro」が発表されているので出荷を待つのも手だ。
コンパクトで精度の高い国産パーソナル3Dプリンタ
DS.1000は、株式会社ディビジョン・エンジニアリングとスマイルリンク株式会社が共同開発したパーソナル3Dプリンタである。こちらも、オープンソースベースの3Dプリンタだが、ヘッドの駆動にCoreXY(正確にはCoreXYを改良したH-Bot)と呼ばれる構造を採用していることが特徴だ。
H-Botは、2つのモーターに直結されているタイミングプーリーと6カ所のアイドラプーリーをH型になるようにベルトで繋いだ構造になっており、2つのモーターを同方向に回転させることでヘッドがX軸方向に移動し、2つのモーターを互いに逆方向に回転させることでヘッドがY軸方向に移動する仕組みになっている。この構造では、ヘッドの移動方向をX軸からY軸、Y軸からX軸に変える際、片方のモーターは常に同じ方向に回転するため、バックラッシュによる悪影響が生じないメリットがある。また、モーターのトルクも少なくて済むため、本体の小型化に貢献している。
本体サイズは270×280×255mm(同)とコンパクトで、重量も約5kgと軽い。ヒートベッドは非搭載だが、素材としてはABSとPLA、ナイロンが利用できる。本体が小さいので、最大造形サイズも105×105×105mm(同)と小さめだ。積層ピッチは0.05~0.35mmと、スペックは高い。造形時のヘッドスピードが100mm/secと速いことも魅力で、短時間での造形が可能だ。スライスソフトとしては「Slic3r」、プリンタ制御ソフトとしては「Repetier-Host」の利用が推奨されている。
サードパーティ製フィラメントが利用できるため、ランニングコストも安い。3Dプリンタが欲しいが、設置場所が狭いのでコンパクトな製品を探しているという人にお勧めだ。
高品質で造形可能サイズが大きいパーソナル3Dプリンタ
Np-Mendelは、OPENCREATORSが開発したパーソナル3Dプリンタであり、日本では、アイコスモスが正規販売代理店となって販売を行なっている。Np-Mendelは、オープンソースのRepRapプロジェクトの第2世代機「Mendel」をベースに、3Dプリンタで出力されたパーツを一切使わずに、より高精度な造形ができるように改良された製品だ。樹脂の押し出しに金属製パーツを使わず、エンジニアリングプラスチック製の押し出し式を採用していることが特徴で、フィラメントの詰まりがほとんど生じないという。
本体のサイズは425×425×400mm(同)とやや大きめだが、その分、最大造形サイズも180×180×160mm(同)と大きい。ヒートベッドを搭載しており、造形素材としてはPLAとABSを利用できる。積層ピッチは0.1~0.35mmで、造形時のヘッドスピードは55mm/secである。スライスソフトやプリンタ制御ソフトもオープンソースのものを利用し、スライスソフトは「Cura」、プリンタ制御ソフトは「Pronterface」の利用が推奨されている。
アイコスモスのWebサイトには実際にNp-Mendelを導入したユーザーの声が多数掲載されており、造形例も載っているので、参考になる。設計はやや古めだが、使われているパーツの品質は高く、安定した造形が行なえる。時間がかかってもいいから、大きなものを造形したい人にお勧めだ。
5万円で買える超低価格パーソナル3Dプリンタキット
PRN3Dは、マイクロファクトリー株式会社が開発したRepRapベースのパーソナル3Dプリンタであり、組み立てキットと完成品の2種類の形態で販売されている。PRN3Dの最大の魅力は、組み立てキットで49,800円、完成品で69,800円という価格の安さだ。もちろん、今回ここで取り上げている14製品の中で最も安い。PRN3Dは、販売ルートを直販のみに限定し、3Dプリンタで造形した樹脂パーツを多用することで、大幅なコストダウンを実現したという。低価格だが、精度や耐久性が要求される部分には金属製パーツを採用しており、ほかRepRap系3Dプリンタと比べても遜色のない精度と耐久性を誇る。
本体サイズは420×250×320mm(同)と、標準的な大きさである。最大造形サイズは170×170×160mm(同)と、低価格な割に大きい。ヒートベッドも標準装備しており、造形素材としてABSとPLAを利用可能だ。積層ピッチは最小0.05mmとかなり細かい。ヒートベッドの厚みは3.2mmと一般的な製品の2倍になっており、高い剛性を実現。スライスソフトとしては「Cura」を、プリンタ制御ソフトとしては「Pronterface」の利用が推奨されている。
PRN3Dは、低価格な製品だが、正しく組み立て、きちんと調整を行なえば、ほかのパーソナル3Dプリンタにひけをとらない高精度な造形が可能だ。組み立ての手間はかかってもよいから、できるだけ安く3Dプリンタが欲しいという人に最適な製品だ。同社のサイトには、組み立てマニュアルやソフトウェアの設定方法が掲載されているので、本製品に興味を持った人は、ぜひ見てみることをお勧めする。
海外でも大人気のパーソナル3Dプリンタ
Replicator 2は、MakerBotが開発したパーソナル3Dプリンタである。MakerBotは、パーソナル3Dプリンタブームとともに急成長したベンチャー企業であり、同社のReplicatorシリーズは、パーソナル3Dプリンタのデファクトスタンダード的な製品となっている。
Replicator 2の本体サイズは320×490×380mm(同)で、金属製のしっかりしたシャーシが採用されている。
最大造形サイズは、153×285×155mm(同)とかなり大きい。ヒートベッドは装備しておらず、ABSには対応していないが、PLA以外に弾力性のあるFlexible Filamentの利用も可能だ。積層ピッチは最小0.1mmで、スペックは十分だ。SDカードスロットと液晶パネル、操作ボタンを備えており、SDカードから造形データを読み込むことで、PCを接続せずにスタンドアロンでの造形が可能だ。スライス/プリンタ制御ソフトとしては、専用ソフトである「MakerWare」を利用する。MakerWareは、積極的にバージョンアップが行なわれており、高機能で使いやすいソフトへと進化している。
単にスペックだけを比べると、ほかのパーソナル3Dプリンタに比べてやや割高に感じられるが、安定性や信頼性などは他製品に比べてリードしている部分も多い。予算さえ許せばお勧めできる製品だが、2014年1月に新製品の「Replicator」が発表されている。この新Replicatorは、カラー液晶やカメラを搭載するなど、さらに進化しているため、出荷開始後はこちらにシフトしていくものと思われる。
デュアルヘッドでサポート専用材料も利用できる高機能3Dプリンタ
Replicator 2Xは、MakerBotが開発したパーソナル3Dプリンタの最新モデルであり(2013年12月時点)、樹脂を射出するヘッドを2基搭載したデュアルヘッド構成になっていることが魅力だ。除去の容易なサポート専用材料を利用したり、2色での造形が可能である。また、上部に装着するエンクロージャーリッドと呼ばれる透明カバーが付属しており、造形エリアを密閉できるようになっていることも特徴だ。前回説明した通り、造形エリアが剥き出しだと、エアコンや扇風機の風などの影響によって造形が失敗することがあるが、造形エリアが密閉されていれば、周囲の風などの影響を受けずに、安定した造形が可能になる。
本体サイズは320×490×380mm(同)で、やや大きめだ。最大造形サイズも、160×250×150mm(同)とかなり大きい。ヒートベッドを搭載しており、造形素材としてABSまたはPLAを利用できるほか、Flexible Filamentと呼ばれるサポート専用材料にも対応する。Flexible Filamentは、リモネン溶液に浸けておくと溶ける性質があるため、サポート部分の除去が非常に簡単になる。積層ピッチは最小0.1mmである。Replicator 2と同じく、SDカードスロットや液晶パネル、操作ボタンを備えており、SDカードから造形データを読み込むことで、PCを接続せずにスタンドアロンでの造形が可能である。スライス/制御ソフトとしては、専用ソフトの「MakerWare」を利用する。
Replicator 2Xは、高機能かつ信頼性の高さが魅力の3Dプリンタであり、実用性を重視する人にお勧めだ。前述の新製品「Replicator」はシングルヘッドなので、Replicatorの出荷後もReplicator 2Xの魅力が失われてしまうことはないだろう。
国産パーソナル3Dプリンタのニューフェイス
SCOOVO C170は、株式会社オープンキューブが開発したRepRapベースのパーソナル3Dプリンタである。シャーシには厚さ1.2mmの鋼板が使われており、高い剛性を実現している。外観部(ハウジング)には、ヘアライン加工が施されたアルミパネルを採用して高級感を演出しており、ボディカラーもシルバーとブラックの2色が用意されている。また、XYZ各軸に硬質アルミニウムを精密加工したスマートスライドレールを採用し、精度の高い造形を実現している。
本体サイズは376×333×404mm(同)で、パーソナル3Dプリンタとしては標準的な大きさだ。ヒートベッドは搭載しておらず、利用できる素材はPLAのみとなっている。最大造形サイズは、150×150×175mm(同)と比較的大きい。積層ピッチは最小0.1mmである。ヘッド部分が簡単に取り外せるように設計されているので、フィラメント詰まりが生じた場合のメンテナンスもしやすい。スライス/プリンタ制御ソフトとしては、専用の「SCOOVO Studio」を利用する。SCOOVO Studioは日本語化されているので、初心者にも分かりやすい。
国産製品だけあり、分かりやすい日本語マニュアルが付属していることも嬉しい。現在出荷されている製品は、フィラメントをヘッドに送出するエクストルーダが改良された新バージョンになっており、より確実にフィラメントを送出できるようになった。1年間無償保証が付くなど、サポートも充実しているので、初めて3Dプリンタを購入する人にもお勧めだ。
オートキャリブレーション機能を備えた高性能3Dプリンタ
UP Plus 2は、PP3DPが開発したパーソナル3Dプリンタであり、日本では株式会社サンステラやBRULEから販売されている。UP Plus 2の最大の魅力は、プラットフォームの傾きを自動的に調整し、水平を保ってくれるオートキャリブレーション機能およびヘッドとプラットフォームの間隔を自動的に調整してくれるヘッド高さ自動測定機能を備えていることだ。精度の高い造形をするには、プラットフォームの水平出しをきっちり行ない、ヘッドとプラットフォームの間隔を適切なものに設定することが重要なのだが、手動でこうした調整を行なうのは結構手間がかかる。UP Plus 2なら自動で調整できるので、初心者でも高精度な造形が行なえる。
本体サイズは245×260×350mm(同)とコンパクトで、重量も5kgと軽い。ヒートベッドを搭載しており、素材としてABSとPLAを利用できる。最大造形サイズは、140×140×135mm(同)で、筐体がコンパクトな割には大きい。積層ピッチは最小0.15mmである。スライス/プリンタ制御ソフトとしては、専用の「UP!」を利用する。このソフトは、サポート部分の生成アルゴリズムが優れており、サポート部分を除去しやすい。
UP Plus 2は、Makerムーブメントの火付け役となった専門誌「Make:」での3Dプリンタ評価テストで第1位を獲得しただけのことはあり、完成度の高いパーソナル3Dプリンタである。3Dプリンタで高精度な造形を行ないたいが、細かな調整が苦手だという人に特にお勧めしたい製品だ。